好きな子の為ならば、俺はもしかしたら勇者を超えられるかもしれない。 作:うちのこ
「今日、他の皆も休んでたね…」
「まさかあいつらも全員風邪なんてなぁ……」
今日も二人で帰っているラティナとルディだが、今回は「お膳立て」ということではなく、他の4人がなんと風邪で休みだったからである。
(先週は元気だったってのに……やっぱ急に少し涼しくなったからか…?)
夏から秋と変わる時期であり、急に気温が変化してきたのもあってか学舎では風邪が流行り始めているようである。
「………」
「おい、ラティナ?」
「……あ、うん!ラティナ、大丈夫だよ?」
(いや大丈夫じゃねえだろ……)
一方、ラティナもどこか調子が悪いようで、口数もそう多くなく、足の動きも鈍っていた。
(ラティナも調子悪いみてえだし…早めに帰ったほうが…)
そうルディが思っていると、ラティナの足が急に止まる。
「ラティナ?」
「あ……れ……?」
そして彼女はその場で倒れかけ──
「お、おい!」
なんとか少年がキャッチする。
そして咄嗟に手で額に触れると、とても熱かった。
(すげえ熱……やっぱり無理してんじゃねえかよ……!)
――――――――
その後、ルディはラティナを抱えて、虎猫亭へ駆け込んだ。
その様子を見たリタとケニスはもちろん驚き、すぐに
幸い単純な熱を伴った風邪ということらしく、薬を飲み、数日間安静にしていれば治るとのことであった。
「はぁ……とりあえずは安心だな」
「ええ……大事じゃなくてよかったわね……ルディ君もラティナを運んできてくれてありがとね…ラティナ一人だけだったらどうなっていたかと」
「ら、ラティナが無事ならそれで……」
とりあえず安心している三人、だがそれだけでは終わらない。
もうそろそろで酒場を開店しなくてはならないのだ。
「さて問題は今日の酒場だが……まあ俺達だけでなんとかするか」
「ええ……ラティナの事情を話せばお客さん達も静かになるだろうけど……でも人はどうしても来るわね……」
「……」
(前見た時、結構客居たもんなぁ……そしてそれでもラティナはテキパキと手伝ってたし……)
ルディは彼女の働く光景を思い出し、少し考える。
そして意を決して、二人にある提案をする。
「あ、あの!」
「ん?」
「ラティナが居ない分……俺がここ手伝っていいですか!」
「え?ルディ君が?」
「まあ確かにいてくれば助かるが……良いのか?」
「は、はい!俺、力仕事くらいしか自信がないけど……ラティナの代わりにやります!」
自分自身でも何故手伝いたかったのかははっきりしてない。
ただラティナのあの様子を見た以上放ってはおけないという感情が先行した結果、この「手伝う」という選択肢が出たようだ。
「じゃあその気持ちを受け取って………お願いするわね」
「はい!」
――――――――
「ん?今日はラティナいないのか?」
「ええまあちょっと体調が悪いから休ませたわ……その代わり……」
「い、いらっしゃいませ!」
酒場のその客がみると、ルディは彼なりになんとかラティナの代わりを努めようとせっせと配膳なりを行っていた。
「なんだよ今日はこの前のガキか…」
「はぁ…嬢ちゃんが恋しいぜ……まあ体調悪いなら仕方ねえか……」
その常連客の連中が色々とグチやらを吐いている中、いつもの常連客のジルヴェスターはルディのことを気遣うような口調で彼に話しかける。
「おや、今日は嬢ちゃんの代わりに兄ちゃんが?」
「はい!ラティナは調子が悪いので…」
「ほう…だが気をつけな、あいつらは嬢ちゃんじゃなければ徹底的に色々と頼むところがあるからな」
「は、はい…」
その忠告通り、常連客達は「いつもの看板娘」ではないやつが働いているためか、いつも以上に注文をルディにぶつけてきている。
結果いつもより売上が上がるため、「虎猫亭」としては悪くはないのだが──
(はぁ…この大人げない人たちは……)
リタはそんな彼らに頭を抱えながら色々と呆れていた。
「はぁ……これくらい……!」
一方のルディは鍛冶場での重労働の経験もあり、配膳自体は特に苦でもない。
ただ流石にこの大量の注文には少し息を切らしてしまっている。
「結構やるじゃねえか……」
「なかなかの坊主だな……」
「へっ、点数稼ぎかよ」
認めている客も入れば、認めていない客もいる。
色々と泥沼化しかけようとしたその時──
「る……で…ぃ?」
「ら、ラティナ!?」
「!?」
なんと寝ていたはずのラティナが二階から降りてきたのだ。
なお格好としては先程リタが着せ替えており、パジャマである。
「ど、どうして降りてきたんだよ!」
「るでぃの…こえがきこえたから……あと、おしごとを……」
「ラティナは休んでろよ!その調子じゃまともに働けないだろ!」
「で、でも……」
「でもじゃねえよ!もしまた無理してラティナが倒れたら……」
「たお…れたら…?」
「……お、おれ…皆が悲しんじまうだろ!?…だから……!」
ルディは今にも泣きそうな顔を拳を強く握り、下を向いてなんとか堪えている。
「る、るでぃ……?」
「……ルディ君の言う通りよ、ラティナは今は安静してゆっくり休んでなさい。ここは私とケニスとルディで回せられるから」
「ああ、休むのも仕事のウチだぞ?」
リタとケニスもラティナが休むのを促している。
「……ぅん……わかった……ごめん…ね、るでぃ……」
そしてラティナは重い足取りで、なんとか自分の部屋へ戻っていった。
「………」
(ラティナはいつも頑張り過ぎなんだよ……たまには……休んでくれよ……)
ルディは拳を更に強く握っていた。
そして一方の常連客も何故か無言になってしまっていた。
「……で、なんであんた達までずっと黙ってるのよ…」
「俺は人間の……クズだ……」
「すまん坊主、俺が間違ってた……」
「俺もだ……しにてえ…」
「はぁ……相変わらずというのかなんというのか……」
再びリタが呆れていたのは言うまでもない。
―――――――
「はぁ……」
ラティナは再びベッドの布団の中に入り、天井を見つめている。
(かぜ……だからかな……ルディ……)
再びルディのことを思い出しており、再び「モヤ」がかかっていたようだ。
だがこの体調もあり「きっと風邪のせい」とラティナは薄々思い。
そのまま目を閉じ、ぐっすりと眠っていったのであった。
常連たち、段々と落とされている(?)気がする