絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

60 / 60


 勘違いや思い込みとは、得てして恐ろしいものだ。

 

 一度そうだと脳裏に刻まれたのなら、中々どうして他の目線でその物事を、真実を捉えることは難しくなってしまう……特に人に対しては、その現象が顕著に表れてしまうのではないだろうか。

 言うなれば。勘違いとは、目に見えぬ負債の様なモノなのではないかと彼女は思う。一度発生してしまえば、時間が経てば経つほどに、真実とはかけ離れた認識が……人づてに、雪だるま式に積み重なっていく。そして最終的は、元の状態に戻すどころか、取り返しのつかない、致命的なまでの不利益が発生する。

 

 ……そう。この世で最も恐ろしい事の一つが『勘違い』なのだ。

 

「……もうすぐよ」

 

 彼女は車椅子を手で押し進めつつ、そこに座る『男』に……ミラージュに語りかけた。

 

 ……だが、この人はまだ間に合う。いや、むしろ、あと少しで……全てが『逆転』する。

 

「……」

 

 返事はない……だが、これは決して無視を決め込んでいる訳では無いことを彼女は知っている。

 ミラージュがまだ五体満足だった頃、彼らは色々なことを話し合った。会話の内容は……些細なものだ。今日の調子は、天気は、ご飯は。アイツはどうだ。何か面白い事はあったのか、など。

 今や世間から恐れられている人間が話すとは到底思えないような、ごくありふれた日常会話であり、勿論その口調や表情も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 ただ、ある日。ある日を境に突然。

 

「じき、エレベーターに到着ね」

 

 男は動かなくなった。昨日まで普通に話せていたのに、動けていたのに。一夜明けたら突然に。

 彼女たちは困惑した。通常は人間の身体に大きな障害が発生する場合、徐々に症状が現れるか、そうでなくとも当の本人が何かしらの違和感を感じることが多いはずだ。しかも、植物状態に近い症状になるまで一晩で一気にに進行したにもかかわらず……特に、ミラージュ自身の『意識』については問題が見られない。

 

 トーラス第六支部の職員が彼とのコミュニケーションを取るために機器を作成し、画面に表れる文字での会話を見る限り、その思考能力にも何ら変化は見られなかったのだ。発生した障害の深刻さに比べ、彼の生命維持活動は良好そのもの。簡単に言うのならば、『健康な人間がただ動けなくなっただけ』の状態に近かった。

 

「確か階層は……地下6階だったかしら」

 

 あまりにも不可解な出来事である。トーラス職員や彼女がミラージュから何かを聞き出そうにも、彼は何時もと同じく『大丈夫』の一点張りであり、何が起こったのかを彼女たちが完全に把握するのは不可能であった。ただ……ただ、一つ確かな事は。

 

 男が、それ以前より確実に強くなった(ネクスト機に適応した)という事だ。

 

「……」

「……」

 

 エレベーターに乗り込み、目的地まで降りる二人に会話は無いが……その最中、彼女は思う。

 この男はきっと自分ではない誰かの為に、自分を犠牲にしていると。それこそ、クレイドルの……彼の守りたい、無垢なる者達から恐れられることを全く厭わない程度には。

 AFの襲撃、ネームレスとの激闘。これから向かう先にある『異形』……全てはこれから先。

 

「……。到着したみたいね」

 

 彼らの為に。

 

「……ミラージュ。調整の最終段階よ」

 

ただ、願わくば。

 

「どんな時も、私達は貴方の味方でいるわ」

 

この男が皆に受け入れられ、何時の日かその存在が認められることを彼女は――――――

 

 

 





ラインアーク戦も近いですね。ではルビコン3でお会いしましょう。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

終末世界の救世主になりました!(作者:雷神デス)(オリジナルSF/ノンジャンル)

神様にチート貰って転生!▼可愛い幼馴染!▼いい両親!▼なんか世界にヤバイ生物沸いたわ!▼よっしゃチートで倒したろ!▼なんか英雄になったわ!▼なんか救世主になったわ!▼そんな奴の日記▼続きは未定▼★★★▼一応完結しました。▼気が向いたら小話とか差し込んでいきます。▼★★★


総合評価:19010/評価:8.72/短編:6話/更新日時:2026年03月07日(土) 18:00 小説情報

そして世に(銀髪薄幸美少女傭兵との)純愛のあらんことを(作者:アリマリア)(原作:ARMORED CORE)

 やぁレイヴン。君の良き戦友、ヴェスパー部隊のラスティだ。▼ 積もる話もあるが、本題に入ろう。▼ このラスティには、ルビコンで為すべきことがある。▼ 銀髪薄幸美少女ことハウンズの傭兵の一人と色々あって「おにいさま」と慕われるようないい感じの関係になったり、ンハンドラァウォルタァに警戒されたり、イレギュラーなC4-621と戦ったりしたい。▼ 戦友──君は、どう…


総合評価:12741/評価:8.98/連載:98話/更新日時:2026年06月23日(火) 18:00 小説情報

大魔族の彼は人生を謳歌する(作者:HIIRAGISHIYU)(原作:葬送のフリーレン)

現代の日本を生きていた男が通り魔に刺されて死んでしまう。そして気がつくとそこは見知らぬ場所だったのだが────空を見れば見覚えのある流星群。▼「もしかしてここ、葬送のフリーレンの世界?」▼現代を生きた男が魔族として転生し、魔法を学び、魔法をつくり、古の偉人や激つよエルフと出会う物語。▼「あれ、フリーレン?」「まさかフランメ?!」「なんでここにゼーリエがいるん…


総合評価:13543/評価:8.12/連載:47話/更新日時:2026年07月02日(木) 23:05 小説情報

【完結】誰も知らないアブノーマリティー(作者:名無しの権兵衛)(原作:Lobotomy Corporation)

 Lobotomy Corporationの世界に転生した主人公ジョシュアは、原作知識を使って何とか生き延びようと考えていたが、そこにいたのは誰も知らないアブノーマリティーだった。▼ 本作品にはオリジナルのアブノーマリティーしか出てきません。苦手な方はご注意ください。▼ 短編、『時計の中に、残されて』の主人公ジョシュア君のIFストーリーです。あちらのストーリ…


総合評価:6167/評価:9.02/完結:335話/更新日時:2024年10月31日(木) 00:00 小説情報

悪徳の都に浸かる(作者:晃甫)(原作:BLACK LAGOON)

 何の因果か二度目の生を受けた男。▼ 立っていたその場所は、世界屈指の悪の都だった。▼ 輪廻転生モノ、若干の勘違い成分含。


総合評価:57803/評価:8.9/連載:55話/更新日時:2020年11月30日(月) 23:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>