俺には好きな人がいる。
俺の中のイメージは、パンツスーツに白衣を羽織りタバコをふかしている。それが格好よくて様になっている。
真似してタバコを吸ってみたら、その人に止められた。今どきタバコを吸っていたらモテないからだそうだ。
いつからその人を異性として意識していただろうか。高校3年だっただろうか。
いつも、こんな俺を見ていてくれて、気にかけて助言をくれる。
赤いスポーツカーの助手席に乗せてもらったこともある。横顔がとても綺麗だった。
高校3年の時は、俺のモテ期だったのだろうか。卒業の時、数人に告白された。でも、俺はあの人のことが好きで、すべて断った。泣いてしまった娘もいたけど、俺はあの人以外は考えられなかった。
大学に入ってからも、一緒にラーメンを食べに遠方まで行ったり、20歳を過ぎてからは、お酒を飲みに行ったりしていた。酔いつぶれたのを何回も介抱した。襲ってしまいそうな気持ちを押さえるのが、どれだけ大変だったか…。
早く彼女を作れとか、童貞は卒業したか?とか言われたけど、貴方を好きなのに、他の女にうつつを抜かすことはないです。…とは、言えなかった。
いつまでも、生徒扱い・子供扱いするので、どうしたら大人として認めてくれるのか聞いてみた。答えは、酒を私に奢れるようになったらだと言われた。
就職して、ボーナスが出たら誘おう。そして、想いを伝えよう。そう思っていた。
無事に大学を卒業して、それなりの企業に就職した。初めてのボーナスの支給日が近づいていたある日、一通の招待状が届いた。
数ヶ月後、俺は披露宴会場に居た。昔馴染みの顔もあった。
挨拶はしたが、心はそこにはなかった。
会場のスタッフに声をかけらた。スタッフに花嫁の控え室に案内された。中に入ると、純白のウエディングドレスに身を包んだ、俺の想い人がそこに居た。
はにかんだ笑顔がとても可愛く、とても美しく見えた。
俺はどんな顔をしているんだろうか…。俺の顔を見て困ったような顔を向けてくる。
届かないとわかっていても、叶わないとわかっていても、口から想いが溢れ出す。
とても綺麗で、スタイルが良くて、格好よくて、ラーメンとお酒とタバコと少年マンガが好きで、いつも生徒のことを気にかけて…。俺に道を示してくれた…。
平塚静さん、貴方が大好きです。
俺が俯いていると、ありがとうの言葉と口づけをくれた。
俺の本当の初恋は終わりを告げた。
俺の大好きな人…。幸せになってください…。
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『居場所』を書いていて、続きを考えていたら、全然別の話を思いついてしまいました。
息抜きだと思って、ご容赦ください。