合宿場付近の森、今は雄英の生徒が肝試しに使っている暗闇の森から騒音が響いている。その騒音は肝試しで騒いでいる騒音には聞こえない。怒声、爆音、悲鳴、どの音も身の危険を感じさせた。
「………」
しかしそんな森にピンク肌の少女、芦戸はニコニコと笑い暗い森の中に入ろうとしている。森の中から響く危険な音に気付いていながらまるで楽しそうな様子で。
ただその前に森から誰かが出てきた。森から出てきたのは肝試しの参加者に着いていたこの合宿の為に増員として来ていた男性のプロヒーローだった。
彼は芦戸をみて身構えた。
「ゆ…雄英の生徒か」
彼は見知った姿を確認すると構えを解いた。
内心で危険を感じたのは気のせいかと疑問を感じながら。
「どうしたんです?慌てて、森でなにかあったんです?」
「ああ!あったんだよ!今この森は危険だ!」
「危険ってなんですか」
芦戸は笑いながら聞いた。
それが呑気に見えそれでもヒーロー科なのかと苛立ちながらも答えた。
「おそらくヴィラン連合の襲撃だ。多数のヴィランに森の中で生徒が襲われている!君はプレハブに避難するんだ!其処なら君たちの担任がいるだろ!襲撃の事を伝えておいてくれ!俺は他の救援に向かう!」
「はい、わかりまし、あ」
芦戸は彼の背後を見て何かを見つけた様な顔をした。芦戸の反応に咄嗟に彼は振り向いた。次の瞬間にドスッという音と彼の背中が燃えた様な激痛。
「!!!?」
振り向いて一時的にも傷みを忘れるほど驚愕した。
後ろにはニコニコと笑ったままの芦戸、その手には彼の背中に突き刺さるナイフが持たれていた。
「な、なぜ。裏切り、操られて……?」
彼は混乱したままドッと倒れた。
ナイフが抜け背中からは血が流れているがまだ息はある。芦戸はそんな彼をナイフ片手に繁々と眺めたが……
「うーん、好みじゃない……」
そう言うと芦戸に見える誰かは彼を放置して森の中に入っていく。その顔は今は気持ち悪くニタニタとした笑い顔だった。
私は宣言通りにカメラを回しながら見学をしていた。森の中で催眠ガスの様なのを流したのか多数脱落してるな。ヴィランの奇襲に大混乱。しかも今は合宿のせいで疲れてもいる。
「それでも善戦してるようだ」
是非ともヒーローの卵たちに頑張って貰いたい。私の立場では可笑しいがそう思う。こう言うのを何というのかな。甲子園では強豪よりやる気のある弱小の野球チームの方を応援したい気持ちか。
それでなくても二週間一緒に居た仲だから応援したい。
この合宿の前に私は偽者として合宿に参加する事にしたんだ。これは誰かに変身できるヒミコ嬢を見て思い付いた。私も個性で変身する事とか可能だったからね。元からのセルには無いが吸収で使えるようになったんだよ。私が潜入すると伝えるとヴィラン連合の要請でヒミコ嬢も参加することになった。
それで偽者として参加するための偽者になる対象として不幸にも選ばれたのが、テレビ放映された体育祭の情報を元に、影が薄そうな少年、尾白くんに能天気そうな芦戸嬢、多少キャラが違ってもごり押し出来そうという理由で選んだ二人だ。
二人の事を見つけるのは雄英を張ってれば良いだけだから簡単だった。1度襲撃を受けておいて無用心過ぎないかと心配になるほど簡単だった。
二人を見つけた後は、合宿が始まるまで彼等の事をヒミコ嬢と二人で観察し性格などを確認をした。そして二週間前、合宿が始まる時に二人を誘拐。二人に話をしてから監禁部屋にいれそして代わりに二人として紛れ込んだ。変装は初体験、バレるかなと少しドキドキしたが案外どうにかなるものだった。ヒミコ嬢とかほぼ素のままなのに良くバレなかったな。
合宿にはいるための事前の準備に色々と頑張ったのでホッとした。例えばヴィラン連合にスパイから送られた情報で、合宿に参加するプッシーキャッツのメンバーに、私達の正体を見破る個性持ちのヒーローが居るというから洗脳をしておいたり。
頑張って入った合宿に参加した二週間……さらに大変だった。想像してた合宿と違う。ほぼ修行だった。いや拷問に近いモノと感じた。
この合宿で下手なヒーローより体力のあるヒミコ嬢すら素でダウン。これは別の理由もあるか。この合宿にヒミコ嬢が参加できた理由でもあるが、ヒミコ嬢は姿を模倣するだけでなく模倣した相手の個性を使える力に最近目覚めていた。合宿がキツいのと馴れない個性を使ってたせいでダウンしたんだろう。
私は肉体的には大丈夫だったが精神的には辛かった。演技をしてさらに力をだいぶ抑えて慣れない尾白くんの尻尾攻撃をしてたという理由で。
まぁ合宿が大変だったお陰で、多少芦戸嬢やら尾白くんとしては怪しい事をしても合宿の疲れのせいだろうとスルーされたんだ。結果オーライか。
それにこの合宿のお陰で私も強くなったのだから文句を言うのもお門違いか。
単純な強さなら私は勿論、ヒミコ嬢でも下手なプロヒーローに勝るが、その戦闘方法は戦闘経験と素のスペックのごり押しだ。キチンとしたプロヒーローの戦闘方法と戦闘技術は大変勉強になった。私の動きの無駄な部分をは削ぎ落とされて三割は動きが良くなっただろう。お陰で素のスペックだけの戦闘方法はダメだと考えを改められた。
今回、短期間の内に身に付けられるのは付け焼き刃の格闘技。此処から格闘技を極めれば孫悟空のように格上相手にも戦えそうだ。格上が居るか知らないが、今度から変装して全国の格闘技を学んで見ようかな。特に強さが必要かと言う疑問はあるが今回の事で判ったが強くなるのは嬉しいものだ。サイヤ人の細胞が私にあるんだろうか?
強くなって嬉しいと思うとその機会を奪ったと、改めて尾白くんと芦戸嬢には悪いことをした気になるな。なにか埋め合わせをしたいな……。
さて後日の事でなく今の事を考え見学に戻ろう。ヒミコ嬢に撮影を頼まれたんだ。面白い場面をとりたいな。
先ずはヒミコ嬢のお気に入りの緑谷くんを探してみるか。私としても体育祭の活躍的に気になっていたしな。
筋肉お化けと緑谷くんの戦闘。
歯がスゴいのと緑谷くんの戦闘。
期待以上だ。緑谷くん地味なのにまるで主人公のような活躍をしたな。ボロボロでヒミコ嬢が好きそうな映像が撮れた。両腕が酷いことになってたな、、彼はヒーローになる前に体がダメになるんじゃないか?
緑谷くんの後に見つけたのは、特に覚えのない男子が意識が朦朧とした胸の大きな少女を連れて怪人から逃走するホラーサスペンスな映像。
面白い画が撮れたが、追い掛けてるのが私に似てる感じの怪人なのが少し引っ掛かるな。あの怪人は偶然似てるだけか。私の姿に見えるように擬態してるのか。肉体改造したのか。ふむ私似の怪人は複数いるんだ偶然はないだろう。死柄木くんもそうだが私のファンが多いなヴィラン連合には。…………ただ確認する必要はあるな。
大きな影みたいなのが暴れてるな。サイズはおかしいがカラス頭の彼の……暴走してるのか?
さて次は……ん?ヒミコ嬢の気を近くに感じる。
行ってみるか。
…………ヒミコ嬢、何をしてるんだ?
ヒミコ嬢が緑谷くんの他に狙ってたカエルのような女の子。確か梅雨という娘はわかる。…いや…折角合宿で練習した芦戸嬢の個性を使いたいのもわかる。血を貰うのに抱き付いてるのもわかるよ。 にしても、流石にそれはどうだ?…女子の服を溶かして抱きつく格好になるのは……しかも興奮してるのか顔が赤い。いやそう言う意味の興奮では無いというのは判ってるんだが……
服を溶かして抱き付いてるヒミコ嬢を退かせば見えてしまう状態にして相手の動きを封じる。なんて二つの意味でイヤらしい事を思い付くんだ。しかも傷をつけて血を吸うにしても……その傷の場所が胸の位置。どう見てもそう言うシーンにしか見えない。
それで…近くにいるの助けないのか、あの葡萄頭の彼は。ヒミコ嬢の姿は芦戸嬢のままだと、何をしてるのか意味不明だから戸惑ってるのか?
私はどうするか……戦闘なら放置してるんだが、友人としては人の視線が有るところでどう見てもアレな状態になってるのは止めるべきかだろうか……。
ん?気が減ってる。
どうやらヴィラン連合は撤退に入ってる様だ。
もう目的を達したのか?
私もヒミコ嬢を回収して去るか。