「そうだよねこんなに大変だと思わなかったよ」蛍もお菓子を頬張りつつ答える。
3階にある新聞部に戻ってきた2人、相変わらず誰からの便りすらなかった。
どーしてなんだろう?スマホを確認しながら苦言を零す燐。口にはスティック状のお菓子を一杯にしながら。やけ食いになってない?その様子を見て苦笑いする蛍。
これ以上は情報が無かった。唯一の情報源であるオオモト様も居なくなってしまったし今日は無理みたいだった。燐は半ば諦めて帰る提案を蛍にしようとしたが…その前に緊張しながらも蛍が話してきた。
「実は、わたし一つだけ知ってることがあるんだけど…」小声で語り掛ける。
「えっ!蛍ちゃん何か知ってるの?」燐がつぶさに食いつく。恐らく七不思議の事だろう。最初から言ってくれれば良いのに。そう思ったが口にはせずに蛍が話し始めるのを黙って待つことにした。
「部活に来る直前に聞いたことなんだけど…」とつとつと蛍が語りだした。
「今ってここの屋上は閉鎖されてるでしょ?その閉鎖になった原因が七不思議の一つなんだって」つまり旧校舎の屋上の事だろう。確かに屋上はあるがそんなに広いスペースではないはず。だが蛍や燐が入学したときはすでに閉鎖されていたので殆どの生徒が入ったことはないし、考えてみても見当すら付かなかった。そうなると誰からの情報なんだろう?リークした人が気になったが特に尋ねず話を促した。
「でね、やっぱり屋上から飛び降りちゃったんだって。二人で」何となく展開は予想できるものだった。
「その理由も聞いたんだけど何だか分かる?」突然クイズが始まってしまった。燐は苦笑いしつつも理由を探ってみる。
(二人でってことは多分同級生の女の子たちだろうしなあ。理由って言ったらやっぱりアレかなあ?)ありがちな結論を導き出す燐。
「将来に悲観して、かなあ?進路とかで親と喧嘩しちゃったとか?」この年頃の子にはよくある理由。燐や蛍もいづれ通らなければならない選択だった。
「うーん残念。答えはね、二人は恋人同士だった。でも周囲に反対されてそのショックでが原因みたい」そっちだったかー燐は少し残念がる。だがその答えには疑問があった。
(恋人同士ってたしかこの学校って前は共学だったよね?その頃の話だよね?まさかとは思うけど…)下世話な考えだと思うが頭の中に浮かんでしまっていた。
「女の子同士だと色々世間体が気になるのかな?私は気にしないけどなあ。燐はどう思う?」
…やっぱりこっちの恋人同士だったんだ…。
「ねえ燐、さっきの話どう思う?」
「んー?」燐は答えをはぐらかす様にペットボトルのカフェオレを飲みだした。
わたしね…蛍は燐の様子を気にせずに話を続ける。
「好きな人が一緒なんだから綺麗なままじゃなくてもいいと思うんだ。世間がどう思おうとそれは関係ない。二人でいることが重要だと思う」蛍の声色は恋する乙女のようにときめいていた。
燐は蛍には悪いと思ったが、なるべくお菓子を食べるのに集中する。
(だって二人っきりでこういう話をするのってなんか意識しちゃうんだよね。さっきの鏡のときも何か変な事言っちゃったし…)顔が火照っているのかもしれない。リモコンで空調の温度を少し下げた。
「ねぇ燐。これから行ってみない?」不意に蛍に両手を握られる。咄嗟の事だったので燐は固まってしまった。つい蛍の事を見てしまうがまともに目を合わせることが出来なかった。
「えっと、何処へ?」行先は分かってはいたのだが確認の為に聞いてみる。「もちろん屋上」当然とばかりに蛍は答える。なんとなくテンション高めに見えた。
「でも…閉鎖してるんでしょ?意味ないんじゃない?」蛍の勢いに少し及び腰になる燐。いつもと立場が逆転しているようだった。
「大丈夫、ちゃんと合鍵も持ってるよ」準備は整っていた。あまりにも出来過ぎている気がして燐は思案する。
(でも蛍ちゃん部長だしね。せっかく色々準備してくれたのに悪いよ。それに何があっても蛍ちゃんを信じよう)燐は親友を少しでも疑ったことを恥じた。
「ごめんね蛍ちゃん、一緒に行こ。変なことが続いたからちょっと警戒しちゃってたかも」少し舌を出して謝罪した。
「ううん、わたしも同じだよ。でも燐と一緒に行くことが重要なんだ」燐をまっすぐに見つめる言葉にも決意が現れていた。
「じゃあ行こう」燐は蛍に手を差し出す。その手をしっかりと蛍は握る。何時もと同じ感触が掌に伝わる。それだけで燐はすべてを信じられた。
新聞部の部室に鍵を掛けて二人は屋上に向かう、屋上は奥の上り階段のみ行ける場所で入り口は閉鎖されている。
二人は古めかしい年季の入った鉄の扉の前に立つ、蛍は猫の顔をあしらったポシェットから同じように古いタイプのカギを取り出して差し込んだ。カチリと音がなりロックが外れたことを確認すると燐は鉄錆のドアノブを回して扉を開ける。
ギイィィィィー 若干耳障りな鉄の擦れる音が響く。扉が開かれると外気の熱風が勢いよく流れ込んできた。屋上での景色に見とれてしばし無言で立ち尽くす二人。
空は青く、入道雲が湧きあがっている。眼下には雑居ビルが立ち並び、遠くには微かに海が見える。夏の様相をしていた。
屋上は屋根の修理や清掃をする為の用具置きに使うような場所で予想以上に狭い作りになっていた。手すりで囲まれているが長年使われてないことが分かるほど錆による浸食が激しく、手で触ることを躊躇うほどだった。ここから飛び降りるにはフェンスを越えるしかないのだが…
「あっ、見て燐。ここからすり抜けそうだよ」と蛍が指をさす。フェンスの間に僅かな隙間があり、頑張ればフェンスの外に行けそうな気はした。
「ここから二人で飛び降りちゃったのかな?」フェンス越しに下を覗きこむ。結構な高さがあった。落ちたら割と只ではすまない気がする。
「燐、試しにやってみる?」手を口に当てて大胆なことを言ってきた。でも流石に危ないよね。そう付け加えたがあまり笑えるものではなかった。
普段は立ち入り禁止の場所に居る為か立っているだけでも非日常感を感じてしまう。二人は何もせずにぼーっと風の音を聞いていた。屋上に吹く風は少しだけ温めでエアコンの風ばかり当たっている体に心地よかった。
「そろそろ戻ろっか?屋上に入っただけでも十分記事になるし、蛍ちゃんのおかげだね」蛍の手を取って笑顔で話しかける燐。
「……」蛍はこちらを向くこともせず何も答えなかった。風のせいで聞こえなかったのかもしれない。燐は再び同じことを問いかけようと声を掛ける。
――だが
突然、蛍は燐に抱きついてきた。
「ほ、蛍ちゃんどうしたの?」突然の事に少し戸惑う燐。もしかしたら蛍ちゃんって高いところが苦手だったのかも。抱きついてきた蛍に手を回してしっかりと抱き寄せる。
「蛍ちゃんって高所恐怖症だった?わたしが支えるからゆっくり戻ろう」抱き寄せながら耳元でささやく燐。鉄筋の校舎に比べ高さはないがそれなりに風は吹いているので体を持っていかれそうになる。
「大丈夫蛍ちゃん?」蛍が何も答えないのを不思議がったがそれほど恐怖を感じてるのかもしれない。蛍を抱いたまま扉に向かおうとする。だが燐の耳元に蛍の声が流れてきた。
「行かないで燐」蛍が更にギュッと燐に抱きつく、柔らかい少女の体とがお互いに密着する。「で、でもっ」その行為に少し声が上ずってしまう燐。蛍とハグをしたことは何度かあるがここまで積極的というか何かこう今までと何かが違う感じがしていた。愛情というかもう少し上の感情というか…。これまで経験したことがない抱擁だった、多分。
しばらく屋上で抱き合う二人。少女のもつ甘い香りと感情、そしてそれとは別の異なる臭いも混ざっていた。仄かな香りに二人は包まれているが気づくことはなかった。
「少し落ち着いた?」燐がゆっくりと蛍から離れる。何故か名残惜しかった。「うん。ごめんねもう大丈夫みたい」蛍は余韻を残しながら微笑みかけてくれた。その笑顔にどきっとしてしまう。
(なんかわたしすっごく蛍ちゃんを意識してる。どうしちゃったのかな?)燐は自分の感情の変化に戸惑っていた。つい思わず蛍の目の奥を覗きこんでしまう。そこには燐の顔しか映っていなかった。
「なんで二人は飛び降りたんだろうね、それが幸せだったのかな?」燐の目をまっすぐみて話しかける。二人の顔は近く鼻が掠めそうなぐらい、吐息が顔をくすぐった。こんなに近いとなんか変な声が出ちゃいそうだよ、それでも蛍の目を逸らすことが出来なかった。
「燐はわたしのこと好き?」少女漫画セリフのように聞いてくる蛍。吐息がかかりそう。
その言葉に少し迷った燐だがゆっくりと答える。
「わたし蛍ちゃんの事好きだよ。とっても」何かに後押しされるように告白する燐。胸の奥が蛍の事でいっぱいになった。
「ありがとう燐。私も前から好きだよ」二人は屋上で告白し合った。男女の恋人同士と変わりのない告白だった。
「…だったら一緒に飛んでくれる?」蛍は非現実的な提案をした。
話がつながってないように思えたが二人の間にはもはや関係なく、答えは決まっていた。
「そうだね…蛍ちゃんと一緒なら…わたしはいいよ」その瞳にはお互いの姿しか映っていない。手を取り合い二人はフェンスに近づいた。甘い香りに誘われるようにゆらゆらと。
「離れないように手を縛っておこう?」何時の間にか持っていた真っ赤なスカーフをしっかりと握られた手に巻き付ける蛍と燐。二人で協力してその作業をすることに胸の高鳴りを感じていた。
「痛いかな?」「すっごく痛いと思う」まるで他人事のように話し合う二人。しかし迷いなく器用にフェンスをすり抜けて先に進む。足が辛うじて乗せられる程度の縁に並んで立った。不安定な足場で風が二人の髪を揺らしスカートがはためいた…それでも何故か恐怖を感じることなく普段のように喋る二人の少女。
「いい天気だね」「うん。夏って感じだね」夏の青空を望む二人。まだじりじりとした日差しが照りつけていた。
「そろそろ行ってみようか?」「うん、二人で飛んでみよう」飛ぶことが出来ないのに何故飛んでみたいのだろう?ただ二人だけの世界に行ければそれだけで幸せになれそう。ただそれだけだった。
「燐、わたし最後にやっておきたいことがあるんだ」飛ぶ直前で蛍が見つめてくる。薄く潤んで悲しそうに見える瞳。燐はその答えを知っていた。だって頭に流れ込んできたから。
縛っていない手を絡めて強く互いに強く握りしめる。もう2度と離れたくないと主張するように。そしてお互い顔を近づけて瞳を覗きこみ合う二人の少女。燐と蛍。互いの吐息が混ざるように口を近づける…
その瞬間――
ドシン!!
激しく地面に地鳴りが響いた。思わずバランスを崩してしまう二人、燐は一瞬あった浮遊感で我に返ることができた。
(なんか浮いた?どうして?屋上なの?……)「蛍ちゃん!!」燐は反射的に蛍を抱き寄せた。片手を縛りつけておいたおかげで足が滑り落ちる前に掴むことが出来た。そしてそのまま勢いをつけてフェンスに体重を乗せて一緒に倒れ込んだ。フェンスは曲がり折れてしまったがなんとか転落だけは間逃れた。背中や手が痛んだが気にすることなく蛍を抱えて扉の中に逃げ込こむ燐。
横倒れに抱き合いながらも蛍の頭を抱え込んで揺れが収まるのを待った。
(地震?でも地震速報は来てないよね?あっ、縦揺れじゃならないんだっけ?)意識が元に戻ったのか余計な事を考えてしまう。
どのぐらい経ったのだろう、揺れはそれほど激しくなかったが割と長く続いていたように感じた。揺れが収まるのを待っている間に睡魔が襲ってきた。蛍は何時の間にか寝息を立てていた。「ごめんね…蛍ちゃん…」謝りながら眠気に身をまかせてしまう燐……
いつしか地震は収まっていたが、二人の少女はまだ抱き合ったまま眠っていた。
「…大丈夫…起きられる?」微睡の中で声がする…誰?眼をこすりながら何時もの癖で両手を上げて伸びをしようとする。だが左手に重みがあった。
「おはよう燐」蛍の声。そして左手には蛍の手が握られており。スカーフが巻き付けれたままだった。「おはよう蛍ちゃん」朝の登校のように挨拶を交わす。すっかり熟睡していたみたい。アクビを噛んでもう一度伸びをする燐。今度は左手も持ち上がった。振り向くと蛍も一緒に両手を上げて伸びをしていた。つい笑いあってしまう二人、一緒で良かったと改めて思った。
その後、お互いにケガをしていないか確認してみたが少し擦り傷があるぐらいで済んでいた。誤って落下してたらと思うと今頃になって震えがきていた。
「蛍ちゃんは…覚えてる?」確認するように聞いてみた。蛍の瞳が微かに揺れた。まだお互いの手は縛られたままだったが答えを出すように少し強く握られた。
「うん。ほとんど覚えてるよ。でも何か言わされてたっていうか、今そうしなきゃって感じになってたかも…」蛍の空いている左手が縛られている手に乗せられる、両手の温もりが伝わってきた。
「わたしも、だよ。操られてる?って感じじゃなかったなあ。なんかこう胸の奥の想いというか、なんというか…」まだ正気ではないのだろうか?つい蛍に愛想笑いをしてしまう。
でも燐は蛍に聞いておかなければならないことがあった。少し真面目な顔で蛍を見つめる。
「その、噂って誰に聞いたの?出来れば知りたいなーって思ってさ」身振り手振りで聞いてしまう。その滑稽なカンジに蛍は噴き出してしまう。
「くすっ、あのね実は初めて会った人なんだ。ウチの制服着てたし生徒だと思う。新聞部の活動の事も知ってたし、鍵も渡してくれたのもその人なんだよ」部室に来る前の記憶思いかえしてみる。「どんな感じの人だった?」燐が先を促した。
「えっと顔は……ごめん何か思い出せない」蛍はその生徒?の顔どころか髪形や声色さえも思い出すことが出来なかった。
(でも確かに鍵を受け取ったのにどうして?)ポシェットから再び鍵を取り出してみる。だかそれは…先端が折れて錆だらけの鉄の棒だった。
目の前の物質に理解が追い付かない二人。でも屋上のドアをこの鍵のようなもので確かに開けたのだ。そう確信してもう一度扉を振り返り開けようとする蛍。だが肝心のカギ穴が無かった。
カギ穴がある場所は悪戯出来ないように溶接が施されており、そもそも開けることが出来ない扉になっていた。
「どう、なってるの?」蛍の呟きに答えるものはなく扉を見つめることしか出来なかった……
屋上へ続く階段を確かめるように一段づつゆっくりと下りる。振り返っても何も変化はなかった。なんとなく気まずくなり無言になってしまう。踊り場に降りると蛍は天井を見ながらゆっくりと喋り出した。
「多分あれは
「
とりあえず蛍の件は置いて、ある程度理解した上で発言する。
「じゃあそのせいで屋上に行ったと、思い込んだのかな?さっきまでの事は全部室内のでの事だったってこと、かな?」この過程だと鍵を開けずに屋上の扉の前で行われていたことになる。手を縛って飛び降りようとしたのも、二人で愛を囁きあってその後…の事も…、燐は余計な事を思い出して顔を真っ赤にしてしまっていた。
だが誰がそんなことをするのだろう?燐か蛍どちらかに恨みでもあるのだろうか?噂を流し鍵を渡した人物が一番怪しいのだが…肝心の正体が何も分からないのだからどうしようもない。
(それにそんなのを使うなんて異常だよ。悪戯にしては常軌を逸脱してる)これ以上は深入りしないほうが良いのかもしれない。何者かに狙われている可能性があったとしても。
「でもあの人はこれで良かったのかも」蛍が唐突に言う。やはり理解が追い付かなかった。
「あの人って?」慎重に聞き返す燐。適当にあしらうのは悪い気がした。
「鍵を渡してくれた人。あの人はこうなることを望んでいたんじゃないかな?」どの事だろうか?燐は頭をフル回転させて蛍の言葉を理解しようとした。
「きっとあの人達も飛び降りる気はなかったんだよ。ただ好きな人に告白したいだけだった。でもわたしたちみたいに地震とかそういうのがあって誤って落ちちゃっただけじゃないかな?」つまり噂はたんなる事故だったと蛍は言いたいのだ。そうなるとつまりその女生徒こそが噂そのものということに……、うーんと燐は少し考えてみたが後に、結論を紡ぎだした。
「わたしは霊とかそういうのは疎いんだけど…」と前置きして「悪意はなかったってこと?たまたま二人だったから理解して欲しかったってことかな?」感情的は部分はぼかしてなんとなく曖昧な結論を出してみる。
「うん。そんな感じ」蛍が結論に同意を示す。
イマイチ納得がいかない部分があったが、これまでだって理解の範疇を越えてきたのだ。今更かもしれない。蛍がそれで納得してくれたのなら燐はこれ以上問題提起をする理由がなかった。
少し眠っていたのだがまだ日は高く蒸していた。放課後ってこんなに長かったっけ?少し疑問はあったが気力も体力もまだ余裕があり何より、好きな人と一緒だった。
「ねえ、燐」「どうしたの?」窓からの夏の日差しが二人の影を長くする。
「もしあの時地震が起きなかったからわたしたちどうなってたかな?」はぐらかしていた疑問。偶然とはいえアレがなければ噂通りに一緒に飛んでいた?それとも真相?と同じように足を滑らせて?どちらにせよ悲惨な結末だったに違いない。
「そうじゃないよ燐」あの時の再現をするように手を繋いで密着してくる蛍。片手は未だに縛られていた。蛍の瞳が燐を映しこむ。あの時と違う透明度の高い瞳をまっすぐに。
「蛍ちゃん…」それしか言えなかった。それ以上のことは瞳の奥が訴えていた。目と目を見つめ合う一つになった影、瞬きすら忘れるほどに。
「ふふっ」不意に蛍の口に笑みが浮かぶ。片手を外し燐から距離を離す。2つの影に戻っていた。
「燐。戻ろう」燐の手を引いて部室の方向に導く蛍。「…うん」それだけを答えた。今はまだそれだけだった。
一線を越えることを心の奥で望んでいたのかもしれない。蛍に迷いはなかったが燐の瞳にはほんの少し迷いがあるように見えた。気をつかっているのかもしれない、けれど燐が少しでも嫌がるようなことはしたくなかった。
「その前にい加減これ外さない?なんか恥ずかしいよぅ」二人の手を縛っているスカーフを燐は指さした。今となってはこれだけが唯一の手掛かりだった。少女の心残りが紡ぎ出した真っ赤な色をしたスカーフ。もしかしたら二人を護ってくれたのかもしれない。
「わたしはこのままでも問題ないよ?」悪戯っぽく蛍は微笑む。これこそが二人の愛の証とでも言わんとばかりに。「じゃあ部室につくまでね」諦めてるようにため息を一つ付く燐。実はそこまで悪い気はしていなかった。
「えー、今日はずっとしてくれるんじゃないのー?」拗ねたように言ってくる。トイレの時どうするんだろうと思ったが一緒に入ろうとか言いだしかねないので止めておいた。
「もう部室だね」蛍が残念そうに言った。愛想笑いで返す燐。とりあえず先に入ってしまおうと蛍を促す。鍵を取り出して開けようとするが…あれ?鍵かかってない?!
合鍵を持っているのは唯一の顧問であるオオモト様ぐらいなので、多分オオモト様が来たんだと二人は思っていた。だったら今外しておかないと余計に恥ずかしいよ。そう蛍に耳打ちしようと燐。だがその前に。
「ただいま。オオモト様居ます?」と蛍が手を引いて部室に入ってしまった。反射的に蛍の後ろに隠れる燐。どうやって誤魔化そうか思案する。その考えもむなしく部室は静まり返っていて相変わらず人の気配はなかった。不審に思い中を見渡す蛍。するとテーブルの上に見慣れないモノを見つけた。
本が一冊だけ置いてあった。見覚えのない本だった…。
なんとなく再びタイトルを変更してみました。なんか直接過ぎかと思ってカタカナ表記+クエスチョンに変えてみたけど…別のホラーもののタイトルになってしまってもはや元ネタが何か分からなくなった気が…。それに別の誤解も与えそうかも。ニンジャの人とか。
今回は屋上ネタという事で屋上と言ったら百合!がコンセプトになっております。割と鉄板ネタではないかと思うわけです個人的にですが。百合と屋上。大変危険な組み合わせなので念のためにR-15タグを前回の更新のさいにつけておきました。割とさくっと書けそうかと思ったのですがやっぱり難しく、そしてなんか長くなりすぎちゃったぞ…そこそこプロットは立てておいたのになあ。
後、こういう話は情欲に駆られると言いますか、勢いそのままに書き進めちゃうとR18路線に行きそうになったりならなかったり。一応もとは18禁ゲームなので問題ない?のかもしれないですが。
結局色々配慮する形で書いてみました。百合キス路線も寸止めにしちゃったし、屋上ということである特定のワードを使うのも自重しました。
多分R15の範疇で収められてたかなーと思ってます。今回は入れませんでしたが耳なめとかはやっぱり18禁になっちゃうのかな?試しに入れたら怒られそうだけど。
さて次の伏線?も立ててしまったのでなんとか次作につなげたいなー。今度こそ短めに出来ればいいがぁ。それではー。