ダンジョンにキャロルが居るのは間違っているのだろうか? 作:ヴィヴィオ
「さて、交渉だったな」
ガリィがロキ・ファミリアでやらかしてから次の日。ヘスティア・ファミリアにロキ・ファミリアの団長とアイズ。それにロキがやってきた。流石にガリィに任せると面倒な事になりそうだから、オレが出る。
「アイズは渡さんで!」
「と、こちらとしてはお金で解決したい」
「金はあるから却下だな」
教会にある応接室で三人を座らせて対峙する。間のテーブルにはシスターが入れてくれたお茶とお菓子が置かれている。
「こちらとしての要求はアイズ・ヴァレンシュタインの改宗だ」
「それはドちびが拒否したやろ」
「そうだな。だから改宗は無しだ。代わりにアイズ本人を一定期間借り受けるのと、こちらが彼女にする事に関して黙認をしてもらう」
「酷い事は駄目やで?」
「安心しろ。怪我もさせないし、肉体的にどうこうするつもりはない。ただ、彼女にはうちの新入りを鍛えたり、メイドをしてもらうつもりだ。週4でこちらに来てもらえば残り三日はそちらで好きにしたらいい」
「ふむ。遠征の時は期間が守れないがどうする?」
「遠征の時は除外とする」
「アイズたんのメイド服か……ええな」
こちらとしても先の戦いで勝利したのだから、強気でいける。問題はアイズ・ヴァレンシュタイン本人の方だが……
「あの、ここに来たら強くなれますか?」
「ああ、間違いなく強くなれるだろう。オレがあの駄犬に施したようにアビリティとステータスを引き継いでレベル1から始めれば尚更強くなれる。こちらに来れば無料で施してやる。それに武器もこちら持ちで一級品を用意しよう」
「っ!? それは嬉しい」
「随分と金払いがええやん。何を企んどるん?」
「それを答えるつもりはない。それとこちらの提案を拒否するなら改宗だ。ヘスティアに関してはどうとでもなるからな」
「ドちびぇ……」
「そちらの要求はわかった。アイズ。君はどうしたい?」
「私は……あっちに、ヘスティア・ファミリアに行きたい。でも、皆の所から離れたくもない。だから……」
「そうか。それならそちらの提案を受けるとしよう。ただし、互いのファミリアに居るのは三日として間の一日は休息にしてアイズの好きにさせて欲しい」
「いいだろう」
相手側もこの辺りが落としどころと思うだろう。罠に気付ているかは知らんが、言った通りアイズ本人には手を出さない。それにこちらがアイズに対する事の黙認はクローンを生み出す事についても含まれている。
「では契約完了だな」
「少し待ってくれ。アイズの事があるから、同盟を組みたい」
「同盟か。それはオレ達にメリットがあまりないから断る。だが、ビジネスの関係なら問題はない」
「……了解した。じゃあ、最後にティオネが謝罪とお願いがあるとの事なんだが、会ってくれないかな?」
「ふむ。ちゃんと話し合ったんだろうな?」
「うん。ちゃんと話し合ったよ」
「ならいいだろう。だが、これは貸しだ。オレがやる事を見逃せ」
「何をする気だい?」
「犯罪ではない。安心しろ」
「わかった」
どうせ彼女の願いはわかっている。鬱陶しいのが収まるのなら、こちらも問題ないだろう。それよりもロキから手に入れたレーヴァテインを作るルーンと環境の再現こそ重きを置かなければならない。
「それじゃあ、外で待っているティオネを呼んでくるね」
「ああ、そちらの要件をさっさと終わらせよう。アイズはこちらの服に着替えて仕事をしてくれ。シスター、頼む」
「わかりました。こちらへどうぞ」
しばらくしたら、フィンがティオネを連れてきた。彼女はしっかりと謝ってきた。
「ごめんなさい。どうかこれで許してください。私の全財産です」
差し出された物の中には彼女の武器も含まれている。五千万の価値がある一級品の品だ。それまで差し出してくるのなら、確かに謝罪としてはいいだろう。
「で、これで頼めるか?」
「確かに誠意は見せてもらったから構わん。で、小人族に作り変えればいいのか?」
「是非お願い!」
「レベルは下がるし、リーチがかなり変わるぞ」
「構わないわ。団長と添い遂げるためならなんだってするわ!」
「いいだろう。作り変えてやる」
アマゾネスの身体データは使える。解析してミカに活かすとしよう。それに小人族にするのなら、小人族もしっかりと調べないといけない。
「あの、その、ちょっとだけ要望があるのだけど……いい?」
「なんだ?」
「肌と顔とかは出来ればこのままがいいの。ティオナと姉妹である証も残したいから……」
「ふむ。それなら可能だ。筋力も圧縮して強靭な状態にしておこう」
「ありがとう!」
早速、フィンの身体を調べてから、彼の身体と相性がいいようにティオナを小人族に錬成する。スキル、発展アビリティ、魔法を引き継がせ、肉体の筋肉密度を圧縮して作り直す。経験値が大量に犠牲になるが、それでもレベル6であるフィンに近付ける事で駄犬よりは上手くやれる。錬成が終わり、小人族になったティオネはオレの手を取ってきた。
「ありがとう! 本当に感謝するわ!」
「それはわかったから、さっさとフィンと一緒に帰れ」
「わかった! ありがとうね! さあ、団長! 帰りましょう!」
「ちょ、待つんだティオネ」
フィンがティオネに連れて行かれたので、まだ残っているロキを見る。
「帰らんで。アイズたんのメイド服姿を見るまで帰るわけにはいかん!」
「好きにしろ。だが……丁度いい。ロキには子供達の相手をしてもらおう」
「え? それはちょっと……」
「知らん」
鋼糸魔弦でロキを拘束して子供達に玩具として放り込んでおく。これでシスター達は楽になるだろう。まあ、一緒に居るヘスティアと喧嘩するかもしれないが、問題ない。ベルも居るが、そちらは後程連れてくるアイズが居るのだから、やはり問題なしだ。
オレは地下にある工房に戻り、そこで作業を行う。ガリィがすでに色々と作り上げてくれているので、オレがやる事はほぼない。
「ガリィ、準備はどうなっている?」
「マスター。既に培養槽の設置が終わり、クローンを作る準備は整っています。というか、もう始めちゃっていま~す☆」
見れば確かに培養槽の中には人が出来つつある。一つはオレのスペアボディ。もう一つには
「適正は?」
「失敗していますねぇ~。やっぱり風の属性はなかなか手に入りません☆」
「そうか。まあ、何人か作ればいい。そこから適正がある奴を選び出してファラの素体にするか、それともそのまま使うかを選べばいいからな。どうせ人手は足りん」
「ですね~。ファミリアの人数を増やさないと色々と大変ですし。でも変な人が来たらそれはそれで困りますしね。で、どうするんですか?」
「まずはレーヴァテインを作る。必要な素材と方法はある。無いのは環境だけだ」
「環境……たしか、ニヴルヘイムで作られたんですよね」
「そうだ。下層に存在するとされる冷たい氷の国、永久凍土の地獄だな。その環境を疑似的に再現しないといけないだろう」
「つまり、冷凍庫を作るのですね!」
「……まあ、そうだな」
身も蓋も無い言い方だが、そうだ。絶対零度、-273.15 ℃の世界を再現し、そこで作成する。普通の人間どころか生物では不可能だ。だが、人でないなら可能だ。そもそも素材からして使うのはロキの血と培養した細胞。それに加えて炉の女神であるヘスティアの細胞、鍛冶の神であるヘファイストスの細胞。この三種類を素材として使うのでかなりの熱量になる予定だ。やはり、レーヴァテインを作るにはダンジョンで行うのがいいだろう。50階層より下ならば邪魔も入るまい。
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