「大丈夫ですか?」
「うん……」
青龍との戦いから次の日。ローアはげっそりとやつれていた。
理由は単純。戦いから帰ってその日はすぐに休めたのだが、次の日の朝から早々に撫子に呼び出され、クラクラするほど怒られたのだ。
理由は先日の戦いで、安全第一だったのを危険な一騎討ちに臨んだ上に、光武を爆発四散させたのだ。旧式の使い古された中古品とは言え光武だってタダじゃない。と言うか高価なものだ。それはもうかなりこってり絞られた。
その為かげっそりとやつれたローアは、食堂のテーブルに突っ伏して居たところに、八重がちょうどやって来て心配そうに顔を覗き込んでくる。
「まぁ無茶した俺が悪いんだけどさぁ」
「でもあの時助けてくれて嬉しかったですよ?」
八重はそう言って笑みを浮かべる。それを見てローアも少し笑みを取り戻し、
「まぁ、八重が無事でよかったかな」
「ローアさんもご無事で何よりです」
そう言って二人は笑い会う。すると、
「邪魔だったかな?」
「ん?」
見ながらそう言葉を発したのはレミィだ。それを見たローアは、
「そうだね。せっかく二人で仲良く話してたんだけど」
「ちょ、ちょっとローアさん!?」
顔を赤くしながら言う八重と顔色ひとつ変わらないローアと言う、真逆の反応を見ながらレミィは八重を見て、
「まぁ、イチャイチャも良いけど八重はそろそろ舞台の練習だから来てね?」
「い、イチャイチャなんかしてないわ!」
八重はレミィに詰め寄るが、それをスルーしてレミィはそのまま行ってしまい、それを追いかけて行ってしまう。ローアはそれを見送り、手持ちぶさたで食堂の窓から外を見る。
青龍と名乗った男は言っていた。いずれ改めて決着をつけようと。
恐らくまたいつか戦うことになる予感がする。だがその前に強くならなければならない。そうしなければ、勝つことはできないだろう。昨日のはラッキーパンチにすぎないのだから……
そう思いながらローアは拳を作る。次会ったときは、実力で勝てるようになろうと。
そして決意を新たにし、ローアは窓から離れるのだった。
「まさか貴方がやられるなんてね。青龍」
「朱雀。わざわざ嫌みを言いに来たのか?」
腕の傷を抑えながら、青龍は隠れ家にいたのだが、ニヤリとしながら朱雀がやって来たので、不機嫌そうに返す。
「それにしてもそこまでの使い手がいたのかしら?今までの帝国華撃団の戦いを見ても貴方がそこまで苦戦するとは思えないのだけど?」
「新しい奴が居た。そいつが想像以上でな。それとそいつはシャトーブリアンと名乗った」
シャトーブリアン?と朱雀は顎に手をやり、
「確か帝国華撃団の初代及び2代目に同じ姓の奴がいたな」
「恐らく血縁者だろう」
もしかしたら今の帝国華撃団には他にも昔の華撃団の血縁者がいるかもな。と青龍は言いながら立ち上がると、
「だが次は勝つ。あの小僧にはこの借りを必ず返して見せる」
そう青龍は言いながら、奥へ消えていった。
こうして、長い因縁が生まれるのだが、その因縁の結末は……まだしばらく後に語るとしよう。