pixivに上げていたバンドリより
白金燐子×氷川紗夜のssです◎
燐子と紗夜の同棲生活です。
※高校を卒業後のストーリーです。
駅を降りると、人で形成された波に身を任せ、みな同じ方向へと流れ行きます。花咲川女子学園を卒業したわたしは、近くの服飾科のある大学へと進学しました。元々Roseliaのライブ衣装作りをしていたわたしは、もっと良い衣装をつくれるようにと、大学で本格的に服飾について勉強しています。もちろんRoseliaはいまも続いてます。近々あるライブへ向けて、日夜スタジオに集まり、入念に打ち合わせをしています。
大学へ進学したことで、変わったことと言えば、実家を離れたことです。実家を出て2LDKのマンションを借り、今は講義を終え、お家へと帰るところです。とはいえ、一人暮らしではありません。
「ただいま……氷川さ、あっ…………」
「もう、違うでしょ……燐子」
「た、ただいま……です。……紗夜さん」
そうなんです。わたしはいま……さ、紗夜さんと、一緒に暮らしています……。
事のきっかけは、大学受験の少し前へと遡ります。
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-高校生3年生 冬 生徒会室-
「白金さんは、服飾科の大学へ進学するのですね」
「は、はい……。もっと、良い衣装を作れるように、なりたいなって……」
「そうですか。いつも素敵な衣装を、ありがとうございます」
「そ、そんな……! わたしがやりたくて、していることなので!」
「それでも、いつも感謝しています。Roseliaのために貢献していて、立派だと思います」
「ありがとう、ございます……。氷川さんは、どうするんですか?」
「わたしは、進学も考えたのですが…………とあるライブハウスで働かせてもらうことになっています。もっと良い音を奏でるために、学べることがたくさんあるはずです」
「そうなんですね。やっぱり氷川さんは……か、かっこいいです!」
「そ、そんなこと……、白金さんだって……!」
「「……………………」」
「そ、卒業したら……、寂しくなりますね」
「そうですね。でも私たちには、Roseliaがあるでしょう?」
「そう……ですね…………」
「白金さん……?」
「ひ、氷川さんと……こうやって、過ごす時間も……、終わってしまいますね……」
「ッ!! そ、そうですね……」
「「……………………」」
い、今しかない……! 伝えるんだ……氷川さんに、わたしの、ありのままの気持ちを……!あの日から、氷川さんの事ばかり想って、生まれて初めて"恋"と名付けた、この気持ちを……!
「ひ、氷川さん……!あ、あの………………ッ!?」
決死の覚悟で氷川さんに顔を向けた時には、氷川さんの整った顔が、ものすごく強ばった表情で、眼前に迫っていました。か細く伸びた腕がわたしの腰掛ける椅子を捉え、もう片方がわたしに向かってきました。突然のことに思考を手放すと同時に、あの夕焼けに染まる生徒会室での出来事がフラッシュバックしました。
「ひ、ひひ氷川さ…………んぅッ」
小さく柔らかい掌と、ギターの弦で硬くなった指が、わたしの頬を捉えて、開いたわたしの唇を強引に、氷川さんの唇で塞がれました。どれくらいの間、重なり合っていたのでしょう。頭は真っ白なのに、氷川さんの唇から伝わる温度と柔らかさは、いまでも鮮明に覚えています。
そっと、名残惜しいように唇を離して、氷川さんは強ばった表情のまま─────────
「これで終わりだなんて…………嫌です!私は……っ!白金さん、わたしと……付き合ってください…………!」
突然の告白に、一度塞がれた口が開かず、ただただ涙が頬を撫でていきました。いろんな感情がわたしの心をうずめいて、上手く自分をコントロールできませんでした。そんなわたしを見兼ねた氷川さんは、ポケットからハンカチを取り出し、そっと涙を拭ってくれました。わたしは、その手を両の手で包み込むように取り──────
「こ……こちらこそ…………ッ、よろしく、お願いします…………!」
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こうして、両思いになった紗夜さんと、お付き合いをすることになり、お互い卒業しても一緒にいようって、二人で暮らすことになりました。まだ暮らし始めて日も浅く、慣れないこともあるけれど…………、二人でいられる時間は、楽しくて、幸せです。
「私も先程帰ったばかりで、これから夕飯の買い物に………………、燐子? どうかしたの?」
「へっ!? す、すみません……。ちょっと……あの日の事を、思い出していました」
「あの日の事?」
「紗夜さんがわたしに……告白してくれた日の事です……///」
「なッ……/// き、急になにを言うんですか!」
「ふふ……なんとなく、です。わたしの、大切な思い出なんです」
「…………ッ/// そ、それより燐子! 敬語はもう使わなくていいと言っているでしょう」
「わ、わたしはこれでいいんです! そういう紗夜さんこそ、さっき敬語になっていましたよ?」
「えッ……!? はぁ……まあ燐子がそういうならいいわ。 買い物に行くけれど、なにかリクエストはある?」
「あっ! じゃあ……わたしも、一緒に行きます」
「そんな……ただの夕飯の買い物なのに、疲れているでしょう?」
「大丈夫です……! それに、紗夜さんと一緒に、行きたいんです……。ダメ、ですか?」
「だ、ダメだなんて言ってません! …………あっ」
「ふふ……、行きましょう、紗夜さん」
「そうね、行きましょう」
アリガトウゴザイマシター!
「燐子のリクエストで、今夜はスズキになったけど……、お魚好きなの?」
「い、いえ……そういうわけではなくて。大学のお友達が、昨夜スズキを食べたって聞いて、なんだかお魚が食べたくなったんです」
「そうだったのね。 まあ、和食もいいわね、たまに食べたくなるものってあるわ」
「そうですよね…………。あ、あの……紗夜さん……」
「なにかしら?」
「え、えっと……その………………」
「…………はい、燐子」
紗夜さんはわたしのことを見透かしたように、買い物袋のない空いている手を、そっと差し出してくれました。こうやって2人で歩く時に、手を繋いで歩くのがわたしは好きで、今日もこのためにお買い物に付いてきたというのもあります。
「あ、ありがとう……ございます…………」
恥ずかしくて顔が熱い……。それでも嬉しくて、紗夜さんの指とわたしの指を交互に絡めて、そっと繋ぎ合います。
そう遠くない家路を、重なり合う影を連れて、周りの喧騒とは異なり、ただ静かに歩いていきます。
「では、スズキの方はわたしがやりますので、紗夜さんはサラダをお願いします」
「ええ、任せてちょうだい」
2人のご飯はいつも、わたしがメイン、紗夜さんがサイドメニューを担当します。初めはわたし一人で担当していたのですが「いつまでも燐子に甘えきりでは申し訳ない」と、紗夜さんからお手伝いを申し込んできました。二人でキッチンに並んで料理をしていると、なんだか……し、新婚さんみたいです……///
スズキはムニエルにしようと思うので、食べやすい大きさに切り分け、塩胡椒と小麦粉を満遍なくまぶし、オリーブオイルとバターで両面を焼き上げてから、最後にワインを少し入れ、アルコールを飛ばします。レタスを敷いた上にスズキを乗せて、トマトソースを添えたら完成です!
「紗夜さん、サラダの方は出来ましたか?」
「ええ、お皿を出しておくわね」
「はいっお願いします……!」
「「いただきます」」
今晩は、わたしの作ったスズキのムニエル、紗夜さんの作ったシーザーサラダです。お魚料理は久しぶりで、新鮮味も相まって味も良くヘルシーで美味しかったです。
「「ごちそうさまでした」」
「お魚って久しぶりに食べたけど、美味しかったわ。ありがとう、燐子」
「い、いえ……!紗夜さんのサラダも美味しかったです! スズキも……お友達に感謝しなくちゃですね」
「……そうね。燐子、大学は楽しい?」
「えっ……そ、そうですね。服のお勉強もすごい楽しいですし、お友達もできて……はい、楽しいです!」
大学が始まって以降、なかなか慣れない環境で、こういう話をするのは初めてだったので、今まで知り得なかった衣装作りの知識や、大学で新たにできた友達の話を、いっぱいお話しました。
「…………そう、楽しそうでなによりよ。よかったわね」
「…………? はい、よかったです」
「食器……洗っておくから、先にお風呂へ入ってらっしゃい」
「あ、わたしも手伝います!」
「大丈夫よ。その方が効率がいいでしょ」
「えっ…………はい。では、先に入ってきますね」
「ええ」
パジャマを用意して、お風呂へ向かいます。洗い終えたシャンプーの柑橘系の良い香りが漂う中、ゆっくりとお湯に浸かっていると、疲れが溶けていく感覚が気持ちいいのに、頭の中は湯気のように靄がかかっています。先程の紗夜さん……なんだか様子がおかしかったような……。怒ってる、ようにも見えたけど……。わ、わたし……何か、しちゃったのかな…………。
頭の目から下まで、深々とお湯に浸かり、ぶくぶくと音を立てます。どれだけ考えても、直前の会話の内容を反芻しても、靄は晴れません。なんで………………
「……ちょっと、燐子? 大丈夫?」
「ひゃ、ひゃい!!だ、だだだ大丈夫ですッ!」
「そ、そう……。逆上せない内に早く上がりなさい」
「は、はい……すみません」
考え込んでしまって、気付かぬ間にかなり時間が経ってしまったようです。少し頭がぼーっとして、逆上せてしまっているみたい……。早く上がらなきゃ。
「す、すみません。お先です」
「随分と長風呂だったけど、大丈夫?」
「はい……。少し、考え事をしていて……」
「そう……。私も入ってくるわね。少し逆上せているようだし、先に横になっていなさい。そこに冷たいお茶、淹れておいたわ」
「あ、ありがとうございます……!いってらっしゃい……」
怒っている感じでは、なさそうです……。でも……今度はどこか、元気がないような……。火照った身体を冷やすように、紗夜さんの用意してくれたお茶を、ごくごくと飲み干します。そうすると、少し頭がハッキリしてきました。そうです、紗夜さんがなにか悩んでいるなら、こ……恋人として、なにか……力になってあげなきゃ……! 紗夜さんは、わたしが困っている時は、ずっと前から、いつも親身になって助けてくれたんだから…………今度は……、私の番だっ!
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「上がったわ……燐子、横になっていなくて大丈夫?」
「あっ、おかえりなさい、紗夜さん!わたしなら大丈夫ですっ!」
「そ、そう……。それなら安心したわ」
「さ、紗夜さん!ちょっと……よ、横に座って下さい……!」
「…………な、なにかしら急に……」
「い、いいから……ここ、来てくださいっ!」
唐突な申し出に訝しむ紗夜さんを、二人掛けソファーの隣を手でポンポンと叩いて呼びます。
「……これでいいかしら?」
「は、はい……!では、失礼します……!」
「え、ちょっと……り、燐子っ!?」
一応の断りを入れて、紗夜さんの頭を少し強引に、わたしの膝の上へと置きます。
「り、燐子……!? なにをしているの……?」
慌てるように声を上げる紗夜さんですが、驚きはしてもされるがまま、わたしの膝に頭を置き、いわゆる膝枕の状態で固まっています。
そのまま何も言わず、紗夜さんの頭を撫でて、紗夜さんの宝石のような碧髪を梳くように指を遠します。
「あっ…………」
「さ、紗夜さん……気持ちいいですか……?」
「え、ええ……ただ、あの……ちょっと恥ずかしいのだけど……///」
「す、すみません……わたしも、つい勢いで……///」
「あっ、いえ、別に嫌な訳では……」
「さっき……紗夜さんの様子が気になって…………。でも、どうしたらいいのかわからなくて……。」
「………………ありがとう、燐子」
「紗夜さんはいつも毅然としていて、弱音を吐かずに頑張っていて、すごくかっこいいです。だけど…………わたしには、少しくらい甘えても、いいんですよ。わ、わたしは紗夜さんの…………こ、恋人……ですから……!」
膝元へ向いていた紗夜さんは、上から見下ろしているわたしの顔を、正面に向き直して、そっと頬に触れ────
「ありがとう…………燐子」
そう優しく微笑みながら上体を起こし、口付けしました。そっと離れていく紗夜さんに、上から覆い被さるように、今度はわたしから口付けました。長く、長く、まるでお互いの想いが唇を通して伝え合うように、長く。
「はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ…………。紗夜さん、大好きです……」
「…………私もよ、燐子。 大好き」
今度は仰向けの状態で、紗夜さんの頭を愛でるように、優しく撫でてあげます。
「さっきの事だけど…………。燐子の大学での話を初めて聞いて、引っ込み思案な貴女の事だから、ちゃんとやっていけているのか心配だったのだけれど、杞憂だったみたいで安心したのよ……。でも、その反面…………楽しそうにお友達の事を話す燐子に……その、嫉妬みたいなものを……したみたいで…………」
頬を紅くして目を逸らしながら、ぽつぽつと話してくれました。ふと目が合うと、上から見下ろされるのが恥ずかしいのか、手で顔を隠してしまいました。
「その……わ、わかってはいるのよ。 新たな環境で、新しい人と出会って、お友達が増えることは喜ばしいことだと、わかってはいるのよ……。けれど…………」
どんどん顔が紅くなっている紗夜さんが、なんだかとても可愛らしくて、愛おしいです。
「ありがとうございます……。わたしは嬉しいですよ、紗夜さん。それだけ想ってくれていることが、とっても嬉しいです」
「…………燐子」
「紗夜さんが弱音を吐ける、甘えられる、そんな居場所に、わたしはなりたいです。 わ、わたしじゃ……その、役不足かも知れませんが……頑張りますっ!」
「そんなことないわ。ありがとう、燐子」
そういって紗夜さんは、今度はわたしのお腹の方へと向きを変え、ぎゅっと抱き締めてきました。こんなに甘えてくる紗夜さんを見られるのが、自分だけなんだと思うと、少し優越感を感じます。そのまま暫く、子供をあやす様に紗夜さんの頭を撫でて、部屋の中を時計の秒針が小さく、子気味良く、動く微かな音だけが、部屋に響きます。
「ありがとう、燐子……。そろそろ寝ないといけないわね」
「そ、そうですね。少し……名残惜しいですけど、寝ましょうか」
2LDKのわたしたちの部屋には、お互いの部屋があり、社会人と学生では生活リズムが違うからと、気を遣って、いつも寝る時は別々なのですが──────
「ねぇ、燐子…………。その、今日は…………い、一緒に寝ても……いいかしら…………///」
今日はわたしの幸せオーラが、限界突破しそうです!
「もちろんです、紗夜さんっ! 一緒に寝ましょう」
わたしの部屋へ紗夜さんと移動して、少し恥ずかしそうにしている紗夜さんの腕を引いて、同じベッドに入ります。一人用のベッドなので、少し狭く感じますがいまは、丁度いいです。だって、その方が紗夜さんを、より近くに感じられますから。
ただ…………その、わたしも少し舞い上がっていたせいか、一緒のベッドに入った途端に、ものすごく……は、恥ずかしくなってきました……っ/// 心臓が跳ね上がりそうな程、強く脈を打っています……。恥ずかしさのあまり、紗夜さんの方を振り向くことができません……。
内心であわあわと狼狽していると不意に、手に温もりを感じました。お布団の下で、見ることはできませんがすぐに、紗夜さんがわたしの手を握ってくれているのがわかりました。すると途端に、さっきまでの動揺が嘘のようになりを潜め、安心感と幸福感で満たされていきます。ようやく紗夜さんへ振り向くことがでに、同じように振り向いた紗夜さんと目が合い、もう一度ゆっくりと、長く、キスをします。
唇を重ねながら、あの日から現在まで、長いようで短い想い出が脳裏に浮かび、これから先も紗夜さんと一緒に、こんな幸せな時間を過ごしていきたいと、心の底から思います。
「んっ………はぁ……。 これからは…………もう、ベッドは1つ不要になるわね」
「……っ! そうですね……! これからも、ずっと……一緒ですよ」
繋がれた手を離さずに、抱き締め合い──────
「大好きよ、燐子」
「はい……っ! わたしも大好きです、紗夜さん」
わたしには、特別に想う人がいます。尊敬も、羨望も、憧れも、それら全てを含めて、大好きな人がいます。この気持ち、他の誰とも違う、世界でたったひとつの想いを抱き締めて
「「おやすみなさい」」
Fin.
ご拝読ありがとうございました◎
pixivの方にもまだ作品がありますので
宜しければそちらもぜひ(*´꒳`*)