猗窩座様の過去がしんどすぎたんだ。許してくれ


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黄泉を巡っても

頸が斬れた。

完膚なきまでに負けた。

あの剣士に、炭治郎という、太陽のような剣士に。

 

俺は馬鹿だったなあ。どうしようもなく弱かった。

父を救わんと盗みを働いて、捕まって、拷問されて、挙句の果てには父が自死した。

俺が殺したようなものだ。

『まだやりなおせる』と、『真っ当に生きろ』と、『迷惑をかけてすまなかった』等と父に言わせてしまった。

なんという親不孝者か。

師範にも、救ってもらったのに。

やり直して、強くなって⋯

恋雪と契りを交わして夫婦になったのに。

恋雪と師範は毒を盛られて殺された。

大切なものばかり掌からこぼれ落ちるのは何故だ。

何故この拳は、この手は、人を殺せて(こわせて)も、大切な人を守れない(すくえない)

咎人の手だからか?

咎持つ物に幸せ等不必要だからか?

ならば、ならば何故⋯

俺に恋雪と師範を出会わせたんだ(大切なものを作らせたんだ)

殺してくれたってよかっただろう。

先に腕を落として殺してくれたってよかっただろう。

恋雪や師範と会わせなくても良かっただろう。

 

なんで、なんで俺は

 

こんなに惨めなのだろう。

 

あの日あの方に会って、鬼になって。

強くなった気でいて、

いつの間にか大切な人達(父や師範や恋雪)のことすらも忘れて、

結局何も作れずに、人を殺すしか出来なかった。

戦いに溺れるより他なかった。

 

炭治郎と義勇には感謝せねばならない。

 

この様な俺を、惰弱極まる阿呆な屑を殺して(止めて)くれて、師範に、父に、何よりも恋雪に会わせてくれた。

黄泉路の幻だったとしても、俺は救われた。

 

ああ、先に宮殿が見える。

彼処におわすは閻魔様だろうか。

どうせ私の行く先は地獄だろう。

無間地獄あたりだろうか。

 

入る。

中には垂れ幕があって、俺には誰がいるかわからなかったが、恐らく閻魔様、それに相当する御方であろう。

 

『お主は、罪人であるな』

 

迷いなく、答える。

 

「はい。私は罪人です」

『己の罪を、わかる限りで言うてみよ』

「はい。まずは盗みです、父の為、と何度も盗みを働かせました。挙げ句の果てには父も私が盗んでまで生きたくは無いと自死を致しました。私が殺したようなものです。そして、師範と出会い、恋雪と出会い。やり直せると言っていただけたのにも関わらず、結局は2人を殺した剣術道場の者全てを、師範から教わった武術で殺しました。その後、人を捨てて鬼になり、100年以上も人を殺し、喰らい、無意味に生きました。」

 

それが私の罪業です。

 

と応えると

 

『よくわかっているようだ』

 

だが、わかっていないこともあるようだな。

と閻魔様は言った。

 

「わかって、いないこと?」

『何故、お主の妻がお主を止められたと思う?』

 

そう問われ、考える。

嗚呼、嗚呼、まさか、マサカ、真逆、

 

「⋯恋雪は、黄泉路に行かなかった?」

 

天国に巡れるというのに、真っ当に転生できると言うのに。

俺を止めるためだけに、100年以上、留まり続けたというのか?

 

『そうだ。なればこそ、貴様はその責を取らねばならぬ』

 

道理だ、しかしどうやって?

やり方等ひとつしかあるまい

 

「⋯分かりました。恋雪の分の罪業を私に『そういうことではない』⋯では、どうすれば?」

『貴様は盗みもしたし、殺しもした、人も捨てた。許されざる事だ。しかし、しかしだ。貴様は心の底から父を助けようと薬を盗んだ。大切なものを奪われた怒りで人を殺した。鬼になったのは鬼舞辻無惨という大罪人と遭遇したからだ。良いか、これは同情ではない。貴様には情状酌量の余地がある。と我らが法と討論の末に決まったことだ。良いか、心して聞け』

 

貴様と貴様の両親、そして貴様の妻とその家族を、遠い未来に記憶を引き継がせたまま、貴様らのその姿のままに転生させる。

 

「⋯それは、どういう」

『貴様が父を、師範を、妻を幸せに出来なかったと言うなら今度は幸せにして見せろ。という事だ』

「そんな、綺麗事が」

『綺麗事ではない、勿論。規律もある。』

 

覚えておけ。よいか

1つ、徳を積め。生命を奪ったのならば、物を奪ったのなら、それを守れ。例を上げれば所謂警官だ。貴様の時代なら十手持ち、と言ったところだな。

1つ、家族を幸せにしろ。今度の生では、決して喪わぬ様に覚悟を決めるのだ。

1つ、胸を張って生きろ。後ろめたい生き方をするな。全てのものに、俺は幸せだと、俺は後悔などしていないと言えるように生きろ。

1つ、

 

『今度は、幸せになるが良い』

「ありがとう⋯ございます⋯っ!」

 

思わず、泣いて土下座をした。

なんと、なんという事だ。

こんな屑に、生きる意味なんてまるでなかった様な人間に、もう一度機会をくれるというのか。

 

すると、視界が暗転して。そして⋯

 

 

 

目の前に、父がいた。

 

「⋯親父?」

「⋯ッ!そうか、思い出したのか⋯!」

 

抱きしめられた。嗚呼、嗚呼。そうだ、俺は

 

「お帰り、狛治」

「ただいまッ⋯!」

 

ずっと、元気な親父(この光景)が見たかったんだ。

 

泣いた。泣いた。思う存分泣いた。

 

落ち着いて、状況を整理すると、俺は今5歳だという。隣には道場があって、そこに師範⋯慶蔵さんと恋雪、そして母の雪芽さんがいるのだと言う。みんな思い出しているそうだ

 

「親父⋯ごめん!」

「いいんだ、言ってこい!」

 

走った、子供の体力の最大まで使って走った。

 

走って、走って、走って⋯

 

見つけた!

 

「⋯あら、狛治君。どうしたの?」

「――――――『恋雪』ッ!」

「えっ⋯」

 

抱き締める。今度は離さない。もう、取りこぼさない。

 

「思い出したんだ⋯全部」

「⋯そう、そうなのね⋯おかえりなさい。『狛治さん』」

「今度こそ⋯っ、今度こそ一生守るから。だから」

 

また一緒に生きよう(夫婦になろう)

 

「⋯はいっ」

 

 

 

 




猗窩座様に幸せになって欲しかった

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