ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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まだまだ、頑張ってます!
仕事も、頑張ってます!!


聖剣

瞑想をしている二人の場はまるで嵐の前の静けさのように静まり帰る、陽は落ち辺りに暗闇が支配し始めているがディアドラから見ても彼らの存在感ははっきりしていて表情まで読み取れるかのようであった。

ディアドラはエスリンの元へたどり着き彼女の手当て具合を確認する、彼女は重傷を負っていたように感じたが見事な手当てで危機は脱していた。

側にある点滴用具と近くの血溜まりを確認し、カルトの手当ての良さに感謝する。もしこの場にいて妹であるエスリンに何かあればシグルド様に会わす顔が無い、彼女は一つ安堵の表情を浮かべ羽織っていたショールをエスリンに巻き抱きよせてこの場からゆっくり離れていく。巻き添えを貰えばディアドラはともかく、エスリンは一溜まりもないだろう。

 

 

 

二人の目が開く!

互いにもて得る全てを魔力に変換して注ぎ出した、その途端場の雰囲気が一気に反転する。

二人はほぼ手の内を相手にさらしている、一体どの様な形で決着をつけようとしているのか・・・。ディアドラでさえも想像がつかない。

 

魔法の戦闘は一度魔力を解き放てば相反する力で相殺するか、同等の魔法で押し返すのか二つに一つ。もし同等の魔法であれば互いに必殺の魔法を放てば、弱者に全ての力が降り注ぐ・・・。

生き残る事は至難である。

カルトもフレイヤも瞑想の中で仮想の相手と攻防を繰り広げていた。相手が使うであろう魔法と威力を今までの戦いの経験から特定し、それに勝るであろう魔法と質量を作り出そうと繰り広げていた。

 

先手はカルト、もはや一つの属性魔法ではフレイヤを倒す事は出来ない。

古い文献を読み漁り一つの可能性を特定していた、異大陸に存在する風と聖を組み合わせた正義の断罪魔法。極限まで研ぎ澄まされた風は一振りの刃となり、光の魔法によりその刃は聖剣に転じる、魔の者はその聖なる刃でもって一閃の内に絶命する。

一度も試した事は無い、失敗すれば必死のこの状況で謝れば即死であろう・・・。

しかしカルトは瞑想の中で悟っていた、例え現在の最大出力であるオーラを最大魔力で持ってしてもフレイヤを破る事は出来ない・・・。

彼女を倒すには自分の殻を破らなければ勝ち目は無いのだと、カルトはそう思っていた。

カルトは両の手を前へ突き出して光と風を最大魔力で顕現させる。

 

その動作に遅れてフレイヤが動く、彼女はただ闇魔法を最大出力させる事だけを望んだ。

カルトを呪い、怒り、恐れ、悲しみ、妬み、苦しみの感情を剥き出しに、全てを解き放つ。

これで、カルトを殺す!彼女の殺意と畏怖は全てを破壊する衝動へと変換されていく・・・。

 

魔法の顕現は二人同時であった。

カルトは全てを断ち切る複数属性の超魔法、フレイヤは全ての負を乗せた新魔法を打ち出す。

 

「エクスカリバー!」

「ニーベルンゲン!」

カルトの超魔法は光の一筋が天より一瞬の内に手に収まったかと思うと風がその光を中心に渦を巻き一振りの剣が顕現される、カルトはその一振りを振りかざすと眩い一閃となったのである。

対するフレイヤは闇の魔道書には存在しない新魔法である、ヨツムンガンドやヘルなどは周囲に溢れる負のエネルギーを集めて撃ち放つ魔法であるがニーベルンゲンは自身の激しい負のエネルギーを共鳴して周囲から集めて全てを対象に解き放つ魔法として確立した。魔力の消費も多いが対象にむける憎悪が大きければ大きい程、その威力は増大する。

その凶悪さにディアドラはエスリンを抱いて衝撃に耐える、二人のその極大の攻撃に周囲の影響も大きいと感じたのだろう。しかしその予想は別な方向であった。

 

「・・・あ、・・・ああ。」

闇は全て聖剣の名を冠する超魔法で切り裂かれたのた、切り裂かれた闇の波動は霧散し光の粒子となって霧散していく。それはまるで闇夜に儚く舞う、蛍の様に・・・。

晩夏となり飛ばなくなった蛍を再現するかの様に、辺りに冷たい光は飛び交っていた。

フレイヤはその光の一閃を受けて身動き一つ取れなかった。

膝をつくが倒れはしていない、だがよほどの衝撃を受けたのかしばらく受けたのか身動き一つ取れなかったのである。

その間、額に煌めく銀のサークレットは紋様部分から真っ二つに切れてその場に落ちたのであった。

 

「で、出来たのか・・・?」打ち出したカルトもまた精魂尽き果てて両の手を膝で抑えなければ昏倒するくらいである。

先ほどエスリンに大量の血液を与えた事もあり、身体に力がある入らない。震える全身、抜けていく力を食いしばって伏せることを拒否していた。

 

聖剣エクスカリバーは悪しきものを断罪する魔法。もし心も身体も悪しき者ならその瞬間に身体も切り裂かれただろう。身体が無傷であるなら生きている筈で体内に宿る魂のみを聖剣は断罪した事となる。

次、動き出す時は如何様になるのか、カルトも見守る必要があった。

 

 

 

「カ、ル、ト・・・。」フレイヤの口が動き出す、涙する彼女の瞳は先程までの闇に沈み込んだ昏い瞳では無い。

それどころか、彼女の身体が大きく変化していくのである。

漆黒の髪は煌びやかな金の髪へと変化し、憂のある顔は安らかな表情となる。常に釣り上げていた切れ長の瞳は、穏やかなものへと変動した時カルトは驚愕していく。

 

予想は出来ていた。それは2度目の交戦でローブ裂いてフレイヤが姿を見現した時に、初めて明るい場所で彼女の顔を見た時から・・・。

そしてダーナの古戦場でバランが使っていた秘術で死者の身体を乗っ取る禁忌魔法、シレジアの通じる剣技、口調・・・。カルトの思いたくも無い推理が綺麗にピースとなりはまっていった時、推察から肯定へと変化していたのであった。

それでも、今の今までその推察は否定であって欲しいと願っていた。

 

「は、母上・・・。」カルトは絞り出す様に名前を呼ぶフレイヤに呼びかける。フレイヤは、その身体はびくりと反応して項垂れていた首をゆっくりと持ち上げる。

 

「セーラ・・・母さん・・・。」カルトはもう一度囁く、ゆっくりと進みながら真偽を確かめようと歩む。

 

「・・・カルト、今まで・・・ごめんなさい。」フレイヤ、いやセーラは完全に意識を取り戻し謝罪する。

もう少し、もう少しで・・・。カルトはゆっくりと歩み寄り、ようやく彼女を抱き締める。

 

「母上、わかっております。さぞお辛かったでしょう。」

 

「カルト・・・。辛いのは貴方だったはず・・・、こんな形で貴方を苦しめ続けていたなんて・・・。私は・・・。」

 

「いいのです、こんな形で・・・。成長した私の姿を見せる事ができただけでも、私は幸せです。」

 

「カルト・・・。」二人は無言で抱き合った、カルトは母の体温がない事は分かっている。この後どうなるかも・・・、それでも今はこの短い時間を無言の抱擁が全てを埋めるかの様に二人は抱き合い続けた。

 

「私は病気で死んだ後、埋葬に向かう棺桶の中で既に遺体を盗み取られました。死んでまもなくマンフロイにより強い肉体を求めていた彼によって別の魂を私の中に封入し、私の自我はその魂に抑え込められてフレイヤとなってました。」

 

(やはり、そうだったか・・・。)

 

「貴方の魔法で邪悪な部分のみを攻撃してくれたお陰で、私は自我を取り戻しましたが暗黒魔法で保たれていた身体です。すぐに壊死が始まるでしょう。

その前に、貴方に伝えなければなりません。」

 

「はい、教えて下さい。フレイヤとしての記憶、持たれているのですよね。」

 

「ええ・・・。

まずはロプト教団が求めているもの、あなたはディアドラ様がその鍵という事はご存じですね?

もう一つの鍵はこの時代にあります、その二つの鍵が揃えばロプトの血が復活します。」

 

「あるのですか、もう一つの鍵が!!しかし精霊の森の掟をマイラの一族は厳格に守っている筈・・・。」

 

「残念ですがディアドラ様のお母様、シギュン様はその掟を破られてしまったのです。」

 

「そ、そんな・・・。シギュン様?その名前、何処かで聞いた事がある。」カルトは記憶を遡る、その名前はかつて何処かで聞いた事がある。どこだ、どこで・・・。

 

カルトは記憶を手繰り寄せる中突然に事態は変化する、再び瘴気が吹き出しカルトとセーラを包み出す。その瘴気はフレイヤ以上であった。

 

「な、何だ!これは・・・。」

 

「マンフロイよ!カルト、ディアドラ様を連れて逃げて!あの人にディアドラ様を渡してしまえば世界が終わってしまう。」セーラは立ち上がるとカルトの額に手をかざす。

 

「母上、何を・・・。」

 

「少ないけど私の魔力を持って行って、二人ならワープ位はできる筈よ。」

 

「しかし、母上!!」

 

「私はもう死んでいるのです、こんな形ですが成長したあなたに会えたのは嬉しい限りです。思い残す事はありません。

さあ、時間を稼ぎますから早く行ってください。」

額を翳し終わると抱擁を解いたセーラは、カルトの背を軽く叩く。

 

「母上、お気持ち穏やかに・・・旅立って下さい。」

 

「・・・ええ、ありがとうカルト。身体に気をつけるのですよ。」

 

カルトは駈け出す、何処かに避難したであろうディアドラとエスリンの元へ・・・。振り返る事は許さない、それが母がカルトに向けた最後のお願いであるのだから。カルトは只管にその場を後にする。

 

 

 

「ディアドラ!エスリン!!何処だ!何処にいるんだ。」

戦いながら移動していたとはいえディアドラはエスリンを抱えながら避難していた、そんなに遠くに行っていない筈であった。

カルトはあらん限り叫ぶ。

 

「あ・・・、カルト様・・・。」エスリンの消え入る声が響く、カルトはその方向に向かうと彼女の姿を補足した。荒地の窪みに彼女はショールを引かれた上に寝かされていて上体を起こすのが精一杯の様子、カルトは支えて抱き起こす。

 

「意識が戻りましたかご無事でなりよりです、ディアドラ様は?」

 

「え・・・、途中で見かけませんでしたか?カルト様に加勢しに行かれましたが・・・。」

 

「何だって!・・・エスリン様、もう少しこちらでお待ち出来ますか?」

 

「わ、私は大丈夫です。ディアドラをお願いします!」

カルトはひとつ頷くと白銀の剣を抜く、そして・・・エスリンに斬りつけたのだ。エスリンは後方へ跳躍してその一刀を回避する。

 

「な、何をするのですか!冗談をしている時ではありませんよ!!」

 

「冗談、だと・・・。こんな時に姑息な手段を使って俺たちを撹乱するとはな、下劣な連中め!」再び斬りこむカルトにエスリンの右腕が飛んだ。

 

「ぐあああ!」エスリンの声ではない老齢の声に変わる、姿も徐々に崩れ別人が現れ出す。

 

「貴様、なぜ別人と分かった!」ヨツムンガンドを使用しながらカルトに襲いかかる。カルトは即座に間合いを侵食し、切り伏せる。

 

「エスリン様はディアドラ様を姉上と呼んでいた、それに心優しいディアドラ様がエスリン様を置いて参戦する事などありえない。

試しに斬りつけてみたら、重傷を負っているエスリン様とは思えない動きをしたから、二撃目は全力で行かせてもらったまでた。」白銀の剣を一振りして納刀する。

 

「くくくく・・・。こんなに早くに見破れてしまうとは、敵ながらに天晴れなものよ。

しかし、儂に託された時間は稼ぐ事ができた・・・。マンフロイ大司教、後成就を・・・。」

 

「し、しまった!奴の狙いは時間稼ぎか!!」

カルトは辺りを再び見回した時、天空より降り注ぐ光柱が辺りを眩くてらした。すぐにその光はオーラによる攻撃と理解した、おそらく母が命を懸けた最期の抵抗なのだろう。

 

「母上・・・。」カルトはほんの一瞬、冥福を祈るのであった。

 

 

エスリンに化けて時間を稼いだという事は探す方向は間違っていない、そのままの方向を走り続けた。

荒地の小高い丘を越えた時見通しがよくなる、闇夜となっているが月が出ている。その僅かな光からカルトは必死に辺りを見渡す。

 

「いた!」絶望的な状況であった、暗黒魔道士に囲まれている。カルトは再び走り出す、此処からではまだ距離があるので近づく必要があった。

 

「待ちやがれー!!」カルトは絶叫する、母から頂いた魔力を惜しげもなく全開にして警戒させる。

(間に合ってくれ!!)

カルトの願いも空しく魔道士等は中心に迫っていた、距離があるのは承知の上でオーラの魔法の準備に入る。

 

カルトは止まり魔力を練り始めるが別の場所からの援護が入る。風切り音がしたかと思うと一人の魔道士が倒れ、もう一人倒れ出したのだ。

「誰が・・・。これならまだ間に合う!」再び走り出す、まだ運命は抗える!クロード神父が口にした絶望の運命をカルトは心中で否定し続けていた。

 

カルトは射的範囲に入るなり、再びあの超魔法に全てを託す。

あの魔法なら正しい人には一切ダメージはない、一度使用してその特性を理解したカルトはディアドラとエスリンがいても仲間にダメージは与えない。この魔法の便利さを知る。

 

「エクスカリバー!」横薙ぎに放たれた超魔法は、暗黒魔導士全員の胴を見事に薙ぎはらった。一瞬にして全員の命を刈り取りカルトはエスリンとディアドラの元へと辿り着く。

 

「カルト様・・・。」ディアドラは安堵の表情でへたり込む、エスリンは意識を取り戻してはいるが顔色が良くなかった。恐らく輸血による弊害、一刻を争うとは言え不衛生な環境での処置に何らかの雑菌による感染症等が疑われた。

 

「二人とも、よく無事で・・・。」

 

「本当に紙一重でした。取り囲まれて、一斉に魔法を放たれる準備までされてましたので・・・。」ディアドラは答える。エスリンを庇いながらではまともに戦えなかっただろう、よく此処まで逃げてくれたと思う。

 

「しかし、私が助けに入る前に二人程倒されていた。他に援護してくれた人は・・・?」カルトは辺りを見渡した。

 

「おーい!カルトー!」聞き覚えのある呑気な声、カルトは久々に笑顔を見せる。ダーナの古戦場から危機の時には何故か近くにいた風変わりな盗賊、旅に出てからホリンの次に付き合いの長い男が一人の女性を伴って現れたのである。

 

「デュー!」カルトはデューに珍しく抱きついた、小柄な盗賊は荒地につき倒されてカルトの行動に驚きを隠せない。

 

「わっ!カルト!!どうしたの?」

 

「お前って奴は・・・、お手柄だよ!でかしたぞ!!」デューを抱き上げて子供をあやすようにくるくると回す、デューは堪らんとばかりに暴れるが、カルトの妙なテンションに混乱するばかりである。

 

「やめてよ!カルト!!やめてってばー!」二人のじゃれ合いをよそにブリキッドはエスリンの額に手をやる。

 

「これはひどい熱だ・・・。あんた随分と無茶をしたんだな、処置が遅れたら大変な事になる。」

 

「ごめんなさい。エーディン、心配かけて・・・。」

 

「熱でうなされてるな・・・。おい、そこの浮かれている野郎共!!出来るだけ綺麗な水を持ってこい!早くしないとこの娘死んじまうぞ!!」




フレイヤ
ダーククイーン

LV29
HP/MP 42 / 75
力 20
魔力 30
技 26
速 22
運 16
防 18
魔防 24

風 A
闇 A
杖 A

追撃 連続 突撃 見切 カリスマ

ショートソード


ヨツムンガンド
フェンリル
ヘル
ニーベルンゲン
ウインド
エルウインド
トルネード
ライブ
リライブ
リカバー
スリープ
バサーク
レスト
リターン
ワープ
レスキュー

私の設定では、強さだけならマンフロイを越えてます。
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