ある日、京都が消滅した。
 京都を目の敵にしていた滋賀県民もこれには流石にビビる。別に消滅してほしいとまでは思ってなかったのに。
 一匹狼の滋賀県民タクヤは、生き残りの京都府民ユキとともに、近畿の危機を救うべく立ち上がる。
 名作ゲーム「消滅都市」の世界観を絞りカス程度に盛り込んだ至高のC級クソ短編が、今、始まりそしてすぐ終わる!!

※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、滋賀県、京都府とは一切関係ありません。

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消滅古都【消滅都市パロディ】

 タクヤは平凡な滋賀県民だ。目の上のたんこぶに対するそれと似た感覚で京都府を嫌っていた。滋賀県民ならば誰でも抱く当たり前の感情である(偏見)

 だが消滅してほしいとまでは思っていなかった。京都がロストなる災害に呑まれて府民ごと虚無と化したあの日以来、タクヤは行き場のない苛立ちを抱えていた。

 

「クソッ……なんで俺より先に逝くんや、京都府民……!」

 

 琵琶湖の水を止めるぞと脅迫じみた冗談で京都府民を煽っていたあの頃。それすらも幸せな日々だったのだ。

 今更ながら失ったものの大切さに気付いたタクヤは、せめてもの慰めにと、ロスト地点をこの目に収めるべく比叡山に向かった。

 愛用のスクーターにまたがって比叡山ドライブウェイを登った先で、タクヤは衝撃の光景を目にする。

 

「そんな……比叡山も途中から消滅しとる……!」

 

 比叡山はちょうど県境のあたりですっぽり消失して崖になっていた。向こう側には底の見えない真っ黒な穴が広がっている。かつてそこにあった古都は見る影もない。あまりにも救いのない景色。

 タクヤは来たときより惨めな気持ちになって下山した。赤こんにゃく色のパーカーに包まれたその背中はしょぼくれていて、彦根のご当地キャラがプリントされたナンバープレートも心なしかくすんで見えた。

 

「はよ帰らな……。」

 

 ロスト近郊には人の精神を侵す未知の物質――通称「ハァ?どうせぇっちゅうねん物質」が満ちており、長時間滞在すると記憶障害などの様々な健康被害に見舞われて最悪の場合死に至る。長居はできない。タクヤはスクーターを飛ばしてさっさと帰宅することにした。もちろん法定速度は守っているし、ヘルメットも着用している。非常事態でも法律は大事だし、ノーヘルなど正気の沙汰ではないのだ。

 

「ちょっと待った!」

 

 しかし、スクーターを駐車場に停めて自宅アパートの扉を開けようとしたまさにその瞬間、白衣を着た人物に引き止められた。エイジと名乗った男は早口で語り始める。

 

「突然で悪いけどタクヤ君に依頼したいことがあるんや。謎の組織に囚われた女の子を助け出してほしいねん。」

「なぜ俺に?」

「ひ●にゃんのナンバープレート付けてたから……。」

「なるほど、理解した。」

 

 滋賀の大英雄ひこ●ゃん様のお導きとあらば仕方ない。タクヤは二つ返事で依頼を引き受けた。古代帝国マニアのタクヤとしては、報酬として提示された長浜・丸山古墳の出土品「唐草紋緑細線式獣帯鏡」のレプリカも魅力的であった。

 さて、割と近所にあった謎の組織のアジトで適当にドンパチやったタクヤは無事、それらしい女の子を見つけ出すことに成功した。人違いではいけないので、依頼人から聞いたプロフィールをもとに本人確認をする。

 

「消滅に巻き込まれて生き残った京都府民ってのは……あんたのことか?」

「え?」

「……ユキさんですか?」

「……そうですけど。」

 

 最初に名前を聞かず回りくどい質問をしたせいで無駄に手間取るという一幕はあったものの、二人は無事に謎の組織のアジトを脱出することができた。

 謎の組織は後で滋賀県警がきっちりシメてくれたから安心していいよ。

 

「なぁユキ……。」

「気安く名前呼ばんといて。滋賀県民のくせに。」

「なんやとコラ。京都府民が調子に乗りやがって。琵琶湖の水止めたろか。」

「いま垂れ流しやんか。」

 

 下流の京都が大穴と化したことで、現在、琵琶湖の水は穴の底へ垂れ流しになっているのだ。だがそんなことは関係なく、タクヤは久しぶりに京都府民と憎まれ口を叩き合える幸せを噛み締めていた。

 

「あー、懐かしいなぁ。」

「喜んどる場合と違うで。このままやと琵琶湖の水はロストに流れ切って枯渇する。そうなったら京都も滋賀もついでに大阪とかその辺もおしまいや。」

「なんやて? それアカンやつやん」

 

 実際は琵琶湖の構造上、南側より北側の水深のほうが圧倒的に深くなっているので、南が垂れ流しになったとて琵琶湖全体が枯れ果てることはないのだが、近畿の水事情的にまずい事態であることには変わりない。タクヤとユキは近畿の危機(ダジャレちゃうで)をなんとかするべく立ち上がった。

 

「私がロストの中心に行ってオリャーってアレしたらロストは閉じる。」

「なるほど、ユキをロストの中心に連れて行ってオリャーってアレしたらロストは閉じるんやな。」

「せやせや。」

 

 タクヤはユキをロストの中心に連れて行ってオリャーってアレするべく、ユキをスクーターの後ろに乗せて走り出す――前に、ユキ用の温かいジャケットを購入した。ワンピース一枚でバイクに乗っては寒かろうというタクヤの思いやりである。もちろんヘルメットも買った。タクヤが選んだデザインをユキが気に入り、二人はあっという間に仲良くなった。

 

「ほな行くで!」

「れっつごー!」

 

 ノリノリで出発した二人は雄大な湖を横目にしばしのドライブを楽しんだ。

 彼らの旅路を祝福するように、ゴキゲンなBGMが流れ始める。

 

 あみんちゅべいべー♪

 あみんちゅべいべー♪

 あみんちゅ 淡海人(あみんちゅ)

 あみん あみん 淡海 淡海

 あいあいあい愛愛愛

 あああああ〜〜〜〜〜

 

「私、滋賀って琵琶湖しかないと思ってたけど、琵琶湖しかなくても結構楽しめるやん!」

「やろ? 免許とった滋賀県民は必ず最初に琵琶湖一周ドライブすんねん(偏見)」

 

 琵琶湖トークを交わせば今日から二人はマブダチ。ドラゴンキングとタイガープリンセスのごとく、熱く厚い絆で結ばれたコンビとなるのだ!

 

「おっ、滋賀の県鳥カイツブリや! あいつは飛行スキルを持っとるから仲間にすると心強いで!」

「ええやん! ついでに回復スキルを持った滋賀の県花シャクナゲも仲間にしていこか!」

 

 スナック感覚でサクサク仲間を増やしていく! これでもう何も怖くない!

 

「あっ! アレはまさか、とろろ……!?」

「残念! 愛荘町名物のやまいもでした!」

「とろろやんけ!!」

 

 とろろジョークが潤滑油となったかのように二人は順調に進んでいき、いよいよ京都との県境にたどり着いた。

 

「いよいよロスト地点やな。覚悟はええか?」

「OKや。ついでに黒幕も倒していこか。黒幕の名は『タイゾウ』と『ミカヅキ』、並行世界からの危険な侵略者や」

「わかった。念のために聞くけど、そいつらは滋賀県知事とは何の関係も無いんやんな?」

「うん。滋賀県知事とは何の関係も無いで」

 

 まさか滋賀県知事が京都消滅の黒幕であるなど、そんな恐ろしい事実あるはずがないのだ!

 

「ウオオオオーッ! 野洲の銅鐸ガード!」

「はああああ! 彦根藩三十五万石連射!」

「イヤーッ」

「グワーッ」

 

 こうして意気揚々とロストに突入した二人は、見事黒幕を倒し京都の街を取り戻した!

 憎み合う関係にあったはずの滋賀県民と京都府民が手を取り合い、近畿の危機を救ったのだ!!

 

「さ、帰ってサラダパン食べよか」

「ええ? そこは近江米コシヒカリやろ」

 

 そして二人は幸せな日常を掴み取り、ついでに世界も平和になったとさ。めでたしめでたし。

 

〜HAPPY END〜

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