一夏の護衛にメカメカしいあいつがやって来た。
ISとロボコップとのクロス。

気の迷いで書きました。

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 気の迷いですあくまで。



01

 その朝、メカメカしく逞しい脚が、廊下のリノンを踏みしめる。そのチタン合金により構成された脚は教室の扉の前で止まった。

 一方、扉の向こう、1年1組では織斑千冬ご担任様がHRで生徒に説明をしていた。だがぶっちゃけ彼女の機嫌はよろしくない。

 

「今日から織斑には護衛が付くことになった。先に言っておくが、奴に余計な手出しはするなよ?」

「今更?」

 

 該当者である当の織斑一夏が疑問を持つのも無理はない。何度か死にそうになったし。行事のたびにトラブルが起きて流石に政府も肝を冷やしたから……というのが姉でもある千冬の説明だった。事情は呑み込んだが、それはそれとして同じ男だったらいいなぁ……と益体もないことを考えていた。今彼は男に飢えている。

 

 まさにタイミングよく、タッチ式かつスライド式の自動ドアが開き、その護衛マンが現れた。入ってきたのは大男……らしいが銀ピカの外装に身を包んだ、メカメカしい何かだった。というかロボットである。歩く動作と作動音が完全に機械だった。なのに唯一生身に見える口元が生徒らの混乱を誘う。目元は横一直線のバイザーとなっており、目線を伺うことはできない。キュッと生徒の方に向き直り、ごつい音声による言葉が発せられた。

 

「グッモーニン。本日付でアメリカのOCP(オムニ社)より派遣された、ロボコップだ。織斑一夏の護衛を担当する。ご安全に。麻薬はするな」

 

 あんまりな存在にクラス全員が固まってしまった。一泊の間を置き、

 

『何だそりゃー!?』

 

 一夏と篠ノ之箒が揃って指差しつつ突っ込みを入れた。クラスメイトの心は一つ。

 

「実在しましたの……?」

 

 セシリアは亡き父が昔よくハマっていたレトロ映画の主人公が実在していたことに呆れてしまった。尚当時のセシリアはあの映画は超悪趣味だの一言で片付けていた。そんな映画を幼い子供に嬉々として見せる親はちょっと怒られていい。

 

 さしあたって千冬が苦々しくも釘を刺す。ついでにズビシと指を突き付ける。露骨にギスギスした空間が誕生した。ついでにロボは正確にはサイボーグだが面倒なので千冬は説明を省いた。割と大事なことの筈だが削った。

 

「いいかお前ら、下手に問題起こすなよ? お前もだぞブリキ野郎」

「善処する」

 

 善処とは実に曖昧でとてつもなく軽い言葉である。そんな言葉を機械が言うなと突っ込みたいのを、さっさと奥に移動するロボを睨みつつ千冬はジルコニアの精神で抑え込んだ。

 尚これって大人の事なかれ主義で駄目な奴じゃなかろうかとシャルロット・デュノアは失礼なことを思い付いたが本当に失礼なので口にはしなかった。

 

 それでも授業は進む。丁度この時間は千冬の担当である。生徒らはクッソ真面目に授業を受けているものの、背後から放たれる威圧感がどうにも気になって仕方がない。というか邪魔。

 

 生徒のうち3名が、お互い目配せしニヤニヤ笑いつつ、背後に突っ立っているロボにイタズラで紙くずやら飴玉やらチョコパイをポーンと放り投げた。

 直後、銃声が鳴り響いた。それも3発。ロボが生徒一人一人を監視し、表情分析から事前に行動を予測した上で、右太腿から超ゴツイ拳銃「オート9」を取り出し、自分に放り投げられたゴミを撃ったのだ。壁を抜ける程威力のありすぎる銃に狙われた哀れなお菓子他は汚い花を咲かせ粉末と化した。

 

『きゃぁぁあ!』

 

 恐慌状態に陥るクラス。そしてビックリしてロボを見やる千冬。当たり前である。

 

「うぉ!?何だ? いだだだだ教官ギブ!」

 

 数瞬前まで居眠りをしていたラウラ・ボーデヴィッヒにベアクローで制裁を加えつつ、千冬はロボの方を睨み付けHRと同様ロボを指差した。頭から湯気が立ち昇る辺り心情をお察ししていただきたい。

 

「おい! お前何をした!? つぅかブッ放つ奴があるか! おいクソブリキ!」

 

 チタン合金と特殊ゴムで構成されたロボは全く無表情に西部劇よろしく「オート9」を回転させ右太腿に格納した。そのカックイイスタイルにときめく女子……はいなかった。

 

「敵対者からの攻撃を検知した。問題ない」

「問題ないワケないだろう! 二度と撃つな!」

 

 抑揚のない音声でいけしゃぁしゃぁと応えるロボを今すぐ斬り倒してやりたい千冬だったが、生憎日本刀を携帯していなかった。代わりにそこらへんの木刀で斬ろうかと木刀の持ち主を睨む。睨まれた箒はビクッとクソビビリまくってしまったがご愁傷さまであろう。千冬は今度性格とファッションの趣味が壊滅的な友人に連絡してビームの出る刀を調達しようと決意した。

 

「既に対処した。ターゲットに敵意はなくなった」

 

 というか当事者である3名の生徒は泣いてしまっている。確かに敵意は既にない。

 ロボを眺め、振り返って黒板と天井に生誕した弾痕を目の当たりにした一夏は、冷や汗を流しつつ今自分の頭上をすっ飛んでいった弾丸に思いを馳せ、あいつ俺の護衛だよな?……と答えの判りきっている疑問を呈さざるを得なかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 放課後、一夏、箒、2組の凰鈴音の3名が実に疲れた顔で校舎の3番出口に向かっていた。背後にいかつい姿のロボが一定の距離を保って着いてきているのだ。さすが護衛。尚鈴音は休み時間、一夏につっかかって彼の胸をねじり上げた直後ロボに投げ飛ばされた経験を持つに至っている。鈴ちゃんからの絶対殺……壊す眼光を真正面から受けてもロボは動じない。

 

 側に設置してある自販機に寄った一夏は、買い物にも使える交通カードを片手に掲げた。ここの自販機にある飲料が好きで、買うのは日課になっている。彼の脳内で脈略もなく「スーパーキャッシュ! このカードを……」とカートゥーンなオッサンのCMが流れたが脈略がないので流した。

 突然ロボがゴツイ足音を鳴らして大股で走り寄り、一夏の手を止めた。箒と鈴音は突然の事態についていけず固まってしまう。

 

「ストップ」

「はい?」

 

 何の予告もなくロボが自販機に向かって抜き手を放った。盛大に外装がひしゃげアクリルや鉄の破片に液体が飛び内部で火花を散らす。ロボの肘まで埋まり切った。

 

「あー! 何すんですか!? 俺のブラックコーヒー……」

 

 一夏の嘆きなぞ関係なく、ついでにココアを飲みたかった箒の嘆きにも関係なく、ロボは腕を引き抜く。握った掌には何かの機器が納まっていた。羊羹みたいな白い物質にKANEMITUと刻印された電子機器やコードが埋まっている。早い話が、

 

「何これ爆弾……まさか一夏を狙ってー!?」

「俺!?」

「自販機のカメラに直結されていた」

 

 ロボの淡々とした説明に、自分が命を狙われていたと自覚せざるを得なかった一夏は流石に青褪め、血の気が引いてしまった。ドン引きという奴である。しかも冷静に考えたら自分だけじゃなく無差別テロでは……と気付いた。隣の箒ちゃん&鈴ちゃんもドン引いて手を取り合って震えている。

 

 突然起爆装置のLEDの全部が一斉に点灯し、徐々に消灯し始めた。誰が見てもカウントダウンである。一夏らが騒ぐと言うかパニックを起こす間もなく、ロボはその○茂英雄を凌駕する豪腕をもって冷静に投擲した。言うまでもなくガラスをぶち破って屋外へ。

 

「え?」

「うわー!」

 

 その屋外、グラウンドの上空で大爆発が起きた。とっさに箒と鈴音を爆風からかばった一夏は漢オブ男と呼べる。その全面にはロボが立ち塞がって守ってはいたが。屋内で爆発していればロビー一帯は肉片で塗りたくられていたことだろう。

 実のところこの様子を観測していた下手人が手動で起爆したのであるが、どの道未遂で終わった。

 

 彼らが溜息をつく間もなく、外で飛行音が響いてきた。一夏らにはお馴染み、ISが飛行する音である。

 

『織斑一夏、出てこい!』

「今度は何だァ!?」

 

 外に出てみれば、3機のISが目前を周回していた。彼女らが一斉に一夏の方を向く。その目が血走っていたのを一夏はしっかりと見た。

 

『死ねぇ!』

「うぉわ!」

 

 サーチアンドデストロイの精神で連中が問答無用で機関銃を一夏に向けてブッ放した。横っ飛びに避ける一夏。その跡地というか玄関は弾痕でズタボロになった。

 

「何すんだアンタら!」

 

 実のところ彼女らは二次でお馴染み女性権利団体の過激派である。学園内の協力者というか教員に手引されISを無断使用し、世界初の男性粗適合者を抹殺しようと恥も外聞も身も蓋もなく行動したのだ。無論一夏には言われない以上判らない。しかし悪意だけはやけに伝わる。

 

「こんなベッタベタの暗殺集団なんて、漫画かよ!」

 

 自分たちのいる世界が漫画もしくはアニメや小説などとは永久に自覚することはないであろう。

 

 即ISを展開して飛び出し迎撃しようとした箒がふとロボがいないことに気付く。

 

「あれ、あいつは?」

「もーこんな時にぃ!」

 

 鈴音が憤慨して脚をガンガン踏み鳴らしてしまうのは当然といえる。あのブリキ野郎は一夏の護衛なのだから。

 

 だが直後、轟音が鳴り響く。一夏らがよく聞く、ジェットエンジンの音だ。だがISのそれとは違い、半端なくでかい。でか過ぎて騒音の元の近くを通り過ぎたガラスが吹っ飛ぶ程だ。

 飛んできたのはロボだった。ジェットパックを背負い、右手に「オート9」を構えたまま、西部劇の騎兵隊よろしくISへ向かって吶喊する。

 

「飛んでる」

「飛んでるな」

「飛んでるわね」

 

 あのデカブツが飛ぶとは思わなかったので、三者三様でポカーンを口を開けて上空を眺めてしまった。

 ロボが連中からの銃撃を実に蝶のように難なくかわし、連中以上に問答無用で「オート9」を3点バーストつまり3発一纏めにブッ放した。その弾道は狙い違わず一人の暗殺者の口腔へと吸い込まれる。

 「絶対防御」の許容量を超え、口の中をズタズタにされた哀れなターゲットは気絶したまま墜落し地面に激突した。

 

「なんて正確な!」

「えげつない……」

 

 鈴音と箒が唖然とする間もなく、ロボが2人目の懐に入り込み、相手の肩を掴んだ。その強靭な腕はガッチリと離さない。黒光りする「オート9」が2人目の目前で掲げられる。

 

『顔はやめろ顔はやめろグボェェ!』

 

 2人目の懇願にも拘らず、ロボは「オート9」のマガジン部分、底面で横っ面を思いっきりぶん殴る。相手の首が曲がっちゃいけない角度までへし曲がり、これまた気を失って墜落し地面にキスをした。

 

 流石に3人目は距離を取って銃撃してきた。控えめに見ても錯乱状態である。

 ロボは冷静に距離を詰め、左太腿を展開して円盤型の機器を手にした。吸着地雷と呼ばれるそれを3人目の背面、複数ある推進機の一つにブン投げる。地雷は磁力により外装へピタッと貼り付いた。

 すれ違いざま、ロボは正確に吸着地雷を狙撃した。地雷は爆発を起こし、他の推進機も爆煙を吸い込んでこれまた爆発し、結果大爆発を起こした3人目は黒焦げになって墜落した。

 

 あっという間にテロリストを制圧したロボは、一夏らの前に悠然と降り立った。

 

「酷い目に逢ったわね」

 

 鈴音にとっては踏んだり蹴ったりとしか言いようがない。何かをやるまでもなく事態が終結してしまった。箒も思わず頷いてしまう。後むーざんむーざんなテロリストの死屍累々を極力視界に入れないようにした。

 

「そうだ、ロボ、ありがとう!」

「お気遣い感謝する」

 

 それでも感謝を忘れない一夏は快活な一夏らしかった。実に陽キャなイケメン主人公。

 

「ISを倒すなんて、何というか凄いなアンタ」

 

 純粋な疑問というか憧れが籠もっている。

 

「問題ない、相手は所詮人間だ」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 翌日、1年1組のHRにて、今度はロボに続き黒づくめな東洋人のオッサンが仁王立ちしていた。これもロボットだという。

 

「オハヨゴザイマス。本日付でカネミツ社より派遣された、オートモだ。篠ノ之箒嬢の護衛を担当する。ヨロシクオネガイシマス」

 

「よろしくない!」

 

 箒が立ち上がり指差して全力で突っ込んだが虚しく響くのがオチだった。

 

 更にその翌日、シャルロットの護衛と称する黒くて右手が生っぽいロボコップが現れたときシャルロットは泣きたくなった。

 




・ロボコップ
 大好き。

・あの映画は超悪趣味
 これとスターシップ某はうちの弟の子供(3歳)には絶対見せられない。

・交通カード
 これを使える自販機はまだ全国に広がっていないのが残念。

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