この素晴らしいスキマ妖怪に依神姉妹を   作:片腕仙人

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21話

デュラハン襲来の日から数日、アクセルの街は平和そのものであった。冒険者は近辺にデュラハンという強大なモンスターが現れたことによってクエストが激減してはいるもののある程度の蓄えがある冒険者が大半である故に変わらず平和を謳歌していた。

 

紫曰く初心者を殺すボードとなったクエストボードの前には冒険者などいない。そんな中でもクエストを受ける者がいた。それは勿論なんで駆け出しの街にいるのか謎の強さを持つ賢者である。

 

「んー、なんとも言えないクエストばっかりね⋯⋯」

 

あのデュラハンが現れてから高難易度クエストばっかりしか貼られてない。ただ私や女苑、紫苑にかかれば大したことではない。ただ⋯⋯ただ私がクエストをクリアして帰ってくると。待っていましたとばかりに冒険者ギルドにいる連中がたかってくるのよ!! 特に水色したアイツ! 

 

デュラハンの死の宣告を取っ払ってくれたのは感謝しているけどあの図太さというか私の預かり知らぬ所で謎のツケが増えていくのなんでなのかしらね。

 

 

だからクエストを受けなかったんだけど⋯⋯⋯⋯流石に体がなまってしまう。だから来たけどろくな依頼がない。『魔法薬の実験がしたいです。魔法耐性の高い人に限ります。出来れば賢者の職業の方を募集してますよ? よ?』、なに? モルモットになれと? 嫌よ。賢者なんて私しかいないでしょう? 嫌よ。

 

もうこのクエストでいいや。『湖のブルータルアリゲーター20匹の討伐』楽でもないけど難しくもない。

 

女苑と紫苑に手伝ってもらってもいいのだけど今日は女苑、紫苑、そしてゆんゆんでクエストに行くらしい。私もそっちに参加しても良かったのだけどこういうのは私のような大人が入るより友達同士で行ったほうが絆も深まるというもの⋯⋯べ、別に寂しくなんかない⋯⋯ないもん⋯⋯。

 

私だってその気になれば背ぐらい縮めて少女っぽくなれる⋯⋯⋯やめよう、すごく⋯⋯虚しく思えてきた。

 

 

さっさとクエスト行ってこよ。隙間を開いて中に飛び込む。移動はストレスフリー、周りに人がいなければ湖の中心あたりの上空から弾幕を撃って、適度に魔法で倒せば鈍った体も良くなるでしょう。目的の湖よりも少しだけ前の道に繋げる。

 

「よっと⋯⋯あっ」

 

「「「「あっ⋯⋯」」」」

 

あー、なんだろうこの⋯⋯出掛けた先でばったり知り合いに会ってしまったようななんとも気まずい。元の隙間じゃなくて魔法陣に偽装しといてよかった。今の私は魔法陣から上半身と右脚だけ出してる。

 

向こうは4人して中途半端に飛び出した私を驚愕の表情で見ている。私も私でバッチリ眼が合ってるからすごく気まずい。ここはあえてスルーしたほうがお互いのためになるのではないだろうか。というわけで隙間から完全に出て湖へと向かう。

 

「いやいやいや!! 今どう考えても目あってただろ!!」

 

あ~、駄目だったか〜。まあそうよね。カズマとめぐみん、ダクネス、アクアのおなじみメンバー。普通の状態で会ったら普通に挨拶して終わりなんだけど⋯⋯見るからに普通の状況じゃない。

 

なんでアクアが檻の中に入れられているのだろうか。出来れば関わりたくないのだけど。

 

「カズマ達は今日はどうしてこんな所にいるのかしら?」

 

「クエストで湖を浄化するんですよ」

 

と、めぐみんが答えた。

 

「そう、私もクエストであの湖まで行くのだけど一緒に行ってもいいかしら?」

 

「うーん、まあ問題ないだろう。なあ?」

 

「ああ、そうだな。私達だけでも問題ないがユカリがいれば万が一の事が起こっても対処できるだろう。だが! もしものときは私が率先して犠牲になるからそこだけは譲らん!!」

 

「そう⋯⋯」

 

やっぱ帰っていい? ダクネスってなんであんな風になったのだろう。見た目はいいのに本当に残念な騎士ね。

 

「ちょっと! あんたが一緒に来たって報酬はあげないんだからね!!」

 

ガシャガシャと檻の中で騒ぐアクア。本当になにしてんのこの水色。

 

「カズマ、あまり関わりたくないんだけどなんでアクアは檻に入ってるの」

 

「それは――」

 

カズマが言うにはアクアは水に触れていれば水を浄化できるらしい。ただ湖を浄化すると必然的にモンスターが現れてしまう。だから安全かつ効率のいい方法を考えた結果、檻に入っているアクアをそのまま湖に入れるという荒業を思いついたらしい。

 

 

らしいのだけど⋯⋯

 

 

「ねえ、本当に浄化するための作戦なのよね。私には使えないパーティメンバーを湖に不法投棄しに来たようにしか見えないんだけど」

 

「それは⋯⋯ないな。もし捨てるなら重りをつけて湖の底に捨てる。あいつ一応元なんたらだから水の中でも呼吸できるらしいからな。きっと湖の底でも楽しく生活していけんだろ」

 

あら、なかなかの仕打ちねカズマ。そしてダクネスはそれを想像してか頬を赤らめている。いや、ダクネスはそれやったら死ぬでしょ。やめときなさいよ。

 

「ところでユカリはなんのクエストを受けたんですか?」

 

「私が受けたのはブルータルアリゲーター20匹の討伐。ただ湖が浄化されるとブルータルアリゲーターが散り散りになって逃げてしまうから一度アクアには出てもらいたいのだけど⋯⋯まあなんとかするわ」

 

さて、本来なら数日の猶予があるクエストだけどこれは今日中に終わらせなければならないらしい。ブルータルアリゲーターを手っ取り早く集める方法、アクアを餌にしてもいいけどちょっと時間がかかるかしら。

 

 

というわけでこれ。隙間からカエル肉の塊を取り出す。アクアを囮にすればいずれはやってくる筈、ただそれだと確実性に欠ける。最低でも20匹やらないといけないのだから足りなかったからおまけして? と言ってもギルド的にNGなはず。鰐肉だけ手に入っても⋯⋯家計的には助かるけどお金が入らないのは困るからクエストはクリアしたい。

 

「よっと、うっ⋯⋯意外と重い⋯⋯」

 

カエル肉を担ぎ上げ湖まで向かう。近くまで来たけど本当に濁って何も見えない。

 

「はぁ⋯⋯私、ダシを取られてる紅茶のティーバッグの気分なんですけど⋯⋯」

 

アクアがぶつぶつ呟いてるのを知り目にカエル肉を沈める。ドポンッという音でアクアがこっちを見た。その顔はどこか引きつっている。

 

「ユ、ユカリさん⋯⋯? い、いま何入れたの。私の見間違いじゃなかったらデッカイお肉だったような気がするんですけど⋯⋯?」

 

「⋯⋯⋯⋯ふふ」

 

とりあえず笑っとこう。反対にも同じようにカエル肉を投入。周りに散らす用の細切れ肉もばら撒く。

 

「ちょちょちょ、ちょっと!? ユカリさん!? 何してるの!? やめてやめて、やめてよー!! そんなことしたら寄ってきちゃうじゃない!!」

 

「安心してアクア、寄ってきちゃうんじゃないの。寄せてるのよ」

 

そう言い残しスキマ(魔法陣偽装)でカズマ達の所へ戻る。

 

「ちょっとぉぉぉっ!? ふざけんじゃないわよ!! 何が、『寄せてるのよ』よ!! 女神にこんな事してただで済むと思わないでよー!!」

 

その元気があればなんとかなるでしょ。

 

「あ~、ユカリ? アクアが凄く喧しいんだが、何してきたんだ?」

 

「何って、餌を撒いてきただけよ。カエルの生肉」

 

「「「!?」」」

 

カズマ達全員が目を見開き驚いて入る。

 

「カ、カズマ流石にまずいんじゃないですか? いくらオリの中でも餌を周りに撒いたりしたらアクアが危険なんじゃ⋯⋯」

 

「そ、そうだ。オリに入れるだけではなく餌まで周りに撒くだなんて⋯⋯なんて鬼畜な! ちょっと行ってきていいか!! いや、行ってくる!!」

 

「行くな、変態」

 

カズマはサラッと言い放つ。

 

「ひぅっ! 変⋯⋯態⋯⋯っ!!」

 

感じるダクネス。慣れてきている自分が何より怖い。ひとまずは寄ってくるまで待機ね。丁度いい木陰だし休むにはぴったり。

 

喧しいアクアを無視して木陰に腰を下ろしゆっくりと時が来るのを待つ事にした。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

今日は朝からアクアの受けたクエストをこなそうと湖に向かっていたが突然ユカリが出てきた。あの魔法陣みたいなのからにゅっと出てくるの何度見ても慣れないな。

 

でもあれ覚えられたらめちゃくちゃ便利だろうな⋯⋯なんとか覚えられないもんか。今は4人でアクアを見守ってる。まさかユカリもこの場所に用があるとはなぁ⋯⋯。

 

アクアは()()()()()無事だし餌を撒いてもブルータルアリゲーターは来ないな。

 

その時、ユカリが突然立ち上がった。

 

「来たようね⋯⋯」

 

ん? 来た? 何が? そう思っているとただでさえ喧しい奴がさらに喧しくなった。

 

「いやあああああああああ!? なんか来た! すっごいいっぱい来たぁ!!」

 

あー、来たね。うん、そりゃ来るよな。餌撒いたし。だがちょっと多くないか? いくら何でもユカリ一人じゃ――

 

「ライト・(オブ)・セイバー」

 

ユカリがそう言うと掌に一本の紫色をした光剣が現れた。

 

えっ!? それってあれだよな⋯⋯ライト○イバー。いや流石にそれはないか。いくら何でもないよな、だってライ○セイバーだぜ? そんなの――――

 

「じゃあ、私ちょっと向こうに――ブォン!――わね。これうるさいのが欠点――ブォン!――よね⋯⋯」

 

 

⋯⋯⋯⋯⋯ライトセイバーだぁぁ!? これ絶対にライトセイバーだ!! だってブォンっていったし、まさかユカリはジェダイの騎士だったのか? 後で教えてもらお。

 

「カズマ、カズマカズマ!! なんですかあれ! カッコイイです!! カッコイイですよ! あんなの見たことないです! 私の知ってるライト・オブ・セイバーと違います! 買ってください! 私もブォンってやりたいです!!」

 

「俺だってやりてぇよ!! じゃなくて売ってるわけねえだろ!」

 

「ユカリはいつも見たことのない魔法をつかうな⋯⋯」

 

ダクネスの言う通り、ユカリは色々な魔法を使う。見たことないのは当たり前なんだが⋯⋯。なんてったってうちの魔法職はアークウィザードという上級職でもありながら爆裂魔法しか使えないしなっ!!

 

ワニが現れてからアクアは必死に浄化している。自分の身体に備わった浄化能力だけじゃなくて浄化魔法も使ってそれはもう必死に。

 

「ピュリフィケーション! ピュリフィケーション! ピュリフィケーションッ!」

 

「⋯⋯なんだか行きたくなくなってきたわ」

 

必死のアクアに若干引いてるユカリ。

 

「ピュリフィケーションッ!! ピュリフィケーションピュリフィケーションピュリフィケ――――わあああああ!? 今、メキって!! 絶対オリからなっちゃいけない音が鳴った!!」

 

ワニはオリに齧りついてデスロールしてる。あの重かったオリがグルングルン回ってる⋯⋯。アクアよ、すまない。俺たちにはどうすることも出来ない。耐えてくれ。

 

「ピュリフィケーション!! ピュリフィケーション!! ピュリフィケーション!! ひゃあああああ!? 助けてぇぇ!! オリが壊れちゃうぅぅぅ!! きゃあああ―――っ!?」

 

齧られ崩壊寸前のオリだったが突如周囲のブルータルアリゲーターの首がずり落ち水面が赤く染まる。

 

「な、なに⋯⋯どうなったの⋯⋯?」

 

きょろきょろと辺りを見回すアクア。するとオリの上からユカリが飛び降りてきた。

 

「アクア、餌を撒いておいてなんだけど⋯⋯ちょっと多く来すぎたみたいだしブルータルアリゲーターは任せなさい。もとはといえばアレは私の獲物だし。アクアは浄化に専念し――なさいっ!」

 

ガバッと大口を開けるワニを避け光剣で首を切り落とす。そこからのユカリは見てることしか出来ない俺たちにとっては凄いと言うことしかできなかった。

 

某ゲーム的な奴の牛若みたくワニの背中を飛び跳ねライトセイバー的な、いやライトセイバーで突き刺してブルータルアリゲーターを次々と倒していった。

 

「ふっ!」

 

ブルータルアリゲーターの大顎が縦に切り裂かれる。仲間が次々と殺され標的をユカリへと変えたワニが一気に襲いかかる。

 

「ドレインタッチ」

 

大口を開けて迫るワニを半身で躱しその体に触れる。ワニは尻尾を振り上げ叩きつけようとしたが動きを止め震えだした。そしてみるみるうちに痩せこけていき最後には完全に干からびた。

 

さらにワニは増えるがその分ユカリが狩っていく。

 

 

「ひゃあああああああ!! ユカリさん! 来てる! 一匹こっちに突進してきてる!! わああああああ――――ッ!!」

 

湖を浄化しようとするアクアもブルータルアリゲーターからすれば噛み殺すべき敵。大口を開けオリに迫る。

 

「そっちじゃないわよ。『エナジーイグニッション』」

 

ユカリは一瞬だけそのブルータルアリゲーターへと手をかざしすぐに別のワニを切り裂く。アクアは突進してきているブルータルアリゲーターに変わらず悲鳴を上げている。

 

大口を開け迫るブルータルアリゲーターだったが突然開いた口から紫色の炎が噴出する。さらに眼、鼻、鱗の隙間からも同じ紫色の炎が噴き出す。全身を包み込んだ炎でブルータルアリゲーターは一瞬で炭化しボロボロと崩れ落ちた。

 

 

 

それから時間は過ぎ、アクアが浄化を始めて7時間――――

 

 

 

湖は完全に浄化された。傍らにはブルータルアリゲーターの亡骸が積み重なっている。

 

 

 

「おーい、アクア。無事か? 湖の浄化も終わったみたいだしそろそろオリから―――何してんだお前」

 

「ひっぐ⋯⋯えっぐ⋯⋯」

 

アクアは泣いていた。でもあの状況じゃ無理もないか⋯⋯。ただ一つ気になるんだが――――

 

「なんでお前、ユカリに抱きついてんだよ⋯⋯(羨ましいな、おい)」

 

ユカリは流石に疲れたのか濡れるのも構わずオリに背を預け座っていた。その背後からアクアはガッチリと抱きつきながら泣いていたのだ。

 

「ねえ、アクアいい加減離してくれない?」

 

「⋯⋯嫌」

 

アクアはさらにぎゅっと抱きつく。その手を剥がそうと軽く引っ張るユカリだったがアクアの手と一緒に服が引っ張られるだけ。

 

「ふんっ!」

 

「やだぁー! やだ、やだやだやだぁー!!」

 

強引に立ち上がり離れようとするユカリ。それを駄々をこねる子供のように離さずにオリの隙間から手を伸ばしぎゅっと服を握りしめるアクア。

 

握られた服が引っ張られ濡れていることもあり身体のラインが余計に強調される。なかでも一番目立っているのは胸だろう。ぴっちりと肌に張りつきくっきりと浮かび上がっている大きな果実。

 

カズマは無言で凝視していた。

 

(⋯⋯⋯⋯⋯⋯アクア、良いッ!! 良くやった。)

 

心の中でサムズアップするカズマ。それを察してかジトォっとした目を向けるめぐみんとダクネス。

 

「離れなさいっ!! 子供じゃあるまいし!! アクアッ!!」

 

 

「いやぁあ!! 離れたくなのぉ〜!! わああああん!!」

 

意地というか謎の執念で抱きつき続けるアクアに流石のユカリも折れたらしく抵抗をやめた。アクアはユカリをさらに抱き寄せモゾモゾと手を動かしている。

 

「はぁ⋯⋯カズマ、悪いけどこのまま運んでくれない? 揉むんじゃないのっ!!」

 

「お、おう⋯⋯分かった」

 

アクアはユカリに抱きついたままアクセルの街へと運ばれていった。

 

 

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