じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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今日は十時に間に合った!

すまん、正直今回もあんまり話が進まん。



友達だから無理しても助けたい

杏寿郎と義勇のもとを訪ねて数日、未だ完全に体力が回復せず蝶屋敷にとどまっている俺を訪ねて杏寿郎がやってきた。

 

「柱として未熟である俺を鍛えてほしい!」

 

などとのたまうものだから、手始めにカナエと打ち込み稽古をさせてみたが、柱に対して善戦はしたもののカナエは敗退。

槇寿郎さんの後継として炎柱に任命されただけの実力は流石といったところだろう。

 

しかし、杏寿郎は何やら納得のいかない様子なのだ。

 

「俺は、父上から指導をあまり受けずにここまでやってきた。故に、炎の呼吸の使い手としてまだまだ未熟なのだ。父上の言うように俺は非才であるしな!」

 

……教えてもらってないのに柱に選ばれるくらいには強い杏寿郎ヤバくね?

独学って事?それでよくこんなに強くなれたなぁ。

 

「いや、指南書を三冊ほど読んだのでな、それでなんとか学んだのだ!」

 

「いや、お前が非才とか嘘つけ!」

 

全国の才能ない人たちに謝れ!

そんなんで柱になられたらもっと柱の敷居は低いわ!

ほら、カナエもしのぶも衝撃を受けた顔してるだろうが!

 

「父上には遠く及ばない身、まだまだだと思う!」

 

「あんたの父親が頭おかしいんだ!」

 

聞いた話によると上弦の壱との戦闘の後、槇寿郎さんは蝶屋敷で手当てを受けると入院する事なく帰宅したらしい。

俺より実力があるので俺より怪我が少ないのはわかるけど入院なしは、とんでもなさすぎる。

そんなちょっとした怪我ではなかった気がするのだけれど。

 

実際あの人かいなければ俺や天元は上弦の壱に殺されていた。

それと同じ高みを求める杏寿郎としては今の自分に納得いっていないのもわかる。

 

「でもどうやって鍛えるんだよ」

 

「纏楽、お前と戦う」

 

「……まだ本調子じゃないんだけど」

 

「それでもお前は俺より強い!」

 

いや、実際どうかは分からないけど、この状態で杏寿郎の相手をするのは嫌すぎるんだが。

 

まぁ、俺の戦闘の勘を戻すためにもやるけれども。そんなに期待しないで欲しいな。

 

「しのぶ、開始の合図を頼む」

 

「……あんまりはしゃがないで下さいね」

 

そういえば以前もここで病み上がりに杏寿郎と大はしゃぎしてしのぶに説教食らったなぁ。

 

「では、はじめっ!」

 

杏寿郎は開始の合図と共に壱ノ型不知火で高速接近。

しかし、それは体の重心、動きから分かっていたので特に驚きはない。

 

力では杏寿郎の方が上なので、馬鹿正直に正面から受け止める事はしない。

杏寿郎の木刀を滑らせるようにこちらの木刀で受け止める。

杏寿郎の斬撃をいなしたそのままの流れで踏み込み、胴体に木刀を叩き込む。

 

「ふっ!」

 

しかし、それを防いだのは杏寿郎の足。

的確に俺の腕を蹴り上げ防ぐ。

剣士と戦うと言っても刀だけで戦うわけではない。

いいね、勉強になる。

 

しかし今ので利き手は痺れてろくに刀も握れない。

ならば仕方ない、全部躱すっ!

 

盛炎のうねり、炎虎、昇り炎天

 

全て発動前に構え、重心の動きで判断して視線から狙いを察知する。

杏寿郎の攻撃速度は一太刀ごとに上がっていく。

それでいて狙いは的確だ。確実に鳩尾、足、肩と当たれば後に響くところを狙っている。

 

……病み上がり相手にやる事じゃないだろ!

 

手の痺れを呼吸で黙らせると、回避に専念する事をやめる。

 

参ノ型 聚蚊成雷

 

多方向から次々に杏寿郎に斬りかかる。

しかし杏寿郎も右足を軸に俺の木刀を止める。

 

横薙ぎを斬り上げで防ぐ。

くるりと手首を返して斬り上げるが、半身を引いて躱す。

袈裟斬りを受け流しくるりと回って間髪入れずに一振り、それを斬りおろしで防がれる。

ぐるりと腕を回され、ガラ空きになった胴体に木刀が迫るが後ろに跳んで回避。

 

明らかに後ろに跳ぶことを読んでいた杏寿郎はすぐさま踏み込んで俺を逃すまいと追う。

 

ふむ、杏寿郎の雰囲気も徐々に体があったまってきたようなので俺も速度をあげよう。

 

シィィィィ

 

酸素をより肺に取り込む。

タンッという音だけをその場に残し、杏寿郎の背後に回る。

 

急に俺の動きが高速化した事に驚いた顔をする杏寿郎。

しかし、杏寿郎もより酸素を肺に取り込みその目をカッと見開くと俺の姿を捉える。

 

弐ノ型稲魂!

 

軋む体を強引に動かして同時五連撃を——

 

「伍ノ型」

 

虎を模った炎を幻視する。

俺の五連撃をたった一撃で全て弾いたのか!?

 

杏寿郎が本気を出している。

持っているのは木刀ではあるが、一撃一撃が喰らえばタダではすまない威力を持っている。

 

しのぶが外野から何か叫んでいるが聞こえない。

今ここには、この場所には俺と杏寿郎の二人だけ。邪魔はいらない。

 

もっとだ、もっと。

杏寿郎が火力を上げてきている。

なら、俺も速度を上げろ。

杏寿郎が、そんじょそこらの鬼を相手では鬼が死んでしまって出来ないほどの実力を発揮し、壁を壊そうとしている。

 

なら、俺はここでやられるわけにはいかない。

杏寿郎が自分の実力以上のものを引っ張り出すためには俺が弱くてはいけない!

 

もっと速く動け

 

カカカァンッ

 

しのぶの蟲の呼吸のような高速刺突三連撃。

それも杏寿郎には防がれてしまうが、防がれた次の瞬間にはもう杏寿郎の視界から消えるっ!

 

もっとだ、もっと動け、影すら視界に残させるな。

 

霹靂一閃 六連

 

ダンッ

 

床を蹴る。杏寿郎は俺をその両の目で俺を捉えている。

 

ダンッ

 

壁を蹴る。高速で移動したが空気の流れで察知しているからか、杏寿郎はまだ俺を見失ってはいない。

 

ダダッ

 

天井を蹴り床へそして壁へ。

……なんだこれ。この感じ。杏寿郎の視線の先が、死角が、次の挙動がわかる。

世界が少しゆっくりになったかのように、次の行動がぼんやりとわかる。

 

悪いな、杏寿郎!

次の一蹴りで杏寿郎の死角へ。完全に俺を見失った。

ゴォォォ

 

杏寿郎の呼吸音が一段と大きくなる。

 

見失っていたはずの俺を瞬時に捉えて刀を振りかぶる。

 

交錯の瞬間俺は地を蹴って宙に浮いている体をぐるりと回って杏寿郎の太刀を躱し背後へ。

 

空振りした杏寿郎は軸足を残し足を片方浮かせぐるりと独楽のように回り背後の俺に木刀を振るう。

 

対して俺は既に杏寿郎へ向け木刀を振るっている。

互いに防御は不可能。どちらの刀が先に届くかの勝負っ——!

 

「花の呼吸 弐ノ型御影梅っ!」

 

互いの木刀が届きかけたその時、横から現れたカナエの木刀に俺たちの木刀は弾かれた。

 

お、カナエも混ざりたいのか?

もう一度腰を落とし、刀を構え「何続けようとしてるんですかっ!」

 

しのぶの怒声が聞こえて構えを解く。

ん?怒声?

 

「流石にやり過ぎよ纏楽くん」

 

「炎柱様も!怪我明けの人間に何やってるんですか!急に激しすぎる運動するから纏楽さんの筋肉痙攣してるじゃないですかっ!」

 

「でもしのぶ、今めっちゃいい感じなんだけど」

 

「医者の言うことは絶対ですっ!」

 

「今私が止めなかったら二人とも怪我してたでしょう?」

 

おぉ、やるなカナエ。

今の俺たちの動きを見切って止め、た?

 

「か、カナエ!今の俺らの動き全部見えてたのか!?」

 

「え?うん。見えてたわよ?」

 

……まじか。

 

「将来有望な継子を持ったな纏楽!俺でも最後の纏楽をとらえられなかったというのに」

 

カナエは目がいいのか?

これが本当ならカナエは戦闘においてとても有利な手札を持っている事になる。

これなら柱ともやりあえるし、俺の今掴みかけてる動きの先読みもなんとかなるかもしれない。

 

「カナエ!俺ともう一本やるぞ!」

 

「ダメだって言ってるでしょ!」

 

結局、今日は稽古禁止令をしのぶによって施行された。

くそぅ、しのぶには逆らえないなぁ。

 

「纏楽!今日は世話になった!もう数段高みへ登れそうな気がする!」

 

「いや、こちらこそだ。お互い柱業務、頑張ろうぜ!」

 

本当に杏寿郎はいい奴だなぁ。

いちいち礼儀というか誠意を忘れないやつだなぁ。

まっすぐな性格すぎて義勇みたいなひねくれている奴とは相性が悪いけれど、なんだかんだ杏寿郎はうまくやっていくんだろう。

 

 

 

 

 

道場から強制退場をくらった俺はそのままの流れでしのぶのお説教のお時間に突入していた。

 

「どうして纏楽さんは毎回毎回無茶するんですか。楽をして生きていきたいんじゃないんですか」

 

「杏寿郎が困ってたら楽なんかしてないで助けるだろ。友達なんだから」

 

「纏楽くんのそういうところ好きよ」

 

「怪我が治るまで待ってもらうとかいろいろあったと思うんですけど」

 

お説教しながらも痙攣した筋肉をほぐしてくれるしのぶの優しさに感動して正直しのぶの話が頭に入ってこない。

 

「聞いてるんですか!」

 

「うん、聞いてるよ。しのぶは優しくて可愛いって話だよな」

 

「そんな話してません!」

 

「その話なら私もしたいわ」

 

「話をそらさないでよ!」

 

「いたたたた」

 

いたたたた太ももを揉んでほぐしてくれていたしのぶが足をつねる。

でもしっかりと痛すぎないように手加減してくれるしのぶはいい子でしかない。

 

「しのぶー、手だして」

 

「?なんですか?」

 

ぐいっと。

 

上半身を起こして足はだらんとしている状態の俺。

足を少し開いてその間にしのぶを収める。

おお、カナエとは違っていい感じにスポッとはまる大きさだなぁ。

 

「なっ、なにするんですか!」

 

「いいのいいの」

 

良くない!なんてしのぶは騒ぐけれど無視。

しのぶのおなかのあたりに両手を回しより密着すると恥ずかしいのかしのぶは黙り込んでしまった。

体があったかいぞー。さては照れてるなしのぶー。

 

「カナエ、俺との稽古の時、俺の太刀筋とか動きとか全部見えてたりした?」

 

「うーん、割と見えてたかな」

 

「……ちょっと顔近づけて」

 

「どうしたの?」

 

綺麗な目してるよなぁ。

この目が特別なんだろうか。

いくら俺の動きを何度も見ることがあるとはいえあの速度で戦っている俺と杏寿郎に割って入ることはそれこそ柱でもなければ不可能だ。

動きの先読みなんかもこの目でできるのならカナエの柱就任も現実味を帯びてくる。

 

ちゅっ

 

!!??

 

「接吻して欲しかったんじゃないの?」

 

「……単純に目を見てただけなんだけど」

 

「私を挟んだままそんなこと始めないでよ!」

 

「しのぶも混ざるか?」

 

「混ざらない!」

 

「じゃあ姉さんがしのぶに接吻しよーっ」

 

ちゅっちゅとしのぶの頬に吸い付くカナエ。

見ているととても和む仲良し姉妹。

カナエは終始笑顔だししのぶも口ではいろいろ言っているが結局カナエを受け入れている。

 

「ふむ」

 

これは俺も混ざっても何とかなる奴ではなかろうか。

恋人の目の前ではあるが、一応その恋人であるカナエの許可は出ているし問題はなかろう。

 

ちゅっ、と一瞬だけしのぶの白くて柔らかい頬に吸い付いた。

 

「なあっ」

 

「あらあら、しのぶったら顔真っ赤」

 

「なななな」

 

しのぶが壊れた。

今なら何しても許されそうなので、しのぶのおなかに回した手にぐっと力をこめて抱きしめる。

 

「私も混ざるー」

 

カナエは俺の腿のあたりに腰を下ろし俺とカナエでしのぶを挟むようにして抱きしめる。

相変わらずゆるーい空気が出来上がる俺たち三人。

稽古や仕事をしていないときに気を抜きすぎているなぁ、幸せだからいいんですけど。

 

なんどかこういった場面を隠の人や他の患者に目撃され、俺に親の仇でも見るかのような視線を送ってくるけれど、それ以上に俺がこの空間を邪魔するなと言わんばかりに殺気を飛ばすのでみんな逃げ帰ってしまうのだ。

 

「ううう、最近容赦がなくなってきてる」

 

「「しのぶが可愛いから仕方ない」」

 

しのぶの頬。俺が右、カナエが左に接吻をする。

しのぶは顔を真っ赤にして俯かせるけれど嫌がらない。

 

そんなしのぶの姿をみた俺とカナエは顔を見合せ、二人してしのぶをより強く抱きしめた。

 

 

 

 




みんなのバッドエンドルート回避のためにフラグを建設する作業中です。
まだまだ救いたいキャラがいるし、いつ原作に突入できるか……

はい、いつもの感想評価乞食タイムです。
くれぇ、感想評価くれぇ。
感想返してないけどちゃんと全部読んでるからぁ。もっとくれぇ。

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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