じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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筆が乗ったので連日投稿。
こんな投稿スピードは最初のうちだけなので期待しないでください。


爺さんはやっぱり化け物

ダンっという音がしたと同時に俺の視界の端に影が一瞬映り込む。

そこをめがけて木刀を振るうとガツンという手ごたえ。爺さんは木刀で、俺の木刀を受けていた。

爺さんをとらえたことを確認するとすぐさま攻撃に移る。爺さんがまた踏み込む前に刀を振るえっ!

 

——雷の呼吸 参ノ型聚蚊成雷

 

——雷の呼吸 弐ノ型稲魂

 

くっそ、俺が必死で会得した回転分身斬り(参ノ型)をたやすく受け切りやがって。弟子に気を使って一発くらい食らってくれてもいいだろうが!

内心でチート爺さんに文句を言いつつ体を低くし懐に踏み込む。

 

——雷の呼吸 伍ノ型熱界雷

 

爺さんを下から斬り上げて上に吹き飛ばす予定だったが、俺の斬り上げを受けても爺さんの体は浮くことすらない。

 

シィィィィと独特の呼吸音が爺さんから聞こえる。

危険を察知すると同時に爺さんの技を少しでも受けるために俺もすぐさま呼吸を整え——

 

「遅い」

 

——雷の呼吸 陸ノ型電轟雷轟

 

ズガガガガっという音と体の痛み。俺の手の中の木刀が折れたことが分かった。

いつも思うのだがこの爺さん弟子に対して容赦という物を知らないらしい。

そんなことを思いながら俺の意識は暗転した。

 

 

 

 

一ノ瀬纏楽という子は天才だ。

きっと全盛期の儂なんて後数年もすれば追い抜かされることだろう。楽をしたいなどと甘ったれたことばかり言っておるが、儂が少し喝を入れればしっかりと鍛錬に励んでいるし、努力を怠らない。

少しやりすぎたか?なんて思うこともしばしばだが、纏楽はしっかり食らいついてくる。

纏楽の成長がうれしくて近頃は現役の時のほかの柱との柱稽古を思い出す勢いでやっているが、纏楽はなんとか食らいついてくる。毎回技の精度を上げながら。

口角が上がるのが抑えられない。

 

「また技のキレが上がっておる」

 

纏楽の技で少し切れてしまった自分の羽織をみてそう呟いた。こんなことを本人に聞かれれば「じゃあもう修行なんてしなくていいよな!」なんて言い出すに決まっているから、下手に褒められない。

 

この子は教えてもいないのに全集中の呼吸・常中や霹靂一閃神速を再現し、儂を驚かせる。

少し不謹慎ではあるが本当にいい拾い物をしたものだ。

この前、大きな丸太を三本背負いながら走り込みをしていた時は驚いた。

楽をしたいといいつつも勝手に要求以上のことをやり始めるのは一体何なのかわからない。

 

「儂を基準に考えとるから勘違いしているのはどうしたものか」

 

正直、纏楽はすでにそんじょそこらの剣士や鬼には無傷で勝利を収めることができるだろう。

そもそも元とはいえ柱の儂と刀を交えることができる時点で実力が高いことがわかる。

しかも未だ十三歳。もうすぐ十四歳だがそんな若さで鬼殺隊に入隊させるのも少し気が引ける。

しかし、いつまでも儂のもとにおいておくわけにもいかぬ。

こやつを拾って約一年。そろそろ、頃合いか。子供の成長とは早いものだ。

 

 

 

 

今日一日の訓練を終えると爺さんは俺に日輪刀と金を渡してきた。

急にどうしたのだろうか。刀と金は渡すから出ていけとかそういうやつなのだろうか。

 

「今日はもう終わりにしよう。あまり多くないが、この金で近くの街で何か買うもよし、飲み食いするもよし。休息というやつじゃ」

 

「……爺さん、死んだりしないよな」

 

普段厳しい爺さんが突如甘やかそうなんて何かあったに違いない。

 

「ばかもん、もう二十年は死なんわい」

 

確かにこの化け物爺さんは早々死にそうにない。

爺さんが俺を甘やかすなんて珍しいし、ここぞとばかりに好き放題していいのではないだろうか。

 

「とは言われてもな」

 

今まで散々修行ばかりやらされていたし、休息を与えられても何をすればいいのかさっぱりわからない。

楽をしたいと言っていた俺が息抜きの仕方を忘れるとかやばいのではなかろうか。

 

「好きにすればよかろう。何をそんなに悩んでおるのだ」

 

「……爺さん、一緒に団子食べにいかない?」

 

休息、自由などとぐるぐると俺の頭の中で様々な考えが駆け巡った末に、無難なところに落ち着いた。

 

 

 

 

 

爺さんの家から一番近い村の甘味処で俺たちは団子を食べる。

甘いものを食べるのはだいぶ久しぶりなので自然と口角があがる。

爺さんもニコニコである。

 

「お爺さんもお孫さんもいい笑顔ですね」

 

甘味処の店員がそう笑いかけてくる。

俺たちは家族のように見えるのだろうか。

 

「孫が誘ってくれたのでな、機嫌もいいし団子もうまい。笑顔の一つも浮かぶじゃろ」

 

「爺さん、団子が似合うよな」

 

身長小さいし、かわいいところがある。

普段は瞬間移動とかの使い手だし、阿呆みたいに強いのにこういうときはかわいいとか理想の高齢者じゃん。

 

「なぁ纏楽、お主は鬼殺隊に入るのか。楽に生きたいのならほかの道もあるじゃろう。お前には鬼への憎しみも、誰かを守りたいという博愛の心もない」

 

逆にここまで来て入らないとかあるのか。

今まで何のために修行してきたと思ってるんだ。

 

「入るよ。そんでちゃちゃっと功績上げて育手になって適当に弟子をしばきながら悠々と暮らすんだ」

 

「……それまで大変な道のりじゃぞ」

 

「まぁ、分かってるけどね。ちょっとやりたいこともできたもんだから」

 

楽して生きていきたい。それは確かに俺の芯の部分である。

でもやりたいことができて、それは簡単には成せないものだ。

だから、適度に手を抜きながらやっていこうと思う。

 

爺さんに鋼を鍛えられるがごとく何度も殴られてきたのだ、俺の心も強くなった。少しだけどね。

俺人間なのに何で鋼のように鍛えられたの(怒)

 

「……人生楽に生きていければいいと言っていたお前がやりたいこと、か。成長したもんじゃ」

 

「俺が楽な道に進もうとすると全力で阻止してくる爺さんがいるもんでね。しかもその爺さんは当分くたばらないときた」

 

「ははは、生意気な弟子め」

 

「うるせぇ化け物じじぃ」

 

からからと元気よく笑う爺さん。ぜってーその顔驚愕一色に染めてやるからなと心に決める。

俺は考えていることがよく顔に出るらしいから、爺さんには俺が何か企んでいることなどお見通しなのだろうが、それでも絶対ぎゃふんといわせてやる。

 

「あの、すいません、もしや鳴柱様でしょうか?」

 

眼前には一人の青年。こんな村に明らかに浮いた服を着て、刀袋を背負っている。おそらくではあるが、背中にはダッサイことに大きく『滅』の文字が印じられているのだろう。

明らかに鬼殺隊の人である。政府非公認の組織なのにありえないくらい目立つ格好してるんだけどいいのだろうか。

ていうか鳴柱って……

 

「もう引退した身、今はただの育手じゃよ」

 

うん。なんとなくわかってたよ。爺さん絶対普通の人じゃないって。

なんでちょっと前の俺は爺さんが一般隊士レベルなどと勘違いしていたのだろう。

でもこんな小さい爺さんが鬼殺隊最強の剣士の一角である柱だなんて思わないでしょ。

 

「お食事中大変申し訳ないのですが、稽古をつけていただけないでしょうか?」

 

……もしや爺さん(柱)ってすごい?俺が思っている以上に尊敬に値する人?

こんな若手でガタイのいい兄ちゃんがへこへこしてる。

 

「纏楽、この青年と打ち合いしてみよ」

 

「……鳴柱様。流石にまだこんな年端もいかない少年に私の相手が務まるとは思えません。私はこれでも階級は(きのと)なのです!」

 

「なに、お主を侮辱しているわけではない。儂の弟子に稽古をつけてやってはくれぬか。そのあと儂が相手をしよう」

 

俺何も言ってないのにこの兄ちゃん怒らしちゃったじゃん。

しかも乙って上から二番目の階級じゃない?やだよ。爺さんよりレベルが二つしか違わない人ってことでしょ!

 

 

 

 

 

はい、ということで、やってきましたいつもの訓練場。

まぁ、俺が嫌だって言ったところで爺さんがやめてくれるわけないのはいつもの事だし。

兄ちゃんは水の呼吸の使い手らしい。水の呼吸は簡単だから一番使い手が多いと聞く。

いいなぁ。雷の呼吸とかめっちゃムズイんだよ。俺が瞬間移動会得するのにどれだけ苦労したと思ってるんだよ。

 

それをこの兄ちゃんは簡単な水の呼吸で上から二番目の階級なんて高いところに上り詰めやがって。

なんか理不尽ではあるが彼に対して怒りがふつふつと沸き上がってきた。彼には申し訳ないが、少なくとも一矢報いるくらいはさせてもらうぞ。

 

「では、はじめっ!」

 

——雷の呼吸 壱ノ型

 

シィィィィ

 

まずは壱ノ型で様子見。

兄ちゃんの方もなにか水の呼吸を行っているようだが関係ない。

いつものように足に意識を集中させる。

 

霹靂一閃 八連

 

雷が落ちるかのようなけたたましい轟音が俺の型が放たれると同時に鳴り響く。

相手は階級乙、油断はしない。死角に回り込んで、最速の一撃を叩き込むっ!

 

どがっ

 

「そこまでっ!」

 

あれ?

 

「え、終わり?」

 

普通に当たっちゃった。

ていうかモロに脇腹に入れちゃったけど大丈夫かなこの人。

折れてたら俺のせいかな?お金とか払わないといけない?

 

「馬鹿者。相手の実力くらい正しく測らんか。纏楽、お主は既に鬼殺隊でも上位に位置する実力を持っておるのだ。普通の隊士などに負けるわけがなかろう」

 

えー?

なにそれ。そういう事はもっと早く言ってもらわないと困る。

 

「むしろ負けたら後継者失格じゃ。その時は鍛錬五倍にしようと思っとった」

 

あ、あぶねぇぇぇぇぇ!

手を抜かなくてよかったー!

そういう罰を後出しするのはずるくない?勝てたからよかったけど、負けた後にそれ言われてたら逃走ものだよ?

 

「その必要はなかったようじゃがな」

 

「ふ、ふふーん。伊達に爺さんの弟子やってないからな」

 

「纏楽」

 

「なにさ爺さん」

 

なんか爺さんが少し改まった雰囲気を出している。

お小遣いもらった時も思ったけど、なんか爺さん今日変じゃない?

 

「明日、儂と本気の打ち合いをする。その結果次第で最終選別に行かせるかどうかを判断する。つまり、卒業試験といったところか」

 

「……なるほどね。覚悟しときな爺さん。一発合格決めてやるから」

 

爺さんが妙に優しかったり、改まったりするのはそういうことだったか。

確かに爺さんの下を離れるのは思うところがあるというかぶっちゃけ寂しいけども。

でも、爺さんの後継者としてはこんなところで躓くわけにはいかない。

 

 

 

 

 

そして夜が明けた。

昨日の夕飯の時も俺と爺さんはいつもと変わらない様子で食事を共にしたし、朝も普通に過ごした。

男なら、師の下を離れるくらいでしんみりなんてしていられない。

 

「準備はいいか、纏楽」

 

「ああ」

 

互いに木刀を構える。

これが、爺さんと最後の打ち合いになる。

 

「はじめっ!」

 

全力全開、悔いの残らないように俺のすべてを出し切るっ!

 

——雷の呼吸 壱ノ型霹靂一閃 神速 四連

 

木刀故に鞘がない分斬撃の速度は落ちるがそれでもかつての俺から見たら瞬間移動だと騒ぐほどの技。

足に力をためて地面を蹴る。踏み込みの音はまるで雷鳴のよう。

四度の踏み込みの後に、神速の抜刀術を爺さんに振るう。

 

乾いた音がした。

爺さんは一歩も動かずに俺の刀を受け止めている。

 

シィィィィ

 

爺さんの口から呼吸音。

 

刀を回し、上体を跳ね上げられ、体勢が崩れる。やっばい!

 

——雷の呼吸 伍ノ型熱界雷

 

俺の顎めがけて振るわれた斬り上げ。

体勢が崩れた状態からは木刀で受けることもかなわない。

 

「んん”っ」

 

無理やり体をねじってその縦振りから逃れる。

回避後即座に技に移行する。

 

——雷の呼吸 参ノ型聚蚊成雷

 

以前放った時よりも速く鋭い回転分身斬り。

後出しの稲魂や電轟雷轟では受け切れねぇぞっ

 

ふわっ

 

まるで落ち葉のようにひらりひらりと俺の連撃すべてを紙一重で回避しやがった。

やっぱ化け物じゃねぇかこの爺さん!

後ろに目でもついてないとそんなことできねぇだろうが。

しかしこの爺さんが化け物なのは割といつものことなので手を止めずに技をつなげる。

 

——弐ノ型稲魂

 

神速の五連撃。爺さんが全く同時に五回斬るのに比べたら少し遅いが、俺のもほぼ同時の五連撃。

……全く同時に五回斬るってなんだよ!ふざけんな化け物!

 

——陸ノ型電轟雷轟

 

だからさぁ。ほぼ同時に五回別の方向から斬りかかってるんだよ?

なんで受けるどころか後出しで俺より手数の多い技でカウンター決めてくるわけ?

打点ずらさなかったら気絶モノだぞふざけんな。

 

——肆ノ型遠雷

 

「ふぐっ」

 

陸ノ型で技を受けながらの反撃。少し距離が離れた瞬間に一番射程の広い肆ノ型を腹にぶち込まれた。

ぎりぎりで後ろに飛んでなかったら朝飯吐いてたぞ!

爺さんの肆ノ型は飛ぶ。ほんとはちょっと射程が長いだけじゃないの?

なんであんた現役引退したんだよ。それだけできればまだまだ余裕だろ!

 

「すべて全力で放っているというのに、これが老いというやつか」

 

「俺が強くなってるって考えはないんですかねぇ」

 

「それもあるがな、歳をとって体が縮んでなければ今の遠雷で儂の勝ちじゃった」

 

「技のキレは落ちてないのが頭おかしいんだよ」

 

体の大きさかぁ。爺さんが現役バリバリの全盛期の時は爺さんは身長高くて筋肉ムキムキだったのだろうか。

さぞ体が大きく厳ついおっさんだったのだろう。なんでこんなに縮んでしまったのだろうか。

 

少ししょうもないやり取りをしている間に爺さんの技によって痛くしびれた体を呼吸によって少し緩和する。

とはいえ、爺さんの技を受けた体は悲鳴を上げている。

正直これ以上長引かせたくないのが本音である。これ以上長引かせたところで技のキレが落ちていくのは目に見えている。

 

それならば——

 

「次で決める」

 

今俺と爺さんの間には少し間合いが開いている。

ちょうど、壱ノ型で詰められる間合い。

 

「ほぅ」

 

シィィィィィィ

 

俺と爺さんが同時に呼吸を行う。

俺も爺さんもぐっと右足を引いて足に力をこめる。

 

「ゆくぞ、纏楽。——雷の呼吸 壱ノ型」

 

「雷の呼吸 漆ノ型」

 

俺が、爺さんを驚かせるために、超えるために生み出した七つ目の型。

俺が爺さんを継ぐために、鳴柱へと至って爺さんが俺にかけてくれた時間に報いるための型。

 

——鳴雷神(なるいかづちのかみ)

 

互いに神速の域の踏み込み。交錯は一瞬だった。

この技により幻視する雷の龍が、爺さんの木刀を喰らった。

 

俺の木刀も技の影響か焼け焦げている。

 

「相打ち、かの」

 

「木刀じゃなかったら壊れなかったかな」

 

「まさか新たな型を生み出すとは」

 

「だって水の呼吸とか炎の呼吸はたくさんあるのに雷は六つしかないから作ってやろうって」

 

爺さんに隠れて開発するのは非常に大変だった。

正真正銘隠し玉。これで爺さんを破れなければお手上げである。

やっぱ化け物だわ爺さん。

 

「纏楽、合格じゃ。これまでよく頑張った」

 

ごつごつした手が俺の頭をぐりぐりと乱暴に撫でる。

いつも俺を殴っていたその手は、今日はとても暖かく感じて、不覚にも涙がこぼれた。

 

 

 

 

 

一夜明けて、最終選別に行くにあたって爺さんの△模様の羽織と、刀をもらった。

黄色の羽織なんて派手だからあまり好きではないのだけれど、爺さんに認められた証なのだと思うとこれを羽織れることが誇らしかった。

 

出発前に、生きて帰ってこいなんて言われた。

爺さんの目がきらりと光っているようにもみえた。年をとると涙腺も緩くなるんだなとしょうもないことを考える。

 

「爺さんの後継者がこんなとこでくたばるわけないでしょ」

 

とても生意気な笑みを浮かべて俺は藤襲山へと向かった。

 

 

 

 

 




拙い戦闘描写すいません。

主人公十三歳もうすぐ十四ですでに常中使えて火雷神を作り出してるけど、無一郎君もだいぶチートだからやりすぎ感が出ないんだよなぁ。

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追記。
雷の呼吸漆ノ型を火雷→鳴雷に変更いたしました。
オリジナルになりますが、元は同じ古事記からですのであまり世界観がかけ離れないかなと思います。

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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