じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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正直この小説がここまで伸びるなんて思ってなかったの。
短編的な感じで書くつもりだったから特にプロットなんてないの。
だいぶ無茶な展開とか矛盾とか生まれても怒らないでやってくれ。





ここに永住したいとすら思ってる

目を覚ました時、異様な体のだるさ。重さを感じた。

どれくらい寝ていたのだろうか。意識を失う前の負傷具合からして一週間は寝ていないとは思うのだが。

 

……目を覚ましたもののどうしたらいいのだろうか。

カナエを呼べばいいのだろうか。しのぶを呼べば?

 

そもそも二人は近くにいるの?

呼んでこなかった時のむなしさを考えるとちょっと大きな声出すの恥ずかしいな。

 

まぁ、二度寝してから考えるか。

そうしよう。

 

「い、一ノ瀬さん!」

 

「おはようしのぶ」

 

「おはようじゃないわよ!心配したんだから!」

 

涙目でそう言ってくれるしのぶ。あれれ、なんか素直になった?

毒吐きまくりのしのぶもよかったけれど素直なしのぶの方がかわいいと思う。

 

「姉さん!一ノ瀬さんが目を覚ましたー!」

 

遠くからドタバタとあわただしい音が聞こえてくる。

お淑やかに見えるカナエだがこういうところは元気なのか。新発見。

 

すごい勢いで入ってきたのは幽霊だった。

いや、洗濯物のからまったカナエなのだけれど。

そんな慌てるほどの怪我をしたわけじゃあるまいし。

 

「骨折複数個所、筋肉が複数個所断裂、その他裂傷多数が大したことないわけないでしょ!」

 

「三日も目を覚まさなくて心配したのよ?」

 

「悪い、心配かけたな」

 

「本当よ!纏楽くんが最初の患者になるなんて!」

 

蝶屋敷の設立の手伝いをしていた側が最速でお世話される側に回ってしまうという謎の事態。

いや、これはこれで最高の形ではなかろうか。

怪我してるから任務はない。ここにいればカナエやしのぶという美少女たちが俺の世話をしてくれる。

 

ぐぅぅぅ。

 

俺の腹が空腹を告げる。

三日も寝ていたら腹も減ってしまう。

 

「じゃあちょっとメシ食べに行ってくるな」

 

のそりと寝台から身を起こして立ち上がる。

ふむ、確かに足が痛いが呼吸によって痛みをやわらげ、治療に専念すれば問題ない。

ぐっと体を伸ばすと寝ていたことにより硬くなっているからだがぴきぴきとほぐれる。

うん、回復にはなまった体を元に戻すにはちょうどいい散歩だろう。

 

「あなたは馬鹿なんですか!外出なんて許すわけないでしょ!なんで今立てるんですか!何で立ってるんですか!絶対安静に決まってるでしょ!」

 

「でもご飯が」

 

「それなら私が今から作ってくるわ」

 

カナエの手作りとな?それはぜひとも食べたい。

たとえカナエがメシマズだったとしても食べたい。

 

今作ってくるわねとカナエを出て行った。

俺のお嫁さんになってほしい後ろ姿だった。

 

「……退院していいのはいつ頃?」

 

「ひと月は鍛錬もできないと思ってください」

 

もっといたい。とはしのぶには言えないなぁ。

早く出て行けと尻を蹴られそうだ。

 

「……一ノ瀬さん。少しお話いいでしょうか」

 

しのぶが割と真剣な顔つきで話を切り出してきた。

きっとカナエがいないこのタイミングを見計らって切りだしたのだろう。

どうしてしまったのだろうか。先日も黙り込んでしまったりと結構この子精神的に不安定だよな。

 

「いいよ」

 

「……私は鬼殺隊士になれるでしょうか」

 

あぁ、なるほど。ストンと何か腑に落ちた音がした。

この子はカナエを支えられないことが悔しくてしかたないのだ。

自分のふがいなさを知っているから、常に自分に、他人に怒っているのだ。

 

「先日の一ノ瀬さんの戦いを見て、私はおびえてしまいました。届かないと思ってしまいました。私は体が小さい。鬼の頸を斬る力がない。姉さんの花の呼吸が使えない!頸を斬らずに鬼を殺す方法も見つからないっ!」

 

うん、それもなんとなくわかっていた。

しのぶの体は小さく細いけれど運動をしていない細さではない。

努力してなおこの体なんだろう。

しのぶは俺よりもまだ幼い。その幼さ、カナエとの年齢差が力量差がしのぶを追い詰める。

 

「私はっ!姉さんの足を引っ張る事しかできない!」

 

しのぶの目に涙が浮かぶ。

悔しさがあふれ出ているのがわかる。

 

「家族はもう姉さんしかいないのに、その姉さんのために私は何もできない。まだ小さいからなんて姉さんは言うけどそれじゃ嫌なのよ!」

 

きっとしのぶにしかわからない葛藤があって、努力がある。

でもそれが報われないのはかわいそうだ。

 

むにー。

 

しのぶの頬を引っ張って口角をあげる。

カナエも言うようにしのぶは笑った顔の方が絶対かわいいのに、俺はしのぶが笑ったところを見たことがない。

 

「とりあえず、心に余裕がないと辛いぞ」

 

「はにふふんへふは」

 

「しのぶが努力してるであろうことはしのぶのいろんなところから伝わってくる。今回強い鬼と対峙してみて心が折れそうになったのもわかる」

 

でも――

 

「あきらめるな。泣いていい、逃げていい。でもあきらめるのはダメだ」

 

爺さんがかつて俺にかけてくれた言葉。

心が折れかけて諦めてしまいたいしのぶにぴったりな言葉。

 

しのぶの涙が溢れる。

しのぶの中の何かが決壊したのだろう。

 

「いっぱい泣いて、いっぱい逃げて迷って、そんで強くなればいい」

 

俺がそれで多くの鬼を倒せるまでになったんだ。

こんな俺でも倒せるようになった、ならこんなにまじめに悩んでいるしのぶが強くなれないはずがない。

 

「いっぱい迷ってやる気が出たら涙をぬぐって笑え。笑ってたら心に余裕ができる。余裕のあるやつは強いし、しのぶが笑顔ならかわいい。いいことずくめだ」

 

きっと、台所にいるであろうカナエにも聞こえるような声でしのぶは泣いた。

俺の掛け布団、寝巻きにすがりつくように泣いた。

その間俺は頰を引っ張ったり頭をワシワシと撫でたりすることしか出来なかった。

俺の言っていることはきっと的外れなんだろうけど。

それでもしのぶは俺に頬を引っ張られながら涙をぬぐった。

 

一通り泣き、しのぶの涙が止まったのを確認して俺はしのぶの頬から手を離した。

しのぶの頰はほんの少しだけ赤くなっている。

 

「まったくっ、意味が分からないです。私が鬼殺隊になれるかどうかを聞いたのに。ダメだといったのに女の顔に気安く触るし」

 

「ご、ごめんなさい」

 

でも——

 

「ありがとうございます、纏楽さん」

 

しのぶは綺麗な笑顔を浮かべた。

いつもムスッとしていたからか余計に綺麗に見えた。

 

 

 

 

 

「ほらしのぶー食べさせてよー」

 

カナエが消化にいい料理を作ってきてくれた。

メシマズなどではなくちゃんとおいしい料理だった。

 

「調子に乗らないでください!」

 

「笑顔はどうしたんだよ」

 

普通に顔がムスッとしている。

 

そういいつつもなぜかは知らんが食べさせてくれるしのぶ。

しのぶの話によると腕の筋肉もだいぶ弱っている(過労)から食べさせてくれてるらしい。

ほらね!俺働きすぎだったでしょ(怒)

 

「あらあら、仲良くなれたのね」

 

「あぁ、めっちゃ仲良くなった。ご飯食べさせてくれるくらいには」

 

単純に悪い奴ではないと認めてもらったのだろうな。

カナエによりつく悪い虫から割といい奴くらいの認識にはなってくれたのだと思う。

 

「カナエは俺たちの仲にかなうかな?」

 

「ふふっ。食べさせてほしくなったらいつでも言ってね?」

 

……やはりここが天国か?

しのぶは態度が軟化したし、カナエは常に優しいし。

一生ここにいてもいいかもしれない。

 

「……ここに住みたい」

 

「少し先の話になると思うんだけど、怪我で動けなかった人が体の勘を取り戻すための機能回復訓練をやってから退院だから、それまではここに住むことになるわよ?」

 

そうじゃないんです。永住したいんです。

少しとらえ違えているカナエに対してじとーっとした視線を送ってくるしのぶ。

 

「それと、纏楽くんにお願いがあるんだけど」

 

「喜んで引き受けよう」

 

「まだ何も言ってないわよ!?」

 

「……そのうち変な女にひっかかりそうですね」

 

馬鹿を言うなしのぶ。こんなに即答するのはカナエのお願いだけだ。

カナエのお願いならそんな無茶なことではないし、お金周りでもない。

安心して引き受けられる。……お茶しようとかかな?恋人になってとかのお願いかな?

 

「私に稽古をつけてくれないかしら」

 

「……まぁ。いいけど」

 

期待なんてしてませんでしたよ。

うん。わかってました。しっかりしているカナエのことだからそんなことだろうと思っていました。

あれでしょ、以前の鬼を俺まかせにしちゃったのが悔しかったとかそういうのでしょ。

 

「あ、纏楽さん、私も一緒にいいですか」

 

「いいよ」

 

こうなったら一人も二人も変わらん。

二人も弟子にしたら仕事の頻度も減るかもしれないしな。

 

「纏楽くんの怪我が治ってからでいいかしら」

 

「カナエは今からでもいいぞ」

 

「なんで私は今からじゃダメなのよ!」

 

おお、敬語が外れた。

怒ると素がでちゃうのだろうか。

 

「や、しのぶは全集中の呼吸をとりあえずなんとかしといてくれ」

 

花の呼吸を習得できなかったしのぶには今からカナエと同時期に稽古をすることは早いだろう。

 

「カナエ、今日から寝てるときもどんな時も全集中の呼吸をしててくれ」

 

「……全集中の呼吸をずっと?」

 

「うん。最初はすごいきついから運動とかして肺を鍛えながらやるといい」

 

カナエの笑顔がひきつっている。

うん、わかるけどね。全集中の呼吸は少しやるだけでもきついから。

でもそれができるかできないかでだいぶ違う。

 

「これができれば基礎体力が格段に違うから」

 

「うん、わかった。やってみる」

 

「私はどうすればいいですか。姉さんばっかり贔屓してないで教えてください」

 

「贔屓してないっつーの。拗ねるなよしのぶー。可愛いなー」

 

「だから頭を撫でまわさないでください!」

 

しのぶはちっこいから頭が撫でやすいところにあるし、反応がいいから何度でも撫でたくなってしまうのだ。

そのたびに怒られて殴られるけど今回は俺が怪我人ということもあって殴られなかった。

 

「しのぶはわかんないや。しのぶにあった体の動きとか呼吸があるからそれを地道にやっていくしかないと思うよ」

 

言っとくけど俺、そんなに人に何かを教えられるほど経験積んでないから。

全集中・常中くらいだよ教えられるのなんて。あとは木刀での打ち込みに付き合うくらいしかできない。

強くなりたいなら柱とか頑張って捕まえて継子になるのが一番手っ取り早いと思うよ。

 

「……二人とも鍛錬しに出ちゃうなら俺すごい暇なんだけど、縁側とかで座ってるくらいならいいんだよね」

 

「……あまりお勧めしませんよ。足痛めてるんですからおとなしくしていてください」

 

うーん。心配してくれるのはありがたいのだが、このままでは俺が暇に殺されてしまう。

二人の鍛錬している姿でも眺めていようと思ったのに。

 

「カナエが支えて縁側まで連れて行ってくれればいいのか」

 

「ふふっ、まかせて」

 

むん!と力こぶを見せつけるカナエ。可愛い。

あんまり力こぶないところも可愛い。

 

「じゃ、頼みます」

 

寝台から体を起こしてカナエの肩に手を回す。

正直こんなことしてもらわなくても呼吸で痛みはないので自分一人の力でできるけれど黙っておく。

あと、カナエの髪とかから香るにおいがめっちゃいいにおいです。

 

ものすごく優しく縁側まで付き添ってもらうと腰かける。

外は昼下がりのいい陽気だった。

 

「あまり調子に乗って姉さんをいやらしい目で見ないでくださいね」

 

しのぶに耳元でささやかれるとあたたかい外の陽気も冷えたような気がした。

打ち解けたとはいえしのぶはしのぶだった。

 

「しのぶならいい?」

 

「いいわけないでしょ馬鹿なんですか!」

 

「後でお風呂入りたいんだけど一緒に入ろうぜ」

 

「いい加減にしろっ!」

 

殴られた。思春期の女の子には通じない冗談だっただろうか。

 

「じゃあ姉さんと一緒に入りましょう」

 

「子ども扱いしないでよ!もう一人で入れるの!」

 

ふられちゃった、くすくす笑うカナエ。

カナエも意外にお茶目でいたずら好きだよなぁ。

 

「しょうがないな。カナエ、ふられたどうし一緒に風呂はいろう」

 

「そうね。お背中流すわ」

 

「そんなのダメに決まってるでしょ!」

 

くすくすと笑う俺とカナエ。しのぶも本気で怒っているわけではない。

一通りしのぶで遊んだ後、胡蝶姉妹はそれぞれ庭先で体を動かし始めた。

汗をかく女の子というのはどうしてこんなに美しいのだろうか。

 

………………。

 

しかしずっと眺めているだけも暇だなぁ。

瞑想でもしていよう。仮想敵爺さんで戦う。

しかし、半年以上鬼を斬って実践経験を積んだにもかかわらず、脳内でも爺さんに勝てない。

最速かつ高威力の漆ノ型でも爺さんには届かなかった。つまり、俺の剣技がまだ未熟なのだろう。

うーん、下半身と上半身のブレはないし、柔軟もしっかりやっているんだけどな。

 

たかが一年ちょっとで爺さんを超えられるとも思っていないけれど、一太刀くらいは叩き込みたいものである。

 

壱ノ型霹靂一閃は爺さんにも太鼓判を押されたが、弐ノ型稲魂や他の型は遅い。

やっぱどれだけ練度をあげられるかだなぁ。

 

「もしもーし」

 

「ん、どうしたカナエ」

 

「もう結構時間たったわよ。まだここにいる?」

 

「いや、部屋に戻るよ」

 

空を見ると真上にあった太陽が傾いている。

夕暮れ時とは言わないが意外に瞑想に集中していたのだろうか。

カナエやしのぶも汗だくである。

 

「私たちはお風呂入ってくるから、覗かないでくださいね!」

 

「ふふっ、しのぶと一緒にお風呂入るのも久しぶりね」

 

「きょ、今日は二人とも早く汗を流したいから特別だから!」

 

「えー、仲間外れはひどいと思うなぁ」

 

「纏楽くんの背中後で流しにいってあげるわね」

 

「姉さん!姉さんがそんなだから纏楽さんとか男の人が調子に乗るの!」

 

全く持ってその通りである。

このお年頃の男の子はすぐ勘違いするからね。

 

 

 

 

 

「ぐあーっ、しみるぅ」

 

寝ていたので三日ぶりの風呂。

少しお湯をかけただけだが切り傷にお湯がしみて痛い。

こういうのは呼吸でどうにもならないから困るなぁ。

 

「お邪魔しまーす」

 

「ふわっ!?」

 

腕まくりしたカナエが入ってきた。

まじでビビるからやめてほしい。

女の子に全裸を見せつける勇気はありません。そういう関係でもないのに。

 

「ほら、背中向けて」

 

本当に背中をごしごしと洗い始めてしまったカナエ。

一体どうしたというのだろうか。

カナエさん、いくら優しくてもやりすぎよ?

 

「……お礼、まだ言ってなかったから。助けてくれてありがとう纏楽くん」

 

「そんなの風呂の外で言ってくれませんか!?」

 

「うん。ちょっと失敗したなーって思ってる。私は服着てるけど、恥ずかしいわね」

 

そらそうだよ!

しのぶは病室だったのに姉は風呂場かよ!

 

「ごめんね纏楽くん。何もできなくて。今度こそ、一緒に戦うから」

 

流石は姉妹。考えることも同じだ。

カナエも先日何もできなくて悔しかった。だから今日、鍛錬の約束を取り付けたのだろう。

 

「きっと一緒に戦えるくらい強くなるから」

 

「うん、待ってるよ」

 

背中を流したらカナエはそそくさと出て行った。

恥ずかしいならやらなきゃよかったのに。

思い立ったら行動してしまうカナエも可愛いな。

 

風呂をあがったらカナエは居間でしのぶに正座させられ説教されてた。

俺も巻き込まれた。ひどくない?

 

 

 

 

 




うーん、蝶屋敷編が終わらねぇ。
この二人で書きたいことが多すぎるんだよなぁ。
しってるか?まだ人間の原作キャラ四人しか出てないんだぜ?

感想評価いただければモチベーションアップにつながるしひそかに狂喜乱舞していますのでどしどしください。

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ
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