才能がないと言われた少年は独自の呼吸と型を創り、鬼の頚を切り裂く。
俺は煌坂 駿之介。
鬼殺の剣士になるために修業している。
───お前にはこの呼吸の型は向いていない。
育手の師匠に全ての型を披露した後に言われた言葉だ。
鬼殺隊に入る為に必要な全集中の呼吸。俺はその一つである雷の呼吸を修得して六つある型を練習した。
しかし、師匠に認めてもらえたのは半分の三つだった。
弐ノ型 稲魂。
肆ノ型 遠雷。
陸ノ型 電轟雷轟。
この三つが俺が使える雷の呼吸の型。
この三つには共通点がある。
それは、
師匠は早々に俺の指導を止めて他の弟子の方の指導をしに行った。
初めて悔しいという感情を知った。見返してやる、と心に決めて修業に打ち込んだ。
決め技とも言える壱ノ型霹靂一閃などの脚を使う型が出来ない俺はどうすれば良いのか考えて、考えて、考えた。
考えた末に辿り着いた答えは────。
────自分に合った呼吸と型を創ろう、だった。
半年掛けて創り出した呼吸の名は、『
雷の呼吸の持ち味である速さをさらに磨きあげ、脚を使わなくても、鬼に近付かなくても鬼の頚を切るのが特徴とも言えるのが光の呼吸。
これを師匠に見せたら日輪刀とお金を渡され最終選別が行われる藤襲山への行き方を教えられた。
厄介払いという感じなのだろうか?
変な事を考えても仕方がないのでとっとと最終選別に向かおう。
「光の呼吸 弐ノ型
「肉ッ!喰わせッ?!」
鬼が言葉を最後まで言えず頚だけが飛んでいった。
頚は飛んだ。だが、鬼はまだ死んでいない。
それもそのはず、
俺がやっているのは飛ぶ斬撃による攻撃だ。
『石火』は牽制用の技だが狙いを誤れば放った斬撃で木や壁を切り裂いてしまうので団体行動がし難い。
「石火 五連」
頚が飛んで動揺した隙に胴体を切り刻んでから落ちた頸を切る。
鬼が消滅したのを確認してその場から立ち去る。
型の確認を兼ねた最終選別も後半に突入した。
型の確認も一通り出来たのでこのまま最終日まで何事もなく終わる事を祈ろう。
そんな事を考えていたら……地面が揺れた。
揺れの発生源と思われる方向に呼吸で強化した脚で跳ぶ様にして走っていく。
「くそ!くそっ!こんな時に刀が、こいつを倒さないと男として義勇に……鱗滝さんに顔向け出来ない!」
「さぁてと、死ねぇーーー!鱗滝の弟子ィーーー!」
空けた場所に巨大な手に覆われた異形鬼と狐の面を着けた少年がいた。
異形鬼の巨大な腕が狐の面の少年に向かっている間に限界近くまで脚に力を込めて飛び込む。
────光の呼吸 伍ノ型 光彩陸離。
それはまばゆい光の様に切り裂く無差別の斬撃。空中でこそ真価を発揮する技で鬼の腕は微塵切りとなった。
「あ、あの腕を一瞬で!?」
「何なんだ、キサマァ!?」
鬼の言葉に俺は簡単に応えた。
「ただの鬼狩りだ」
────光の呼吸 壱ノ型 光華一閃。
再生が間に合ってない鬼の横にすれ違う様に脚は走る様な速さで、然れど腕は抜刀と納刀がほぼ同時の速さで鬼の頸を切り裂いた。
藤襲山、最終選別の最大の敵の頚は落とされた。
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光の呼吸
・壱ノ型
抜刀と納刀がほぼ同時の居合い。
・弐ノ型
連打可能な飛ぶ斬撃。
・参ノ型
途中で停まったように見える騙しの居合いな飛ぶ斬撃。
・肆ノ型
干天の慈雨に似た技ではあるが、相手に痛みをわざと感じさせない攻撃。
・伍ノ型
空中で真価を発揮する無差別の飛ぶ斬撃。
・陸ノ型
流れるような脚運びで繰り出す技を中断もしくは終わらせるまで納刀しない連撃。
・漆ノ型
脚を止めた状態で行う抜刀と納刀が分からない多次元屈折現象により同時に放たれる二方向からの頚を切る為の奥義。
雷の呼吸からの派生。
水と炎の特色がチラッと覗かせる型。
日輪刀の色は橙色。