恐るべきトレーナー計画   作:水混汁

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新作の発売もあり、創作意欲が湧いたので投稿いたしました。
話数はそこまでありません。

また作者のポケモン歴は狭いです。
ゲーム:“ファイアレッド”“エメラルド”“パール”“プラチナ”
アニメ:“AG”から“DP”の途中まで
書籍類:“穴久保作品『D・P編』”のみ

故にキャラの性格や発言が違う場合がございます。
教えて頂ければ可能な限り修正いたします。


覚醒

 そこは海。

 生命を育む大海原は今、夜の帳が下りていた。

 輝く星々が照らす中、一隻の中型クルーザーが明かりも点けずに海を駆けていた。

 その中、操舵室では1つの人影が操舵席に座っていた。

 それは年端も行かぬ少年だ。

 そんな少年の姿は一般的という言葉から程遠い。

 黒のトップスとパンツを身に纏い、手と足は灰色のグローブとブーツが覆う。

 頭にはこれまた黒のキャップを被り、その下から覗く赤い瞳には強い意志が秘められていた。

 そして胸にはトレードマークなのか真っ赤な“R”という文字が星の光に煌めいていた。

「そろそろ定時連絡の時間か」

 そう、少年が呟くと見計らったかのように固定電話が音を立てる。

 少年は慌てることなく受話器を取る。

『もうすぐ作戦領域へと侵入する。準備はいいな?』

「はい、問題ありませんハンパ博士。いつでも行けます」

『“ナンバ”である! ……まぁ良い。今作戦の貢献度によって、今後の貴様等の立場を決定づける事、努々忘れるなよ』

 最後に脅すような一言を放つと、プツ、と音を立てて電話が切られる。

「いつにも増してしつこいヤツだ。……だが前例がある分、慎重にはなるか」

 以前、資料庫で過去の作戦を調べた時に知った。

 本来ならば厳重に管理されるべき機密資料ではある。

 が、他に収容されている資料も似たり寄ったりな内容なので、あの資料庫は特殊な場所であったようだ。

「だが、俺達は同じ轍は踏まんぞ。必ず成り上がって自由を掴んでみせる」

 気合を入れる少年の後ろから新たな人影が現れる。

「リーダー、今から力んでいたら本番でバテちゃうわよ?」

 それは少年と変わらない年齢の少女だ。

 少年と同様の黒尽くめの格好をしていた。

「……ブルー、俺は作戦開始まで船室で休むように言った筈だが?」

 少女、ブルーは名前の通りの青い瞳を少年に向ける。

「えぇ、そのつもりだったわ。けれど、私達のリーダーは緊張しいだからね。イエローも心配していたし作戦前に緊張を解してあげようかと思って」

 どこかおどけた様に話すブルーに少年は眉を顰める。

 指示を無視した事ではなく、彼女の言う通り多少の緊張があったのだから。

 だからといって、リーダーという立場上、公言はできないが。

「緊張などしていない。それに俺よりも後輩に気を掛けてやれ。ツルギやシールは俺達と違って今回が初任務になるんだぞ」

「そっちはグリーンとリーフに任せてあるし、他の子たちも居るから大丈夫よ」

 呆気らかんと言い放つブルーに彼女がここを離れる気が無い事を察した。

「そんな調子で大丈夫か? 作戦はしっかりと頭に入っているんだろうな?」

「もぅ、心配性なんだから。大丈夫よ、今回の作戦はサント・アンヌ号に集まった博士達の誘拐でしょ。研究成果の発表とフィールドワークを兼ねた世界一周イベントだかなんだか知らないけれど、お偉いさん達が一箇所に集まる又と無い機会よね」

「そうだ。そして俺達は本隊の行動を有利にするための奇襲と陽動を任されているんだ。作戦の明暗を別ける重要な部隊と言っても過言ではない」

 作戦を再確認し、その重要性について語るが、ブルーは半目でため息を吐く。

「その結果がこんなオンボロ船での単騎突撃なんでしょうが。それに私達以外にも分隊が居るみたいだしね。……ホントのトコロ、私達は陽動用の捨て駒じゃないの。我らが組織に弱者は不要。私達の価値はその血肉だけだもんね」

「そんな事は無い!」

 ブルーの言葉を否定するように声を荒げる。

「俺達は俺達だ。オリジナルは関係ない。俺達の価値はそこに無い事を証明するんだ。そうじゃなければ俺達は――」

「ああ、もう! 落ち着きなさいっての!」

 言葉が遮られる。

 続く言葉は柔らかいものに遮られて形にならない。

 離れようにも後頭部に抑えられた両手のおかげで身動きがとれない。

「アンタがそうやって私達のために頑張っているのは皆知ってる。だけど、アンタが追い詰められるのは誰一人として望んじゃいないのよ。私達はこの世界で唯一の仲間でしょ。全部抱えずに私達にも分けなさいよ」

 ブルーの胸に抱かれた少年は落ち着いたのかその身動きを止める。

「だからね、そんな強がらなくてもいいのよ……レッド」

 それは少年の名。

 仲間の誰よりも矢面に立って傷付く少年の名前だ。

「苦しい時は苦しいって言いなさいよ。ねぇ、レッド。あれ、聞いてる? ……あ」

 返事が無い事に確認すれば、彼は自身の胸の中で白目を剥いていた。

 やっべ、と内心焦っていると、自然と息を吹き返した。

「――ぷはぁ! 死ぬかと思ったぞ! 苦しいってタップしてるんだから気づけや!」

「いやぁ、ゴメーンね?」

 てへぺろ、と可愛さをアピールするが、窒息した身として勘弁してくれとしか思えない。

「……でもまぁ、ありがとな」

 酸欠で多少クラクラするが、緊張は欠片も無くなっていた。

 それに苦しくはあったが聞こえなかったわけではない。

 一連の流れから素直に礼を言うのは癪だったので、礼は小声で返すが。

「んふふふ、どーいたしまして」

 バッチリ聞かれていた。

「さて、そろそろ作戦領域に入る。ブルー、お前は皆に出撃の準備を。俺は襲撃待機地点まで船を動かす」

「了解よ、リーダー。……あれ?」

「ん?」

 自分の指示でブルーが操舵室を出ようとして2人は異変に気付く。

「なんだ? 空が明るく……っ」

 見上げて言葉を失くす。

 それは光だった。

 それは雨だった。

 一瞬、真昼と勘違いする程の光が雨の如く、船へと降り注ぐ光景。

「な、何かに捕まれ!」

 船が揺れていたのは僅かだったのだろうが、体感としてはとても長く感じた。

 少なくとも攪拌機の中はこういう感じなのだろう。

 計器類のどこかに腰を打ったようだ、若くして腰痛持ちにはなりたくないんだが。

 近くの椅子を掴んで立ち上がる。

 固定されていて良かった。

「痛たたた。なんで【さばきのつぶて】が降って来るんだよチクショウ。アルセウスに何かした覚えは無いんだが……ん、アルセウス(・・・・・)?」

 そんなポケモンなんて知らない。

 いや、それ以前にそれはポケモンなのか。

「3値? めざパ調整? 廃人ロード? 何だコレ、俺はこんなの知らない……っ」

 頭の中に次々と浮かぶ単語やポケモンの姿。

 聞いた事も見たことも無いそれらを何故か理解できてしまう。

「そ、それよりも、ブルーは大丈夫なのか……?」

 見渡せば蹲るブルーが見える。

 だがそれは痛みによるものではなさそうだ。

「色違い性格一致6V……わ、割る……卵を……」

 悪夢を見ているようだ。

 色違いの6Vで性格一致など兆を超える試行回数になるぞ。

「ってそうじゃない! この知識は一体――っ」

 そして目が覚めた。




次話は朝8時頃投稿予定です。

ポケモン新作、楽しみです。
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