恐るべきトレーナー計画   作:水混汁

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誤字の修正とちょっとした描写の追加を行っています。


暗躍

「カメちゃん、【みずでっぽう】」

 指示に従い、カメールの放つ高圧水流がポケモンを吹き飛ばす。

 そのまま壁に叩きつけられたポケモンは目を回してダウンする。

「わ、私のニドランが……」

 手持ちの戦力が全滅した事でめのまえがまっくらになったのか、膝を着くジェントルマン。

「はい、ゴメンなさい。大人しく捕まってくださいね。ボク達は怪我をさせたい訳じゃありませんから」

 先程見つけた非常用のロープを利用して体を縛る。

 ダウンしたポケモンはボールに戻し、拾った大袋の中に放り込む。

 既に中身は半分程溜まり、少々重くなってきた。

「さて、悪人のフリはこんなものでいいかしら」

「フリにしては大分容赦無いと思うんだけれど?」

 ジェントルマンを空いている船室に放り込む。

 通信機の類はジャミングで防いでいるため、ポケモンが居なければ現状は何もできまい。

 ロープを使い、扉を開かないようにする。

 そんな事を繰り返し、目的の場所に辿り着く。

「あ、この部屋が爆弾の設置場所よね?」

「うん、そうだね」

 とある船室に入れば部屋の隅にボストンバッグが置かれていた。

 チャックを開ければ、映画やドラマでよく見るようなコード付きの時限爆弾が置かれていた。

 大きさとしては片手で持てるサイズだ。

「それじゃあお願いねイエロー」

「うん、任せて。さ、やるよチュチュ」

 声を掛ければねずみポケモンのピカチュウは“任せて”と嘶く。

「無力化パターンは……」

 その爆弾の構造は知っている。

 誰でも簡単に扱える簡素な機構はロケット団で愛用される物。

 その設置方法や無力化しての回収方法は既に叩き込まれている。

「ここを外して……チュチュ、この端子に【でんきショック】」

 バチバチと音を立てて電流が流し込まれる。

 残り時間を示すタイマーは一瞬点滅するとそのまま消えた。

「よしっ、まずは1個!」

「ふぅ、解除できるって分かってても緊張するわね。変な汗掻いちゃったわ」

 人一人簡単に殺傷できる爆弾を目の前に緊張しないというのは難しい。

「……んー、しっかし意外と着心地いいのよねコレ」

「ゲームやアニメで着込んでいる理由が分かるよね」

 自分が着るロケット団の制服を指で摘む。

 季節に合わせた夏用の制服なのだが、通気性は意外と良く多少の汗は気にならない。

 反対に冬用の制服は見た目の薄さと裏腹に体の熱を保つ優れものであった。

「変な所で凝ってるわね」

「うーん、どこで作ってるんだろうね。この技術で服を作ったら儲かると思うんだけどな」

 信管はそのままに爆薬部分だけ回収する。

 この後の交渉(おはなし)で使うために。

「おっと、見た目は直さないとね」

 他の団員が気付き、中身が消えたと上に報告されるのは不味い。

 船室の小物を適当に詰め込んでチャックを閉めれば、外見からは分からない。

「さ、次の場所に行きましょう? 皆が気を引いてる今の内にね」

「ボクとしては皆怪我しないで欲しいんだけれどね」

 そのまま2人は自身のポケモンを引きつれ部屋を出て行った。

 

          ○

 

「リザード、【はじけるほのお】」

 かえんポケモン、リザードから吐き出された火球が飛び出す。

 狙うは団員と戦う船乗り達のポケモンだ。

 彼らの意識の外から打ち込まれた火球はポケモンの一体を吹き飛ばす。

 それだけでなくぶつかり弾けた火の粉が周囲のポケモンにもダメージを与える。

「くっ、何だ!? 新手か!?」

 目立つ攻撃だ。

 直ぐに居場所を知られてしまう。

 しかし、そんなの事は関係ない。

「1体多数、それもタイプが不利なバトルが俺達の初陣だが……行けるな?」

 蜥蜴を模したポケモンは主の問いに“応”と言わんばかりに咆えた。

「相手は炎タイプだ! 水タイプを主体に攻めるんだ!」

 直後【みずでっぽう】を始めとした技が次々と飛び込んでくる。

 炎タイプのポケモンからすれば絶望とも言える光景である。

 しかし、彼らは臆さない。

「【えんまく】」

 技が降り注ぐ瞬間、白い煙に姿を隠す。

 煙はリザードの姿を隠すだけではなく、船乗り達まで煙に巻く。

「ゲホッ……仕留めたか?」

 真っ白な視界の中、誰ともなしに問い掛ける。

 あれだけの技に襲われたのだ、最後の悪あがきだろうと考える。

「ゴホッゲホッ――くそっロケット団の連中の姿が見えない!」

 このままでは煙に乗じて船の中に侵入される恐れがある。

 一度この煙の中から脱するために自分のポケモンに呼びかける。

「ニョロゾ! 一度この煙から出るぞ! こっちだ!」

 煙の中への声掛けに聞き慣れた声が返ってくる。

 相棒の無事な声に安心した。

 それも束の間の事だった。

「【エアカッター】」

 直後幾つもの悲鳴が木霊する。

 その中には相棒の声も含まれていた。

「ニョ、ニョロゾ!?」

 海風に黒煙は吹き飛ばされる。

 そこには船乗り達のポケモンが目を回して倒れ臥していた。

 その向こうには無傷リザードとトレーナーの少年が居た。

「さて、手持ちはこれで全部か? ……居ない様だな。これではウォーミングアップにもならん。リーフ」

 少年の声掛けに新たな人影が現れる。

 それは少年と変わらない年頃の少女だった。

 彼女はフシギソウを連れていた。

「はい、では皆さんを拘束させていただきます。抵抗は無意味です」

 その場に居た船乗りはフシギソウの【つるのムチ】で拘束される。

「さて、我々にとって貴方達は障害足りえる存在ですので、少々お休みくださいませ」

 フシギソウが緑の粉を振りかけてくる。

 直後に抗い難い眠気が襲ってくる。

 ……【ねむりごな】か!

 事ここに至ってはどうする事もできない。

 眠気に引きずられる用に意識は闇に落ちた。

 そうして倒れていく船乗り達を彼らは捕縛していく。

「ゲームと違い、この世界だとタイプの不利は技術や戦術で補えるので面白いですよね」

 リーフは船乗り達を改めてロープで縛るグリーンに話しかける。

「まぁ、こういった遭遇戦だと事前に積み技を行えたりと、色々できるな」

「だからといって事前に【りゅうのまい】を最大まで積むのは容赦無さ過ぎて少し笑ってしまったのですが」

 自身も手近な船乗り達をロープで再度縛り上げる。

 フシギソウのつるは切り離しても痛みは無い。

 しかし、【つるのムチ】の射程がその分短くなってしまうのだ。

 時間を掛ければ再生するとはいえ、この状況で戦力を低下させる必要もない。

「ま、さっきは人前だから見栄を張ったが、俺もこいつも正気で戦うのは初めてなんだ。打てる手は打っておかなければ足元を掬われるのはこちらだ」

 体を張ったリザードを労わる様に頭を撫でる。

 されるがままのリザードは気持ち良さそうに瞳を細めていた。

「心を閉ざされ、戦闘マシンと化したダークポケモン。私達に支給されたポケモンは卵の時点でダーク化の処理が済んだものばかり。上層部は以前の事件が余程印象に残っているようですね。私達を微塵も信用していないのがよく分かります」

 縛り終え、自身もフシギソウを労わる。

「私達も洗脳で疑問に思わなかったのもありますが、酷い扱いをしたにも関わらずこうしてトレーナーとして認めてもらえたのですから優しい子達ですよね」

 気持ち良さそうに身を任せるフシギソウに思わず笑みが零れる。

「ああ、だからこそ。コイツらに報いるために、俺達が自由を手に入れるために、今やらなきゃならないんだ」

 休憩時間は終わりだ。

「幹部やエリートはチャンピオンや四天王が率先して対応している筈だ。俺達はそれ以外の雑魚を処理する必要がある」

「はい、少しでも心象を良くするためですものね」

 船乗り達と反対の場所。

 そこにはロケット団員達が縛られながら眠りこけていた。

 

          ○

 

 そこは傷病人が訪れる医務室。

 中に居るのは黒尽くめの3人組。

 彼らは設置された爆弾の回収を行っていた。

「お前、さっきから妙に静かだな」

 解除を済ませた赤毛の少年が訝しげに振り返る。

 そこには一房の前髪とゴーグルが特徴的な少年、ゴールドが居た。

 彼は戦闘を行う時以外、その口を噤んでいた。

「確かに。いつも黙って欲しいぐらいなのに」

 同意するのは青がかった黒髪をツインテールにした少女だ。

 普段と全く違う様子に心配する。

「あ、ああ。いや、少し考え事をしてたんだけどさ」

 流石に仲間に心配を掛ける事が申し訳なかったのか、彼は口を開く。

「俺の“孵す者”の力なんだけどさ」

「あ……」

 少女はゴールドが静かな理由に気付く。

 彼の力はそれこそ強力だ。

 この世界ではポケモンの意思と弛まぬ修練で格上を打倒できる。

 しかし、その基となる才能はどうしようもない。

 少年の力は普通は干渉できない才能というものを完全に開花させる。

 それを欲するものはロケット団以外にも限りないだろう。

 見知らぬ誰かから狙われるというのは大きなプレッシャーになるはずだ。

「そっか、そうだよね。私達は転生だなんだって騒いでたけれどアンタの力は――」

「いやさ、性格が固定されるって言っても、リーダー含めた全員のポケモンって俺が担当して孵したわけじゃん? でも性格は皆違って十人十色。資料や同種のポケモンと比べた限り、個体値に関しては6Vなのは間違いなさそう。んで、思ったんだ」

 少女の言葉に気付かなかったのかゴールドは言葉を紡ぐ。

「性格が固定化されなかったのは洗脳状態のせいで意思が卵に伝わらなかったから。……つまり! 鏡のように波紋一つ無い完全平面な水面の精神、“明鏡止水の境地”に至ることで孵したポケモンの性格への影響を失くす事が可能ではないかと!」

 言いたい事は分かる、が。

「……アンタまさか、その明鏡止水とやらに至る為に静かになっていたワケ?」

「ああ! でもやっぱり難しいな。次から次へと欲が湧き出て仕方ないわ」

 先程とうってかわって騒々しくなる。

 そんな様子に赤毛の少年は息を一つ吐く。

「全くお前ってヤツは……天才かよ」

「だろ? 水の一滴が見えたら完璧だな」

「そしたら名実共にゴールドだな」

『アッハッハッハ』

 男2人で笑いあう。

 そんな光景に少女は震える。

「ゴールドもシルバーも……心配して損したわ」

 それは怒り。

「2人とも、話はいいけどやることは済んだわね?」

「ク、クリスタルさんや……何か怒ってません、か?」

 長い付き合いだから分かる。

 微笑を浮かべてはいるが、これは完全にキレてますわ。

「怒ってませんが……何か?」

「わ、分かりました! 何でもないです!」

「ヒェッ」

 濁りに濁った瞳に男2人は恐怖する。

「……さぁ次、行きましょうか」

『イエス、マム!』

 男2人は完全に従うのであった。

 

          ○

 

 そこは船の心臓部である機関室。

 動力を生み出す音が響く場所。

「あたし思ったの。オリジナルの様にアイデンティティは方言だけじゃないんだって」

「何? オリジナルの“かもかも”系みたいに語尾で攻めるつもりなの?」

「いやぁ、それは外すと痛いぞ? かといって意味不明なキャラ語尾は自分を追い詰めるだけザウルス」

 そこで話に花を咲かす3人が居た。

「そうじゃない! ホラ、あたし達第3世代での新システムといえば?」

「“ダブルバトル”?」

「“とくせい”?」

「“ポケモンコンテスト”よ!」

 理解していない男2人に突きつける。

「アニメやリメイクではポケモンだけじゃなくてトレーナー自身も着飾っていたでしょ。つまり……あたし、アイドルになります!」

「いやいや、どこぞの“M@STER”なゲームじゃないんだから……」

「はっ、確かに! やり込み過ぎて当たり前の存在だと思っていた!」

「ルビーまでそっち行っちゃうの!? てかリボンガチ勢だったんかい!」

 2人より一回り幼い少年は今、自身がツッコミに回った事に気付いた。

「なるほどな。サファイア、お前もまたリボンガチ勢であったか」

「えぇ。そしてルビー、貴方もそうなのね」

 見詰め合う2人。

 そして無言で握手を交わす。

「目指すは全国制覇」

「貴方との決着はグランドフェスティバルでね」

「なんで創作(フィクション)でよくある大会前のお約束みたいになってるの……」

 長い付き合いでも知らなかった2人の新たな面に少年は慄く。

「そしてエメラルドお前もな」

「貴方の協力が必要だわ」

「何? なんなの? オレはリボンガチ勢じゃないよ? どっちかといえばきのみ勢だぞ?」

 にじり寄る2人の威圧感に後ずさる。

「それはそれは好都合、なぁに簡単な事さ」

「そうよ。必要なのは貴方のサポート力。つまりは――」

『よろしく! プロデューサー!』

「過労死枠じゃないですか、やだー!」

 逃げようにも肩に掴まれた2人の手は微動だにしない。

 冗談の様な話だが目がマジだ。

「さぁ、夢の舞台のために」

「最高のコーディネータになるために」

『まずはこの船の制圧から始めよう』

 気合十分といった2人は歩を進める、その背後に気絶するホウエン地方のチャンピオンを引き摺りながら。

「オレはヤバイ2人と組んでしまったようだ。……助けてリーダーぁ」

 少年はボールの入った袋を背負って2人の後を追う。

 

          ○

 

「オイラ達の担当区域の爆弾はこれで全部だね」

 解除した爆弾を袋に入れる。

 少々雑な扱いだが、信管も取り外したので火気にさえ気をつければ問題ない。

「そうですね。しかし、最後の最後でバレてしまうとは」

「見つかったのが下っ端で良かったぜ。今のオレ達の実力じゃエリート以上は手こずるからな」

 船室の隅に転がるのは縄で縛られガムテープで口を塞がれた団員達。

「んー! んー!」

「ごめんね。オイラ達の手持ちには【ねむりごな】を使えるポケモンが居ないんだ」

「流石に人間相手に【すいとる】はちょっと不味いですものね」

「とりあえず、1時間もすれば事は終るから、それまでゆっくりしていってな」

 身動きが取れないようソファーや机で固定し、船室を後にする。

「ふぅ。これで作戦の一段階は達成しましたね」

「やっぱり、お嬢様のプラチナにはキツかったか?」

 戦利品である大袋を担ぎ彼らは歩く。

「そんな事はありません。むしろスパイ映画のようでドキドキしていますの」

 瞳を輝かせるその姿は普通の少女にしかみえない。

「ある意味、オレ達はスパイそのものだけどな。ダイヤ、そっちはどうだ?」

 金髪の少年は廊下の先を確認する黒髪の少年、ダイヤモンドに声を掛ける。

「んー、大丈夫。トレーナーもロケット団もあの人も居ないよ。あと食堂があったよ」

 ダイヤモンドの報告に2人は安心したように息を吐く。

「途中でやり過ごした事が上手くいきましたわね」

「全くだ。チャンピオン……よりにもよってシロナさんと鉢合わせるとかツイてないぜ」

 こちらからすれば初対面ではあるが、彼女からすれば話が違う。

 自分達はシンオウ地方を舞台としたポケモン。

 第4世代と呼ばれるダイヤモンド・パール・プラチナの主人公とライバルのクローン体だ。

 シンオウ地方のチャンピオンである彼女は共に事件を解決した主人公(オリジナル)との親交があるだろう。

 そしてこの非常時、同じ顔をした人間が悪の組織に所属しているというのは彼女からすれば大問題だ。

「ねぇねぇ、料理が並んだままのビュッフェを見ていたら小腹がすいちゃった。少し食堂に寄ってもいい?」

「お前さんホントよく食べるよな。それなのにその体型とか……」

 ダイアモンドの提案にげんなりする。

 一応作戦行動中であり、一刻を争う事態なんだが。

 残念だが、と否定しようとしたら予想外からの支援が入る。

「待ちなさいパール。順調に進んだお蔭で、作戦の第二段階まではまだ時間があります。シロナさんとの攻防もあったことですし、少し休憩するのも手だと思います」

 自分達の身を慮った言動であるが、パールと呼ばれた少年は理解する。

 豪華客船の料理に興味があるのが理由の大半という事に。

「……はぁ、仕方ねぇな。基地の飯は量が少ねぇ上に美味くもなかったからな。久々に美食といくのも悪くは無い、か」

 渋々と同意すると2人は喜びの声を上げて食堂に突撃して行く。

「いや、行動が早すぎるだろ」

 後を追って中に入ると2人は既に寛いでいた。

「冷めちゃってるけど美味しい! ほら、ルーも食べてごらん」

 手持ちのポケモンであるナエトルを呼び出して食事に入る。

「あら、初めて見る銘柄ですが中々に良い香りですね」

 プラチナも同様に手持ちのポッチャマと共に優雅なティータイムを始めていた。

「コイツら……完全に満喫してやがる」

 色々とツッコミたい気持ちはあるが、久々に人間らしい食事をする機会にありつけたのだ。

「出て来いサルヒコ、オレらも食おうぜ」

 手持ちのヒコザルを呼び出し、積み重なるプレート皿の一枚を手渡す。

「せっかくだし好きなモン食べてこい。ただ、動けなくなるまで食うなよ?」

 ヒコザルは押した念に頷きを返すとポケモンフードのコーナーへ駆けて行った。

「さて、オレも少し貰うかな。……種類がハンパねぇな」

 並ぶ料理は豪華客船というだけあって豪華なものから身近な料理と幅広く揃っている。

「ヨワシ料理って……図鑑説明には美味しいって書いてあったけど、こうして目にすると驚きだな」

「油が乗ってて結構美味しかったよ。あ! ラッキーの卵焼きがある!」

「既に食べたんかい! って、もういねぇし!?」

 仲間の中で、最も親しい友は今日も変わらずマイペースだった。

「味はまぁまぁですね。まぁ、大衆向けの料理としては十分に美味しいレベルですか」

「出たな、そのお嬢様基準」

 記憶を思い出す前から、何かと付けては厳しい評価を下していた。

 が、それは前世の時点で箱入り娘であった事が原因であった。

 そう考えれば庶民の自分達ですら美味しくないと感じる基地の飯は彼女にとってかなりのストレスであっただろう。

「こちらに簡単に食べられる軽食がありますよ」

「あ、ホントだ」

 プラチナの示す先にはパンを主とした軽食が並ぶ。

 適当に一つ取って口にすれば、新鮮な野菜と穀物のハーモニーが口いっぱいに広がる。

 その余りの美味しさに頬張るように食べる。

 しかしそんな風に食べれば喉に詰まってしまう。

「――んぐ!?」

「はい、お茶」

 ピンチに的確なサポートをしてくれる辺り、自分の性格が把握されている事がよく分かる。

「……プハァ! すまねぇなダイヤ、って山になるほどガッツリ採ってんじゃねーか! 小腹うんぬんはどこ行った!?」

 漫画の表現の如くプレートに盛られた食材に目を剥く。

「え? これでも大分遠慮したんだけれど? あ、ヤドンのしっぽ料理もあるんだ」

「……ウッソだろお前」

 新たな獲物に向かうその後ろ姿に戦慄を抱く。

 前から食事に対して不満を抱えている事は知っていたが、この食欲を見る限り大分我慢していたようだ。

「うん、まぁこれも個性だよな」

 親友の新たな面を受け入れ、パンを食べる。

 2個、3個と続けて食べていると食堂の扉が開く。

 誰が入ってきたのかと視線を向けると、

「んーさっきの3人組はどこに行ったのかしら。ヒカルちゃん達そっくりにも程があるし、話を聞きたいのだけれども」

 ルカリオを連れる彼女はシンオウ地方のチャンピオン。

 シロナその人であった。

「動き回って喉も渇いちゃったし、少し水分補給するぐらいならいいかし、ら……」

 目が合った、合ってしまった。

「ちょっと貴方達……!」

「皆、逃げるぞ!」

 振り返ればダイヤもプラチナも既に別の扉に手を掛けるところだった。

「だからお前ら行動が早すぎるって!? 置いてくな――!」

「待ちなさい! ルカリオ捕まえて!」

「サルヒコ! 【ねこだまし】で怯ませろ!」

 彼らの逃走劇はまだまだ続く。




次話の投稿はヒバニーと旅に出るので少し遅れます。
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