ガンダムSEED NEOラウの『兄弟』地球連合の変態仮面ネオ少佐は娘を愛でたい   作:トキノ アユム

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変態仮面さんとキラの出会いです。


そして運命の歯車は回る

 そして幾つもの運命の歯車は回り始める。

 それはヘリオポリスの民間人の少年キラ・ヤマトも例外ではなかった。

「――これって……」

 横たわる巨大な人型の兵器を目にしていた。

 鋼の装甲に、四本の角を生やしたような頭部。すらりとしたボディ――記録で見た事のあるザフトのジンとは明らかに違うモノ。

「地球連合軍の新型機動兵器……やはり……」

 キラの隣にいた少女ががくりと膝をつく。

 ザフトの襲撃を受けたと聞き、避難しようとしたキラであったが、少女が一人で避難場所とは別の所に向かおうとした所を見つけ、放っておけなくなりついてきた。

 退避シェルターを求め、工場区画まで来たまではよかったが、これは――

「お父様の裏切り者!!」

 キャットウォークの手すりを力の限り握りしめ、呻くように叫ぶ少女にどう声をかけるべきかと思った時であった。

 キラの目がこちらに向けられる銃口を捉えたのは。

「危ない!!」

 銃声が鳴り響く寸前、間一髪の所でキラは少女を手すりから引き離し、後ろに飛びのく事に成功した。

 一体何が起こっているのか、キラには分からない。

 だが今は逃げる事が最優先だと、キラは少女を抱えるようにして走り、退避シェルターの入り口に何とか辿り着いた。

「ほら、ここに避難している人がいる」

 シェルター入口のインターフォンを押しながら、隣にいる少女を励ますようにそう言うキラに、スピーカーから返答がある。

『……まだ誰かいるのか?」

「はい! 僕と友達もお願いします。開けて下さい!」

『二人!?』

「はい!」

 周りを確認しているのか、スピーカーからの返答には少しの間があった。

『もうここはいっぱいなんだ左ブロックに37シェルターがあるが、そこまでは行けんか!?』

 キラは振り返り、左のブロックを確認する。

 そこは銃撃戦の真っ最中だ。自分一人ならまだしも、少女を連れて行く事などとてもできない。

 キラは決断し、そして叫んだ。

「なら一人だけでも! お願いします! 女の子なんです!!」

 女の子の声が効いたのか、しばしの沈黙の後にスピーカーから返答はあった。

『分かった――すまん!』

 ロックを示していた赤いランプが、青へと変わり、扉が開いた。

「入って」

「?」

 まだショックを受けているのか、少女は呆けたようにキラの顔を見返す。

 キラは少女の身体をシューターとなっている扉の中に押し込む。

「なにを……私は!」

 そこまで来てようやく事態に気が付いたのだろう。抵抗の素振りを見せるが、キラは強引に押し込んだ。

「いいから入れ! 僕は向こうへ行く! 大丈夫だから! はやく!」

 少女の身体を押し込み切ると、キラは無理やりシューターの扉を閉めた。

「待て! お前は!?」

 シューターのガラス越しに何かを言わんとする少女の姿が見えたが、すぐに下層のシェルターへと向かって行った。

 それを見届け、走り出そうとした瞬間――

 

 

「いい奴だな君は」

 

 

 背後から声が聞こえた。

「!?」

 驚き、背後を振り返ると、そこには二人の男女がいた。

「こんな戦場で自分よりも他人を優先するなんて、中々出来る事じゃない」

 一人は仮面をつけた長身の男。

 仮面で覆われていない口元を笑みで歪ませ、興味深そうにこちらを見ている。

「あなた達は――?」

「俺は地球連合軍所属のネオ・ロアノーク少佐。見ての通り軍人だ」

「えっと……」

 どこの辺りが軍人なのだろうか? 軍服ではなくラフな格好の私服と共に仮面を装着したその男は、変質者にしか見えない。

「そしてこの子は俺の義娘で地球連合軍所属のステラ・ロアノーク少尉。ご覧の通り軍人だ」

「いや、あの……」

 だからどのあたりが軍人だというのだろう?

 仮面の男ネオが紹介した彼の隣にいる少女もまた、軍服ではなくドレスを身に纏っている。

「まあ、とにかくだ……このままここにいても、死ぬだけだ――どうかな少年? 一緒に来ないかい?」

「あ、えっと……」

 激しく怪しい二人組だが、ここを襲撃しているザフトの兵がこんな格好をしているはずはない。

 軍人云々の話は別として、今この場に味方となってくれる人の存在は心強い。

「よろしく、お願いします」

「よし。いい子だ」

 頷くと、ネオは戦闘に立って進みだした。

「ハマナ! ブライアン! はやく起動させるんだ!!」

 三人が格納庫に出ると女性の声が響いた。

 キラを始めとした三人は、キャットウォーックを見下ろす。

 先程見たモビルスーツの背後に身を隠しながら、ザフト兵たちにライフルを撃つ作業服の女性がいた。

「!」 

 キラはその時気が付いた。

 一人のザフト兵が、作業服を着た軍人らしい女性を狙っている事を。

「危ないうしろ!」

「!」

 思わずキラが叫び、女性も反応し、背後に銃口を向ける。

 だが――女性が引き金を引く前に、一発の銃声と共にそのザフト兵は鮮血をまき散らし、地に倒れた。

「え!?」

 ぎょっとし、銃声がした隣を見ると――

「……ネオ。一人仕留めた」

 感情が籠らない瞳をした少女――ステラがその手に銃を持っていた。

「君!?」

 虫一匹殺せなさそうな華奢で可憐な少女が、躊躇いなく殺人をしたという事実にキラは驚くが、

「来い!」

 女性の怒鳴り声に似た大声が聞こえた。

「! 左ブロックのシェルターへ行きます! おかまいなく!」

「あそこはもうドアしかない!」

「!」

 その言葉にキラの足が止まる。一瞬迷うように、眼下の景色と自分の近くにいる二人を見るが――

「行け」

 迷うキラの背中を押すように、ネオはそう言った。

「俺達は俺達で何とかする」

「でも……」

「安心しろ」

 ネオの言葉を証明するように、

「行ってきますネオ」

 少女は躊躇いなくキャットウォークから身を躍らせた。

「!?」

「え!?」

 キラを始め、下にいる女性も目を見開く。

 5、6メートルの落差はある簡単には降りられない高さを、少女は華奢な見た目からは想像も出来ないような敏捷さで、猫のようにモビルスーツの上に危なげなく着地した。

「な? 大丈夫だろう? 君もはやく行け」

「あなたは!?」

「俺ならもっと大丈夫だ」

 「何故なら」と、キラを安心させるように肩をすくめ、おどけてみせながら言った。

 

 

「これでも『ファントム』なんでね。簡単には死ねない」

 

 

 そして仮面の男もまた進み出した。

 その歩みはまるで慣れ親しんだ道を歩くように、自然であった。




現在のステラは原作Destinyステラをと比べると、強化措置があまり施されていないため、身体能力は強化人間にしては低いですが、ネオさんの教育のお陰で、戦闘技術が異常に高く、総合的に見るとDestinyより強いです。
つまりーー


お願い死なないでラスティ!
ここで死んだら誰がストライクを強奪するの!?
ここの戦闘を乗りきったら、あなたもガンダムパイロットなんだから!!


次回『ラスティ死す』


デュエルスタンバイ!

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