「ん」と「ね」と「(単語)」しか言わないクラスメートの性欲がヤバすぎる件について 作:羽虫の唄
あと1話ぐらいで今編も終われそうです(フラグ)
場所──校長室。
広い空間の向こう側に置かれた大きく厳かな机と椅子は、触れずとも遠目で高価なものであることが窺える代物だ。それらに腰を落ち着かせているのは、ネズミなのか犬なのか熊なのか、その正体はこの雄英高校の校長・根津先生である。
…まぁ頭の方で校長室って言っちゃっているのには触れない方向で。
さてと! と快活な声を発する校長先生。
HRまでのちょっとした時間を利用してこの場所に呼び出されたオレなのだが、要件については心当たりしかない。わざわざ先生のお手を煩わせる様なことをする必要はない、ここは
「死にます」
「脈絡が無さすぎるのさ!」
思わずと言った様子で腰を浮かせてそう叫ぶ先生。彼は、まぁまぁ落ち着いて、と一旦挟む。
「
「心当たりしかないので死にます」
「起承転結がマッハなのさ!」
常日頃から出回っていた噂に加え昨日新たに、婦女暴行容疑とヒーロー科・A組の生徒2名に土下座を強要させるものまで追加されてしまった。そしてそれに関して校長先生直々に呼び出されたとなれば、そんなものは除籍ルート一択でしかないのである。
…校長先生も人が悪い。ここまで来て事実確認を取るなんて、まるで真綿で絞殺を図るかの様な…或いは竹鋸で首を切断しにかかる様な真似はせず、手短に除籍と一言で済ませてくれればいいものを。
そんなオレの心中を察しているかは不明な彼は、いいからいいから落ち着いて、と一度挟む。
「
「死ね」
「さっきから展開が同じなのさ──あれ今暴言吐かれた?」
首を傾げた校長先生に、オレはいいえとかぶりを振るった。
「今死ねと言ったのは、よく知りもしないで騒ぎ立てる周囲と………問題しか起こさず、方々に、ご迷惑ばかりかける、自分に対して……です…」
「気をしっかり持つのさ!」
言いながら、重力に負けつつあるオレに校長先生は諸手を上下に振るい、とにかくとにかく落ち着いて、と更に挟む。
まだこちらも全てを把握出来ている訳ではないんだけれどね、と頭に。
「少なくとも、君に関して流布されている噂は虚偽や悪意を持って騙られているものが殆どだ。ヒーロー科は特に羨望・嫉妬・好奇の対象に選ばれ悪意の対象になりやすいのも事実。そう言った要因もあるから……情けないけれど、完全にこれらを取り除き、君に対する悪印象を改善するのには時間を要してしまうと思う。でも安心してほしいのさ!
アカン泣く。
マスコットキャラクターの様な外見をしていてもその中身は1人の大人であり、教師である。その場でうずくまり鼻を鳴らすオレは──頭頂部に感じる校長先生の肉球の柔らかさに感嘆を覚えつつ──感謝と尊敬の念を抱くのだった。
「……さて弘原海くんここからが本題なんだけれどこの前僕の体を教師陣と一緒に好き放題してくれたじゃないかその時の君の愛撫の心地良さが忘れられなくてだね是非とも君にブラッシングをお願いしたくてねうぇへへはははぁへ」
「あざっしたー」
「ああ待って! せめて尻尾だけでも! 先っぽ、ねぇ! 先っぽだけだからァ───ッ!!」
「唯を傷つけた悪い子は〜」
「「「だぁ〜れだぁ」」」
校長先生と懇ろ(※オブラート表現)な関係になる危機から脱し、教室に戻ったオレを待ち構えていたのは怒れるB組女子ズであった。
あれ? 小大サンに皆の誤解を解く様にお願いしたんだけどどうなってんの? と苦言を呈したいところだが、視界の隅に映った件の彼女が自身を守る様にして囲むクラスメートたちに対してあたふたしている姿を捉えたので全てを察する。
まぁ…概ね、小大サンから「あのことは色々勘違いで
「「「なにわろてんねん」」」
血走ったおめめが沢山である。
彼女らの背後では変わらずあたふたしている小大サンと、殺意の波動に飲まれた乙女たちを鎮めるべく行動を起こそうとしている物間クンと吹出クン、それからオレの方へと視線を向けながらキャーコワーイサイテーと肩を寄せ合っている男子ズが居た。
女子と男子の反応が逆転している様な気がする…。
さて、先日からなにかと物間クンと吹出クンにはご迷惑をおかけしてしまっているので、ここはオレが自分で状況を解決せねばなるまい。要は、ある程度彼女らの溜飲を下げれば良いのだ。
つまりこう。
「ちょ──お、おい! 何してるんだよ!」
オレが何の脈絡も無く──個性を発動してから──ズボンの中に手を突っ込んだことで、拳藤サンが代表して声を荒げた。
そんな彼女たちを無視しながら目当ての物……『野球剣』を引っ張り出す。体育祭にて何度か使用したコレだが、衣服だけを切り裂きそれ以外を透り抜ける効果の他、衣服の情報をコピーし切り付けた対象の衣服の見た目を変換する機能も有している。
……これとか『魔法のステッキ』もそうだが、特定の方法じゃないと取り出せないのが厄介で仕方がない。全部まとめて『
閑話休題。
さて、実を言うとこれらはオレ自身の個性では生み出しておらず、先代(或いはそれ以前)が創り出した物を引き継いでいる。オレはあくまで取り出しているに過ぎない。
個性の成長に合わせて取り出せる種類が増えるこれらだが、引き継いだ、と言うことはそれまでに鍛え上げられた、と言うことだ。簡単に言えばこの『野球剣』であれば、予め幾つかの衣服の情報が既にメモリーされている訳である。
スッと刃を振るえばあら不思議。
オレの体を包んでいた制服は牛柄ビキニとデニムのショートパンツ、それからビキニと同じ柄のニーソックスに早変わりです。
「「「ぶふゥ──ッ!?」」」
オレの突然の変身に、女子・男子共々揃って吹き出した。それが口からか鼻からかの違いこそあるものの。…言うまでもなく小大サンは後者であ──撤回。口からも涎出してやがった。
何やってんだよ! と再度声を荒げた拳藤サンに軽い調子で説明する。
「はーいこちら簡単に言いますと、着用している人間の肉付きがどんどん増していく代物でーす。…おっふ」
言葉のとおり現在進行形でオレの体はミチミチと成長を始めており、ただでさえヤバい肉体がよりヤバいものになりつつあった。具体的に言うとこのままいけば南半球でヘソが隠れるんじゃなかろうか。
行動の意図が読めずに混乱した様子の拳藤サンたちは、「いや、それは分かったけど突然どうして…?」と間の抜けた声を漏らしており、そんな彼女たちにオレは続ける。
「──そしてこちら着用した状態が維持されると着用者の記憶と知識が段階的に消失する代物であり端的にご説明しますと着用者の人格が
「何してんのッ!!?」
「いえしかし、現在残存しています知識及び記憶から把握するに
「おい急いで脱がせ! 男子あっち向いてろッ!!」
「ちょッ、なんかニーソが一体化して動物っぽい脚になってきてるんだけどォおおお!?」
「相澤センセェ───ッッッ!!!」
この後、滅茶苦茶「抹消」した。
お騒がせしました、と語るオレの前でぐったりしているのは物間クンと吹出クンである。寿命が縮んだぞ、とこちらをねめつける物間クンは苛立たしげによく分からんフレンチらしき料理を頬張っていた。
時刻は昼時。食堂にて、午後の訓練に備えランチラッシュ先生の料理を腹に詰め込んでいるオレたち。山盛りになった野菜炒め定食と格闘するオレの対面でカツサンドを頬張る吹出クンが「でも何とかしないとだよなぁ」と声に出した。
「今の弘原海。もぐもぐ、見てて結構危ないし」
「まー…でも、流石に突然暴力振るわれたりする訳じゃ──先日のアレはあくまで小大サンを思っての行動だったしノーカンで──ないんで、これ以上お二人に迷惑をかけるわけにはいかないッスよ」
今後は自分で出来る限り何とかしてみまス、と口に出した途端、眉根を寄せ眉間に皺を作った物間クンがフォークの先端を鋭くこちらに向けてくる。
「吹出はお前がどんな行動をしでかすか分からないから『危ない』って言っているんだよ」
朝のアレが良い例だろう、と指摘を受けオレは誤魔化す様に後頭部を掻き毟った。今朝のは咄嗟と言うか、悪ノリと言うか…。
そんなオレを横目で眺めながら彼は続ける。
「──それに、ここまで来て見捨てるなんて真似する訳ないだろ。友達を見捨てるなんて真似ヒーロー志望以前に。そいつは人として最低な部類に入ると僕は思う」
「物間クン…」
心なしか、こちらに向く彼の口元にはニヒルな笑いが浮かべられており──
「日常的にA組に皮肉やら嫌味で散々口撃してる君が人道を説きまスか」
「物間大丈夫? 脳外科医行く?」
「はっ倒すよ君たちィ!?」
物間クンのヒステリックな叫びに周囲の視線がオレたちに注がれた。うむうむ、よし。これでこそいつもの物間クンである。
…それはそれとして、2人の言う通りこの問題を解決しなくてはならないのもまた事実だ。人の噂も四十九日とは言うが──
「「言わねーよ」」
間違えた。七十五日だった。
割と笑えない間違いを指摘されて苦笑いするオレは後頭部を掻きつつ視線を横へ。チラリ、と端に映った生徒はこちらを見つつ仲間内と何やら会話を広げていた。自意識過剰…で済ませるにはあからさまな視線を感じつつ、
「今は──まァ、真っ先にやるべきなのはB組内の誤解を解くことッスかね」
「……正直、そこから既に高難易度な気がするんだけど」
苦く吐き出された吹出クンの呟きは正しい。
まず第一にオレが小大サンに暴力を振るう理由が単純に正当防衛である点。もうここから既に理解を得ることが限りなく不可能に近い。ここに小大サンの美少女要素が加わることで、『彼女がそんなことをする筈がない』と言う根拠の無い先入観が爆誕してしまい、結果としてオレの弁明を信じる人物が一気にゼロに近づく。そんなただでさえ苦しい状況にオレの「サキュバス」である、尾鰭も背鰭も付け放題だぜッ! (ヤケクソ)
……これを
どーすっかなぁ、と腕を組み首を傾げてくれる2人が呟く。
ここまで来てしまったのならば即時的な周囲の意識改革は望み薄だ。今朝行った、自罰行動で周囲の義憤などをある程度晴らしこちらの話を聞けるだけの余裕を作り出す『
結局。打開策は終ぞ思い浮かばず、オレたちは昼休憩を浪費することとなる。
キーンコーンカーンコーン──…。
チャイムが鳴り響き最後の授業が終わったことを告げ、放課後。今朝のことが功を奏したかは不明だがアレから怒れる乙女たちによる襲撃も特に無く、性差関係なく殺気が常にどこかしらから放たれるだけで1日を問題無く終えることが出来た。
オレはもうだめかもわからんね。今日が五体満足でいられる最後の日かもしれない。
帰り支度をしている最中、申し訳なさそうにこちらに近づいて来た小大サンがガーディアンたちの手によって遠ざけられていく様を眺めつつ、声をかけてきた物間クン・吹出クンと揃って帰路を目指す。
…本当どうにかしないとなぁこれ。このままだとこの2人まで最悪孤立してしまうし…。
…と、考えていた時だった。
「………なんか聞こえねぇ?」
ふと、通路の雑踏に紛れ微かに発せられた誰かの声。その方向へ振り返り捉えたのは、一部分だけが稲妻型に黒く染まった金髪の男子生徒・上鳴クンである。彼の発言に眉を顰めた近くの男子生徒──瀬呂クンだったかな? ──が音源を探るべく周囲を見渡し、それに続いたもう1人…爆豪クンが「
「何だありゃ!?」
思わず叫ぶ。
側に居た吹出クンたちがオレの素っ頓狂な叫びに肩を震わせ、次いで同じ様に驚愕から声を上げた。
窓の向こう、中庭。そこに在ったのは……、
「入試の時の仮想敵か!? 何で暴れてんだあんなところで!」
どこか昆虫か大型の爬虫類を連想させるそれは、入試試験の際に用いられた仮想敵であった。カラーリングや下半身がタイヤでは無く四脚だったりと差異は有れど、大雑把な外観は1Pとそう大差無い。
でだ。一番重要なのは、その件の仮想敵が今し方瀬呂クンが叫んだとおりに暴れていることだ。突き立てた腕で地面を抉ったり、そこら中を駆け回ったりとどう見ても挙動がおかしい。アレは見るからに……暴走してるよな、どう見ても。
「ハッ! 大方サポート科の奴が開発で失敗したんだろザコが!」
「み、身も蓋もない言い方しないでくれようっ?!」
ん? と、爆豪クンの後に発せられた声に全員の視線がそちらへ注がれた。そこに居たのはタブレット端末を抱えた、丸縁眼鏡や制服の上から羽織った白衣と言った
「これはちょっとアレだよアレ。不慮の事故が何重にも重なった結果起こった想定外のアクシデント的なアレだから僕がミスをしたわけじゃないからあのその」
「「「言っとる場合か!」」」
総ツッコミである。声を荒げたオレたちにひぃと悲鳴を上げた白衣姿の男子生徒は手元のタブレットで何かしらの命令を送っている様だが、仮想敵がそれを受け付ける様子は微塵も感じられない。
「き、君らヒーロー科だろ?! 何とかして止めてくれるとありがたいかなーと僕的にとっても思うんだけどどうだろうあのその!」
「チッ。さっさと止めるぞクソが!」
「あ、皆さんこちらから!」
中庭に向かうべく通路を駆け出した爆豪クンに制止の声をかけ、両の指先を窓ガラスへ。そのまま左右に勢い良く動かすと。
── くぱぁっ
「どうぞ、急いで!」
「「「お、おう」」」
窓ガラスに創り出された空隙に、全員揃って微妙な顔付きとなる。
しょうがねーだろこう言う個性なんだから。
兎にも角にも、暴走した仮想敵を止める為、オレたちは隙間を潜り中庭へと躍り出る。
「──物間クン!」
「ッ!? どうした弘原海!」
「
「何やってんだお前!」
攻撃・機動力に特化した爆豪クン、捕縛に特化した瀬呂クン、電気と言う機械の天敵である上鳴クン。
性特化なオレ…は飛ばして、こちらはタイムリミットや喉の調子など制限こそあるものの、どちらもオールマイティに立ち回れる物間クンと吹出クン。
さて、中庭に設けられたベンチを粉砕したり植木を薙ぎ倒したりと好き放題している暴走仮想敵を止める為に、颯爽と駆け付けたオレたちである。
一番槍を務めたのは爆豪クンだ。
「あー待って待ってそいつの装甲は結構特殊な材質の高価なアレだからなるべく無傷でお願いしたいと言うか!!」
「はーい爆豪戻っといでー」
サポート科の人の悲鳴を聞き、瀬呂クンが立体機動中の爆豪にテープを貼り付け引き戻す。何すんだゴルァ! と言う乱暴な雄叫びが辺りに轟いた。
「あのさ、ここまで被害を出しといて『なるべく無傷なんてー』ってのはどうかと思うんだけど?」
「そうは言ってもアレは渾身の出来栄えでさ画期的な機構の他にも高い学習能力のAIが搭載された超大作と言うかだから」
冷ややかな言葉と視線を物間クンから受け取りつつも、往生際の悪い開発主サンは両手を合わせながら懇願を行う。
そんな横で、二番手。上鳴クン。
「なら俺の出番っしょー!」
あっちこっちに素早く動き回っていた仮想敵。何とか隙をついた瀬呂クンのテープと吹出クンの『
電撃が終わった頃、若干顔のパーツが崩れ始めている上鳴クンがウェイウェイ言いながら──直後に振われた仮想敵のアームで吹き飛ばされた。
「上鳴ィいいッ! なんとなく読めてはいたけどォ!」
「ふふんどうだい! 耐久性もさることながらもちろん耐電性能も抜群なぐぎゅうっ?!」
瀬呂クンが叫び隣。いい加減にしろと言わんばかりに物間クンがサポート科サンを締め落とす。
開発者が意識を失ったことを好都合とばかり飛び出そうとする爆豪クンを抑えつつ、かと言って要望通りに傷付けず無力化する術を思いついていないのも確かだ。こうしている間にも拘束から抜け出した仮想敵は暴れ回っており、人的被害が発生してしまうのも時間の問題だろう。
…さて。そんな頃にオレたちの鼓膜を震わせたのは、前腕を地面に突き刺した仮想敵の厳つい頭部の先端に生み出された、何かしらの光球だ。
あらやだ何か
「おォい、どう見てもやばいヤツだってあれ! ギュンギュンエネルギー貯めてるもん!」
「メンドクセェ……秒でスクラップにしたるわクソロボ!」
吹出クンが悲鳴を上げ、爆豪クンが獰猛に牙を剥きながら駆け出し──しかしそれよりも早く、仮想敵へと攻撃が繰り出された。
「ん。──大」
ゴドッ! と仮想敵を上から押し潰したのは、先程、仮想敵自身が破壊して半ばで折れたベンチである。
「デクくんっ」
「任せて──5%!」
次いで現れる緑の閃光。麗日サンを背負った緑谷クンが超スピードで仮想敵の傍を通り過ぎた──そこまでの流れを理解したのは、彼らがいつの間にかすぐ側まで接近していた後だった。
突然の登場に驚くオレたちの目前では、麗日サンの個性で宙へと浮かび始めた仮想敵を瀬呂クンがぐるぐる巻きにしながら地面に縫い付けている。
「何してんだゴルァ、クソデクに丸顔ォッ! テメェらが手ェ出さなくても俺1人でどうにでも出来てたんだよッッッ!!」
「解決したのにキレられた…!?」
「本当にいつでもどこでも爆豪くんは爆豪くんなんやね…」
…さてさて。テープ達磨と化した仮想敵の近くでは爆豪クンがMVPである緑谷クンと麗日サンに理不尽に噛みつき、そんな爆豪クンにここぞとばかりに煽り散らかそうと近づく物間クンを吹出クンが妨げ、ウェーイ状態の上鳴クンを瀬呂クンがやれやれと介抱したり、ベンチを元の大きさに戻しこちらに歩いて来る小大サンを視界に捉えたり……。
取り敢えず色々とあったものの、何はともあれ無事問題解決である。原因と言うか元凶たるサポート科生徒サンについては、向こう側からドス黒いオーラを放ちながら近づいて来るパワーローダー先生に任せておけば大丈夫の筈だ。…南無三。
「む、むぐぅ…?」
呻き声と共に、物間クンに絞め落とされたサポート科サンが意識を取り戻…すや否や、ひぃと悲鳴を上げ飛び上がる。まァあんな様相のパワーローダー先生を目撃してしまったらその反応も至極当たりま──
「ま、マズイッ!? アイツにはブースターが搭載されているんだ、避け──ッッ!!」
あ? と彼の悲鳴に反応する間も無く、テープ達磨の内側から重厚な駆動音と不気味な
「ッ、小大サ──ッッッ!!!」
直後、ッッッゴ!!! と言う撃音が空間を震わせた。
至近距離での爆音によって飛んでいた聴覚が復活し、土煙が晴れ──と言った面倒な描写は省き結論から言えば、全員無事である。緑谷や物間たちは余波を受け転倒し、それでも精々が擦り傷程度。しかし、手脚に焔を灯した弘原海の突き飛ばしにより辛うじて直撃を避けただけの小大たちも、結果を言えば無事であった。
五体満足。全員文字通り、無事。
──仮想敵の衝撃で衣服の剥がれた弘原海も、肉体の方は無事である。
腕か頭か。厳つい装甲のどこかが引っかかったのだろう、襟から腹にかけての範囲をごっそり吹き飛ばされた弘原海は、言わずもがなおっぴろげである。
透き通った肌から始まり、キュッと引き締まった括れも、そこから上に威風堂々居座った双丘はもちろん、
「…だらっしゃぁあああぁいッッッ!!!」
「「「目ぎゃァアああああッッッ!?」」」
「俺までッ!!?」
咆哮、轟く。
怒り(だと信じたい。見惚れていた訳では無いはずだきっとメイビー)で表情を真っ赤に染めた麗日が叫びながら、瀬呂の肘先から毟り取ったテープでまじまじと目を皿にして一点を見つめて固まる男どもの眼球に厳重な封印を施した。
眼球に直に襲いかかった突然の粘着力に、さしもの爆豪たちも、被り物を引っ剥がされテープを巻かれたパワーローダー共々、地面をのたうち回ることとなる。
「……ふぅ、小大サン無事ッスか?」
努めて冷静に。鼻から流れる赤の所為でえらいこっちゃのよいよいよいとなっている小大は、目線を釘付けにしつつも何度も首を縦に繰り返し振るった。それを確認した弘原海は、もう一度短く息を吐き出す。
努めて努めて冷静に。肉体改造を駆使する弘原海は分泌物やら血流速度などを詳しく知らずとも無意識の内にコントロール、羞恥と怒りを無理矢理抑え込む。
無事に回避に成功したとは言えど、未だ仮想敵は稼働を続けている状態だ。
冷静に確殺する算段を脳内で整えた弘原海は、すぐさま行動を起こす。仮想敵が勢い余り、めり込んだ地中から顔を出すまでのその間。片手でその豊乳を覆い、もう片方にて谷間を弄り──何をどうしたのか直後、
変化はすぐに訪れる。ボンっ、と音を立てたその体は一瞬にして小学校低学年程度の外見の幼さを獲得し、急激なサイズ変換によって脱げた衣服の繭に受け止められた。
在らん限りの声量で。
「
──ごぶぁッ、と。
土中から仮想敵が起き上がるよりも早く飛来した蔓の塊。自身を喚んだ幼女を守る為に駆け付けた茨の聖女は言う。
「……──こんな幼気な子供にその様な邪悪な物を向ける。それだけで罪であると識りなさい」
『標的補足──排除する!』
頭部でエネルギーの充填。片腕にブレード。片腕に銃口。
それぞれに備えられたそれぞれの武器を構える仮想敵。悲しいことに、努力の跡が窺える流暢な合成音声は、それが弘原海たちにとっては最初で最後の一声になってしまった。
「退きなさい
5秒も要らなかった。
1つ1つが万力じみた力を発揮する物が数百。それに呑み込まれた仮想敵がどうなるかなど、わざわざ言うまでもないだろう。
その後としてはこんな感じであった。
男衆が激痛で涙を流しながらテープを剥がす作業に苦戦したり。
漸く駆け付けたイレイザーヘッドとブラドキングがお前たちならもっとスマートに出来た筈だぞこんな時くらい素直に褒めたらどうだイレイザーいちいち突っかかるなブラドと互いの教育理念から小競り合いが起こったり。
悲鳴なのか謝罪なのか判別不明な何事かを叫ぶサポート科生徒がパワーローダーに引き摺られて行ったり。
それらを眺めながら、妙にキラキラツヤツヤした塩崎に撫でられる・頬擦られる・梳かされるとなすがままのメスガキ弘原海が遠い目をしたり。
兎にも角にも、そんなこんなで今度こそ一連の騒動は一件落着となる。
「……………、ん」
──終ぞ弘原海は、自身に向けられるその視線に気付くことはなかった。
〜今回発動した主人公の能力一覧〜
『無知無知』
着るだけで肉体が育ち、簡単にホルスタイン娘になれる。
最終的に記憶と知識を失い廃人になる。
『
空間を歪曲させて一定の厚さの物を対象に無理矢理空間を創り出す。対象の厚さによって空間が閉じる速度が変わり、厚ければ厚いほどすぐに閉じてしまう。
閉じる時に巻き込まれると死にはしないものの強制的に壁尻状態になってしまう。