男が目覚めるとそこは流氷の上だった。何も無い、食べ物も飲み物も無い、一面の銀世界から生きて帰ることができるか。そんなお話です。

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ある日、友人に「タイトル決めるから小説書いてよ」と言われ書いたやつです。流氷なんてタイトル、真面目に書いたらもれなく明治文学だったので、思いっきりはっちゃけました。評価、感想貰えると泣いて喜びます。作者が。


流氷

 例えば流氷は家だ。そこで生活しているなら。

 例えば流氷は船だ。それで旅をしているなら。

 例えば流氷は私だ。そこに私しかいないなら。

 

 そんなふうにカッコつけてみるが現実は変わらない。どうやら俺は取り残されてしまったようだ。流氷というやつに。

 

 別に特別な理由があって流氷の上にいる訳では無い。別にそれが仕事だとか、そういう使命があるとか、そんな訳ではない。ただ家にこもっているだけのダメな自分を変えようとしてはるばる流氷を見に行った。そこで満足感に浸ったあと寝転んでいたら、案外気持ちがいい氷の上で眠りに落ちて。気がついたら大海を泳ぐ流氷の上に一人取り残されてしまっていたという訳だ。

 

「はぁ、どうしたものか」

 

 そうは言って見たものの、目の前に広がるのは白と青だけ。見ていると目が逝ってしまいそうな景色を前に、呆然とするばかりだった。

 

 こんな夏休み明けと定期テストと体育祭が一緒に来るような絶望的な状況でも案外脳は冷静なようで、こうなってしまったからには飲み水や食料を何とか確保して生き延びたいという気持ちに変わっていった。

 

 しかしみなさんもご存知、ここは流氷の上。果実のなる木どころか、苔のひとつも生えて居ないのだ。それどころか水の方も、いや、氷を舐めれば水分は何とか補給出来そうだ。食料は、最悪自分の脚でも食べれば良いだろう。まぁそんなことをしてしまえば色々な方面に怒られたり、コンプライアンス的にもNGだろうから、多分することはないだろう。

 

 ────────前言撤回だ。

 

 綺麗に食った。4本食った。白と青のコントラストに単色が追加されて、完全にファミリーマートだ。そんなブラックジョークが頭をよぎる。ブラックなんて目にも止まらない世界にいるのが滑稽な話だ。自分を鏡で見れるなら黒は見れるかもしれないが、鏡なんて便利なものはここには無いし、そんなに黒を見たいわけじゃない。バカヤロウ。

 

 そんなことで、もう自分の体で食いつなぐなんてのは無理だ。更に食料問題は深刻化してしまった。後悔している。氷しかないとタカをくくって俺の手に手をつけたのがいけなかった。探すべきだった。もし俺の死体の近くにゼンマイのひとつでも生えていたら、俺は永遠の笑い物になってしまうだろう。

 

 ヤバい、餓死しそう。本能が告げた。文面では、1行しか進んでいないだろうが、その間2日、俺は飲まず食わずなのだ。いや、正確には氷をペロペロと舐めてはいるが、これを飲むと判断する人も、ましてや食べると判断する人もいないだろう。

 

 俺がそんな絶望に駆られていると、空を何か昏い物が覆った。最悪だ、雨が降るのだろうか。水分は足りているのだ、氷をペロペロしているから。欲しいのは食料だ、雨じゃなく飴が降ってきて欲しいなんて、今どき小学生でも言わないような事が頭をよぎった。

 

 昏い物はだんだんと迫ってくる。光はより刺さなくなり、周りの色も全て黒に変わってしまった。それでもまだ空は俺に近づいてきて、

 

 ──────私を押し潰した。

 

「おかーさん。ありんこつかまえた」

「新しいお水に交換しようね」

 

 氷がグラスにぶつかり、カランと音を立てた。

 


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