「どういうことだ?」
痛む体をさすりながら問いただす。ユウリはキテルグマの入ったモンスターボールをしまいながら答えた。
「どういうことも何も言った通りよ。ガレキはきっとポケモンに好かれる性質なの。気難しいはなこやそぼうポケモンのモノズが懐いているのが私の根拠ね」
「それ根拠になってんのか……?」
訝しげにそう訊ねると、ユウリは「だって思い出してみてよ」と切り返す。
「ガレキがポケモン苦手になったキッカケのカジリガメいるじゃない? 飼いならされてない野生のポケモンにかじられてトラウマ程度で済むのは普通に考えてちょっとおかしいよね?」
「……まあ、カジリガメにやられたわけだからな……普通にかみ砕かれて死んでてもおかしくはないが……」
言われてみるとそうだった。ポケモンを持たない子供は基本的に町や村から出てはいけないことになっている。特に草むらに入るのなんてもってのほかだ。ポケモンは人間のパートナーであるのと同時に、脅威でもある。子供をさらうポケモンや命を奪うポケモンもいるし、そうでなくともポケモンは力が強い。事故が起こることも少なくないのだ。
……そう、あれはまぎれもなく事故だった。普通なら死んでしまっていてもおかしくないほどの……。
「つまり何か? あれも一種の親愛の表現か何かだったと?」
「多分ね……そう考えれば色々合点もいくし。ほら、朝仕事に行く前に野良のワンパチによく絡まれてるじゃない? あれだって冷静に考えたらおかしいよ。普段は草むらから出てこないのに……」
「……」
黙り込んでしばし考えこむ。もしかすると本当にそうなんだろうか。自分が怯えていただけで実は自分はとても懐かれていたと? いやしかし……
「そうは言うが好きだから傷つけるって例もあるし安心材料にはならないだろ」
「自分一人の物にならないから殺して永遠に自分だけのものにするねっていう女子よくいるしね……」
「いやそれはそうそういねえだろ!?」
とんでもないことを言い出すユウリに思わず目を丸くするが、当のユウリは「いや結構見かけるけどねぇ」と何やら恐ろしいことを呟いていた。そんな修羅の国だったのかガラルは。ブラッシーとハロンからあまり出る機会がないので知らなかった…。
「ま、ガレキがポケモンに好かれるタイプだったからって今すぐどうなるって事でもないんだけどね」
「まあ…そうだろうな。俺自身の問題なわけだし」
うーんと唸る。例え好いていてくれても俺の受け取り方をどうにかしなければどうしようもない話だ。…と、ユウリが何やらにやにやとこちらを見つめているのが見えた。
「…どうしたんだ?」
「いや、なんていうかね。ガレキは大丈夫だと思うよ?」
「はぁ?」
訳が分からず怪訝な顔で見つめ返すと、ユウリは俺の膝の上でぐっとしがみついていたモノズを指さした後笑った。
「この調子ならそう遠くないうちに変われるよ。そんな気がする」
「…そうかねぇ」
ユウリの笑顔に勢いで流されそうになるが、俺は少し口角をあげて返した。ユウリはいたずらっぽく笑うと、「大丈夫大丈夫」と念を押してドアの方を指さした。
「んじゃ、そろそろ行こっか!」
「え? どこに?」
急なことについて行けず間の抜けた声をあげると、ユウリはポケットから取り出したそれをこちらにぐっと突き出して構えて見せた。
「その子のモンスターボールを買いに行くのよ!」