俺とモノズの物語   作:三丁目の木村さんの親戚の息子

7 / 16
第六話

「……寝苦しいと思ったらお前か」

「……ぷぅ」

 

 目の前で間の抜けた面を晒していたのはモノズだった。小型ポケモン用のベッドをユウリに押し付けられていたので毛布を敷いてその中に入れてあげていたのだが、どうやら夜中に起きて俺の布団に潜り込んできていたらしい。変なにおいがしてなにやらはながぬっちょりと湿っているので、俺の鼻をかじっていたらしい。鼻がふさがって息苦しくなって目が覚めてしまったようだ。何故鼻を……と袖で鼻を拭っいながら考えていると、「ぷぅ……」と鼻提灯垂らしながらモノズがばたばたと手足をばたつかせた。口をパクパクさせて何やら探しているようだ。

 

「……」

 

 俺はふとシーツを棒状に捩ってモノズの口に突っ込んでみた。ぐにぐにと二、三回噛んで、ぷぇっと吐き出す。お気に召さなかったようだ。今度は指を突っ込んでみる。モノズはそれをぐにぐにっと噛み、舌で俺の指をぐいと動かし位置を調整して、満足したように咥えた。

 

「……なんで俺の指なんだ……」

 

 やっぱりなんか甘いのでも沁み出しているのだろうか。ちょっと不安になってきたが、まあ考えてもしょうがない話だ。

 

「まだ四時か、起きるには早いけど寝るのも早かったからな。起きて色々準備……って指咥えられてたんだったな俺……」

 

 起こした体をまた横に倒し、もぞもぞと布団の中に潜り込む。今朝は冷え込んでいるようで、まだ暖房をつけていない我が家では布団の中は中々の居心地だった。

 今日は休みだし、二度寝するのもありだろう。

 

「……がぁ?」

「ん? 起こしちまったか?」

 

 布団の中でもぞもぞとモノズが体をよじる。目が見えていないからか、俺の指をがっちりと咥えたまま前足で俺の腕をぺしぺしとたたいて、手繰るように俺の体に身を預けてきた。

 

「ぴぃ♬」

 

 横になった俺の腕の中で、モノズは俺の腕に抱きつく様にしてまたすやすやと寝息を立て始める。

 

「……まあ、どうせ二度寝するしいいか」

 

 身動きが取れなくなってしまったが、寝るつもりだったので問題はない。目元は毛で隠れて伺えないが、暗がりの中でも幸せそうだとわかるいい笑顔だ。

 

「……」

 

 この子を見ていると、自分は本当はポケモンが怖くないのではないかと思ってしまうが、それはこの子がまだ生まれたばかりで小さいからだろうと思う。ポケモンは成長が早いし、きっとあと数日もすれば立派な歯が生えそろうだろう。それにこの子はそぼうポケモンのモノズだ。目が見えないからあちこちぶつかって危ないし、なんでも噛みつく習性もあるらしい。この子もいつかきっと強い歯でなんにでも噛みつくようになるだろう。何故か俺の指がお気に入りらしいし、そうなった時俺は今みたいに落ち着いていられるだろうか。昔のトラウマを思い出して、この子を怖がってしまうんじゃないだろうか。そう思うと辛い。誰かに怖がられるのは……嫌なものだ。この子にそんな思いはさせたくない。させたくはないが。自分がそう簡単に変われるようにも思えないのだ。

 

「……ぴゅぅ」

 

 間の抜けた声を漏らして、モノズは俺の腕の中で笑った。何かいい夢でも見ているのだろうか。とても幸せそうだ。

 

「……まあ、いいか。そん時はそん時だ」

 

 今はただ、この子の笑顔を見ていよう。いつかこの笑顔を守る為に、自分が変われる日が来ると信じて。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。