連載次がいつになるかわからないのでお蔵入りしてたのを

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憑依コペルのせいで逆行キリトさんの胃がマッハでヤバイ

 どうやら僕は憑依というものを体験したらしい。

 

 生前の記憶はかなりあやふやだが、成人していた気がするので今の身体は間違いなく自分のものではない。最初は元の身体の持ち主に申し訳なくて、一生懸命元に戻ろうとしたが無理だった。

 怪しいお祓いとか怪しい御守りとかに手を出そうとしたら身体の両親が酷く動揺して、一体何があったのかと家族会議になってしまった。仕方なく身体を返す方法を模索しながらも、身体の持ち主のように振る舞って生活していた。

 しかし、他人のふりをしたまま生活するのはなかなかストレスがかかる。その息抜きのために僕は生前の自分の名前は忘れてしまったので“コペル”という仮の名前を自分につけ、SNSサイトなどで交流をした。

 

 そんなおり、SNSサイトの友人からβテストが近いソードアート・オンラインのことを聞いたのだ。これだと思った。コペル(自分)として生きることの出来る仮想現実。僕はすぐにβテストの申し込みをし、コペルとして生きる時間を得た。

 ソードアート・オンラインは素晴らしかった。現実そのものな感覚に、僕の想像した“僕”の姿。本当のコペルが生まれたのだ。仮の身体ではなく、コペルだけの身体が。

 

 だがそうそう上手く行くはずもなく、茅場から告げられたらデスゲームのお知らせにやってしまったという思いで頭を抱えた。いまの僕はコペルであるが、そのコペルの死が肉体の死に直結するというのは大変問題である。あの身体は僕のものでないのになんということをしてくれたんだと茅場を呪った。

 しかし、いくら茅場を呪っても何も生まれない。とにかく早くクリアする。そのためにまずは装備だと思い至った僕は、アニールブレードを取りに全力で駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 黒の剣士こと、キリトは逆行者である。

 

 75階層のボスを攻略して、その後に何かが起きたせいで死んだはずだった。しかし今、見覚えのある展開に口をポカンとあけている。赤いローブを被ったおどろおどろしいゲームマスターの姿に手鏡によって姿が変わるプレイヤー達。

 まるで訳が分からない状況だが、廃ゲーマーの性か、気が付いたら全力でホルンカに向かってダッシュしていた。クラインとの会話もスキップスキップキャンセルし、ただホルンカへ向かう。道中混乱仕切った頭で状況を整理しようとしていた。

 

 まず前提として、75階層で何かがあって死んだ。理由はどうしても思い出せないがボス討伐後故にPKやボスが討伐できていなかったことによる不意打ちで死んだと仮定する。

 そして気が付いたらソードアート・オンラインのデスゲーム開始時点に戻されていた。訳が分からない。どうせならソードアート・オンラインが始まる前に戻してくれたならとも思ったがそこは置いておく。

 現時点でキリトは前回のキリトの行動をなぞっている。廃ゲーマーの性のせいもあるし、下手に変えることによって起きるバタフライエフェクトを懸念したというのもある。

 これから向かうホルンカで起きる最初の悲劇について思った瞬間つきりと胸が痛んだ。前回、散々思ったのだ。あのとき、彼があんなことをしなければ……と。

 

 

 

 

 

 コペルはホルンカに到着してすぐにクエストを受けてリトルペネントを狩りに来た。そうしたら、意外や意外。既に先客が居たのだ。

 確かにデスゲーム開始で茅場に対してザラキを唱える無駄な時間があったが、それなりに早い段階で行動したつもりだったのに。

 

「はじめまして。コペルっていいます。あなたもアニールブレード目当てですか?」

「……あぁ。キリトだ。」

「良かったら一緒に狩りませんか?ソロは心細くって……」

「……あぁ」

 

 下手に争うなんてこれから共にクリアを目指す仲間に対して下策だと思ったので協力を申し出た。

 なにやら緊張しているのか言葉も少なく表情も堅いがOKをもらえた。やっぱりデスゲームなんて怖いよね。

 

 それにしてもキリトさんは“上手い”戦い方をするなと思ってじっと見てしまった。視線を感じたのか、パッと振り返ったキリトさんに謝りつつも誉めるとぎこちなく謙遜された。……キリトさんはどうやらコミュニケーションが苦手みたいだ。

 ゲームにはまっている人なんてたいていはそんなもんである。じっくり時間をかければ打ち解けてきて仲良くなれるさと楽観的に見ていたが、キリトさんはなかなか警戒心が強かった。

 二人で狩りはじめてそれなりの時間が過ぎた。そろそろ帰ろうかと相談した瞬間、見覚えの無いモンスターが目に入った。

 

「あ、花付きだ」

「……まて、実付きも一緒だ。奴らは隠蔽が効かないタイプのモンスターだ。下手に刺激したら逃げ場がなくなる」

「へー、詳しいんですね。僕はもたもたしてたのでβテストの時はアニールブレード取ったところで終わっちゃったんで詳しいことはさっぱりで」

「……俺が実付きを抑える。花付きを頼む」

「え、でもキリトさんのが沢山倒してたし、最初はキリトさんに譲りますよ」

「……いい、俺の方が確実に抑えられる」

 

 キリトさんの表情が更に堅くなった。キリトさん……解りづらいけど、凄くイイ人なのかもしれない。

 

 キリトさんが実付きを抑えているうちに花付きを倒した。アイテムもゲット。とりあえず近くにいたリトルペネントを全部片付けるとトレード申請を出した。

 

「どうぞ」

「……コペルが手に入れたものだろ」

「いや、だってどう考えてもキリトさんのが頑張ってたから。僕はゆっくり探すので大丈夫です。言い方は悪いですが、キリトさんのおかげで安全にレベリング出来たようなものですし」

 

 まだ何か言いたげなキリトさんに強引に押しつけると、パーティを解散しようとした。

 

「……まて」

「はい?」

「後ちょっとくらい、手伝うよ」

 

 やっぱりキリトさんはイイ人だ。

 

 

 

 

 

 

 キリトは混乱していた。

 

 このコペルは、以前と同じコペルなのか。もう記憶が風化していて前回のコペルとの会話を全て覚えているわけではないが、コペルはこんな丁寧に話していただろうか。同世代ということでもっと打ち解けてフランクに話していたような気がする。

 それだけではない。花付きを譲ろうとしていた。前回はMPKを企む程度には執着していたのに、今回はそうでもない。先んじて言った隠蔽の仕様についての話しのおかげかもしれないが、消えない敬語と丁寧な態度はもしや警戒されている証拠ではないか。

 だとしたら何故。そう思った瞬間、脳裏によぎった考え。

 

 もしかして、コペルも二度目なのではないか?

 

 黒の剣士ことキリトは、ありもしない仮定にとらわれてどつぼにはまっていった。

 このままコペルを野放しにしていいのか。

 いつか牙を向いてくるのではないか。

 

 

 

二体目の花付きを倒し、すっかりキリトに好感を持ったコペルが長期のパーティの誘いをかけることによって彼の勘違いは加速した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つまるところ、憑依コペルのせいで逆行キリトさんの胃がマッハでヤバイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このあとはコペルを怪しみながらも下手に離れると何が起きるのかわからないので一緒に頑張っていく。

今更バタフライエフェクト(笑)なんて言えない位の乖離が起きたので開き直ったキリトさんの強くてニューゲーム(ただし獅子心中の虫?付き)

 

キリトさんの誤解が解ける日は遠い……。

 


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