彼の博麗の宮司録   作:弥生月 霊華

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第四話 命蓮寺と博麗神社、後氷精

「行ってきます!」

 

「おう、いってら」

 

ようやく梅雨が明けて、まずは人里近い命蓮寺と神霊廟からめぐる事にした。妖精からは僕が求める様な話は聞けないだろうし、何よりずっと魔理沙さんの手を借りている訳にも行かない。それに出来る事なら幻想郷を人妖入り混じる活気あふれた場所にしたいから、人間に説法を説く宗教家の妖怪?にまず色々聞きたかった。その中にもしかしたら滑る様に空を飛ぶヒントもあるかもしれない。魔法は発想が命だって言ってたし、それは僕の霊術にも通じる事があるだろうから。

 

「その間霊奈ちゃんの事を任せっきりにしちゃうけど」

 

そもそも結界の維持が精一杯な宮司が言えたことじゃないけど。とにかく今は浮遊じゃなくて飛べる事を目標に頑張ろう!やろうと思えば浮遊石に乗っかって飛ぶことも出来るけど、そうじゃないんだ。

 

階段を降り切ったら人里へ向かい、人里東から入って南方面に向かって大通りを歩く。南の出入り口を出て道成りに進めば命蓮寺だ。今でも信徒が多いから人の出入りも多くて、妖怪が妖怪らしく過ごしている姿を見れるのは人里視点、ココしかないのかもしれない。神霊廟は、あそこはどっちかって言うと仙人の集まりらしいし。

着いた。まさにお寺ってイメージのこの場所は、妖怪寺って陰口をたたかれた事もあるらしい。いつの間にか公認の通り名になっていたから、今ではどちらでも通じるし悪口にもならないそうだ。

博麗神社よりも年数が経ってそうな門を潜り抜ける。入信者、入信希望は常時受け付け中と言う旨の張り紙が張ってあったけれど、それでも厳格な雰囲気を纏っている気がする。宗教戦争では負けるかもだけど、出来れば仲良くしたい。

 

「!おはようございまーす!」

 

「!?お、おはよう、ございます?」

 

びっくりした!箒をもって辺りの掃除をしていた、えっと、幽谷響子さん。が僕の姿を見てすぐに声を掛けて来た。軽く三十歩位離れた所から。つまり僕にとっての死角からなわけだけど、もう少し近づいて来てからでもいいんじゃないですかね。音量が大きいから離れた所から声を掛けるようにでも言われてるのかな。

 

「新顔さんですね!ご用件は何ですか?入門?入信?」

 

「どっちでも無いです。ええ、っと」

 

「おや?」

 

パタパタと近づいてきた響子さんは勢いよく質問を重ねて来た。どう説明したらいいかなって思ってると、おもむろに顔を近づけて来た。今度は近いです!

 

「博麗の新しい宮司さんですね!聖様に会いに来たんですか!、、っいて!」

 

声が、とても大きいです。耳を思わず塞いでしまった。失礼だったかなと思っていたら、突然響子さんが頭を抱えた。少し上を見ると金髪に黒が混じった大柄で装飾がトラっぽい人がいた。って事は、

 

「寅丸星、さんですか?」

 

「はい。始めてお目にかかります、寅丸星と申します。家の山彦が失礼しました」

 

凄く厳かな神様、魔理沙さんに聞いていた印象とは全く違う。紫さんが圧力かけてる時と少し似てるような、緊張してる?

 

「聖様の所に御案内します」

 

「はい、お願いします」

 

何となくだけど、その一連の動作がぎこちなく思えたのは、僕の気のせいだろうか。

 

「本日は命蓮寺にようこそお越しくださいました」

 

案内された部屋でお茶を出されて待っていると、聖白蓮さん?が入って来た。優しそうな人だと思ったけど、ピンと張り詰めた様な空気が重々しくて息苦しかった。

 

「初めまして、博麗出久、です」

 

気圧されちゃだめだと、言い方がアレだけど友好関係を結びに来たんだと思いなおして(その実只の知的好奇心)頭を下げる。手土産の一つでも持って来ればよかった。

僕の対面に座った聖さんは自己紹介をして、それでどういったご用件かと聞いてくる。歴代の巫女は他の宗教に干渉する事が少なかったって本に書いて在ったけど、それは間違いじゃないだろうか。だって目の敵にされてるみたいに感じるし、実際どっかから様子を見てるのか視線が少し痛い。

 

「百年くらい前の、星蓮船異変の事について聞きたくて来たんです」

 

「は?」

 

威圧感の消えた、あっけにとられた様な声だった。そんなに予想外だったのかな。

 

「僕の、博麗のサポートをしてくれる魔理沙さんの事とか、人が伝える歴史じゃなく

て、どういう気持ちだったのかとか、そう言うのを聞きに来ました!」

 

途中から鼻息荒くなってる気がするけど気にしない、僕は実際に見た事聞いた事を知りたいのであって事実だけを淡々と知りたい訳じゃ無いんだ!弾幕だって、魔理沙さんや八雲家だけのを練習してたって臨機応変さが無くなって癖が付きやすいだろうし。

 

「後は、出来ればで良いんですけどスペルカード戦も出来たらなって」

 

 

 

 

 

 

 

目の前の少年はそう言って小恥ずかしそうにはにかんだ。博麗の、と星から聞いて警戒してしまったのは、どうやら無駄だったようですね。

 

「解りました。ではまず歴史から話さねばなりませんね」

 

緊張が顔に出ていたのか、あからさまにほっとした様子の新しく初々しい宮司さん。きっと彼は、良くも悪くも幻想郷に影響をもたらすのでしょうね。

霊夢以降、巫女は皆宗教戦争にこそ興味を持ちませんでしたが、幻想郷の在り方を己が一番になる様に仕向けている様な気が有りました。博麗の巫女至高主義とでも言いましょうか、妖怪たちの在り方を力で押さえつけている様な、そんな印象を持っています。しかしそれは人間故に持ちえた警戒心と疑心、そして生存本能が重なり合った結果なのでしょうとそれを受け入れていました。集会でもしようものなら乗り込んで来て、それも一つの畏れで在ったのでしょう。それと同じように、疑わしきは罰せよと言う様な調査をしに来たのでしょうと星も言ってましたし私もそのように思っておりました。私達が幻想郷で初めて会った巫女が霊夢だったので、それが普通、基準で在ったのだと思い込んでおりました。今なら解ります、人間にしては酷くいびつで何よりも異質、それでいて人間らしい一面は妖怪を等しく引き付けて、魔理沙の様な同じ異質の人間も引き寄せる体質を持ち合わせておりました。

 

霧雨魔理沙、霊夢に張り合うかのように台頭する只の人間。魔理沙への最初の印象は霊夢と言う人間の性格や強烈さに埋もれて殆ど見えていませんでした。程度の能力を所有していたとはいえ、捕食される側であろう彼女が、鬼才の巫女と張り合えていたのは人知れない努力かそれとも誰でも出来ると言う弾幕ゲームだったからか。

星蓮船の事について、私は私の知る限りを話しました。けれどきっとこれだけでは物足りないのでしょう。

 

「もしよろしければ他の方からも」

 

「良いんですか!?」

 

……思っていたよりも喰い気味に来られて少し驚きましたが、そうと決まれば善は急げ。折角ですし弾幕戦から入りましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった。博麗のが来てるって言うからどんなもんかと顔を出したら、まさか村紗達と弾幕ごっこしてるとは思わなかった。思ったよりも面白い人間みたいだな。今回の巫女は!

何だかワクワクして来て、スペルカードが余ってたら私も相手してもらおうと思う。だって自分だけ仲間はずれ何て嫌だもんね。

 

「あらぬえ。帰っていたんですね」

 

「聖か、うん!なんか楽しそうだね!」

 

興味半分で顔を出したら、思ったよりも楽しくなりそうなイベントが起こってたんだもん。参加しない手は無いよね!

屋根から縁側に降りた私に、聖はお茶を差し出してくれた。前々から思ってたけど、最近の幻想郷は少しぎすぎすしすぎだったんだよ。正体不明を掲げる以上、私の能力や姿は人間には中々表せない。それを考えると、久しぶりに楽しく遊べそうな人間が来た訳だ。

 

「それが悪いとは言いませんが、私の知る巫女は皆生真面目でしたからね。多少の遊び心は重要ですわ」

 

聖は解ってくれる。それに何だか嬉しそうだ。深くは聞かないよ。何となく同意出来るしね。

 

ピチューン

 

あ、終わった。流石まだ日は浅いと言えど博麗、村紗位なら普通に倒しちゃえるんだね。と言うか久しぶりに無双封印とか見たかも。

 

「つよーい、流石だね」

 

「まだまだです。それに改良まだ上手く飛べないし、それのヒントになればなーって思ってここに来たって言うのも少しあるし」

 

「お疲れ村紗!ねぇ君!ちょっと私とも遊んでよ!」

 

スぺカ戦後特有のボロボロ具合になった村紗に声を掛けて、そのまま決闘を申し込む。私達にとっては遊びでしかないけど、だからこそ真剣にやるし楽しい物なんだよね。

 

「あ、すいません。その、スペルカード切れちゃって」

 

なんだ、つまんないの。まだ枚数が少ないのか。」

 

「声に出てますよ。ぬえ」

 

おっといけないいけない。でもまぁ聞こえてないからセーフかな。

 

「初めまして。博麗の宮司、博麗出久です」

 

「出久、へぇ。私はぬえ。封獣ぬえだよ」

 

「魔理沙さんから聞いてます!凄く厄介な妖怪だって!」

 

あ、村紗が噴出した。確かに魔理沙は“さん”って敬称をつけられる様な柄じゃないし私もちょっと顔が引きつってる自覚あるけど、、ふっ、魔理沙が、あの魔理沙がねぇ!

そんな事はさておいて、私の正体を知りたがる宮司くんをどうやって煙に巻いたモノかねぇ。考察をそんなブツブツとつぶやかれても半分も頭に入ってこないや。

 

 

 

 

 

 

今日で神霊廟も回る予定だったんだけどなぁ。結局夕方の日が暮れる直前まで長居してしまった僕は、お土産に持たされた紙袋(中身お饅頭)を持ち直す。

でも色々聞けた。聖さんには何故か解らないけど謝られた。これが少し謎なんだけど、その後は色々、星蓮船異変の後の蜃気楼とか深秘録とかの話までしてくれたし飛ぶ練習も少し付き合ってもらったし色々なスペルカードが見れたし収穫はあった。何より新しいスペルカードのヒントを貰ったから、帰ったら早速試したい。

 

「雪符「ダイヤモンドブリザード」!」

 

「うわぁっ!」

 

人里から出て、博麗神社への階段に向かう途中に居た氷精にスペルカードを放たれた!って何で?!兎に角お饅頭がぐちゃぐちゃにならない様に走り抜けちゃおうか。

 

「そこのお前!もう遅いし人里に帰れ!」

 

そう言えば魔理沙さんが、妖精は自然界の力の流れとかが人型化したものだって言ってたっけ。そのせいか知らないけど、全体的に頭が悪かったり力が弱かったりするって。と言う事はスペルカードを行使したこの氷精は割と高位な部類で、やり方はともかくそれなりに心配しての行動なのだろう。

 

「大丈夫だよ!僕はこの先に住んでる、、」

 

「何言ってんだ!霊夢はまだ一回休み中だろうが!さては泥棒だな!」

 

「えっ?違う!」

 

霊夢?一回休みって何の事だ?

 

「凍符「パーフェクトフリーズ」!」

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

駄目だ聞いてくれない!割とスピードのある丸弾を避けっ!

 

 

後に出久はこういった。止まるなんて聞いてない。と

 

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