彼の博麗の宮司録   作:弥生月 霊華

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ヒロアカの時間軸が知りたい今日この頃。西暦何年くらいと言う記述や具体的に個性が発現して何年くらいたったと言う情報が一切ないから結構つらいとです。


第五話 永遠亭にて、拾い主

かつて無限に続くとさえ錯覚させた廊下にて、不死鳥の名を冠する娘、藤原妹紅は足を止めた。先導していた月の姫、蓬莱山輝夜はそれに気づき同じく足を止めて振り向いた。

 

「どうかしたの?」

 

耳を澄ませるかのように目を閉じて集中していた妹紅に尋ねた。

 

「何だか、今日は騒がしいな。例大祭でも無いだろ」

 

満月の日に餅つきを行う永遠亭では、その日必ず騒がしく且つ夜遅くまでどんちゃんしているのを知っている彼女は不思議に思ったのだ。朔の月のこの日に兎たちが浮き足立っていると言う事実に。

 

「ああ、その事ね。何でもないわ。ちょっと、特別な患者さんが運び込まれてきただけなのよ」

 

「特別な患者?」

 

「そう、貴女が見つけた事になっている、あの少年」

 

ゆったりと含みを持たせた裏が有りそうな声音で輝夜が言う。妹紅は察しがついたのか、ああ、と一言声に出した。そしてその事に興味を失ったかのように歩き出す。

 

「あら、合って行かないの?」

 

てっきり興味を持つモノだと思い込んでいたらしい輝夜が目を丸くさせた。いつの間にか出したらしい扇で口元を隠してはいるが、きっと開いた口が塞がらないと言った状況だろう。

 

「私に白羽の矢が立った理由位、解ってるつもりさ」

 

妹紅は輝夜、永琳と同じく不老不死の蓬莱人である。能力柄紫、慧音の能力が効かない輝夜ほどではないにしろ、歴史の書き換えやそれによって起こる矛盾をある程度ではあるが妹紅も認識する事が可能である。それが意味する事は、話をある程度理解している彼女らには最初に話してなるべく話を広げないようにと先手を打ったわけだ。前にも書いた通り、妹紅が無縁塚にて拾った子供、が偶然霊力が高かったと言う体で出久は博麗神社に居候していた設定なのだ。

自傷気味に笑った妹紅にため息一つ。折角の面白そうな事なのにと輝夜は残念そうだった。

 

「別に、裏口合わせる為だけなんじゃないの」

 

独り言のように呟いたその後ろで、普段は月に隠れて視るモノの少ない星たちがらんらんと輝いていた。

 

 

 

 

「それでは!明日にはお帰えししますので!」

 

敬語に成り切れていない敬語を話して去って行った鈴仙・優曇華院・イナバを見送って、魔理沙は空を仰いだ。

 

(馬鹿に負けてどうすんだ)

 

例え不意打ちであったとしても避け切るべきだと考えてから、そう言えばパーフェクトフリーズはそれなりに初見殺しな弾幕だったなと思い直す。チルノは出久を負かした後、気を失った彼を人里の慧音の元へと運んだ。実際に会った事はないが、面識がある設定の慧音は万が一の事を考えた上で永遠亭へと運んだと言うのだ。その事を伝えに来た鈴仙はちゃっかり茶をしばいてから孵ったためサボり目当てで言いに来たのだろうかと疑ってしまう。

 

「チルノに負ける宮司とは、特訓が足りないのではないですか?」

 

不意に後ろからした声に振り向く。そこには酒瓶を一つ持った藍がいた。また飲むのか、思いはしたが言葉にすると楽しみを取り上げられてしまうので言わなかった。

 

 

 

トクトクと注がれた酒を煽り、ついでにと用意した団子を口に放り込む。うん、我ながら美味しい。

 

「月見酒の割には風情が無いぞ」

 

うるさいなぁ。こういう気分だからいいんだよ。

 

「本題、何しに来たんだよ」

 

「なに、色々な勢力と合わせているその心を聞きに来ただけだ」

 

歯に衣着せぬ物言いで藍も酒をちびちびと飲む。

 

「私が人間だった頃、って題名で感想文でも提出させようか?」

 

単なる興味本位の行動に裏は無い。それにしても月が綺麗だなぁ。言わないけど、言ったら告白と捉えるんだろうかこの狐は。

 

「何だ、そんなことか」

 

何だとは何だ。本人からすれば大切な事だろうさ。

 

「でもまぁ」

 

一区切りして言う。分けるなよ、言いたい事はさっさと言って欲しい物だ。長寿になればなるほど本心をさらけ出す事が出来なくなると言うからな。そう言う私も、出久にとってはそれなりに凄い人と言う枠組みで居たいから結構頑張っている。

 

「霊夢の時とはまた違った幻想郷になるかもな」

 

あの時霊夢はまんざらでもなさそうではあったが、人間本意で巫女をしていたのには変わりない。いざとなった時に人間の味方である事が博麗の条件なのだ。

 

「お任せ下さい!もう妖怪神社とは呼ばせません!」

 

宮司か巫女かの霊力によって姿を現す狛犬が、久方ぶりに神社に現れた。

 

「おー、久しぶり」

 

「おとなしく帰ってくれるとは思えないがな」

 

片手を上げて挨拶をする横で、藍は苦笑しながら同情交じりの言葉を言う。妖怪たちのキャラが濃いのはもう仕方ないだろ。敬語の従者キャラはそれなりに被っているから尚更影が薄くなりやすいし。

 

「へへへ!お久しぶりです!それで、今巫女はどちらに?」

 

あ、その辺出てこないときは把握できてなかったんだ。さて、最初から話すとなると面倒だが、と思って藍を流し目で見れば知らん顔。どうやら秘密にしておけと言う事らしい。狛犬、犬だから嗅覚的に大丈夫かと思ったが、単純だし大丈夫か。

 

「一から説明するの、めんどいんだよな」

 

 

「う、、、ん」

 

ゆっくりと意識が浮上して来る。何だか頭が痛い、今日の夕ご飯何だっけ、そう言えば霊奈ちゃんにお土産でも買えば良かったかな、。あれ?

 

がばッ

 

「いっッて!」

 

大体の事を思い出した僕は勢いよく起き上がり、痛みで頭を抱える事になる。じわじわと痛む傷には包帯が巻いて在って、僕はベットの上に寝かされていたみたいだ。うう、、氷精にやられたなんて魔理沙さんならもう知ってるだろうなぁ、、、、しごかれる。

 

「お目覚め?意識ははっきりしているみたいだけれど」

 

ひょっこりと和風何だけど障子じゃない扉から姿を見せたのは長い銀髪を後ろで緩く三つ編みした人、八意永琳さん、だよね?

 

「名前とここに居る経緯を言えるかしら?」

 

「博麗出久、、氷の妖精のスペルカードで気絶した」

 

名乗られてないけど多分八意さんで合ってると思う。少し部屋を見回すと、窓から竹林の景色と同時に星空が隙間隙間に見えた。?!

 

「やばい!」

 

「大丈夫よ、魔理沙には優曇華から伝えたわ」

 

あ、良かった。でもそれってこの事が包み隠さず伝えられたって事で、ああ~!絶対しごかれるぅ~!

 

「ああ、まだ名乗って無かったわね。八意永琳、医者じゃなくて薬師だから、あまり外科手術は得意では無いの。宜しくね、博麗の宮司さん」

 

今から嘆いても仕方ないし、直ぐに安静にしてと言われてしまってはそれ以外にすることが無い。八意さんは直ぐに退室しちゃったから話し相手もいない。いつもならベットの中で組紐編んでるんだけど、今日はそれもないしさっきまで寝てたから眠れもしない。安静にって言われたし、目をつぶってるだけでもいいか。

 

それにしても、今日だけでいろんなことがあったな。村紗さんと雲井さんと、あと結局ぬえさんともスペルカード戦したし、(割とボロ負けだった)魔理沙さんでも知らないだろう舞台裏の話も魔理沙さんが人だった頃の話も聞けた。霊夢、さんの事も少しだけ聞けた。けど、、何か違和感が在ったんだよな。雰囲気的に何も聞けなかったけど。

 

カラカラカラ

 

霊夢さん、十三代目の巫女にして歴代最強の霊力と才能を持っていた。が、妖怪をただ対峙するだけの生活に嫌気がさし考案したのが決闘ルール、スペルカード戦。別名弾幕ごっこ。霊夢さん時代の事を調べれば芋蔓式に魔理沙さんの事も出て来るから、魔理沙さんが人だった頃もその辺りなはず。あんまり資料は残ってないらしいけど百年くらい前で、その辺りに外の世界で個性と言う物が発現し始めたらしい。

 

コツコツコツ

 

博麗の歴史を漁るのもいいかもしれない。神社か人里にしか行った事が無かったからその他の幻想郷も探検したいし、時間が足りない位やりたい事が沢山ある。次はどうしようか、明日日が開けたら永遠亭で起こった永夜異変について聞こうかな。今の所、魔理沙さんは昔とても弱くて捕食される側の人間だったとしか聞いてないし。そのせいで霊夢さんの強さが際立ってたとも言ってたっけな。

 

コツ、ピタ

 

それにしても、眠れないなぁ。さっきまで寝てたせい、だよね。羊を数えると良いとか言ったっけ。でもそれスリープとシープのスペルが似てるからって言うダジャレみたいな感じだったんだよな。あー、とりあえずちょっと喉乾いたから何か飲んでから、

 

パチ、ビクッ、、、ジーッ

 

「う、うわぁッ ムグッ」

 

「いっ、いきなり叫ぶ奴が在るか?!」

 

目を開けたら妹紅さんがベット横に立ってたんだよ?!逆光だし髪長いし何か全体的に白いし!叫びそうになったのを慌てた妹紅さんの手が抑えて、そこでようやく妹紅さんだと気が付いた。僕を無縁塚で拾ってきたって言うけど、実は合う事自体僕の記憶の中では三回目で、しかもその内会話をちゃんとしたことなんてないんだよな。

 

「ったく、起きてたのかよ」

 

僕が妹紅さんだと気が付いたのを確認してから、彼女は手をゆっくり放してくれた。恐る恐るって感じではあったけど。

 

「えっと、何か用でした、か?」

 

「用、って訳じゃ無い、けど」

 

言葉を詰まらせて頬を掻くようなしぐさをしてから、妹紅さんはため息をついた。どうしたんだろう?

 

「別に用が在った訳じゃ無い、ただ拾ってきた子供が博麗を継いだって聞いて気になっただけだ」

 

要するに心配してくれてたんだろうか。ありがたいけど、それだけふがいないって言われている様な気がした。暗闇に眼が慣れて来て、妹紅さんの表情まで見える様になって来るまで、僕達は何も言わなかった。

 

「何か言えよ。恥いだろ」

 

照れくさそうにしているって事は、心配してくれてたで合ってたんだと思う。

 

「え、えーっと。ありがとうございます?」

 

「聞くなよ」

 

「いッ!」

 

確かに聞くことじゃないけど、何もはたくことはないじゃないか。

 

「まっ、氷精に負ける様じゃこれから大変だろうが、頑張れよ」

 

無理やり話を終えて立ち上がった妹紅さん。扉を閉めて出てくまで、僕は何も言えなかった。結局、何だったんだろうか?

 

 

「じゃ、気をつけて帰りなさいね」

 

翌日、永琳さんに見送られ僕は永遠亭を後にした。インタビューしようと思ったけれど、その前にまず帰って日を改めてから、と言われてしまった。とぼとぼと人里を歩く。博麗神社は人里を挟んで丁度永遠亭と反対の場所にあるから、割と距離がある。朝食は頂いたからお団子の良い匂いに釣られる事が無いのがありがたい。

 

「お帰り~。チルノに負けたんだってな~」

 

魔理沙さんは呑気にお茶飲んでた。怒られるかと思ったけどなぁ。

 

「別にチルノに負けようが私はどうでもいいけどさ、とりあえず飛べるように成ろうぜ」

 

そう、だよなぁ。体を浮かせることは出来る。けどコントロールする事が出来ない。特訓、するべきなんだよな。

 

 

 




え~っと、そう言う訳で!次回!飛べない宮司と元現人神!
ネタバレだよね?これ。

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