彼の博麗の宮司録   作:弥生月 霊華

8 / 10
次回予告とは関係ない話です。でもやっぱこういう補完話って大切ですよね?って感じです。

別に読まなくても良いやって人は飛ばしてください


彼の夢とヒーローアカデミア 第一弾

緑谷出久が失踪してから三カ月の時が過ぎた。

 

人の噂も七十五日とは良く言ったもので、ヘドロ事件で飛び出した無個性の少年の失踪をマスコミは盛大に盛り上げた。一時は時同じくしてヘドロに襲われていた爆豪勝己でさえも、受験に影響が出るのではないかと危惧したほどだ。

 

死ね、殺す、消えろ、そんな言葉を失踪した人に浴びせかけていたのは彼である。周りは増長しただけ、彼に乗っかっただけなのだ。虐め調査や腫れ物に触る様な扱いの後、この時になってようやく彼は彼の時間を手に入れたのだ。

 

話を戻そう、彼、爆豪勝己には最近気に食わない事がたくさんあった。その内の一つが、失踪した緑谷出久に付いてだ。その事件以周りが自分に近づかなくなった、のは別に気にしていない。彼語で言えばモブが近づかなくなって過ごしやすい、になるだろう。勝手に傷ついているとか思われるのはイライラするが。

 

(どこ行きやがったクソナードが)

 

最近彼は夢を見るようになった。寝ている時に見るアレである。最初は個性にでも当てられたのかと思ったが、ヘドロの一件で病院からの検査を受けているためその線も薄かった。となると精神的なモノか、そう考え着いた時には悪寒が走ったような表情をしていたものだ。

 

出久の母は情緒不安定とも言える状態で彼の母親がちょくちょく面倒を見ているとのことだが、彼はそれに何も聞かなかったし母親も何も言わなかった。彼は緑谷出久の行きそうな場所をそれとなく探す事も有ったり、それ関連の記事や情報収集をすることもあった。最初はツンデレの様な理由を自分のつけてしていた事だが、ニュースで見なくなった辺りからは隠す気もなくただただ切望するかのように探していた。

 

夢、それは当たり前の日常だったそれが少し変化した情景が映る変異。確かに彼ならば一度助けられそうになった出久に絡みには行かなくなるだろうというのは納得できた。だから最低限の、「もしも出久が当たり前に日常を歩んでいた場合に勝己が出久に意識を向けている時の光景」が映し出されるのだろう。何日か悩んだ挙句に出た答えがソレと言う事で、まぁそれなりに心の中で荒れた。

 

彼の一日は早い。そんなありきたりな言葉で初めて見たが、まぁほとんどが察しているだろうが日課のロードワークとトレーニングから始まるが故だ。最近ではそれに加えて夢日記をつける事もしている。少しでも失踪の手がかりになるのではと思ったのだ。でもまぁ、それが本当に「もしも」の世界だと言う確証も無ければ、誰か、ヴィランが仕組んでいると言う可能性だってある。一人で抱え込む理由も無かったが、誰かに話すのは彼の信条が許さなかった。

 

この日の夢の一幕は、いつものそれとは少し違った。

 

『教室、呼んでもいないのに周りを囲む取り巻きに囲まれて良い気になっている俺。デクはとっくに帰った放課後の時間帯。デクが放課後速攻で海岸に向かってると取り巻きに聞いて、俺は苛立ってそれを止めた』

 

そんな五分も無い一幕だったが、割と有力な情報だと思う。これが本当ならの話だが。早速この日やるべき事が決まった。

 

(もっと情報引き出せや夢の中の俺!)

 

避けているのだからしょうがないが、彼からすれば苛立ってしょうがない事でもある。夢の中では自由に動くことは出来ない。故に口止めをしてしまったのだが、何かを続けようとしていたことは確かだ。

 

(オールマイトと、関係があるのか)

 

オールマイトがヘドロを散らすよりも少し前に飛び出してきた、何かしらの面識が在ったのか無かったが故にオールマイトは鼓舞されたのか、色々考える時間は無いのにグルグルと考え込んでしまう。

 

「ぜってぇ、見つけ出してやる」

 

 

海岸には潮の関係で多くのゴミが流れつく。だから気が付いたらゴミだらけの海岸と化していて、その中にはあからさまに流れ着いたモノでは無い粗大ごみがあり、それが容認されている様な場所だった。

 

(何にもねぇじゃねぇか)

 

むしろ何があると思ったのか、それとも誰かがいたとでもいうのか。夕暮れ時の僅かな時を、昔は逢魔が時と言ったか。不気味な位に真っ赤な景色が彼にとってどう見えているのかは解らないが、その見ている日をデクもどこかで見ているのかとガラにもない詩人じみた事を思ってしまう。

 

ヒーローになる。これは変わらない。雄英に合格する、志願者が一人減った程度で自分の合格が揺るぐとは思っていない。それでも、胸にぽっかり空いた何かが埋まる事も忘れる事も出来ない。だから、彼は認識出来なかった。

 

ガリガリののっぽで少し猫背の金髪なおじさんが一人、自分とすれ違った事を視界ではとらえても認識する事は出来なかった。

 

尚、おじさん事八木俊則はかなりドキドキしながらすれ違ったのだが、それを知る事になるのには後幾ばくかの時間が必要になるのである。

 

 




次回は出久くん視点でやりたい。

第二段の補完話は多分一気に飛んで受験辺りになりそうな予感。それまでほとんど書くことないし。
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