ホグワーツ決戦の夜、ハリー・ポッターが選んだのがジニーじゃなくて、ルーナ・ラブグッドだったらどうだったかな、というちょっとした話。
ルーナ可愛いよね。







※この話はpixivにも掲載します。

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これは、ハリー・ポッターの死の秘宝の最終場面近く、ホグワーツ決戦終了直後に、ハリーがジニーではなくルーナを選んでいたらどうだったかなという、小さなイフの物語です。
この話の後では、多分19年後にはハリーとルーナと子供たちがキングズクロス駅にいるでしょう。
ハリーがハーマイオニーやジニーと結ばれていたらどうだったかなと、ちょっとでも考えたことのある皆さんと共有したい。


※作中の魔法生物は原作にも登場しません。全くの捏造です。




※この作品はpixivにも掲載しています。


ホグワーツ決戦の夜に

全てが終わった。

 

後は、グリフィンドールの自分の部屋に帰って泥のように眠りたい、クリーチャーのサンドイッチを食べたいと思ったところで、ハリーは恐ろしい可能性に気が付いた。

彼がグリフィンドールなことは知れ渡っている。

そして、同室のネビルもおそらく英雄だ。

グリフィンドールの自室は確かにハリーの自室だが、五人部屋でプライバシーもへったくれもあったものではないのだ。

 

自室ではなくて、どこか静かなところでゆっくり眠りたい、ロンは絶対ハーマイオニーと一緒にどこかにしけこむだろうし──、と思ったところで、一瞬だけジニーを思い浮かべ、戦争が終わって急速に冷えた頭が「僕の戦争を一緒に戦ったのはジニーじゃない。」と強烈に思った。

ずっと一緒だったという意味ではハーマイオニーも一緒だったが、彼女はもう近すぎて姉妹かもう一人の自分のようなものだった。

 

自分とともに──、そう思った時、ついさっき、自分に道を開いてくれたルーナの顔が浮かんだ。

金髪のけぶるような瞳の大きな、神秘部でも、レイブンクロー寮にも一緒に行った彼女。

彼女と一緒に休めたら、絶対にいい。

誘おう。

突然にそう思った。

今なら必要の部屋には誰もいない。

急がないと、多分ロンがハーマイオニーと一緒にしけこむ、と、「親友」に対して信頼のかけらもないことを思った。

実際、ロンとハーマイオニーは、死の秘宝を破壊するためとはいえ、誰にも連絡も伝言もせずスタンドプレイをしていたのだから、あながちその評価が間違っているとも言い切れない。

 

戦争の熱病に浮かされた間、ハリーは何度もジニーの姿を見かけた。

見かけたが、声はかけなかったし、必要の部屋でのチョウ・チャンに対する態度にはちょっと引きさえした。

ルーナ!

彼女を誘おうと思ったハリーの行動は早かった。

クィディッチで最高のシーカーは素早さが命なのだ。

 

透明マントを着て、再び大広間を横切る。

誰も気づかない。

彼女はさっきの場所に座っている。

誰も気づかない──、はずなのに、彼女がハリーの方を向いた。

「ハリー?」

小声で彼女が囁くのに、ハリーも小声で返す。

見えなくとも、不思議なことに彼女には分かるらしい。

「うん、そう。

ルーナ、来れる?」

そう誘うと、ルーナはくすりと笑った。

 

どこに、とは聞かずに、彼女は器用にほとんど唇を動かさずにハリーに尋ねる。

「不思議だね、いいの?

わたしはハリー、あなたはジニーを誘うんだと思ってたよ。

あなたの選ぶエーディン・オウェングスはわたしでいいわけ?」

ジニーへの恋心と思っていたものは、ハリーの中で、何故か戦争の興奮とともにすっかり萎んでいた。

そもそも、旅に出る前に一度きちんと別れた相手だ。

 

ルーナの言っているエーディンなんとかが何かは全然分からなかったが、大事な時にいてくれたのはルーナで、ジニーではなかった。

さっきも、ハリーが疲れていて休みたいと思った時に、気付いてくれてそう配慮してくれたのはルーナだけだ。

変人で変わっていて、時々不思議だけど、ルーナは誠実で人の真実を間違えない。

「僕は君がいい。

無論、君が嫌なら諦めるけど──。

君が選んで?

僕といてくれるか、ずっと。」

 

見えないはずなのに、ルーナはハリーの立っている場所を違えずに、けぶるような瞳でじっと見つめた。

はたから見ると、何もない空間を見つめる変人だが、ルーナは気にしなかった。

「いいよ。

行こうか。」

ルーナがにこりと笑う。

 

邪気のない笑みに、ふっとハリーの力が抜けた。

我ながらだいぶ肩の力が入っていたのだと思う。

ルーナが一人で喋っていても誰にも気にされないのはさすがルーナだと思う。

それは決していい意味ばかりではないが、今この時に限ってはハリーにとって幸運だった。

 

ひょいと、ルーナが立ち上がる。

「いいよ、行こう。

どこに行く?」

ハリーはその手を握った。

透明マントを着たままでも、ルーナは驚かない。

「必要の部屋にしよう。

ゆっくり休みたいんだ。

誰にも邪魔されたくない。」

ハリーの言葉に、ルーナはまた軽やかに笑った。

何も特別なことはないように、ふっと歩き出す。

まるで独り言かのように、ルーナが歩きながら返事をする。

「あの部屋だったら、今は誰もいないもんね。

それに邪魔されたくないと思ったら、誰も入って来られない。

うってつけだね。」

 

8階にある必要の部屋に着くまで、誰にも引き止められなかった。

人は皆ハリーを探していたけれど、透明マントを着ていて彼を探せる者はいなかったのだ。

 

夜中、ダンブルドア軍団と不死鳥の騎士団のほぼ全員がここに立てこもり、出撃していったのが嘘のように、必要の部屋の前は静まり返っていた。

「愚か者のバーナバス」の絵はいつもと変わりなくかかっていて、ハリーはそこまで来てから透明マントを脱いだ。

 

「ハリー、あんた、マントを着てても男前だけど、やっぱり、抜いでた方がかっこいいよ。」

のんびりといつもの調子でルーナが言う。

二人とも戦争の後で汚れていて、髪はくしゃくしゃで(もっともハリーの髪はいつでもくしゃくしゃだったが!)、少なくともルーナは今までで一等可愛かった。

 

突然、必要の部屋で、絶対に必要なものに思い当たった。

「ルーナ。

僕たち、必要の部屋で、シャワーを浴びれるようにシャワー室を願わなきゃ。」

「ふかふかのベッドと枕もね。

寮のやつよりふかふかなの出来るかな?」

「あと、綺麗な着替えもいるね。

清潔でパリッとして着心地と見栄えのいいやつさ!」

必要の部屋に願うものを、くすくすと笑いながら二人で言っていく。

 

「あ、でも、ハリー。

あの部屋は食べ物と飲み物は出さないんだよ。

お腹は空いてないの?」

ハリーはそう言われて、猛烈に眠くもあるが、すごく空腹であることも思い出した。

だが、今は絶対に大広間には戻りたくない。

 

「ハリー。

あの部屋は出してくれないけど、持ち込みは大丈夫だから──、こうすればいいんだよ。」

ルーナが軽やかに杖を振ると、綺麗な大皿にご馳走が山盛りになったものと、ポットに飲み物が入ったものが、なんと、空中でひっくり返ることもなく、見事に引き寄せられてきた。

「一人でご飯食べたい時もあるんじゃん?

結構上手でしょ?」

ハリーはあっけにとられたが、次には笑い出した。

「アクシオをこんな風に使えるなんて思いもしなかったよ!

やっぱり君って最高だ、ルーナ!」

それからハリーとルーナは、バーナバスの前を三往復して──、素敵な隠れ家に逃げ込んだ。

 

早い者勝ち。

まさに「しけこみたい。」と思って、ハーマイオニーと一緒にロンがこの部屋の前に来るまで後30分。

誰かが違う願いのために使っていたら誰も入れない。

ロンとハーマイオニーには別のお部屋を探してもらう必要があった。

 

ついでに、グリフィンドールのハリーの部屋の静穏もそろそろ危ない。

あと二時間もしないうちに、意気軒昂と盛り上がりすぎたグリフィンドールのダンブルドア軍団が、ハリーとネビルのベッドを襲撃(お祝い)する。

まるで結婚式前日のパーティのような騒ぎになるのは置いておいて、ハリーとルーナは順番にシャワーを浴び、快適なバスローブを着て、ルーナが自力でテイクアウトしてきたご馳走を食べ、飲み物をお腹に入れていると二人して段々と眠くなってくる。

 

とろりと瞼が降りてきて、食べ物を遠い場所に押しやる。

ところでこの二人は、れっきとした成人男性と成人女性だが、そんな二人が同じベッドにいてただで済むわけが…、今日だけはあった。

仕方ない。

今日だけは、もうどうしても二人とも眠かったのである。

 

「うん、おやすみ、ルーナ。」

「おやすみ、ハリー。」

「起きても…そこにいてね。」

「大丈夫だよ、ハリー。戦争は終わったんだから。」

二人は猫の子のようにくっついて眠り、翌朝は当然のように寝坊した。

 

卒業までの短い期間と、それからの人生の長い期間を、ハリーとルーナはずっと一緒に過ごしていくことにする。

 

 

 

 

ハリーは、ルーナのけぶるような瞳がとても好きだ。

 


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