Cassette8 到着
ニューヨークのタイムゾーンに合わせて機内の電気がつき始めた。いまは現地時間だと8時くらいだろうか。いくら椅子が広いとは言え、ずっと座りっぱなしというのは体の節々が痛くなる。隣を見ると、唯先輩はアイマスク(いつもの目が描かれたやつ)をしたまま寝ている。
体を動かしがてらトイレにでも行こうかと体を起こす。今回は窓側なので唯先輩を起こさないように気を付けながら(飛行機の真ん中くらいなのに二人席なの!)通路に出る。律先輩と澪先輩はまだ寝ているけれど、ムギ先輩はイヤホンで音楽を聴きながら小説を読んでいる。クラシック音楽とか聴いてそう。そのまえの二人もまだ寝てる。
トイレから帰ってくると唯先輩が起きていた。自分の席に戻って、周りを起こさないように小声で話しかける。
「ごめんなさい、起こしちゃいましたか?」
「いやいや~あずにゃんのせいじゃないから大丈夫だよ~。アイマスクがずれて明るくなっちゃったから」
「それなら良かったです」
でも、私は知っている。そもそもこのアイマスクはなかなかできるやつで簡単にとれたりはしないし、なにより唯先輩、座ってる間は寝相がいいから取れたりするはずがない。本当は私が前を通ったときに起きちゃったけど、私に気を使わせないようにしてくれたんだろう。でも、今はその優しさに甘えることにした。
「先輩はこれからどう……映画見るんですね……」
「こういうときじゃないと忙しくて映画見られないからね! 着陸まであと二時間ちょっとあるみたいだし」
「そうですね、わたしももう一本映画でも見ることにします」
──────
突然、目の前のディスプレイが映画の表示をやめ、着陸時の案内をし始めた。私はもうエンドロールに入っていたから何てことはないけどどうやら唯先輩の映画はちょうどクライマックスだったようで涙目だ。
CAさんが入国に必要な書類を必要な人に配っている。私たちは既にビザのようなものを日本でとってあるから必要ない、とのことだ。英語だから何言ってるか私は全然わからなかったけど、前の席からムギ先輩が教えてくれた。恐らく配るのが終わったら飛行機は着陸態勢に入るのだろう。
「今、一番盛り上がってるシーンだったのに……かなしい……」
「きちんと残りの飛行時間を見ておかないからですよ。でも、また帰りの飛行機でも見られますから。大丈夫ですよ」
「そ、そうだったね。よかったよ~。あっ、あずにゃん! 高いビルだよ! それにあの橋! よく映画で見るやつ!」
「落ち着いてください……。でも、本当に映画でみるやつですよ」
「なんか……すごいね」
「語彙力ないんですか……」
「でも、テレビのなかでしか見たことがない景色が目の前にあるって不思議だね~」
空港が見えてきた。どうやらなかなか大きい空港のようでたくさんの飛行機が見える。私たちの乗る飛行機はだんだんと高度を下げ、着陸に入ろうとする。
「そういえばね、この前テレビでやってたんだけど、飛行機事故が一番多いのって着陸のときらしいよ?」
「やめてくださいよ……。心配になるじゃないですか……」
私たちの心配をよそに飛行機はぐんぐん高度を下げていく。タイヤが地面に接地したときの音と振動を感じるとすぐに、飛行機が逆噴射するときの特徴的な音が聞こえる。このまえ読んだトリビアに『エンジン逆噴射は別に前にエンジンをふかしてるわけではない』みたいなのがあって驚いたっけ……。
「とおちゃーく! アメリカだよ~」
「落ち着いてくださいってば……」
「澪! 澪! アメリカだ! 自由の国だ! 女神だ!」
「こっからは見えないけどな」
前からも律先輩のはしゃぐ声が聞こえる。心なしか澪先輩もテンション上がっている気がする。
飛行機から降りるとそこは……日本人ばっかりだった。いや、日本から来た便だから日本人だらけなのは当たり前なんだけど……。そう思いながら空港と飛行機をつなぐトンネルみたいなやつを通ると、空港に入ってすぐのところにあるベンチでさわこ先生が待っていた。先生と一緒に入国審査に並ぶ。ここでは行きで使った会員特典は使えないらしい。
「あれだよな! 『さいとしーいんぐ、ふぉーでいず』って言えばいいんだよな。ところで「さいとしーいんぐ」ってなんだ? ふぉーでいずは四日間ってことだろ?」
「律……さすがにボケだよな。ボケだと言ってくれ」
小声で律先輩に「観光ってことですよ」と教えてあげると慌てた様子でぶつぶつ言っていた。あれ、絶対に知らなかったやつだ……。
「そういえば私、去年のとき確か「サイドビジネス!」って言っちゃって向こうの人、困ってたんだよね~悪いことしちゃった~」
「私は『17? Really?』って、聞かれましたよ……」
「日本人は子供っぽくみえるって言われるからな……」
「ムギ先輩は雰囲気が大人っぽいから大丈夫そうですよね~」
「そんなことないわよ~。実際聞かれたことはないけど。梓ちゃんだって成長したんだし、今年は聞かれたりしないわ」
「そうだといいんですけどね……。うわっ、純、大丈夫? なんか顔色微妙だけど」
「いや、本当にアメリカ来ちゃったとおもうとなんか緊張して……」
「そういうときは手に人って書いて飲み込むんだよ!」
「今回はちょっと違うからそのおまじないは効かなさそうですね……。あっでも話してたらなんかよくなってきた気がする」
「そりゃよかった。最初も最初で体調崩したら残念だからね」
「澪ちゃんの言う通りよ。海外では日本にいるとき以上に気を付けないと! 私も何度も辛い目に遭ったことか……」
「先生の体験談なんですね……」
「そろそろ順番来そうじゃないですか? 結構並んでる気がしますけど」
「あっ、順番来たみたい。私からいくわね~」
「じゃあ、終わったらカウンターの向こうで待っててくれ」
「分かったわ」
ムギ先輩が入国審査カウンターに行った。私はムギ先輩の後ろに並んでいたのでその次だ。ちょっと緊張した気分で待っていると、そんなに間隔を開けずに呼ばれた。
「Hey Nice to meet you」(やあ、こんにちは)
「Nice……Nice to meet you too」(ええ、こんにちは)
「What's for you come here?」(何をしにアメリカへ?)
「えっと……For sightseeing」(観光のために)
「OK. How long do you plan to stay here?」(どのくらいアメリカにいる予定?)
「For 4 days」(四日間)
「What about your company? Where's your parents」(一緒の人は? 両親はいないの?)
「カンパニー? 会社? いや違う……あっ、また子供だと思われてるんだ! えっと…… I am 17 years old and I come here with my friends」
(わたしは十七才で、友達と一緒に来ました)
「Really? 17? 」(本当に? 17歳?)
そういってパスポートをじっと見つめる。ちょっとして、
「OK, I'm sorry to make a mistake about your age, that's all here, you may go. Enjoy your trip!!」(オーケー。年齢、間違えてごめん。もう終わりです。行っていいですよ。旅行を楽しんで!)
そう言ってガシャン! とパスポートにスタンプを押してくれた。パスボートを受け取り、近場のベンチにいる澪先輩とムギ先輩のところへ行く。
「また年齢間違われました……」
「あはは……元気出せって」
他のみんなが来るのを待って入国ロビーを出る。そしたら荷物を受けとるため、あの回転寿司みたいなやつのところに行く。もう既に私たちの乗ってきた便の荷物は回り始めていたみたい。
「今回は回ってきますように……回ってきますように……」
「大丈夫だって、そんなこと早々何度も起こるわけがないだろ?」
「うー……。あっ! 私のエリザベス! よかった~。あとはスーツケーススーツケースっと……きたきた」
「な? 言っただろ? みんなは?」
「私と純ちゃんの分が来ない……」
「憂と純ちゃんのスーツケースが来てないみたい」
「もうちょっとまってみたら? そしたら来るかもよ?」
「梓はもう来てるのか~いいなあ~っと、憂、あれ、わたしたちのじゃない?」
「あっほんとだ! 私のギターもある」
「全員分が揃ったみたいですね。行きましょうか」
「よーしじゃあいくぞー!」
「えっと……まずはホテルに荷物を預けるんですけど、ここはムギ先輩が何とかするって……。どうやって行くんですか? 電車? タクシー?」
「今日泊まるところから送迎が来てるはずだから、みんなで探して? KOTOBUKI って書いてあるパネル持ってるはずだから」
「えっと~どこにいるんだろう?」「本当にいるのか~?」「いないですね~」「もうちょっも向こうだったりして」
「あっ、あれじゃない? KOTOBUKIって書いてある!」
「でかしたぞ純ちゃん! たぶんあの人だ。えっと~そしたらムギ、頼む」
そう言われて、ムギ先輩はその人のところへ向かった。カバンから何か紙をだして見せて二言三言話したあと、私たちを手招きする。
「この人についていくわ」
「はーい、今回泊まる……このMホテルってところですよね。電車の便も良くて、中心に近くて、一等地の五ツ星ホテルじゃないですか」
「そうそう、こっちにいる間はそこに泊まるから。ーそこまで車で行ってそこからは地下鉄とキャブで移動しましょ?」
「さんせーい」「さんせーい」「さんせーい」「キャブ?」
「黄色いタクシーのことですよ、唯先輩」
てくてくと運転手の人に突いていくと空港ロータリーにマイクロバスが止まっていた。乗ろうとすると運転手の人がスーツケースを持ってくれるそうなのでお言葉に甘え(通訳byムギ先輩)、私たちはバスに乗り込む。今回はどうやら貸し切りのようだ。
「ここから一時間くらいみたい」
「じゃあなにする?」
「今日どこ見に行くかの予習するぞー!」
「おっ、りっちゃん気合い入ってていいねー」
「そしたらまずはセントラルパーク行ってですね……
・・・
こうして無事、ニューヨークに着いた。まだ着いたばっかりだけどワクワクが止まらない。なんかいいフレーズが浮かぶ予感がする。
会話文が駆けない…掻くこと多すぎるんじゃ…。風景と状況の説明で手一杯
今回も読んでいただき、ありがとうございます。UAが500を越えていてモチベ上がります。今回も感想、評価、お気に入りなどお願いします。