けいおん!卒業旅行REMIX   作:ふとん王

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Cassette9 一日目

「よし! フロントに荷物も預けたし、ニューヨーク観光いくぞ!」

 

「フロントが預かってくれた、というよりはホテルについたらボーイさんが全部持って行ってくれましたけどね」

 

「ちょっといいとこのお嬢様気分ですね。わたしホテルとかで荷物持ってもらうのちょっと夢だったりしたんですよ。映画でよく見るから」

 

「よかったね、憂。あずにゃん、まずはどこから?」

 

「セントラルパーク動物園ですね。ここから歩いていけます」

 

「セントラルパーク動物園っていうと、あのマダガスカルのセントラルパーク動物園か?」

 

「はい、映画の中の動物園、本物にそっくりらしいですよ」

 

「マダガスカルってあれか? 踊るのスキスキってやつ、私達が……何歳くらいの頃だっけ」

 

「えっと……私とお姉ちゃんで行ったときだから、私が小学……三年生のときだったはずです」

 

「そうすっともう十年前か〜。私、あれわざわざ映画館まで見に行ったんだよなあ~。な、澪?」

 

「律に連れられて行ったのよね。おもしろそうな映画がある〜って」

 

「ほらほら、ロビーで喋っていてもしょうがないでしょう? みんな、そろそろ行きましょ?」

 

「ほいほーい」

 

 

 そして我々一行はセントラルパークのそば(というより真横)にあるMホテルを出て、動物園に向かう。道路の標識がアルファベットだったり、通るタクシーがみんな黄色であったり、いろんな肌の色の人がいたりして、本当に外国なんだなあと深く思う。なにより周りで話されている言葉が英語だってことが一番大きいけど。事前に調べていた通り、ホテルから動物園は本当に近くて歩いて十数分だった。

 

 精算はその日の夜にまとめてやる、という話なので動物園の入場料、約二十ドルは私が全員分立て替えておく。まあ海外用のデビッドカードを持ってきてるからそれで払っちゃうんだけど。レシートをもらい、みんなにチケットを配って中に入る。

 

 

「あの鐘! マダガスカルで見たやつじゃない?」

 

「確かに、そっくりだな」

 

「ペンギンもいるそうよ? 隊長とか新人とかいるかしら」

 

「ジョークで名前がそうなってそうだな」

 

「見に行く前にお昼にしませんか? 私もうすぐ限界……」

 

「純が死ぬ前にはなんとかお昼にありつけるようにしよう……。えっと……マップによると、ホットドッグ食べながら見られるみたいです。とりあえずはホットドッグ買いに行って、また後から決めましょう」

 

「そりゃあいいな。よーし! まずはホットドッグ屋台いくぞ!」

 

「りっちゃん競争だよ! ……ところでどっちいけばいいの?」

 

「ついてきてください……迷子になられても困るので……」

 

 ──────

 

「でかっ」

 

「これが本場のホットドッグ……。なんか思ってたのよりやけに大きいね。憂、一人で食べきれそう? 私はお腹減ってるから余裕だけど」

 

「わたしも……たぶん食べられると思う。最後に食べたの、飛行機での朝の機内食だけだから」

 

「それじゃ、みんな買えたみたいだし行きましょうか」

 

「よ〜し! みんなムギちゃんに続けー!」

 

「わ、わたしもわからないから……さわ子先生に続け〜!」

 

「ええ? 私だってわからないわよ……。えっと、誰か地図持ってる?」

 

「さわちゃんここに地図あるよ〜」

 

「ありがとう唯ちゃん。で、えっと〜そしたら、とりあえずはこの道を行けばいいのね」

 

「それじゃ、気を取り直して〜、行くぞー!」

 

 ──────

 

 アシカのエリアに来た。動物までアメリカサイズなのかと思っていたけれどどうやらそんなことはないらしい。日本のアシカとあまり変わらない大きさだ。寒い中日光浴をしているのか、岩場の上でまったりと過ごしている。

 

 

「お姉ちゃん、お正月にこたつでダラダラしてる時、あんな感じだよ?」

 

「失礼な! 私はエネルギーを貯めてるんだよ!」

 

「おーい唯ー、それじゃあんまりあのアシカと変わらないぞー」

 

「そ、そういえばアシカって英語で Sea Lion なんだね〜全然ライオンっぽくないのに」

 

「あっ、話題露骨に逸らした」

 

「逸らすの下手すぎですよ……でも、確かにライオンのあの威厳はあんまり漂ってこないかも……」

 

「なんか見てると安心するどっしり感だよね」

 

 ──────

 

「レッサーパンダだー! かわいー!」

 

「ぬいぐるみみたい~」

 

 ──────

 

「あれ、チーターじゃない?」

 

「走ってるとこ見てみたいよなあ。すっごい早いんでしょ?」

 

「車と同じくらいの速度が出るらしいですよ」

 

「はやっ」

 

 ──────

 

「ペンギンいるー!」

 

「思ったよりいっぱいいるな」

 

「寝起きの唯、あんな感じじゃないか? フラフラしてて」

 

「私を動物に例えるのがはやってるの!?」

 

 ──────

 

 動物園をぐるっと一周してもといたところまで戻ってきた。小さい動物園だとおもってたからあまり時間かからないかと思ったけど、想像以上に時間がかかった。楽しいからいいけど。もう時間は三時半過ぎになってしまった。

 

「見終わりましたね~。おもったよりたくさん動物いましたよ」

 

「ここは動物たちの楽園だよ……」

 

「どの動物も大事にされてたね~」

 

「ショップありますけどどうしますか?」

 

「キーホルダーを買おう!」

 

「これからのことを考えるとあまり長居はできなさそうなので、早く決めちゃいましょう」

 

 私たちは動物園の売店(お土産物ショップ?)に行ってそれぞれ気に入ったキーホルダーを買う。9.98ドルなり。高い。聞いていた通りだけどアメリカはやっぱり物価が高い。私が何を買ったかって? もちろんペンギンのキーホルダーですよ。もう私にとってはこの動物園の顔だからね。

 

 最後までアライグマとアシカで迷っていた唯先輩を待って(ほぼ置いていく感じで決めさせたんだけど)、私たちはセントラルパークを出た。次はニューヨークの顔、タイムズ・スクエアだ。夜にディスプレイの光で明るくなった時のも行くけど、まずは昼の明るいうちの方を見に行こうっていう算段だ。

 

 

「梓~、次、タイムズ・スクエアだよね。どうやって行くの?」

 

「歩きでもいいけど電車がいいんじゃない? 地下鉄」

 

「そういえばさっき地下鉄の入り口みたいなのがあったよ」

 

「たぶんそれ。そこからなん駅か行くとタイムズ・スクエアにつくはず。それにのって……えっとそこにある楽器店に行くの」

 

「そうそう、私たち、軽音部だからな? やっぱり旅の思い出は音楽に関係したものがいいでしょ~」

 

「と、言うわけで地下鉄にのりましょう。そんなに入り口は遠くないはずです」

 

 セントラルパークを出て、すぐ横の通りにある地下鉄入り口に入る。券売機で全員分の 7 Days Limited Passを購入する。33ドルなり。7 Days Limited Pass っていうのは簡単に言えば七日間地下鉄乗り放題チケットのこと。 ほぼずっとニューヨークにいる予定だし、出国前に計算したら7 Days Limited Passの方が安かった。一人ずつ手渡しして失くさないようちょっと厳しく言う。名前が入っているわけではないから失くしたら二度と手元に帰ってくることはなく、最悪もう一度同じものを買わなければいけなくなってしまう。

 

 電車がもうすぐ来るみたいなので、その行き先を確認し、改札へ向かう。日本のPASMOとかSuicaみたいにピッってやる訳じゃなくて、カードをスキャンするときみたいに磁気読み取り機械にスライドさせるそうだ。よくわからないけど少なくとも周囲の人はそうしていた。私たちも一人ずつ機械に通して改札を通り抜ける。よく博物館とかにあるようなバーがくるくる回るタイプの改札でなかなか見慣れない。

 

 

「あたっ」

 

「純ちゃん大丈夫? おもいっきりぶつかったけど」

 

「いたた、大丈夫……。うまくスキャンできなかったみたい。もう一度っと」

 

 

「いてっ」

 

「澪~焦らなくていいぞ~電車もまだ来てないし~」

 

「ごめんごめん、もっかいやってみる」

 

「あだっ」

 

「またエラーだ」

 

「ゆっくり早すぎずやってみろって」

 

「わかってるよ……。よっと……まただめだ……」

 

「もしかして……これ、澪ちゃんの回る呪いじゃ……」

 

「ゆいー! ちょっと私も思ったけど言わない!」

 

「駅員さんのところ行く?」

 

「次やってダメだったら……。ダメだ……」

 

 

 ここの改札、読み取りがなかなかボ……古いようでさっきからエラーになるひとがそこそこいる。連続で弾かれてる人はいないけど。諦めた澪先輩は意を決したように駅員さんのところへ行く。

 

 

「Eh……Excuse me?」(すみませーん)

 

「Hi? What's the matter with you?」(どうかされましたか?)

 

「Ah…… I can't pass thorugh here with this card. I just have bought this」(このカードで改札、通れないんです。いま買ったばっかりなのに)

 

「OK, Please hand it to me. I'll check it out」(わかりました。私にください。確認してみます)

 

「This card is malfunctioning, so we will replace this with new one, Here you are」(このカード、故障していますね。なのでこれ、新しいカードと交換します)

 

「Thank you」(ありがとうございます)

 

 

 あたらしいカードを受け取った先輩は今度こそ無事、改札を通り抜けてきた。

 

 

「ごめんな、私のせいで電車行っちゃったな」

 

「いえいえ、またすぐに来るので大丈夫ですよ。そんなことより、今回の旅行でもまた、回るもの恐怖症やるんですか?」

 

「いや前回もわざとやってたわけじゃないし……」

 

「梓ちゃん、回るもの恐怖症って?」

 

「えっと~去年のイギリス旅行の時、空港のラゲージエリアで澪先輩の荷物が一時的に見つからなかったり、回転寿司で寿司食べられずに演奏するはめになったりと、何事回るものとの因縁が澪先輩にはあるんだよ……」

 

「そりゃまた運が悪いっすね。お祓いいきます?」

 

「どんなお祓いすんだよそれ……」

 

「それにしても澪ちゃん、英語うまくなったわね-」

 

「さすがに大学生ですからこれくらいは……」

 

「いや、唯ちゃんとかりっちゃんとかみてると……つい……ね?」

 

「どういう意味だよさわちゃん!」

 

「なんでもないわ」

 

「みんなー電車きたよー!」 

 

「はいはいいま行くよ」

 

 ちょっと古さを感じさせる電車に乗り、三駅移動する。フリーパスをもってるとこうして気軽に短距離を電車移動できるのが便利だ。Times Square Station なる名前の駅で降りる。間違えようがない。

 

 ちょっと広めの駅から地上に出る。そこには映画で何度も見た、あのタイムズスクエアの風景が広がっていた。あたりまえだけど。

 

 

「タイムズスクエアだ! 大きい通りだね~」

 

「えっと、私たちが行くのは……もうちょっと南の方なのでこの道をまっすぐ行く感じですね」

 

「はいはーい」

 

「人多いから迷子にならないようにするのよ~」

 

 二ブロックくらい歩くとお目当ての店があった。一目で楽器屋だとわかる外見、これ世界共通なんだろうか。東京でも京都でもロンドンでもニューヨークでも変わらない気がする。中にはいるとどうやらちょうど人が少ない時間帯のようで店のなかはそんなに混んではいなかった。人気店だと聞いていたからちょっと覚悟してはいたけれど。

 

 

「ムギーなに買うか決めた~?」

 

「私は……どうしようかしら。ギターやらないからピック買っても仕方ないし~」

 

「そしたら私とムギでなんかお揃いのもの買わないか? ギターはギター組で、ベースはベース組でお揃いのピックそれぞれ買うらしいからさ」

 

「りっちゃんいいわね! そうしましょ? でも私たちがどっちも使えるものとなると……」

 

「じゃあこのスコアケースとかどうだ? 二人とも使うし、なんかかっこいいし!」

 

「いいわね~そうしましょ!」

 

「私たちもレジに~っと、もうみんないるな」

 

 ──────

 

「律先輩はなに買ったんですか?」

 

「ふっふ~ん。私はこのオレンジのスコアケースだ! ムギと色ちがいでお揃い~」

 

「おおーなんかいい感じ。いいじゃないですか。あっ、ちょっとだけ失礼します」

 

 

 そういい私はレジの奥のカスタマーカウンターみたいなところに行ってある商品を受けとる。中身は内緒だ。

 

 

「梓ちゃんも戻ってきたしそろそろ行かない? 日もそろそろ落ちるんじゃない?」

 

「このあとはエンパイア・ステート・ビルだっけ?」

 

「はい。ニューヨーク一帯が見えるらしいですよ。そのビル自体もライトアップされてなかなかきれいだそうですけど」

 

「楽しみだな~」

 

「こっからどうやっていくの? 歩き?」

 

「純、歩くの好きだよね……。今回は電車でも歩いてもたいして変わらないし、基本的に大通りだから治安もまとまれば大して悪くないし……今回は歩きにしよっか」

 

「じゃ、梓、道案内よろしく~」

 

「人任せな……、唯先輩、ギー太の兄弟モデル見てないで行きますよ!」

 

 

 そう言って楽器店を出る。ここからエンパイア・ステート・ビルは本当に近くて歩いて十分くらい。地下鉄を使おうにもちょっと歩いて戻らないといけないから大して時間は変わらないのだ。さすが世界有数の高さを誇るビルというだけあってなかなか大きい。すぐに見えてきた。

 

「おーこれがエンパイア・ステート・ビルってやつか~?」

 

「昔からの憧れだったのよね~」 

 

「さわちゃん、来たことなかったんですか?」

 

「大人になるといろいろ忙しくて来れないものなのよ」

 

「そういうものなんですかね。大人にはなりたくないなあー」

 

「あら、りっちゃんだっていつかは大人になるのよ。いつまでその肌のハリとツヤが持つかしらね……」

 

「さわちゃんが不敵に笑い出した……こわっ」

 

 話ながら歩いていると時間が経つのは早いもので(十分も歩いてないけど)もうビルの入り口まできた。ここのチケット、本来は60ドルとかするんだけど、今回は琴吹家パワーにより割引チケットだ。先にムギ先輩から預かっておいたものをみんなに配る。最上階の102階までいけるチケットだ。

 チケットを係員の人に見せて、エレベーターで昇る。あのトンネル特有の耳のつまる感覚がする。102階についた。ドアが開く。降りると目の前に広がるのは落ちる太陽とニューヨークの街並み。すっごいきれいだ。時間ちょうどだったみたい。あぶないあぶない。

 

「おおー! すっごいきれい!」

 

「確かにこりゃすごいな……」

 

「車、たくさんいるんだな」

 

「太陽の光がきれいね~」

 

「あれ、セントラルパークじゃない? さっきまでいたところ」

 

「夕日と街並みっていいよね~」

 

 

 みんなが思い思いに感想を述べ合う。当の私は言葉がでないほど感動していた。だって本当にきれいだったし。ここから日が暮れ、ニューヨークはその眠らない街としての真価を発揮する、そうだ。まだ日が完全には暮れてないから私にはわからない。

 

 日が暮れた。超きれい。美しさを表すための語彙力が一瞬ですべて吹っ飛んじゃうくらいにはきれい。もう回りのみんなを見ても『うわーきれい~』としか言ってない。

 

「みんなで写真とりませんか? あそこに集合写真でカメラ置くための台ありますし」

 

「いいね~。このなかで、一番きれいにとれるカメラ持ってるのは……澪か。澪~おねがい~」

 

「お願いされなくても最初から出すつもりだったよ、ほら、いまとってる人たちがいなくなったら撮るからな」

 

 

 写真を撮られるからか、私を含めみんな、手鏡を出して身だしなみをチェックし始める。女の子だもんね。しょうがないよ。

 

「よーし、空いたぞ~!」  

 

「カメラを置いて、十秒タイマー、三枚撮影っと。じゃあいくぞー!」

 

 そう言って澪先輩はカメラの向きを確認してからシャッターボタンを押し、こちらへ戻ってくる。十秒もあるし余裕そうだ。タイマーが残り三秒を知らせる光が放たれ、そのきっかり三秒後、1秒間隔で三枚写真を撮った。澪先輩が満足げにカメラのディスプレイを見ているところを見ると、なかなかいい写りだったのだろう。少なくとも澪先輩は。

 

「そろそろ帰りましょうか。帰ってホテルで夕食を食べて、それに明後日のための練習もしなきゃいけないし」

 

「そうだぞ~。今回の旅の目的、卒業旅行もそうだけど、ムギの家の会社のセレモニーが目的だからな。忘れるなよ~」

 

「練習……ティータイム……」

 

「大丈夫よ唯ちゃん、先生が全員分のケーキ、ホテルに送っておくようさっき手配しておいたから」

 

「紅茶も部室で使ってるのと同じものを用意してあるわ~」

 

「私頑張るよ!!」  

 

「じゃあ帰りましょうか。帰りはどうするの? 梓ちゃん」

 

「普通に地下鉄かな……」

 

「ホテルにいまから帰るから荷物の用意お願いって言ったらここまで、車回してくれるそうよ?」

 

「なんとゴージャスな……」

 

「あと七八分で着くそうだからもうちょっと夜景をみて、そのあと下に行きましょうか」

 

 

 夜景を見終わり、ビルの入り口に行くとそこには……リムジンがいた。なんで。その他に止まっている車で私たち全員が入りそうな車はない。ってことは……

 

「あれね~。普通の車でいいっていったのに~」  

 

「リ、リムジンだと? 私あんなの乗るのはじめてなんだけど……」

 

「私たちの中で初めてじゃないの、ムギだけだろ……」

 

「じゃ、行きましょうか」

 

 

 私たちは初めてのリムジンに恐る恐る乗り込む。座り心地のとてもいい椅子が気持ちいい。ここからホテルまでは車で数分と言ったところか。

 

 ホテルのチェックイン自体は昼、ここについたときに終わっていたので私たちはカードキーを受け取り、この前決めた各々の部屋へ向かう。一流ホテルなだけあって部屋は困ってしまうくらいに広い。これ絶対二人分の広さじゃないよ。

 メールの着信音がなった。別の部屋にいるムギ先輩からメールがきたみたい。少し休憩して、30分後に夕食にいこうとのことだ。わかりました、と返事を出してから、私も唯先輩にならって荷物を広げる。二人がスーツケースを広げてもまだスペースがあるって何事。唯先輩とおしゃべりしながら荷物を出していたらもう30分過ぎていたようでノックの音が聞こえた。持ってくものは携帯電話位なので準備に大して時間もかからない。

 

 夕食を食べに階下のレストランに行くとそこには異様な光景が広がっていた。ごはんがおしゃれイタリアンなのである。普段から庶民を自称する私には驚きの光景であった。というより先輩方みんな驚いてる。

 

「たしかみんな、アレルギーとかないから今日のコースってメニューにしちゃった。大丈夫?」

 

「メニューは問題ないけど……私たちマナーとか全然わからないけどいいのか?」

 

「よっぽど変なことをせずに、普通に食べていれば問題ないわ? 心配なら私も少しくらいなら基本的なことを教えられるけど」

 

「お願いします」

 

 

 七人の声が重なった瞬間だった。さわちゃんもわからないんだ……。

 

 ──────

 

 その夕御飯は終始緊張感が漂っていた。失敗したら大恥をかくことくらいは流石に理解している私たちはいつにない真剣さでムギ先輩の話を聞いたのだった。そのお陰で私たちは無事お高いコース料理もそれなりのマナーをもって食べられたのだった。あと、よく『マナーなんか気にしてたら味がわからなくなる』というひとがいるけれど、あれば真っ赤な嘘。美味しいものはおいしい。世界の不変の真理だ。

 

 食事をしたら練習だ。とはいっても明日があるのでそんなには長くできないけど。一時間半くらいかな。後にティータイムを控えた唯先輩は上機嫌で練習へのモチベが過去最高。いつもこれくらい出してくれたらいいんだけど……。今回はさわちゃん指導のもと、それぞれの曲の最終調整第一回だ。最終とあるけど第二回を明日やる。

 

 ──────

 

「りっちゃんドラム走りすぎ~もうちょっと抑えて~」

 

「ごめんごめんついついテンションあがっちゃって~」 

 

「気を付けなさいよ~? リズム隊が大事なんだから!」

 

「はーい、じゃあもっかいさっきのところから」

 

 ──────

 

「憂ちゃん、そこ、もっと主張して大丈夫よ? そこはあなたがメインなんだからしっかりした感じで」

 

「は、はい!」

 

「おーさわちゃんが顧問っぽいことしてる」

 

「いつもしてるでしょうが」

 

「いつもは部室でまったりしてるけどな」

 

 ──────

 

「七人バンド、みんなしっかり音合ってるし、音に厚みがでてなかなかいいじゃない!」

 

「そりゃ嬉しいなあ」

 

「でもりっちゃんはドラム走りすぎ」

 

「気を付けます……」

 

「じゃあもう一回最初から。ギターだけで」

 

「はーい」

 

 ──────

 

「ふーう終わった終わった~」

 

 

 練習を終え、今は先輩たちの三人部屋でティータイムです。私たちの部屋も広いと思ったけどこの部屋はもっと広い。分割していいと思う。ここまで来たら。

 

 

「なんとかなりそうだな~明後日」

 

「ああ、よく噛み合ってたと思う」

 

「なんか、学校の外で演奏するのはじめてだから緊張しますね」

 

「自信持ちなさい! あなたたち、そこら辺に放り出してもたぶん音楽で生きていけるくらいにはうまくなってるから」

 

「さわちゃんが優しい…オーバーだけど……」

 

・・・・・

 

 ──────

 

 

 深夜とも言える時間帯になったため、ティーパーティーはお開きとなり、みんな自分の部屋に帰る。私たちもシャワーを浴び(大きなバスタブがあって、その横には入浴剤がおいてあった)(唯先輩が途中で入ってきたけど別のお話)、寝る用意をする。今回は唯先輩、200V対応のヘアアイロンを持ってきたようで去年みたいになることはなかった。

 

 

「あずにゃん、明日はどこいくんだっけ?」

 

「あしたはまず自由の女神ですね。あとはあの有名な橋を渡って向こう岸の有名なハンバーガー屋さんに行きますよ」

 

「楽しみだなあ」

 

「ええ、本当に楽しみです」

 

 

 携帯の充電をして、ベッドにはいる。なんとダブルベッドがツインなのだ。一人で寝るサイズじゃない。さすがアメリカン。

 

 唯先輩はベッドにはいるなり寝てしまったようだ。私も頭上灯を消し、完全な暗闇と静寂(唯先輩の寝息は聞こえるけど)を手に入れる。わたしも今日はどうやら疲れたみたいだ。明日の目覚ましを確認して、まぶたを閉じた。明日が本当に楽しみで仕方がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いつもの二倍以上書いた…。時間がかかりますね。
でも、描写するのとっても楽しい。
この調子でいくと更新の間隔が隔日とかになりそうです。
半日ごとにわけて話にしようかと。

今回も読んでいただきありがとうございます。UAも600を超え、嬉しい限りです。お気に入り登録、感想などお待ちしております。
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