今回もよろしくお願いします。
あと、プロローグからCassette3まで、読みやすいように調節しました。
From:中野梓
To:澪先輩
件名:卒業旅行についてなんですけど
本文:
卒業旅行、さわ子先生も呼びたいんですけど、どう思いますか?
From:澪先輩
To:中野梓
件名:Re:卒業旅行についてなんですけど
本文:
それについてなんだけど、私たちでも呼ぼうって話になったから、先生誘うのお願いして良い? 最初は私たちでいこうと思ったけど遠くて。
From:中野梓
To:澪先輩
件名:Re:Re:卒業旅行についてなんですけど
本文:
おっけーです。日程とかはこの前話したので確定で良い感じですか?
Fron:澪先輩
To:中野梓
件名:Re:Re:Re:卒業旅行についてなんですけど
本文:
うん。あれでよろしく。あと、ホテルについてなんだけど、ニューヨークにいる間は四部屋とる感じになりそう。本当はスイートで大きいのがあったんだけど、今改装工事中らしくて。
部屋分け、なんか希望ある? とりあえずさわちゃんが一部屋の予定だけど。
これも誘えたなら伝えといてほしい。
From:中野梓
To:澪先輩
件名:Re:Re:Re:Re:卒業旅行についてなんですけど
本文:
わかりました。部屋分けは特に希望はないです。じゃあ、明日結果報告しますね。おやすみなさい。
Fron:澪先輩
To:中野梓
件名Re:Re:Re:Re:Re:卒業旅行についてなんですけど
本文:
おやすみ。
──────
メールでの会話が終わったことを確認してから、私は自室のベッドの上で転がる。
さわちゃん、来れたらいいなあ。去年のロンドンも結局来てたし。あの人、こういうイベント絶対に大好きだよ。もうこんな時間だ。明日は授業ないから登校自体は自由だけどさわちゃんに話をしなきゃいけないから明日の放課後くらいに行こう。
それにそろそろむったんのメンテナンスにも行かなきゃ。受験のせいであんまり弾けてなかったしちょうど良い機会だ。
──────
「よし! 行こう!」
先生を卒業旅行に誘いに学校まで、そのあとはいつもの楽器のお店でむったんのメンテナンスだ。お金ならある……。きれいにしてもらわなくては……。だってアメリカデビューだよ!
ぼちぼち学校までの道のりを歩きがてら、私は春からの大学生生活に思いを馳せる。大学はご存知、単位制というやつでこの単位の決め方によって時間割りが変わるらしい。ついでにいうと、ムギ先輩と唯先輩が平均的、澪先輩がちょっと多めで律先輩が進級ギリギリだそうだ。もう四人からは所謂逆評定というものをもらっていて。わたしもそれに合わせて授業をとる予定だ。律先輩を反面教師にしなきゃ。
そんなこんなで学校につく。もう部活は始まっているようで、グラウンドから運動部の声がする。
「さわ子先生いらっしゃいますか~っと。いたいた」
「どうしたの? 中野さん」
「卒業旅行の話なんですけど……」
突然周囲をチラッとみたさわ子先生は安堵した表情で
「わかったわ~。後から部室に行くからそこてまっててちょつだい」
「……? わかりました。部室にいますね」
突然挙動不審になったさわ子先生を不思議に思いながら部室への階段を登る。なんか部室に来るのも久しぶりな感じがするな~。今日は誰もいないけどさわちゃんが来るまでちょっと弾きたい気分。
そう思ってジャカジャカとギターを鳴らしているとドアが突然開く。さわ子先生だ。
「待たせちゃったわね~」
「いえいえ~。お茶でも入れましょうか。ケーキはないけど」
そう、ムギ先輩が卒業後、軽音部部室からはティーセットが無くなることが危惧されていたのだけれど、先輩の寛大なるご厚意で必要な分+αだけ残してもらえたのだ。さすがに茶葉はないから自分達で持ってきてるし、ケーキから普通のお菓子に格下げにはなっちゃったけど。
「さっきはごめんね~。あんまり卒業旅行で海外に行くことを快く思ってない先生もいるから。で、卒業旅行がどうしたの? また今年も海外行くの?」
「はい。私たち、卒業旅行でニューヨーク行くんですけど、先生もどうかなって」
「もうちょっと詳しく聞かせてちょうだい」
おっ、食いついた。
「えっと、三月十日から四泊六日で、途中でライブがあります。飛行機のチケットはムギ先輩が出してくれて、ホテルもムギ先輩経由で破格でとれます」
「なにそれ聞いてないんだけど? ライブやるなんて」
だって言ってないし。
「じゃあ先生も来ますか?」
「うーん。最近、そういうの厳しいのよ~。先生の公私混同なんじゃないかって。卒業生だから良いかもしれないけど……。そうだ。わたしもまたマイルで行くわ。ホテルだけは内緒でお願いしちゃうけど」
「じゃあ伝えときますね」
「待って待って……。ちょっとそこ、仕事が入ってて私だけ二泊四日にしてもらってもいい? 行く日は一緒で」
「りょうかいでーす。じゃあちょっと失礼しますね」
そう言い携帯を開いて、今回行くメンバーにさわちゃんも行く事と、途中で帰国することをメールの一斉送信で送る。携帯をしまおうとすると、着信音が響いて、その内容をみて思わず笑みがこぼれる。
「唯先輩が、『やったー!!』ってすごい嬉しそうな文面のメール、送って来ましたよ」
「それは嬉しいわね。今日はこのあとどうするの?」
「このあとは……いつもの楽器店に行ってギターのメンテナンスですね。久しぶりなので」
「それはいいわね。唯ちゃんもいってるかしら……。前科持ちなだけに心配になってきたわ」
「たぶん……さすがに大学生ですし澪先輩も一緒ですし大丈夫ですよ」
「そうだといいわね……。じゃあ今日はこんなところかしら。いろいろ決まったら連絡ちょうだいね。気を付けて帰るのよ~」
そう言ってさわちゃんは部室から出ていった。唯先輩……またヴィンテージギターもどきのギー太になってないか心配だな……。今日の夜メールしておこ。
──────
無事にギターのメンテナンスも終え、家に帰ってきた。お風呂にも入ってもう寝ようか、というころにギターが目についた。そういえばギターのストラップ、けっこう使い古した感じになってきたから、大学入ってバイト始めたら新しいの買わなきゃ。
ふと思い出して携帯をベッドの上で開く。
──────
From:中野梓
To:平沢憂&鈴木純
件名:明日と明後日
本文:
しあさってが一回目の合わせ練習だから、明日と明後日に学校で練習しよう?
──────
そう送って私は毛布の中に入る。横目に「はーい」という二件のメールをみたけれど、私はあまりに眠くなってしまったのでそのメールを開く気にはなれなかった。
──────
──-同じ日、N女大学にて──-
「ありがとう、斎藤。突然お願いして申し訳ないわ」
「いえいえ、これを持ってくることくらいお嬢様に喜んでいただけるなら些細なことですよ」
「父はこのことについてなにか言っていた?」
「いいえ、持っていって良いかお聞きしたら『自由にして良い』とのことでした」
「よかったわ。じゃあ斎藤、また今度」
「お帰りになられるのをお待ちしております。よい一日を」
斎藤が屋敷に帰るのを見届けてから、私は唯ちゃんの部屋へ行く。
「唯ちゃ~ん、おはよう」
「ムギちゃんおはよう……。いま何時? えっと……十一時半くらいかしら」
「えっ! やばっ! 今日三限だけあるんだよ!」
そう言って唯ちゃんはバタバタと用意をして大学へいってしまった。今日はもう期末も終わって、休講なのだけれど……。あまりに鬼気迫ってたから言いそびれちゃった。
十分くらいすると完全に糸が切れた人形のような唯ちゃんがふらふらと戻ってくる。そのままベッドメイキングもされていないベッドにばたんと倒れ込む。
「ムギちゃん~。もう授業ないよ~、どうして言ってくれなかったの……。もう無理……ねる」
「ごめんね~。あまりに急いでたからなんか邪魔するのも悪いかと思って……」
「全然悪くないよ……。むしろ言ってくれない方が悪いよ……」
などとしゃべっているとベルが鳴る。とててっと唯ちゃんがドアを開けるとそこには澪ちゃんとりっちゃんがいた。
「おっはよー!」「おはよう」
「おはようございます。今日はギター、持ってきたのよ」
そう言って私はギターのハードケースを開ける。なんとそこには……。まあ普通にギターが入っていたわ。
「おい……ムギ……」
怯えたような顔で澪ちゃんがこっちを見る。
「これってメチャメチャ高いやつじゃないか!?」
「どのくらいするの? ギー太何人分?」
「人なのかよ……。定価のギー太一人と半分くらいじゃないか? どうなんだ? 澪」
「これ、希少なヴィンテージギターで安く見積もっても定価ギー太三人分は下らないやつだよ……」
「ムギちゃん、そんなの借りて大丈夫なの?」
「大丈夫。唯ちゃんの大事な憂ちゃんへのサプライズだもの。しっかりしなきゃ」
「あびがどう……。ムギちゃん」
「こらこらそんな簡単に泣くんじゃない……」
「それじゃ、U&I Acoustic.verの練習しましょうか。時間もないし、昨日のうちにわたしが楽譜も編集してきたわ」
「準備が良すぎる……」
「じゃあ練習を始めましょうか」
「ケーキは……?」
「とりあえず一時間練習してからよ?」
「スパルタだよ~。助けてりっちゃん!」
「これもお前のためだ。我慢しろ」
「律は自分の課題はやくやりなよ……。それ出さないと単位ないんでしょ?」
「あっそうだった。じゃあ後で聞きにくるよ。じゃあねー。よし! 澪! 行くぞ!」
「こんな感じだからじゃあまた後で~。期待して待ってるよ」
そう言って二人は部屋から出ていった。りっちゃん、本当に単位大丈夫なのかしら。
「じゃあ練習するわよ! でも唯ちゃん、リードギターだしほぼ同じだけどね」
「さすがムギちゃん! 私もがんばるよ!」
こうして練習が始まり、この次の日にはもう完璧だった。この調子なら本番も大丈夫そうね。
明後日は梓ちゃんたちとの一緒の練習だから私たちもそれぞれ練習しなきゃ。そう思った私はみんなに連絡し、大学軽音部の部室へ向かった。
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