けいおん!卒業旅行REMIX   作:ふとん王

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Cassette7 旅の始まり

「先輩たち、つきますよ。起きてください。憂…は起きてるね。ほら、純、もうすぐ着くよ。起きて」

 

 

 東京国際空港駅まであと五分というアナウンスが流れたため、一足早く起きた私は先輩たちと憂、純を起こす。先生はどうやら約束通り起きていてくれたみたいだけど、私が起きたのを見ると目線で「任せた」と伝えてきた。先生は自分だけ別の飛行機だからかそれなりの準備が必要なようで書類の確認をしている。先輩たち、とくに律先輩を揺り起こしながら先生に聞いてみる

 

 

「ところで先生は何時発の便なんですか?」

 

「わたし? 十一時三十五分発のJALの飛行機だけど」

 

「あれ? 私たちも確かその時間でJALの飛行機だったような気が……もしかして先生、JAL505便だったりしますか?」

 

「ええ、確かそうだけど。じゃあ一緒の便なのね」

 

「偶然ってのもあるものですね~」

 

「さわちゃん、おはよ。偶然ってどうしたの?」

 

「おはよう。偶然って言うのは、唯ちゃんたちと私、同じ飛行機みたい。別々にとったけど一緒の飛行機になれるものなのね」

 

「それはすっごい偶然だね~さわちゃんはビジネス?」

 

「ちょうどビジネスがセール中で安かったから思いきってビジネス買っちゃった。人生初めてなのよ。唯ちゃんたちもビジネスなの?」

 

「いや、私たちはプレミアムエコノミーだよ? エコノミーよりは広いけどビジネスほどじゃないってやつ。ムギちゃんのお父さんが手配してくれたのそのチケットだったみたいで」

 

「それはまたすごいわね」

 

 

 駅が近づいてきたのか電車が減速を始めたようで体にちょっと前方向への力がかかる。

 

 

「そろそろ着くみたいなので降りる準備を……律先輩、二度寝しないでください。もう降りますよ」

 

「もう少し……もう少しだけ許して……」

 

「だめです。私が許しても電車が行っちゃいますから無駄ですよ」

 

 

 無事律先輩の目も覚め、私たちは電車から降りて、空港の国際線ターミナルへ向かう。建物の中は暖房が効いていてほっとする。今回もムギ先輩のすすめでチェックインと荷物預けを先にしてしまおう、ということになった。 

 

 

「次のお客様、どうぞ」

 

「こんにちは。えっと、荷物を預けたいんですけど」

 

「はい。お預けする荷物はそちらのスーツケースとギターでよろしいでしょうか」

 

「ギター、やっぱり預けないとだめですか?」

 

「少々お待ちください……。お客様の乗る便は比較的混雑していない便になりますので機内持ち込みも可能ですが……。かなり大きなお荷物ですのでやはりお預けされることをお勧めいたします」

 

「そしたら……みんなどうする? 私は預けてもいいと思うけど」

 

「私は預けます。結構スペースとっちゃいますしね」

 

「私も預けようかな……ギー太、またあとで会おうね」「私と純も機内預けでお願いします」「私のキーボードも機内預けでお願い~」

 

「じゃあ、全員なので六人分お願いします」

 

「わかりました。スーツケースはこちらでお預かりいたしますが、ギターなどはあちらの包装用カウンターで包んだ後、こちらのタグと一緒に係員にお渡しください」

 

「どうもありがとうございます」

 

「それでは、良いフライトを」

 

 

 そして私たちはカウンターの横にあるところでギターをしっかり包んだあと(唯先輩はほんとうに『しっかり』包んでた)、ギターを係員のひとに渡して朝御飯を食べに向かった。空港のなかでもしっかりと食べられるところは結構あったから迷ってしまったけど結局パスタとトーストの店になった。どうやらムギ先輩おすすめの店のひとつらしい。

 

 

「あずにゃんは何にする?」

 

「私は……このトマトソーススパゲッティで」

 

「じゃあ私はこのボロネーゼかな」

 

「お姉ちゃんがそれなら……私はカルボナーラにしようかな。お姉ちゃんにも少し分けてあげるね。好きでしょ?」

 

「ありがとう憂~。他のみんなは?」

 

「カルボナーラでおねがい~」

 

「私は……私はこのカニとトマトのスパゲッティで」

 

「純とかぶっちゃった。じゃあ……わたしはこのほうれん草とベーコンのやつ」

 

「私も澪とおなじやつ~」

 

「みんな決めたわね~。注文おねがいしまーす」

 

 

──────

 

 

 量がそんなにあったわけでもないので三十分もしたらみんな朝食を食べ終わった。搭乗開始時間を考えるともう出国審査をしなきゃいけない時間になっている。旅のガイドブック曰く、この時期、要するに三月の上旬は私たちみたいな旅行客が結構たくさんいるから早目に行った方がいいらしい。そのことをみんなに伝えると、

 

 

「先生、実はサファイア会員ってやつで、連れのひとも含めて出国審査を優先レーンで通れるのよ」

 

「あ、それわたしもです。いつもフィンランドとか行くときに使ってるから」

 

「人数とかは大丈夫なの?」

 

「確か、会員一人あたり三人までは同行者も優先レーンに入れるはずよ」

 

「じゃあ大丈夫そうだな。じゃあみんな、行こうか」

 

「待ってくれ~まだ唯と私がカブチーノ飲み終わってないから~」

 

「しょうがないやつだな……。まだ少し時間あるからゆっくりのんでていいぞ」

 

「澪先輩にしては優しいですね」

 

「ここで焦られてこぼしでもしたら……と思うとな」

 

「お姉ちゃんならやっちゃいそう……」

 

 二人が飲み終わるのを待って私たちは店を出る。出国審査には余裕の到着をしてロビーでみんなまったりする。

 

「みんなお土産買った~?」

 

「まだ出発すらしてないんだから、ここで買ってどうするんですか~」

 

「ほんとだよ~。でもなんか出発前なのにすごい疲れた感じがする~。今日はドラムのスティックすら持てる気がしない…。私たちももう年なのか~」

 

「あんたたちが年なら私はどうなるのよ!」

 

「なんかさわちゃんは別枠って感じ」

 

「なんかそれ……スッゴいよくわかります。さわ子先生、私たちがおばあちゃんになっても若いまま学校で先生やってそうですよね」

 

「なにそれこわっ」

 

「そういう純もきょうは一段と元気だよね」

 

「ま、まあ海外だしテンションも上がるでしょ。そんなことよりしっかり梓は計画たててきたの?」

 

「何を偉そうに……。でもばっちりだよ。有名どころはしっかり観られるようになってる」

 

「さすがだな~梓は、なんか丸投げしちゃってごめんな」

 

「これくらい大したことじゃないですしいいですよ。調べるのも楽しいし」

 

「そういってもらえるとありがたいな。私の行きたかったところ、結構入っててなかなか嬉しいよ。」

 

「そうそう!美味しそうなハンバーガーもあるし!」

 

「それはお前と唯だけだ。」

 

 だらだらしながら話しているとアナウンスが鳴った。どうやら搭乗が始まるようだ。私たちの搭乗は……番号的にもうすぐかな。どうやら先生は優先搭乗ってやつらしくて先に行ってしまった。私たちもできたら良かったんだけど、出国審査と違ってこっちは全生と別の予約だし、ムギ先輩ひとりじゃ全員はさすがにカバーしきれなかったらしい。遅かれ早かれ私たちの番は来るので準備していると順番が来た。 

 

 

──────

 

 

 飛行機に乗ってしまえば後は楽なもので機内食を除けば私たちがすることはほとんどない。十二時間ちょっと、椅子の上で過ごしてればもうそこは異国の地だ。よく考えるとすごいことだよね。しかし、わたしの友達はこの感慨を台無しにする勢いで喜んでいる。

 

 

「足下広っ。憂、プレミアムエコノミーってすごいんだな。わたしこれで十分だよ」

 

「純ちゃん落ち着いて……。でも足下広いね~。飛行機のイメージと全然違う。なんかもっと狭いものだと思ってた」

 

「ま、先生は私たちよりももっとプレミアムなビジネスにいるんだけね。後でトイレ行くときに見るといいよ。なんか個室みたいで豪華だから」

 

「へえー。十何時間もいるんだもんね。狭いところにずっといたら疲れちゃうよ。そういえば機内テレビとかあるけど寝なきゃダメだよ? 時差ボケ少しでも弱めたいなら」

 

「はいはいっと。お母さんじゃないんだから…。あっ、梓~、到着って現地時間で何時だっけ」

 

「確か……十時半くらいだった気がする」

 

「そしたらさっさと寝なきゃだ」

 

「その前に昼の機内食があるよ、そのあと寝たら?」

 

「それもそうだね。そんでさー……」

 

 

 純と憂が話し始めたので先輩たちに目を向けるとみんなでガイドブックを私が渡した行程表とつき合わせながら確認している。わたしも行く前になんか東海岸が舞台の映画でも見ようと思って機内エンターテイメントを検索していると飛行機のアナウンスが入る。

 

 

「本日はJAL505便にご搭乗いただきありがとうございます。本機は十一時三十五分、東京国際空港発、十時三十分ニューヨーク、JFK空港到着です。まもなく離陸いたします。シートベルトサイン点灯中はシートベルトを着用し、席をお立ちになることのないようにお願い致します」

 

「あずにゃんあずにゃん、JFKってなあに?」

 

「ジョン=F=ケネディのイニシャルですよ。アメリカの昔の大統領ですね」

 

「あずにゃん物知りだねえ」

 

「いや常識です……」

 

 

 唯先輩の気の抜ける質問に答えていたら既に機体は動き始めていた。どうやらもうすぐ滑走路に入るようで、得体の知れないワクワク感がある。飛行機のエンジン音が一瞬静かになったかと思ったら、飛行機は急に加速を始めた。隣の唯先輩なんか口開けたまま『おぉ~』って呟いてる。離陸すると同時に機体の振動は小さくなり、フワッとした感触に包まれる。あと二十分もしたら水平飛行に入るだろう。

 

 何はともあれ、取り敢えず飛行機には全員無事乗れたから旅の第一段階成功って感じ。

 

 前を見ると憂と純はまだおしゃべりしていて、その後ろではムギ先輩が本を読んでいる。その隣では澪先輩がヘッドホンで…あれゼンハイザーの高級なやつだ…音楽を聴いていて、その隣の律先輩は…寝てる。アイマスクもつけて完全装備だ。律先輩、今日は暇あれば寝てる気がする。そのまた後ろの、わたしの隣の唯先輩は既にヘッドホンをつけて映画鑑賞中。どんな映画見てたのか、ご飯の時に聞いてみよう。とりあえず、私も機内食の時間までは唯先輩みたいに映画でも見ることにした。

 




ちょっと地の文が多めになってきました。場面に動きが入るとどうしても、地の文が増えがちだなあと。

通算UAも無事450を超え、嬉しい限りです。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。今回も誤字脱字の指摘やお気に入り、感想などお待ちしております。
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