1限毎に現れる『講義サボりたい衝動』。大抵はそれに打ち勝ち出席はするのだが、これはその衝動と言うか誘惑に負けてしまった学生の話である。彼は時に、次の講義までの90分、果てには取得単位と戦うことを強いられているのである。
 気が向いたら2話以降も書きます。そうなると、大体フィクション、たまにノンフィクション、極稀に完全ノンフィクションでお届けします。

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主人公くん・・・大体講義には出席をするが、たまにとてつもないやる気のなさを見せ講義をサボる。友達が少ないため、ツテがあんまりない。そのおかげでサボりは最低限で済んでいる。よかったね。あと、基本的に結構ケチであり行動の端々にその傾向は現れる。


1サボタージュ目

 何度鳴ったか分からないアラームを切って時計を見る。あーダメだ、こりゃ間に合わない。一応出席を取られるわけでも必修と言う訳でもない講義なのだが、毎度資料が出る分下手にサボるのは避けたかった。いや、ホントに。マジでそう思ってるさ。

 

 とは言っても別に急いで準備すればせいぜい数分の遅れで入室できるレベルだし、別にこれから準備して講義を受けようかとも考えてはいた。

 

 どうすっかなぁ....と、小さく呟く。もっともこれは一種のポーズであり、取るべき行動は決まっているのだが。過充電のスマホから充電器を抜いてLINEを開く。そして上から3番目にある友人宛に

 

 

『講義来れないから、次の文の資料俺の分も取っててくれんかね?』

 

 とだけ送った。まぁ良い席が取れるかどうかも分からない講義なんてなんかちょっと億劫だから仕方ないよね、と暴論を言い聞かせる。

 

 一応親にサボりがばれるのも面倒なので、いつもよりは少し遅いとはいえそんなに遅くはない時間に家を出る。駅まで徒歩で行き、電車を待った。電車通学と言うのも億劫さを助長させている1つの要因である。

 

 冬場特有の効きすぎた暖房の中での込み合った電車と言うのは中々の苦痛である。座れそうな席もなく、立った乗客は優先席をめぐるチキンレースを繰り広げていたが、とうとう自分の降りる駅までその席に誰も座ることはなかった。

 

 30分くらい経って、最寄りの駅に着く。さて、ここから次の講義が始まるまでの1コマ分の時間をどう過ごそうか。幸いこの辺りは色々店もあるし、暇を潰すのにはそれなりに適している。

 

 そういえば買いたいマンガがあったな....とふと思い出す。アニメを見てシンプルに原作も読んでみたいなぁとか思ったりして。

 

 駅を出てすぐの所に、ヲタ御用達のマンガだとかゲームだとかを多く売っている店がある。とりあえず今日はそこの古本屋で時間を潰すか。ついでに何か面白そうなのがあれば買うとしよう。

 

 この手の店のやや淀んだ空気感は、長くいればそれほどに居心地を悪く感じさせない。まぁ慣れと言うのが多いかもしれないが。

 

 さっさと見つけて時間が空けばまた別の所にでも出向かうか。大学以外で——などと考えながら出版社のカードをあてにして探す。

 

 なんということでしょうか、そのマンガの出版社のスペースが取れだけ探してもない。あまり注意深く見ていないところがあったが、そこは何かちょっと....アレ系の小説などがメインの所の近くなので結界を張られてるかのように自分を寄せ付けない。

 

 とはいえ、逆に何のあてもなくダラダラと古本を見ているのは存外楽しいものである。自分の見たアニメの原作とかあれば気も惹かれるし、何よりこの自由な時間を自分が過ごしている間、同じ講義を取ってる奴等がクッソ面倒臭いグループ活動をさせられている、と言う事実が奇妙な優越感を与えてくれるのである。

 

 ....しかし、どれだけ探しても一番のお目当ては見つからない。色々見ている間に面白そうと思って買ったのはいくつかあるが、中々あきらめもつかない。気が付くとあと10分もすれば出ないと次の講義には間に合わない時間になっていた。相対性理論も真っ青の時間の経ち方である。普段が出不精な分、こういう時間を使って手に入れておきたかったのだが。

 

 もうこれ以上は粘れないな....そう思ってふと顔を上げると、そこには間違いなく目当てのそれがあった。件の結界の張られていたところである。時計はマジにギッリギリの時間をデジタルで示している。

 

 急いでレジに持っていき、会計を済ませる。....そういえばマンガを買ってることバレたら、アイツに自分がサボってたことバレるじゃん。そう思い、バッグの中にマンガを詰める。ヤバイ、買いすぎた。入んねぇ。

 

 最終的にはちょっと強引な形でバッグに詰めて何とか次の講義にも間に合った。先に席を取って待っていると、連絡した友人が来た。

 

 『ほい、これさっきの講義のレジュメな』そう言って友人は自分にプリントを渡してくれた。『悪ぃ悪ぃ』と笑って返す。もちろん何食わぬ顔で。

 

 少しして友人が『そういえば何でさっきの時間来れんかったん?』と、尋ねて来る。大体こういう時の嘘をついている時の返事は1つである。

 

 『まぁ....ちょっとあってさ』。これを語尾を濁し気味に言えば、大抵の人は深くは突っ込めないのである。万能。




 ちなみにこの話は完全ノンフィクションです。


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