「ーーー布都、この紙に書いた物を買ってきてくれ。」
太子様はそう言って、我に紙をお渡しになった。
紙に目を通す。
最近我が食事で使うための皿まで割るからか、紙に皿数枚、と書かれている。…太子様に後で謝らなければ。
「もちろん、人里で道教を広めてくるのも忘れないように。」
昼下がりに人里で、買い物と道教を広めること、この二つが最近の我の日課なのだ。
「我にお任せを!」
そう言って我は人里に向かう。
「さて、最初に皿を買いに行くか。」
人里に着き、食器の店に向かう。
ここは我がいつも通っている店なのだ。
なんと言っても皿の投げやすさが…
「おっ、道士の嬢ちゃん。いらっしゃい。」
「む、店主殿。」
「今日もまたお皿かい?」
「う、うむ。弾幕勝負となると皿は我の弾幕の内の一つだからな。」
「はははっ!割るために皿を買うなんて変わり者は嬢ちゃんくらいだよ。それで、今日は何枚買うんだい?」
「今日は食事用の皿も欲しいのだ。だから、弾幕用の皿と合わせて……これくらい貰おうか。」
選んだ皿と代金を店主殿の前に差し出す。
「はいよ、毎度ご贔屓にしてくれてるからおまけも付けとくよ。」
「おお、それはありがたい。それでは我はまだ買い物がある故失礼するぞ。」
おまけとして付けてくれた皿を見つつ店を出て行く。
一通り買い物を済ませ、我の足は団子屋さんに向かっていた。
人里に行く時に団子屋さんでお団子を食べるのは習慣になっている。
もちろん、太子様から頂いたお金ではなく、我自身のお金で買っているぞ。
「ーーそれにしても…少しおまけを貰いすぎたようじゃの…」
我の手にしている袋は膨れ上がり、破けそうに思えるほどだ。
「ひ、人里に住んでいる者に好かれているという証じゃ、そうであろうそうであろう…それにしても重い…」
「いやいや、これも修行修行、それに人々に好かれているなら道教を広めるのも容易になるだろう。ふふふ、流石我。そこまで見据えているとは。」
そんな独り言を言いつつ歩いているといつの間にか目的地の近くまで来ていたようだ。
「ふむ、今日はどの味のお団子を食べるとするかな、餡子もいいが……ふぎゃっ!」
何かにぶつかった拍子に、持っていた袋が手から離れ、ドサドサと中身が通りに散らばった。
「いたた…何にぶつかったのだ?」
「だ、大丈夫?」
上を見上げるとウサギの耳が付いた青髪の少女が立っている。
「う、うむ、こちらこそしっかり前を見ていなかった、すまない。」
「それなら良いけど…はい、荷物。」
立ち上がり、荷物を受け取る。
「ところで、お主は…見たところ人間では無いようだが、里の者でもないな?我は初めて見るぞ。」
「人間じゃないけど、里に住んでるよ!私は清蘭、月の兎で今はここで団子屋を開いてるよ。」
「む、なるほど里の者だったか、失礼した。我は物部布都、尸解仙であるぞ。」
「ふうん、尸解仙ね…。」
「ところでお主、お団子屋さん、というのは本当か?」
「ええ、味には自信があるわよ。」
「ふむ、では今日はお主のところのお団子を食べることにしよう。」
「本当!?ふふ、これで鈴瑚に一歩近付いたわ。…あ、こっちよ。」
清蘭殿の案内の元着いたのは屋台形式のお団子屋さんだった。
屋台の下側には清蘭屋と大きく書かれている。
隣を見ると鈴瑚屋と言うお団子屋さんがあるが、そちらの方が繁盛しているようだ。
「隣は同じ月の兎の鈴瑚が経営してる鈴瑚屋で、悔しいけどあっちの方が繁盛してるのよね…」
「ふむ、そうなのか。」
「あ、待っててね。今作るから。何味にする?」
「むむむ、そうじゃな…やはり定番の餡子味にするのが良いか…よし、餡子味にするぞ。」
「餡子ね、ちょっと待ってて。今作るから。」
月の兎の作るお団子、か。どんな物が出てくるのか少し楽しみでもあるな。
少し経ち、清蘭殿からお団子を渡される。
「ほう、一般的な餡子団子は餡子の匂いでお団子本来の匂いが消されてしまうが、このお団子はお団子本来の匂いを残しつつ餡子の匂いと調和しているな。味の方はどうじゃろうか。」
そんなことを言いつつ一口食べる。
「むむむ、これは…今まで食べたことが無いほど美味しいぞ!」
「そう言ってくれると嬉しいわね。」
「このお団子、お主が直接搗いているのであろうな。」
「どうして分かったの?」
「うむ、そもそもお団子の弾力が全く違っておるからな。この弾力は人間では出せまい。」
「へぇ〜そうなの?それよりも、あなた団子についてよく語るのね。こんな人初めて見たわ。」
「当然であろう、我は人里に来ては毎回お団子を食べているからな。それに我は優秀な尸解仙である故これくらい分かって当然なのだ。」
「まあ、美味しかったならそれで良いわ。」
「うむ、今日はこんなにも美味しいお団子を食べられて満足であるぞ!また人里に来たときには清蘭殿のお団子屋さんに来ることにしよう。」
「ええっと、布都さん、また来てね!」
今度は別の味を食べてみよう、そんなことを思いながら我は帰路に着いた。
「ただいま戻りましたぞ!」
そう言いつつ太子様の元へ向かう。
「ああ、布都、戻ったのか。しっかり成すべきことを成してきたかい?」
「当然ですとも!見てくだされ、人里の皆に好かれているようでおまけも沢山貰いましたぞ!」
「それは良かったね。ところで道教は広めてきたのだろうね?」
ギクッーーお団子が美味しすぎて忘れていたなんて知られたら…
「布都、心の声が丸聞こえだよ。」
「も、申し訳ありませぬ太子様!」
「ふふっ、気にしなくても大丈夫さ、布都が人々に好意的に接されているのなら、それは道教の認知や理解にも繋がるはずだからね。」
「ありがたきお言葉!次は絶対に忘れないようにしますぞ!」
「そんなに気張らなくても、宗教というものは時間を掛ければ徐々に広まっていくものだ。さて、布都も帰ってきて良い頃合いだし、夕飯にしようか。布都、皆を呼んできてくれ。」
「我にお任せを!」
オチは無いので鈴奈庵が燃えます。
ないないないないない