初投稿、戸山香澄編。香澄はいつも笑顔でいるけど、心の中は曇り空、そんなお話です。よければいいねや評価よろしくお願いいたします。
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自信をなくした戸山香澄が、皆に愛されるお話。

キラキラドキドキ、それを感じるために私は有咲と出会った。有咲と出会ったから、ポピパとも出会えた。今考えればそれは偶然じゃなくて必然だったのかもしれない。なんて、私はそこまで難しい言葉を使う資格なんてないのかもしれないけど。こうしてギターを始めたのも、ライブで気持ちよく歌を歌って楽しむことができるのも全部仲間のおかげなんだ。でも、私は今まで仲間にそれを伝えてはこなかった。私にはそんな勇気すらなくて、毎日の感謝を皆に伝えられなかった。私は要領も悪いし、皆と比べてできることだって少ない。だから、いつも皆に迷惑かけちゃいがちなんだ。でも、学校の皆や妹も、そんな私の弱い部分に誰も気づいてない。それはそうだよね、私は笑顔だけが取り柄だから。だから私は感謝を伝えることにした。そんな弱い自分がキラキラなんて、目指せないと思ったの。

 

「有咲~!おはよ~っ!」

「なんだよお前、朝からくっつくな!うっとうしい!」

「えへへ~いいじゃん~~」

 

有咲は顔を赤くしながらも、いつもこうして私の行動を受け入れてくれる。私はいつからか、そんな有咲が大好きになっていた。ここだけの話、友達としてではなく恋愛的な意味でなんだ。でも思いを伝えたら嫌われちゃいそうだから、まだ黙ってる。私、隠し事とか好きじゃないんだけどね。特にずっと一緒に演奏してきたポピパの人たちには、ね。

 

「香澄、お前にしては朝早いな、急に家の前で名前呼ばれて飛び起きたよ...ただでさえ寝不足なのに」

「え~有咲に早く会いたかったんだよ~?」

「ちょっ!?恥ずかしいからやめろ!」

「まあ実は...今日までの宿題全然終わってないんだ!お願い!手伝って~!!」

「はぁ...どうせそんなことだと思った...それぐらい自分でやれよ~」

 

有咲は早足で校門へ向かっていく。

 

「ちょっと待って~~!!おねがい~~!!」

「英語と数学あったけど、まさかどっちも終わってないなんてことはねえよな?」

「うっ...終わってないです...」

「はぁ...私はお前の先生かよっての」

「有咲頭いいし、本当にそんな感じかも」

「何言ってんだこいつ」

 

有咲はついに駆け足で校舎へと向かってしまった。

 

結局、私は有咲に頼み込んで宿題を手伝ってもらった。私は謝りつつも笑顔を絶やさずにいたけど、やっぱり罪悪感は感じてしまう。いくら有咲でも、要領の悪い私なんかといたら疲れちゃうのかな。そう考えると涙が出そうになるから、もう考えないことにしたけど。

 

「有咲ちゃん、香澄ちゃん、お待たせ~」

 

弁当を持ったりみりん、おたえ、さーやがやってきた。そういえばもう昼休みだったっけ。早いなぁ。

 

「また有咲に手伝ってもらってるの~?」

 

さーやが呆れ顔で私に言う。

 

「いや~~昨日はギターが楽しくて...」

「その気持ちわかるよ~」

 

おたえが頷く。

 

「キラキラドキドキもいいけど、やることもちゃんとやれよな、香澄」

 

有咲の協力もあって、なんとか宿題は終わらせることができた。でも、私の心は晴れなかった。むしろ曇り空、キラキラドキドキは全く感じない。

 

「それではホームルームを終わります。皆さんさようなら」

「さようなら~~」

「香澄、私ちょっと生徒会の仕事あるから先に蔵行っててくれ」

「有咲~~一緒に帰ろうよ~~」

「何言ってんだ、生徒会が優先だ。悪いな」

「えぇ~~」

「そういえば今日、りみは塾、おたえはバイト、さーやは親戚の集まりがあるとかで先に帰るって言ってたな。香澄、一人で気をつけろよ~」

「そんなぁ~~!!って、それじゃ蔵誰もいないじゃん!」

「ははは。まあ私がすぐ行くから、先行っとけよ、それじゃあな」

 

有咲はそそくさと教室を出て行ってしまう。でも、私は最初から蔵に帰るつもりなんてなかった。私は、有咲が好き。大好き。だから、これ以上私のことを嫌いになってほしくない。きっと、有咲は今、私に嫌気がさしてるはずなんだ。いや、今に始まったことじゃない。あ、花音先輩が言ってたけど、ハロハピのこころちゃんは、私と似ているらしい。どうやら、バンドの発起人で皆を笑顔にできる所がそうらしい、でも私は全くそんなこと思わなかった。その言葉を聞いた時、顔は笑顔でいたけど、心は少しだけ痛かったんだ。こころちゃんと私なんかを比べてほしくない、こころちゃんは凄いから。私なんかよりも何倍も何倍も。私が今までやってきたのは、こころちゃんのような真の笑顔を作れるような行動じゃない。愛想笑いや作り笑い、そんな笑顔とは程遠い笑顔を周りにあげてしまっていた。有咲も顔には出さないけど、心の中ではきっと...

 

「あれ、私、泣いちゃってる、なんでだろう、全部私が悪いのに。皆を巻き込んで、自分だけキラキラドキドキを追い求めて周りを見ないで、それなのに...」

 

夕陽の差す教室の中に、私の泣き声が響き渡る。この時だけは、誰とも会いたくなかった。

 

「今日は塾なかったから帰ろう~...って、香澄ちゃん...?」

 

ドアの開く音と、りみりんの声。私は驚いて何も言えなかった。

 

「どうしたの...?」

 

りみりんは泣きそうな顔でこっちへ駆け寄ってくる。やめて、なんで私なんかの話を聞こうとするの。

 

「りみりん...ごめんね...おたえ...さーや...有咲...ごめんね、ごめんね...」

「香澄ちゃん、どうして謝るの。香澄ちゃんは何にも悪いことしてないよ...」

「そうだ、香澄、顔を上げろ」

 

顔を上げるとそこには、有咲がいた。さーやもおたえもいた。どうやらりみりんを追いかけて辿り着いたらしい。

 

「香澄、ねえ、どうしたの、話してみて」

 

おたえが優しく話しかけてくれる。

 

「香澄、涙吹きなよ」

 

さーやが優しくハンカチを差し出してくれる。私には、そんな優しさなんてないから、余計に辛くなり、また涙が溢れる。

 

「うっ...ありさ...さーや...おたえ...りみりん...ごめんね、ごめんね......」

「おい!泣いてちゃわかんねえだろ!香澄!」

 

有咲が私に怒鳴る。でもその声は、優しくもあった。

 

「私、ずっと皆に迷惑かけちゃってた...バンド始めた時からずっと...私何にもできないし、皆のために心配りとか、そういうのも全部勇気がなくてできなかった...有咲には宿題とか私が歌詞で躓いた時とかずっと助けてもらってばっかだったし、りみりんは私の話をずっと笑顔で聞いてくれて、優しくしてくれた...おたえにはギターで分からないコードとか何回も私聞いちゃったし...さーやはポピパに入りたくなかったのに私、無理やり誘っちゃった...それで私も泣いちゃって...私、何にもポピパの皆のために、今まで全然いいことできなかった。ごめんね...」

「何言ってんだよお前!!迷惑なんてこれっぽっちもかかってねえよ!」

「えっ...?」

「お前がいてくれたから、私の生活は変わったんだ!!今までずっと引きこもってて外に出なかった私の生活を、お前が作ったポピパが変えてくれたんだ!!お前は何も悪いことしてないし、ずっと私たちを笑顔にしてくれた、宿題なんていくらでも教えてやる!!私はそんな香澄の役に立つのが実は嬉しかったんだよ...!感謝ならこっちがする!!お前は、私の大切な親友なんだ!!」

「あっ、ありさ...」

「香澄ちゃん!私も香澄ちゃんのこと大好きだよ!香澄ちゃんはいっつも楽しそうだし、話してても面白いし、何より一緒に演奏する時間が私は大好き!!」

「香澄!ギター、私が教えたらしっかり上手くなるし、いいと思う~」

「香澄、私もポピパに入ってよかった。香澄が誘ってくれなかったら私はずっと楽しいことなんてできない人生だったかもしれない、でも、香澄がそれを変えてくれたんだよ」

「みんな...どうして...こんな...私なんて」

「あぁもう!お前にネガティブは似合わねえんだよ!いつまでも泣いてんじゃねえ!早く蔵行くぞ!」

 

有咲は少し怒りながら、でも少し笑顔で教室を出て行った。

 

「ありさ、ありがとう...みんな、みんなと一緒にいて、私いいのかな...」

「いいに決まってるじゃん!香澄がいないと、ポピパは成り立たないからね」

「私たちはみんな、香澄のこと大好きだよ。ずっと、これからも!」

「うっ...あぁ...!!私もっ...だいすき...だよぉ...」

 

私は笑顔を取り戻せた。ダメだなぁ私、皆を笑顔にしたいはずなのに逆に皆に笑顔にさせられちゃって。

 

 

でも、私はこれからもずっと、皆とポピパでいたいな。いつか生まれ変わっても、ずっと。



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