ハイエルフがキャベツばたけを信じているのは間違っているだろうか 作:抹茶まちゃ
原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
タグ:R-15 残酷な描写 ダンまち ロキ リヴェリア アイズ
リヴェリア「キャベツ畑だ」
ロキ「マジで言っとんのかこいつ……」
書いたのは三年ぐらい前なので、現在のダンまちと食い違う部分があるかもしれませんがご容赦ください。
「ロキ。子供はどうやったらできるの?」
【ロキ・ファミリア】の本拠地『黄昏の館』。
今日のステイタス更新を終え、もぞもぞと服を着ながら尋ねられたアイズ言葉。
主神であるロキは、赤い瞳を僅かに覗かせながら戸惑いの表情を浮かべた。
「ど、どうって言われてもなぁ……」
アイズも16歳の少女だ。
どう答えようか。考えをめぐらせていると、壁に背を預け二人をじっと見つめていたエルフ──リヴェリアが言った。
「アイズ、子供は出来るものじゃない」
「そうなの?」
「ああ」
リヴェリアは頷くと自慢げに言った。
「キャベツ畑から取ってくるんだ」
「――自分、あれマジで言ったんか?」
アイズが部屋から退出し二人きりとなったロキの部屋。
ベットに胡坐を掻いて座っているロキは、いまだ壁に背を預けたままのリヴェリアに尋ねた。
「それがどうした」
リヴェリアは「なにかおかしいか?」と片目を瞑っている。
神々に嘘はつけない。彼女が本当のことを言っているのは間違いない。
だからこそ、わざわざリヴェリアに部屋に残るように言ったのだ。
「え、自分いくつ?」
「どうやら死にたいようだな」
「すいませんごめんなさい。……ちゅうか、どこでその話きいたん?」
「里に居たころだな。私もアイズのように疑問に思って尋ねたら、そう答えられた」
あの時は驚いた、と過去懐かしむように眼を細めるリヴェリアの姿は、慈愛に満ち溢れていた。
対するロキは苦悶の表情に満ち溢れていたが。
「え、でも、里から抜けて旅してきたんちゃうの? そこでいくらでも……」
「何をいいたいのかは知らんが、大体のことはアイナがやってくれていたからな。それに、あまり人に尋ねる内容でもないだろう」
「うん、まぁ、そうやねんやろうけど……」
ということは、マトモな性教育を受けないまま里を飛び足した後、従者であるアイナが一切合財の面倒ごとを受け持ち、うまい具合に処理してきたのだろうか。
その結果としてほとんど……というよりも全然、まったく、なにも知らず、まっさらさらさら本当の意味での生娘のまま、こうしてこの
(え、なにそれ。めっちゃオモロイやん)
頭の中の小さなロキが笑みを浮かべる。
僅かな間、リヴェリアをどう料理してやろうか、などと下種な発想が脳裏をよぎる。
でも、なんだか殺されそうなのでやめにした。
「ところでロキ、お前にひとつ聴きたいことがある」
「ん、なに?」
「キャベツ畑で子供がもらえるのは分かっているんだが、どうやって貰うんだ?」
リヴェリアの言葉にロキは眉間の辺りをぎゅっと押さえた。頭が痛い。
「え、なに? 自分そういう相手とか……おったん?」
「いや、いない」
リヴェリアはふぅ、と嘆息。
「単純な好奇心からだ。里にはキャベツ畑などなかったからな……。ここならどこで貰って来ればいいんだ【デメテル・ファミリア】でいいのか?」
「え、えーっと……」
本当のことを言ってしまおうか。嘘をついてしまおうか。どっちに転んでも、ロキにとってロクことが起きないような気がする。
うんうん唸って、やっとのことで口を開いた。
「リヴェリア、実はな子供はキャベツ畑から取ってくるもんとちゃうんよ」
「……なに?」
翡翠の瞳を僅かに大きくするリヴェリア。ロキは微妙な表情を浮かべて。
「ただまあ、その、あんまり、うーん……」
「変なところで濁すな」
壁から背中を離し、憮然とした表情をみせるリヴェリアに、どう答えようかとロキは悩む。
悩みに悩んで、迂遠な表現で伝えることにした。
「リヴェリア。南のほうにある歓楽街って知ってる?」
ぜんぜん迂遠ではなかった。
「ああ。あそこがどうかしたのか?」
「ま、まぁ……あそこで、ってわけでもないねんけど……、うーん……、こう、軋む音とか、嬌声? ちゅうのはきいたことない?」
「いや、ない。……だが、そういえば、旅をしているときに似たような音は耳にしたな」
よし、いける。心の中でガッツポーズをとって、ロキは言った。
「まぁ、いわばそれが子供を……ちゅうわけや」
「あれが関係あるのか……? アイナに尋ねたらキャベツが歩いて子供を持ってきたから飛び跳ねて喜んでいる、と言っていたが」
まさかそれを信じたのか。そんなん新手のモンスターやん。
ロキはげんなりとしつつも、それは違うと首を振って。
「まぁうちも経験ないから、詳しゅう説明せえって言われても難しいんやけど……」
「たしか神は子供を授からないんだったな。分かった。あとは私のほうから誰かに尋ねておこう」
「……ちゃんとしたやつに聞きや?」
「分かっている」
リヴェリアはそう言って部屋からでいこうとして、ドアの前でロキに背を向けたままピタリと立ち止まった。
「ロキ」
リヴェリアは顔だけ振り返り、微笑む。
「ありがとう。危うく恥をかくところだった」
「……ええってことよ」
ロキもにまっと笑みを浮かべ返す。ぱたん、とドアが閉まるのを確認すると大の字になって寝転った。
疲れていたのか、意識もすぐに沈み込んだ。
「――ロキ」
「……ん。おぉ、リヴェリアか」
朝。
窓辺からさしこむ日差しにロキが薄目を開けると、目の前にリヴェリアが立っていた。
「昨日はすまなかったな」
「ええって言うたやろ、それでどないしたん?」
十中八九内容は予測できたが、体を伸ばしつつあくびをひとつして、言葉を待つ。
「昨夜の件だが、
「おぉ。……そっか」
つまりはもう、リヴェリアは知識だけは
なんだかそれはさびしいような気もする。だが、それも仕方のないことだろう。
『変わること』こそが、彼女を含めた下界の存在の、『変わることのない』自分たち神々を魅了してやまない特筆のひとつなのだから。
胸中複雑な表情を浮かべるロキに、リヴェリアは自慢げに言った。
「──コウノトリ」
「……ん?」
「コウノトリが運んできてくれるんだろう?」
あんぐりと開いた口が閉まらなかった。
「なんだ、どうした?」
「そ、それ誰に聞いてきたん……?」
「アリシアだ。後は恥ずかしい話だが、その場に同席していたレフィーヤ、だな」
エルフーッ!! ロキは心の中で叫んだ。アホ、バカ、ボケぇ。話が余計ややこしくなったやんけ!?
「リ、リヴェリア、あのな」
「──コウノトリ、というのがどんな鳥なのかは知らないが、鳥なら里の空で時折見かけた。きっとあの中のどれかがそうなのだろう」
リヴェリアは納得が言ったとばかりに頷く。
その目はマジだった。
真実を告げようとしたロキの言葉はリヴェリアの言葉に遮られ、宙に浮かんで帰ってこない。
「どうしたロキ。死んだような顔をしているが」
「なんでもない……」
頭が痛い、と手で顔を抑えるロキ。二日酔いか? とリヴェリアが呆れた様子で見つめてくる。
「……リヴェリア」
「なんだ」
「抱きしめていい?」
「駄目に決まっているだろう」
やんなぁ……。ロキはため息を吐くと、ごろりとベットに寝転がった。
体が異様に疲れていた。なんだかもう一眠りしないといけない気がする。
意識がだんだん薄れていくなか、ぱさりと毛布をかけられた。
「寝るなら何か羽織るものぐらいかけろ。風邪をひくぞ」
「……ありがと」
「気にするな」
やさしい子供をもててうちは幸せな親やなぁ……。
ロキは現実から逃避をすることに決めた。
アリシア「リヴェリア様。子供はコウノトリという鳥が運んできてくれるんですよ」
レフィーヤ「そ、そうです! 私も母からそう聞きました!!」
リヴェリア「そうだったのか……(愕然)」