バイタルチャージによって右拳に溜めたキングストーンエネルギー、それを眼前のノイズの集団に飛び掛かり叩きつける。
「シャドーパンチ!!」
拳の一撃はノイズを砕き、余波が諸共に周辺のノイズを砕く。
「
『引き続き次のポイントに移動してノイズの掃討を頼む!』
「了解した!」
言われて、俺は次にノイズの気配を感じる場所へとバトルホッパーを走らせる。
今日もノイズの気配を感じて戦いを始めた俺こと仮面ライダーSHADOW。だが、運悪く奏と翼の2人は新曲PVの撮影のため留守にしており、結果俺だけで複数個所に現れたノイズの掃討に追われていた。
『装者2人、ヘリに乗り込みました! これより現場に向かいます!!』
どうやら奏と翼はこちらに向かい始めたらしい。
だがそんな俺の眼前、沿岸のプラント地帯方面で光の柱のようなものが天へと昇る。
すると通信機の先、本部が騒がしくなった。
『これは……アウフヴァッヘン波形!?』
『ガングニールだとぉ!!』
了子さんと
「どういうことだ、奏はまだヘリで移動中なんだろ」
『分からん。 分からんが何かが起きている!』
「分かった、急ぐ!!」
俺はバトルホッパーのアクセルを全開にして大ジャンプ、そのまま海へと出るとバトルホッパーで海上を走り始める。障害物の多い市街地を走るより遮蔽物のない海上を走った方が速いと判断したからだ。
俺はバトルホッパーのアクセルを全開にする。バトルホッパーの無限動力源『モトクリスタル』、そして俺の体内のキングストーンが共鳴し合い、バトルホッパーはそのすべての能力を解放した速度で沿岸のプラント地帯へ急ぐ。
何か重大な『予感』がする。そして往々にしてこういう俺の予感は当たるのだ。
そして到着した沿岸のプラント地帯で待っていたのは……。
「響ッ!?」
幼い少女を抱きしめながらシンフォギアを纏って戦う、響の姿だった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
胸から溢れる歌、それを口ずさむと湧き上がる力……それを拳に乗せてノイズに叩き込む。直撃を受けたノイズが吹き飛び、その衝撃が後続のノイズまでも吹き飛ばす。
「凄い……これがシンフォギアの力!?」
奏や翼のことでシンフォギアのことは知っていたものの、ノイズを圧倒する凄まじい力に響が目を見開く。
「お姉ちゃん!!」
「シィッ!!」
腕の中の少女の声に、少しだけ呆けていた響はすぐに心を取り戻し、後ろから飛びかかってきたノイズにカウンターで鋭い廻し蹴りをお見舞いする。その蹴りをモロに受けたノイズは、他のノイズを巻き込みながら吹き飛んだ。
「今のうちにノイズを突破する!」
師匠にならった武術とシンフォギアの力で自分だけならいくらでも生き残れるだろうが、幼い少女を連れたままノイズと戦うのは危険だ。響はノイズを突破し狭い路地を抜け出ると、プラントの広場に出た。
「っ!?」
しかしそこにいたのは視界を埋めるノイズの群れ。四方を囲まれ、逃げ場がない。
「お姉ちゃん……」
「大丈夫、絶対助ける!!」
響は少女をおろすと、両手で構えを取った。不退転でこの少女を守り切るつもりだ。四方八方の気配を探り、その全てを迎撃するため深く深く息をついて腰を落とす。
だが、ノイズが襲い掛かるより先に状況が動いた。
ブロロロォォォ!!
闇を切り裂くバイクの音、その音を響は誰よりよく知っている。
「響っ!!」
「ノブくん!!」
バトルホッパーがノイズを薙ぎ倒し、空中でバトルホッパーから飛び上がった仮面ライダーSHADOWが響と少女の目の前に降り立った。
「仮面ライダーSHADOWだぁ!」
『ノイズを倒して人を助ける謎のヒーロー』として都市伝説になっている仮面ライダーSHADOWの登場に歓声を上げる少女。
それを視界の隅に見ながらSHADOWは響へと話しかけた。
「事情は後で聞く。 今は俺の背中、預けられるか?」
「……うん! 師匠から習った技とシンフォギアの力で!!」
はじめはポカンとしていた響だが、言われた意味を呑み込むと喜色を満面にたたえた。
バトルホッパーがノイズを威嚇するように少女の廻りを旋回し、少女を守る。SHADOWが構え、その背中を守るように響も構えた。
一斉にノイズたちがSHADOWと響に飛びかかる。
「タァ!!」
SHADOWのパンチが正面から迫ったノイズを砕き、返す刀の水平チョップがノイズを薙ぎ倒す。
「ハァ!!」
SHADOWの後ろから迫ったノイズに響の鋭い蹴りが叩き込まれた。響に接近した人型ノイズがその刃のような腕で響を突き刺そうとするが、響はその腕を跳ね上げるとがら空きの胴に肘を叩き込む。中国拳法『八極拳』の技の一つ、『裡門頂肘』だ。
「すごーい、仮面ライダーとお姉ちゃん、躍ってるみたい!」
少女の言うように互いの位置を変えながらその背を守り続ける2人は、クルクルと踊りを踊っているようにも見えた。同じ師から武術を習い、さらに人生の多くの時間を一緒に過ごした幼馴染だからこそ出来る、抜群の即興連携である。
その2人の苛烈な舞踏に、残った
「仕上げてくる! バイタルチャージ!!」
「やっちゃえ、ノブくん!!」
緑色のキングストーンエネルギーを両足に溜めたSHADOWが空中に飛び上がった。
「シャドーキックッッ!!」
必殺キックが大型ノイズに炸裂し、大型ノイズが爆散する。
爆発の炎を背に、カチャカチャと足音を鳴らしながら歩いてくる仮面ライダーSHADOW。
「ノブくん!!」
そんな仮面ライダーSHADOWに手を振りながら近付くと抱きつく響。
「仮面ライダーとお姉ちゃん、仲良しさんなんだ!」
バトルホッパーの傍らでそれを見ていた少女の楽しそうな声が、ノイズの消えたその場に響いた。
~~~~~~~~~~~~~~~
突然、響がシンフォギアの装者になった夜から一夜明けた。
あの後、ノイズを倒し俺と響が連れだって二課に行くと全員が大混乱状態だった。シンフォギア、しかも奏と同じ『ガングニール』だ。奏など何度も自分のギアを確認していたくらいである。
何が一体どうなってこうなったのか? 誰一人として、その理由が欠片も分からない。
響はすぐに精密検査にかけられ、そしてその結果が今日、了子さんから発表されるのだ。
「結論から言うと……響ちゃんの身体、手術で摘出不能な心臓付近に奏ちゃんのガングニールの破片が突き刺さってたわ。
これが反応してシンフォギアとして発現したというわけ。
で、その破片の出所なんだけど……」
「あのライブの時の怪我……だね?」
「そうよ」
あのライブで響を貫いたものは岩の破片ではなく、損傷した奏のガングニールの破片だったのだ。そしてその破片が響の身体に融合し、力が引き出されてシンフォギアとして発現したということだった。
「ごめんよ響……アタシがあの時もっと強ければこんなことには……」
そうやってすまなそうに謝る奏に、微笑んで元気いっぱいに響は返す。
「へいき、へっちゃらです。前にも言ったけど奏さんは私の命を助けてくれました。
それに今回のことだってガングニールの破片が私の中になかったら、昨日私もあの女の子もノイズから逃げ切れずに死んじゃってたかもしれないんです。
だからまた、奏さんに助けられちゃいました。
奏さん、ありがとうございます」
「……アンタって子は、本当にいい子だね!!」
奏が響を抱き締める。その光景に皆が苦笑していた。
そんな中その輪から少し離れていた俺に、隣にいた翼が俺にだけ聞こえる小声で言ってくる。
「月影、あなたには思うところはないの?」
「……そういうあんたら2人は?」
「私も、それに奏も立花のことはこの1年でまるで妹のように思っている。だから危険な
私たちの帰りを待って応援してくれる日常であればいい……そう思ってる。
だが同時にあの子の性格もよく知っている。
立花は誰かを助けたい、守りたい、そう想い行動できる真っ直ぐで、同時に危険でいびつな子だ。
あの子のそれは、もはや『前向きな自殺衝動』のようなものだぞ。
そんな子がシンフォギアのような大きな力を持ったら……答えは一つ。誰かを救うために
「……さすが先輩、よく分かってらっしゃる」
そう言って俺も小声で答えた。
「本音を言えば、俺も戦うような真似はやめてほしいしすぐにでも回れ右して日常に戻ってほしい。
でもな……」
そう言って思い出すのは昨日の夜、響と一緒に背中を預けて戦ったときのことだ。
「昨日の夜、響と一緒に戦ったときな……『楽しかった』んだ。
守るべき者だとわかっているのに、日常にいた方がいいって思っているのに……
……翼にはそう言うことはないか?」
「……私も奏と2人ならどこまでも行ける、何でもできるって思っている。
だからその気持ちは分からなくもない。分からなくもないが……」
「響だって俺と一緒に
昨日の戦いも実戦が初めてとは思えない動きでノイズを倒してた。
大型ノイズはまだしも、通常のノイズくらいなら敵じゃないはずだ」
「だが
分かっているだろう?」
「……その時は、俺が命に変えて守る。
だから今は響の思うようにさせてやりたい……」
「……わかった、私も奏もできる限りの手助けはしよう。何と言っても大切な妹分だからな」
「ありがとう」
俺は翼に小声で礼を言う。
実際に、何の運命のいたずらか響は俺と一緒に
そんな時だ。
「!? ノイズの気配!!」
「えっ!」
それを感じた俺は即座に走りだす。それに真っ先について来たのは響だった。
「ノブくん、私も!!」
「いいのか、ここからは完全に
「そんな場所を、ノブくんはずっと走って沢山守ってきたんでしょ?
その銀色の背中で、守ってきたんでしょ?
私にも力があるなら……背中を眺めるんじゃなくて隣にいたいよ」
「……」
やがて、俺と響は地上へのエレベーターに到着し、エレベーターが急上昇を始める。
その時、ちょうどノイズ発生を知らせる警報音が鳴り響いた。
「バトルホッパー!!」
着いた場所は各種車両の置かれた格納庫だ。
俺の声に応え現れたバトルホッパーが車の一台に取り付くと、バイクへと変形する。
「変身!!」
「Balwisyall Nescell gungnir tron……」
2人で光の中で変身を果たすと、俺はバトルホッパーに跨りながら響に言った。
「後ろに乗れ、響! しっかりつかまってろ!」
「うん!」
響がバトルホッパーに跨り俺の腰をつかんだのを確認すると、俺はアクセルを吹かして車両格納庫を飛び出した。
『ノイズの座標確認、リディアンより距離200』
「ああ、もう見えてる!」
二課からの通信があった時には、すでに俺も響もノイズの姿を確認していた。
「響っ!」
「ノブくん!」
バトルホッパーで大ジャンプ、空中でバトルホッパーから飛び降りた。
「「たぁぁぁぁ!!」」
そのまま空中でクルリと回転すると2人でノイズの集団へとダブルキックを放つと着地する。
「響、慣れないんだからあまり前に出過ぎるなよ」
「じゃあお手本見せてね、ノブくん」
「じゃあ、張り切ってやろうかな……バイタルチャージ!!」
容赦なく、初手からバイタルチャージで一気にキングストーンエネルギーを高める。
俺と響によってそこのノイズが殲滅されたのはそれから3分後のことだった。
~~~~~~~~~~~~~~~
どことも知れない場所、暗い部屋の中。
「立花響……仮面ライダーSHADOWを制するための鎖が、まさか新たなシンフォギア適合者となるとは……」
何の力もない一般人である立花響は仮面ライダーSHADOWの動きを封じ込めるために使おうと思っていたのだが、それがシンフォギアという力を持ってしまった……頭の痛い話である。
「しかし……研究材料としては大いに興味がある」
立花響は人と聖遺物の融合症例第一号だ。
人と聖遺物の融合という現象には大いに興味をそそられる。ともすれば自らの切り札にもなりえる話だ。
「『あの娘』を使って何とか攫えないものかしらね?」
ただその時には仮面ライダーSHADOWには細心の注意を払わねばならないだろう。
どのような作戦で行くべきか、策を巡らせる。
「いずれにせよ、誰が相手であろうと『計画』の邪魔はさせない……」
そんな決意の籠った声が、闇に響いた……。
今回のあらすじ
SHADOW「なんか響が対魔忍スタイルで暴れまわってるんだけど!」
ビッキー「対魔忍いうな!
あ、でもノブくんとの共闘すっごい楽しい!」
幼女パイセン「超仲良し。さっさと結婚汁」
奏「妹分の変身理由がアタシの不手際で落ち込む」
防人「あれ、戦場(いくさば)に出てもいいの?」
SHADOW「響が楽しそうで俺も鼻が高いよ。
俺もダブルライダー状態で超楽しかったし、精一杯ケツ持ちするから好きなようにやらせてやってくれよ」
防人「まぁ、できる限り協力はするけど……」
フィーネさん「……ただの一般人だったはずが、何でシンフォギアなんか纏ってるのよ。
これ計画が……いやでも科学者としては大いに興味あるし、キネクリ、ちょっとあいつ攫ってきて」
キネクリ「いきなりの無茶振り。
まぁ、あたし様もレベルアップしてるみたいだからやるけどさ。でもSHADOWだけは勘弁な!」
今週は休みだと言ったな。あれは嘘だ。
何とか都合がついたので投稿です。できる限りこのまま週一投稿は継続させたい。
次回もよろしくお願いします。