それでも月は君のそばに   作:キューマル式

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第20話

「『カ・ディンギル』か……」

 

 二課で弦十郎が呟くのは、クリスからもたらされたフィーネという一連の黒幕の漏らしていたという謎の言葉だ。

 

「了子くん、『カ・ディンギル』という言葉の意味を、何か分からないか?」

 

 そう問いかける通信先の人物は了子である。

 数瞬の間の後、了子からの答えが返ってきた。

 

『『カ・ディンギル』とは古代シュメールの言葉で『高みの存在』……転じて天を仰ぐほどの巨大な塔を意味しているわ』

 

「巨大な塔……何者かがそんな巨大な塔を建造していたとして、何故俺たちはそれを見過ごしていた?」

 

『さぁ? ただ常識的な観点から言って、それほどの巨大な建造物を極秘裏に一から建造するのは不可能に近いわね。

 だとすれば……既存の高層建造物、それを改造するという可能性の方がまだあり得る可能性よ』

 

「既存の高層建造物の改造、か……わかった、調べてみよう」

 

『まぁそれよりも何かしらにあやかって付けたただのコードネームであり、塔は関係ないという可能性の方が現実的じゃないかしら?

 あまり捉われすぎるのもよく無いわ』

 

「そうだな。様々な方面から考えてみよう。

 急にすまなかったな、了子くん」

 

『何の何の、こっちの野暮用が終わったら私も合流するわ』

 

 そう言って了子の通信は切れた。

 弦十郎は司令席に深く腰掛けると呟いた。

 

「最終決戦、だな……」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……」

 

 通話の切れた通信機、それを見ながら了子は呟く。

 

「……相変わらず嘘は下手ね、弦十郎くん」

 

 苦笑するように言うと、了子はその髪を解いた。長い髪が風に揺れ、その黒い髪が金色へと変化していく。

 

「さぁ……最終決戦を始めましょう」

 

 そう了子……いや、フィーネは呟いたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「誰も知らない秘密の塔、『カ・ディンギル』か……」

 

 時間は昼休み、俺は『私立ファリネッリ男子音楽院』の屋上でジョーと一緒に昼飯として焼きそばパンを咀嚼しながら通信機で話を聞いていた。

 あの時クリスの言っていた『カ・ディンギル』というのは、『高い塔』を意味するものらしい。秘密兵器のような『高い塔』……だがそんなものが建造されているのであればさすがに二課の情報網に引っかかるだろう。だがそれがないということは……。

 

「『上』じゃなくて『下』かもな」

 

『……どういうことだ、信人くん?』

 

「いや、単純に地上じゃないなら地下じゃないかって思っただけ。

 それでほら、実は塔じゃなくてプールとかが割れて地下からせり上がってきた秘密兵器の巨大ロボ発進、とか?」

 

『さすがにそれはどうなの?』

 

『ノブくん、そういう巨大ロボットアニメ好きだもんね』

 

 俺の言葉に翼は呆れ気味だが、響は分かってくれるようで相づちをうってくれる。いい彼女を持てたと俺は喜びながら、俺は自分の言った言葉を考えていた。

 

(……相手が大ショッカーだと考えると、十分に可能性がある話なんだよな)

 

 大ショッカーに所属していた大幹部の1人、『キングダーク』の存在だ。Xライダーと戦った敵だが大ショッカーにも所属していた、いわゆる『巨大ロボット』である。漫画版ではシャドームーンが操縦しているという、何気に関係性もあったりする。

 『キングダーク』は巨大な体躯、両手からの電撃や指先からのミサイル、目からの光線や口から毒ガスなど強力な兵装で固められており、『カ・ディンギル』とやらがこれの2号機や3号機の建造のことを指しているのであれば十分すぎるほどの脅威だ。

 

『なるほど……』

 

『なんだい、弦十郎のダンナまで敵の巨大ロボットが出てくると思ってるのかい?』

 

 どうにも女性陣には呆れられた俺の意見だが、弦十郎司令(おやっさん)には思うところがあったのか考え込んでいる。

 その時だ。

 

 

ビーーー! ビーーー!! ビーーー!!!

 

 

 通信機越しに、二課にノイズ発生のアラートが鳴るのが聞こえた。また探知能力で本部のセンサーに後れをとったことを内心で舌打ちしながら、俺たちは通信機越しに状況を確認する。

 

『ノイズは大型の飛行タイプが複数体、それがそれぞれ別の方向から東京スカイタワーに向かって進行中だ。

 東京スカイタワーは俺たち二課の活動時の映像や通信といった電波情報を統括・制御する役割が備わっている。

 それをやられるわけにはいかない』

 

「東京スカイタワー?

 ここからだと結構な距離があるな……わかった、リディアンで響を拾ってからすぐにバトルホッパーで向かう」

 

 俺は通信機に耳を傾けながら、食べ終わった焼きそばパンの包装を丸めてゴミ箱へと投げ捨てて立ち上がる。

 だが、そんな俺に弦十郎司令(おやっさん)が待ったをかけた。

 

『……いや、信人くんと響くんは残ってくれ。 東京スカイタワーには奏と翼に向かってもらう』

 

弦十郎司令(おやっさん)、いいのかよ?」

 

『ここからでは東京スカイタワーまでかなりの距離があるが、奏と翼は今はPV撮影で距離は比較的近くだ。

 それに……万が一のことを考えると、2人は防衛のために残しておきたい。

 奏、翼、いけるか?』

 

『もちろんだよ、弦十郎のダンナ!』

 

『任せてください』

 

 そうして方針が決まり、通信が終わった。

 

「ジョー、聞いてたな?」

 

「ああ、とりあえず午後の授業はキャンセルだな」

 

「俺は今すぐ本部に向かうよ」

 

「俺もここの処理を終わったら本部に行くぜ。

 頑張ってくれよ、仮面ライダーSHADOW!」

 

「ああ!」

 

 そう言って俺とジョーはそれぞれの役割のために走りだしたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 収録スタジオの屋上にやってきたヘリに乗って、奏と翼は現場へと向かう。

 

「大型飛行ノイズを目視で確認!」

 

 ヘリのパイロットがノイズを目視できたことを教えてくれる。すると、その目の前でボロボロと何かが大型飛行ノイズから落ちていくのが見えた。

 それは通常サイズのノイズだ。すると通信機の向こうから弦十郎の切羽詰まった声が響く。

 

『奏、翼、聞こえるか! たった今入った情報によると巨大な飛行型のノイズは、他のノイズを大量に街へと降下させているようだ』

 

「ああ、こっちでも見えてるよ!」

 

『どうやら輸送機としての側面を持っているらしい。被害が拡大する前に優先的に叩いてくれ!』

 

「「了解!!」」

 

 そう言って2人はヘリのドアを開け放つとノイズを睨む。

 大型飛行ノイズが4体、しかもそれぞれからノイズが降下しておりその数は増え続けている。

 

「凄い数だね。それに……2人だけで戦うのは久しぶりかな」

 

「ええ。でも両翼揃った私たちツヴァイウイングなら!」

 

「ああ、いくよ翼!!」

 

「ええ、奏!!」

 

 そして2人は手を繋ぎながら空中へと身を躍らせた。

 

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl……」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron……」

 

 

 起動聖詠を歌い上げると、2人が空中でシンフォギアを纏う。

 そして落下しながら奏の構える槍の穂先が高速回転をはじめた。 

 

「そりゃぁぁ!!」

 

 

『LAST∞METEOR』

 

 

 奏のアームドギアから発生した竜巻がそのまま我が物顔で街にノイズの投下を続けている大型飛行ノイズに迫るが、雑魚ノイズたちが一斉に集まるとその身を盾にして大型飛行ノイズを守った。

 

「はぁ!!」

 

 

『蒼ノ一閃』

 

 

 着地した翼も蒼いエネルギーの斬撃を飛ばすものの、またしても雑魚のノイズたちが盾となって威力が減退し、有効打には程遠い。

 

「相手に頭上を取られるのがこうも立ち回りにくいとは……!?」

 

「こっちももう一度ヘリに乗って空に……」

 

 言いかけた奏の目の前で、今しがた自分たちを運んでくれたヘリがノイズの攻撃を受けて爆発し、火の玉となって落下していく。

 

「こいつら、よくも!!」

 

 怒りを燃やす2人に、頭上から飛行型ノイズの大軍が迫った。

 それを必死に捌きながら戦うが、空中からは新たに陸上型のノイズも投下され目の前を埋め尽くしていく。

 

「あの空中のノイズを何とかしないとどうしようもないね!

 アタシたちも東京スカイタワーに登って、同じ高さから攻撃するっていうのはどうだい!?」

 

「でも、この数のノイズを後回しにしたら街に甚大な被害が!」

 

 お互いに新たに現れたノイズの集団を切り飛ばしながら戦うが、基本的に接近戦型の2人には空中のノイズに対する有効な攻撃が欠けていて、打開策が思いつかない。

 目の前のノイズの集団を倒した矢先、新たな飛行型ノイズの集団が空から迫り2人は身構える。

 だが……そんな飛行型ノイズの一団は横合いから乱射されたガトリング砲によって粉々に引き裂かれた。

 

「今のは!?」

 

 驚きに視線を巡らせると、そこにいたのは赤いシンフォギア『イチイバル』を纏った、雪音クリスだった。

 

「お前……」

 

「ふん、こいつがピーチクパーチクうるせぇし、立花響と月影信人(バカップルども)に頼まれたからな。

 でも勘違いするなよ、人気者ども。 お前らの助っ人になった覚えはねぇ」

 

 通信機を片手にどこか言い訳じみたことを言うクリス。だがそれを二課からの通信が否定する。

 

『助っ人だ。第二号聖遺物『イチイバル』のシンフォギアを纏う戦士、雪音クリスだ』

 

「っ……!?」

 

 自分の発言をすぐに潰され恥ずかしいのか、ほんのりと顔を赤くしながら背けるクリス。

 そんなクリスに奏は言った。

 

「……まぁいいさ。 今は猫の手も借りたい状況だし、響や信人からあんたの話は聞いてる。

 妹・弟分の信じた相手さ、アタシも信じるよ。

 ただね……一つだけ答えな」

 

「奏……」

 

 真剣な表情の奏。

 奏としてはクリスは家族の仇の一員だったかもしれない相手だ。可愛がっている響や信人に事情を聞いているとはいえ、その複雑な心中を察している翼はことの成り行きを静かに見守る。

 

「あんたの今の目的はなんだ?」

 

「……パパとママに遺された『夢』のため、かな」

 

 問われたクリスは少し遠い目をしながら答えた。

 

「パパとママは『歌で世界を平和にする』って夢を持って精一杯生きた。

 色々あったけど、あたしはやっぱりパパとママが大好きだ。だから、その夢を継ぎたい。歌で平和を掴みたい。

 ……知ってるか? 『夢』を持つと、時々すっごく切なくなるけど時々すっごく熱くなるんだ。その熱さが今、あたしを動かしてる。

 でもあたしのやったことは償わなきゃならないことがたくさんあって、しなくちゃならないこともたくさんある。その一つ目がフィーネとの決着だ。

 だからそのために……『夢』に正しく向き合うために、あたしは戦うんだよ」

 

 その言葉を聞いた奏は「そっか……」と短く答え、そして続ける。

 

「ただ……その『夢』、『呪い』にするなよ」

 

「『呪い』?」

 

「『夢』ってのは『呪い』に近い。夢を叶えなければって想いが、時には人を縛り付ける。

 その『呪い』を解くには『夢』を叶えないとならない。でも、途中で挫折した人間はずっと呪われたままになる……」

 

「……」

 

「まぁ、そんな風になるなよっていう激励だよ」

 

「へっ……人気者が、余計なお世話だよ」

 

 そう言いながらも2人は今の会話でお互いに思うところがあったのだろう、どちらも微笑んでいた。

 この2人は大切な家族を失うという痛みを知る者同士であり、どこか似ていた。それをお互いに感じ取ったのである。それを見て、翼はホッと胸をなで下ろす。

 

「それでどうする? あの大型飛行ノイズ(デカブツ)をやらないと雑魚の無限湧きだ」

 

「だったら、あたしに考えがある。

 イチイバルの特性は『長射程広域攻撃』、派手にブッ放してやるよ」

 

「あなたまさか、『絶唱』を?」

 

 クリスの言葉に『絶唱』の危険を知る翼が眉をひそめたが、それをクリスは否定する。

 

「フィーネと決着つけて、パパとママの『夢』を継ぐんだ。こんな雑魚どもにくれてやれるほどあたしの命は安物じゃねぇ」

 

「ならどうするんだい?」

 

「ギアの出力を限界まで高めて放出を抑える。 そして臨界にまで溜め込んだエネルギーを一気に放出して殲滅してやるよ!」

 

 それは言うほど簡単なことではない。フォニックゲインの上昇とその精密制御が必要な高等技だ。

 しかしそんなことを露とも見せずクリスは言ってのける。

 その姿に、自分たちのすべきことを理解した奏と翼は頷いた。

 

「なるほど。 でも、そのチャージ中は丸裸も同然」

 

「なら、それを守るのがアタシらの仕事ってわけだ!」

 

 言ってクリスを背にすると、2人はアームドギアを携えてノイズたちに斬り込んだ。

 

「ちっ……頼んでもいないのに余計なことを。 二課(トッキブツ)の連中はみんな立花響と月影信人(バカップルども)と同じお人好しなのかよ」

 

 残ったクリスはそう言いながらも笑っていた。

 

(ここまでやられたら……あたしも引き下がれないじゃないか!)

 

 一時は歌を嫌っていたこともあった。だがそんな歌を今は無性に歌いたい。だから胸から浮かぶままに全霊で歌い上げる。

 ツヴァイウイングの2人が戦場を駆ける中、高まるエネルギーが赤いオーラのようにクリスを包みそれが炎のように吹きあがった。

 

「「託した!」」

 

 機が熟したと判断したツヴァイウイングの2人が射線を空けるように飛び退いた。するとクリスのイチイバルが発生した高密度のフォニックゲインを糧に形を変えていく。

 両手のボウガンがガトリング砲に変形し、腰アーマーが左右にスライドし多弾頭ミサイルが展開される。そして肩部に4基の大型ミサイルが展開され、衝撃制御用アンカーが地を噛んで発射体勢を整えた。

 

 

『MEGA DETH QUARTET』

 

 

 クリスのすべての武装が一斉に発射された。

 ガトリング砲の弾丸が無慈悲に雑魚の飛行ノイズを蹴散らし敵集団に穴を開ける。そしてそこに飛び込んだ多弾頭ミサイルが分裂、大量のマイクロミサイルが周辺のノイズたちを巻き込み吹き飛ばす。

 そして雑魚の飛行ノイズという護衛を失った大型飛行ノイズに、本命である大型ミサイルが突き刺さった。あまりの威力に空に我が物顔で浮いていた大型飛行ノイズは身体をくの字に叩き折られ、爆炎の中に砕け散っていく。

 

「やったか!?」

 

「ったりめーだ。このあたしが仕損じるかっての!」

 

「これであとはすでに降下したノイズたちだけ。 残敵を掃討しましょう!」

 

「あたしに指図するな! まぁやってやるけど」

 

 そして3人はそのまま残ったノイズたちの掃討戦に入る。

 大型飛行ノイズを倒したためノイズの増援はないが、それでも今までに降下したノイズだけでもの凄い数だ。しかしもはや一流の戦士である3人にはこの程度は脅威ではなく、『倒し切るのに少し時間がかかる相手』である。

 だが……それこそがこの事件の黒幕、フィーネの思惑だった。

 

「これで終わり!」

 

 倒れたノイズに槍を突き刺しトドメを刺した奏が一息をつく。

 もはや周辺にあるのは元ノイズだった残骸である黒い炭素の塊だけ、動くノイズはいない。

 

「そっちも片付いたみたいだな」

 

 2人の元にクリスもやってくる。2人と同じくクリスにも怪我はない。ただ少し疲れたように見えるのはさっき大技を放ったためだろうか。

 

「ええ……本部、ノイズの掃討が完了したわ。状況終了よ」

 

『……』

 

 そう翼が呼び掛けるものの、二課からの応答がない。

 

「どういうことだい?」

 

 翼と同じく二課への呼び掛けても何の応答もないことに、「もしかして壊したか?」と奏がイヤーガード部分を指でトントンと叩く。

 しかしその様子を見ていたクリスは、嫌な予感がしていた。

 

「……お前ら最後に二課(トッキブツ)と会話したのはいつだ?」

 

 言われて2人は「そういえば……」と顔を見合わせた。

 大型飛行ノイズがいた時には二課からの指示を聞きながら行動していたが、その後の雑魚ノイズの掃討は数が多いだけの『倒し切るのに少し時間がかかる』程度で二課に指示を仰ぐようなこともなかった。だから二課との交信を最後にしたのはかなり前、雑魚ノイズの掃討に入る前のことである。

 それを聞いたクリスは天を仰ぐ。

 

「クソッ、やられた!?

 ここは多分囮だ! フィーネの本命は恐らく二課(トッキブツ)の本部だ!!」

 

「な、なんだって!?」

 

「そうじゃなきゃ、このタイミングで二課(トッキブツ)本部と連絡を取れなくなるのはおかしい。

 バックアップ含め幾重もの通信網があるのに一斉に使えなくなるなんておかしいし、そもそも通信網(それ)を支える東京スカイタワーは守り切ったんだぞ。それなのに通信不能なんてもう何かしらの形でフィーネの攻撃を受けてるに決まってる。

 『ハッキングで本部機能麻痺』なんて穏当なこともあり得るけど、ノイズを使って直接侵攻ってことは十分あるだろ!」

 

 クリスに言われ2人は顔を見合わせると、ことの重大さに顔を青くした。

 

「今すぐ本部に戻らないと!」

 

「でもどうするんだい!? ヘリは落とされちまったし、この辺りの交通網は完全に壊滅してる状態だよ!!」

 

 しかし今の状態で本部へ行くための移動手段がない。

 どうしたものかと2人が右往左往する中でクリスが口を開く。

 

「おい、正義の味方ども。 悪者(あたし)と相乗りする勇気はあるか?」

 

「なんか手でもあるの?」

 

 奏に言われ肩を竦めると、クリスは路肩に乗り捨てられた車に近付く。

 

「ふん!」

 

 そして迷いなくシンフォギアで後部座席の窓を割ると、そのまま手を突っ込んでドアを開ける。何事かと唖然とする奏と翼を尻目にシンフォギアを解除したクリスはそのまま運転席に潜り込むと、キー差し込みの部分をいじりケーブルを引きずり出すとカチャカチャと何かの作業を行う。そして数秒すると車のエンジンに火が灯る。

 

「ほら、ひとっ走り付き合えよ」

 

「……随分手馴れてるね。アンタもしかして……」

 

「初めてだよ。 ただこういう訓練も受けたってだけだ」

 

 シンフォギアを解除し車に乗り込む奏と翼。助手席に座った奏があまりの手際の良さに常習犯なのかと疑うが、それをクリスは肩を竦めて返した。

 実際、車両の調達や動かし方は訓練としてアメリカ軍人にみっちり仕込まれただけで、クリスは自動車泥棒の経験などない。

 

「じゃあ出発するぞ」

 

「ああ、任せる」

 

「OK、任された!!」

 

 言ってクリスは最初からアクセル全開で踏み込んだ。

 クリスの受けた訓練はスパイが追跡を振り切るための運転だ、そんな急発進からのアクセル全開で障害物をよけながら進む運転はまるでアクション映画さながらである。

 基本運転手付きのお行儀のいい車しか知らない奏と翼は、安全装置のついていないジェットコースターに乗せられた気分だ。

 

((こいつの運転する車には2度と乗らない……))

 

 奇しくも2人は同じことを胸中で誓う中、クリスの運転する車は二課へと急ぐ。

 時刻は夕刻へと迫っていた……。

 




今回のあらすじ

OTONA「『カ・ディンギル』ってなんぞや?」

フィーネさん「でっかい塔のことやぞ」

SHADOW「でかい塔……塔のように巨大……!?
    なるほど……キングダークの建造だな! おのれ大ショッカーめ!!」

フィーネさん「だからでっかい塔だって言ってるでしょうが! 誰かこの重篤なライダー脳患者なんとかしなさいよ!!」

OTONA「敵が現れたが恐らく囮。信人くんと響くんを防衛に残して奏と翼で出撃だ」

奏「やっとアタシらの戦いだよ」

防人「なんだか戦闘描写での登場は久しぶりだ。でも空中のノイズがうざくてどうしようもないんだけど」

キネクリ「お、お前らを助けに来たんじゃないんだからな!」

奏・防人「ツンデレ乙」

奏「キサマの作戦目的とIDは!?」

キネクリ「夢! 雪音クリスッ!!」

奏「夢っていうのは、呪いと同じなんだ。途中で挫折した者は、ずっと呪われたまま……らしいぞ」

防人「この辺りの『夢』の会話はまんま仮面ライダー555ネタだな。ちなみに作者は平成ライダーだと555大好きらしいぞ」

奏「使ってみてキネクリとかなりマッチしていて驚いたらしい。『呪い』の方はティアーズ・オブ・ピースメーカーでのキネクリの両親が担当だな」

キネクリ「ヒャッハー!! ぶっ放せ!!」

防人「……一斉発射を見ると近くの人を盾にしたくなる」

奏「おいやめろ馬鹿!」

防人「近くにいたお前が悪い」

キネクリ「って、ヤベェぞ。これ完全に囮だ」

奏「やだ……キネクリに指摘されるなんて、アタシらINT低すぎ……」

キネクリ「本作のあたしは超優秀スパイ仕様だぞ。マーベルの『ブラック・ウィドウ』くらいのつもり」

防人「超人どもとガチで渡り合う怪物スパイじゃないか。で、再びのライダーネタか」

奏「今度はWとドライブだな」

キネクリ「原作の方だと、ヘリも落ちてどうやってリディアンまで移動したのか作者が疑問だったから、本作ではあたしがGTAしたことになったぞ」

奏「次はリディアン側サイドだな」


今回から最終決戦編に突入しました。
フィーネさんはこの先生きのこることができるか?

次回もよろしくお願いします。

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