それでも月は君のそばに   作:キューマル式

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お正月特番編 第02話

『BGMは『パリは燃えているか?』』

『いつもの』

 

 

 

 人類同盟の盟主になった大日本帝国はまず手始めにフランスとイギリスを同盟から追放。

 そしてオランダ・フランス・イギリスに対して宣戦を布告。

 人類同盟VSオランダ・フランス・イギリスの戦争、『第一次人類統合戦争』が開始されるのだった……。

 

「大いなる危機が迫る中、人類同士で相争うなど愚かしい!

 皆で仲良く我が栄光あるゴルゴム……じゃなかった、大日本帝国の一部になるのだ!」

 

「またゴルゴムって言った!? ねぇ、ホントに創世王とかに乗っ取られてないよねノブくん!?」

 

 大日本帝国皇后様である響の言葉も、もうシャドームーンモードに入ってノリノリの信人には届いていない。

 実はこの男、正義の味方より悪の魔王の方が合っているのかもしれない。

 

「みんなも一緒に戦うって……もう訳が分からないんだけど……。

 いや、対人類の戦争で一致団結しても……」

 

「経験値の大事さは経験者ならみんな知ってるし、経験者いるなら全力で参加しに来るだろう。

 まぁ、これで終わりってわけじゃないしな。(ボソッ)

 よし、ヨーロッパにありったけの戦闘機と爆撃機を配置! 一気に終わらせるぞ!!」

 

 

 大日本帝国陸軍の精鋭1個軍とさらに増援の1個軍、さらに追加でドイツ、イタリア、ソ連、アメリカに攻められたオランダとフランスは2週間ともたずに降伏。*1

 ドーバー海峡を挟み海軍と空軍を駆使して防衛に努めていたイギリスだが、大日本帝国の海兵隊に上陸を許し橋頭保を造られたことで防衛戦略は瓦解、ブリテン島のほとんどを占領され、イギリスは人類同盟に対して降伏した……。

 

 

「我らが正義の勝利である(大本営発表)!

 よし、これで一部は適当な傀儡国つくって資源を搾取……じゃなかった、お買い得な値段で資源が買えるぞ!

 接収した工場で装備をさらに生産だ!」

 

「なんか出来たものに血がついてそうで怖いんだけど……」

 

 

 

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『何事も暴力で解決するのが一番だ!』

『サツバツ!!』

 

 

 

「とにかく、今回のことで人類同士の戦いは終わりってことでいいんだよね」

 

「いや、まだだ!」

 

 そして世界地図を指さす我らが大日本ゴルゴム帝国皇帝、信人陛下。

 

「まだスペインにハンガリーにポーランド、バルト会議(バルト三国連合)に北欧連合(フィンランド)それとルーマニアが残っている。

 これらも統合しないと人類に勝利は無い」

 

「またなの!?」

 

「いや、本気でいうとスペインってどんな状況でも『スペイン内戦』が結構な確率で起こるんだが……これ、ほっとくと片方が人類の敵の『クライシス』と同盟を組む可能性がある。場合によっては人類同盟に未参加の国が、『クライシス』に義勇軍を送ってこっちを殴ってくる」

 

「えっ? なにそれ?」

 

「よく分からんがシステムの仕様上じゃないか……?*2

 それにクライシスとの戦いの舞台は全世界だ。基本的にプレイヤーの入っていない非同盟国は邪魔なんだよ。

 とにかく不確定要素を減らすため、そして戦力増強のためにも人類統合を進めなくては!」

 

「いや、もう世界の緊張度も無茶苦茶状態なんだけど……これ、本当に人類のための戦い?」

 

「これは人類のための戦いである(真顔)」

 

 

 かくして対オランダ・フランス・イギリスとの『第一次人類統合戦争』の終結から3ヶ月後には、スペイン・ハンガリー・ポーランド・ルーマニア・バルト会議・北欧連合との『第二次人類統合戦争』が開始される。

 スペイン・ハンガリー・ポーランド・ルーマニア・バルト会議・北欧連合の各国は果敢に防戦するものの、世界強国のすべてに攻められてはどうしようもない。

 人類同盟軍の各国は「経験値ウマーっ!」という謎の奇声を発しながら間断なく各国を攻め立て、数カ月で人類同盟以外の陣営はこの地球から消え去ったのだった……。

 

 

「我ら勇猛なる人類同盟軍の活躍で人類は一つに纏まったな。

 接収した工場もウハウハで、これで我が大日本帝国はアメリカ同等かそれ以上の国力になった。

 ここからさらに工場を建設しながら兵器を備蓄し、人類の敵『クライシス』との戦いに備えるぞ」

 

「むしろここまで無茶苦茶やっておいてアメリカと同等か少し上程度なんだね……」

 

「アメリカはホントに頭おかしい……」

 

 

 

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『大日本帝国の科学力はァァァァ世界一ィィィィィ!!』 

『頭オカシイ(真顔)』

 

 

 

「というわけでヨーロッパの国々を(力尽くで)仲間にしてから内政と軍備増強に全力を出して気付けば1938年もあと1月ちょっとで終わりだけど……ノブくんが待ってたⅡ型歩兵銃とⅡ型戦闘機の開発が完了したって報告が来たよ」

 

「よし、来たか!

 このために国家方針(ナショナルフォーカス)で研究力ブーストしまくって無理矢理ぎみに研究した甲斐があった……。

 今(1938年)の段階で1940年式のⅡ型歩兵銃とⅡ型戦闘機が生産可能になったのは大きすぎる*3

 

「ここ最近よく起こる自然災害系イベントでもノブくん、ずっと研究速度重視の選択をしてたもんね*4

 

「研究速度アップ系が多かったし運も良かった。

 さっそく改造案を上げてみたんでそろそろ軍が完成品を持ってくるはずなんだが……」

 

 コンコン……

 

「陛下、皇后様。 新型歩兵銃と新型戦闘機『隼 改』の説明に参りました」

 

「おお、噂をすればだ!」

 

 入ってきた軍部の人間が、信人と響に新型兵器の説明を行っていく。

 そして新型歩兵銃の実物のお披露目となった。

 

「……は?」

 

 響は目が点になった。

 響は銃には詳しくない。しかし、それが異常だというのは一目瞭然だった。

 小銃の下部、取り付けられた銃剣が銃剣じゃない。完全に『刀』だった。

 

「おお、俺の注文通りだな」

 

「ってノブくんの仕業なのアレ!

 何なのあれ!? 完全に銃に刀付けてる感じなんだけど!?」

 

 響はこの異様な光景の原因が信人だと知る。

 

「実はいつの間にか、()()()溜まっていた大量の陸軍経験値をほぼすべてつぎ込んでⅡ型歩兵銃を改造したんだ*5

 

「いや、いつの間にかも何故かも、ヨーロッパの国々と戦争しまくったせいだよね?」

 

「とにかく、その溜まった陸軍経験値のほとんどをつぎ込んで、銃剣の長さをできる限り長くした。

 具体的には40cm以上」

 

 ジト目の響を無視して信人は胸を張る。

 

「いや、そんなことして何の意味が……」

 

「防御力が上がる」

 

「……は?」

 

「だから銃剣の長さを長くすればするだけ防御力が上がる。

 陸軍の一番の基本は歩兵だからな、その防御力が爆発的に上がるのは強すぎる。

 デメリットとして代わりに貫徹力が下がるが……どのみち歩兵銃で装甲目標を貫くのは不可能だし必要ない。そういうのは対戦車砲とか駆逐戦車の仕事だ」

 

「いやそうじゃなくて……銃剣の長さと防御力の因果関係は?」

 

「知らん、そんな事は俺の管轄外だ。

 そして同じように空軍経験値を全部つぎ込んだⅡ型戦闘機『隼 改』の最大の特徴がこれだ!!」

 

 

つ 航続距離 3200km

 

 

「おかしいよねコレ!

 確かⅡ型戦闘機の航続距離って通常1000kmでしょ。何でそれが3倍以上になってるの!

 形状も何も、普通のと変わってないんだけど!?」

 

「大日本帝国の、科学力はァァァァ、世界一ィィィィィ!!

 ……この戦い制空権の確保は絶対に必要だから強力な戦闘機は必須なんだが、戦いの舞台は世界中だ。まともに航空基地が無い地域での戦闘も多い。

 そこで今まで貯めた空軍経験値をすべて使って航続距離とエンジンの信頼性を改造して、長い距離をカバーできるようにしたんだ。

 ぶっちゃけ、これくらいやらないとクライシスのやつらとまともにやり合えない。

 今回、俺は勝つためには何でもやるぞ」

 

「ノブくん……」

 

「クライシス襲来のXデーは1939年の初頭だ。

 今すぐに新型歩兵銃と新型戦闘機『隼 改』を全力生産。 もう最悪の大戦争は間近だぞ」

 

「……」

 

 

 

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『そして赤い月が昇り、災厄が始まる』

『ナイトウィザード(TRPG)ですか?』

 

 

 

 『赤潮』『消えた渡り鳥』『急速な砂漠化』『野生動物たちの大移動』『竜巻』『熱波』……地球全土で頻発する異常は明らかに何かとてつもないことが起こる前触れであった。

 そして1939年1月19日、調査でタクラマカン砂漠上空を飛行する飛行船『ヒンデンブルグ号』は遂にそれを目撃する。

 一面が砂丘で覆われた地域で突如として赤い間欠泉が噴出したのだ。地球が血を吐いているかのようなその赤い液体は粘性を持ち、次第に空へと昇ると禍々しい光を放つ赤い月へと変貌する。

 禍々しい光に照らされた砂漠はゆっくりと、そして確実にその姿を地球とは別の何かへと変えていく。

 粘性を帯びた黒い水がゆっくりと大地を浸食し……そして異形の軍勢が現れる。

 それは人類の存亡を賭けた戦いの幕開けだった……。

 

 

 

「緊急連絡! タクラマカン砂漠と周辺が『崩壊文明』を名乗る謎の存在に占拠されました!

 同時に全世界に向けて『全ての人類を抹殺する』との謎の声明が発せられ、異形の怪物の軍勢が攻撃を仕掛けてきました!!」

 

 緊急連絡と飛び込んできた連絡員に、信人と響はついに始まったことを悟る。

 

「ついに来たか! 各地の状況は!?」

 

「現在、タクラマカン砂漠とその周辺に発生した『崩壊文明』はその勢力を全方位に伸ばしている最中です。

 すでにソ連軍が接敵、防衛戦に入っているようですが……敵の異常な強さの前に状況は果てしなく劣勢の模様!」

 

 その時、空中にウィンドウが開き奏と翼の姿が映り、響が状況を尋ねる。

 

「奏さん、翼さん、そっちは大丈夫なんですか!?」

 

『何とか……と言いたいとこだけど、相手の強さが異常だ。ソ連軍(こっち)の平均攻撃力と防御力の倍以上の数値を平気で叩き出してる』

 

「ば、倍以上!?*6

 

『クッ……このロシアン防人である私が母国を蹂躙に任せるしかないとは……。

 だが口惜しいが今の状況では勝利は不可能だ』

 

『こっちは何とか遅滞戦術を繰り返して時間を稼いでヨーロッパ方面まで行かせないようにする。

 逆にいうとアタシらのソ連軍じゃそこまでが限界だ。

 南側の防衛、それとその時が来たら反撃は頼んだよ』

 

「わかってる、俺たち大日本帝国軍と切歌と調のイタリア軍で何とか抑えて、反撃の糸口を見つけるよ」

 

 そして奏と翼からの通信は切れた。

 

「ノブくん……」

 

「ついに始まったな……。 平和な世界に襲い掛かるクライシスめ!

 俺は貴様らを絶対にゆ”る”さ”ん”ッッッ!!

 

「平和な世界に襲い掛かるって……イギリスとかフランスとかのヨーロッパの国々を思い出しながら、鏡見て言った方がいいよ、ノブくん」

 

 響のジト目を無視して信人は決意を新たにする。

 こうして遂に人類の存亡を賭けたクライシスとの戦いが幕を開けたのだった……!

 

 

 

*1
オランダ、フランスともに開始時点から部隊があまり多くなく、しかも簡単に降伏してしまう割には東南アジアの資源地帯を押さえて資源が豊富なため、このシナリオに限らず通常プレイでも『初手オランダ』『初手フランス』はともにプレイヤーの常套手段である。

*2
『スペイン内戦』に限らず『クライシス勢力』が存在する場合に内戦や非同盟国と戦争が起こると、どういうわけか片方が『クライシス』と同盟か不可侵を結んでいる場合がままある。このシナリオではクライシスは言葉すら通じない昆虫人類的な何かのはずなのだが……こいつらはどうやって同盟を組んだのだろうか?

 また普通に『クライシス勢力』は国家として換算されるので普通の戦争と同じく義勇軍を送ることが出来る。『クライシスに混じって人類同盟を攻撃してくるフィンランド義勇軍』などというものが見れたりもするのだ。

*3
このゲームは研究を行い、新型兵器を開発し生産して戦闘に投入、ということを繰り返すことになるのだが、ではいきなり超強力な兵器を開発できるかというとそうでもない。

ほとんどは前提条件をクリアしないと開発出来ないものであるし、何よりも『先行研究ペナルティ』というものが存在する。

これは史実の開発された年より早くその兵器開発を始めると、研究速度にペナルティを受けるというもので、当然年数が先であるほどペナルティが重くなる。

それら2年先の装備を研究するために、信人はかなり細かな計算をしながら国家運営をしていたということなのだ。

*4
このクライシスMODの特徴的なランダムイベント。研究速度や生産コストなどに大きなバフがかかる代わりに、戦闘部隊に大きなデバフがかかるなど、メリットとデメリットで構成されており、これもどのような選択をしたかが内政に大きく関わるようになっている。

*5
『クライシスMOD』の特徴の一つ。通常は改造できないはずの歩兵銃の改造が可能になっている。

*6
クライシス勢力は、実を言えば技術的にはプレイヤーサイドとほぼ同等の技術レベルである。最初からジェット機を持ってるような無茶苦茶なことはしない。

それでありながら圧倒的な強さを誇る理由は、あまりにも強すぎる『国民精神(国家特有の国家全体へのバフ)』が原因である。

ざっと上げるだけでも『師団速度1.5倍』『師団消耗半減』『師団指揮統制率・攻撃・防御2倍』『航空機と艦艇の能力が2倍』『資源採掘量10倍』『毎月人口が1.5倍増』という頭のおかしいバフが『最初から』付いている。しかも『これが最終形態ではない』。国家方針(ナショナルフォーカス)によってどんどん凶悪な『国民精神』が追加されていくのだ。

人類にとっていかに絶望的状況かが分かるだろうか……。

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