それでも月は君のそばに   作:キューマル式

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お正月特番編 第03話

『まずは状況確認』

『全世界規模でヤバさが爆発している件』

 

 

 

 ついに開戦となり、すでに戦闘で忙しい奏と翼を除いた全員がウィンドウを開いて話し合いをしていた。

 

『おい、こうしてる間にももう戦闘は始まってるんだぞ。

 こんなことしてないで早く先輩たちを助けに行こう!』

 

 クリスは言うが信人が待ったをかける。

 

「クリス、気持ちは分かるがまずは現状確認だ。

 タクラマカン砂漠から出てきたクライシス勢力、『崩壊文明』がその異常な戦闘力でその勢力を各方面に伸ばしている。

 だが……実はクライシス勢力はこれだけじゃない。同じように突如として、しかもランダムに世界各地に現れるんだ」

 

『こんなのがまだまだたくさん出てくるデスか……』

 

 信人の言葉に、切歌が戦慄した。

 

「そういうわけでみんなで協力して、全世界規模で軍を展開しないとならない。

 とりあえず今出ている『崩壊文明』が敵の首魁、一番強いんでこいつらを何とか抑える必要があるんだが……全部を守るのは無理だ。

 今、俺たち大日本帝国の陸軍師団は約200個師団、4個軍だ。そのうちインド南部に1個軍、インド東部から中国の山岳地帯に1個軍、アフリカ大陸に1個軍、そしてヨーロッパに1個軍と全軍を4つにわけて配置している。

 残念ながら戦線が伸びすぎないようにインド北部はいったん放棄だ。初動はインド南部と、資源地帯である東南アジアに行かせないように防衛に徹する」

 

「ノブくん、アフリカ大陸に1個軍を送り込んでるのは何でなの?」

 

「相手が現れる場所はさっき言ったようにランダムなんだが、一応傾向はあってな。

 次の敵が現れるのはアフリカ大陸の可能性が非常に高い。*1その対策として1個軍を送り込んでる。もし現れた時にはすぐにその1個軍で叩き潰すさ。

 切歌と調のイタリア軍にはイラン高原に戦線を張ってもらって『崩壊文明』を食い止め、アラビア半島、ひいてはヨーロッパの盾になってもらいたい。出来るか?」

 

『もちろんデスよ、兄チャマ!』

 

『兄くん、私も頑張る!』

 

 信人の言葉に切歌と調が頷く。

 

「マリアとセレナのアメリカ軍は南北アメリカ大陸に敵が出て来たら対処してくれ。

 傾向として出現の確率は高いし、遠くてアメリカ大陸にまで正直俺たちじゃ手が回らない。

 余裕があるなら航空機や艦隊を送って支援してほしい」

 

『わかったわ! 新大陸のことは私たちに任せない!』

 

『ユーラシア大陸は任せますよ、信人さん』

 

 決意を漲らせ頷くマリアとセレナのアイドル大統領姉妹。

 

「クリスと未来のドイツ軍はヨーロッパに出て来た敵の迎撃を第一で頼む。ヨーロッパにも確実に敵が出現するはずだ。

 ドイツ自慢の機甲師団はインフラの整ったヨーロッパでこそ真価を発揮するからな。そいつらの処理を頼む。

 その上で余力があったら防衛戦の真っ最中の奏と翼のソ連軍の援護をしてくれ」

 

『任せな、派手にやってやるよ!』

 

『ドイツ機甲師団の強さ、見せてあげる!』

 

 クリスと未来も自分のすべきことを認識し、やる気を漲らせる。

 皆が力を合わせ、人類のために戦うと決意したその時……。

 

「き、緊急連絡です、陛下!!」

 

 飛び込んできた連絡員が最悪の凶報を伝えた……。

 

 

 

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『ウェルカム、トゥザ、クレイジーワールド』

『お前はアタシ達を怒らせた!』

 

 

 

 

 ここはソ連の地、『崩壊文明』との最前線。

 その指揮を取る奏と翼が夜になっても次々に舞い込む凶報に眉をしかめる。

 

「ここまで圧倒的とはね……」

 

「防衛線がほとんど機能してないわ」

 

「仕方ない。 後方に増援部隊で塹壕を掘って防衛線を構築、順次部隊を下げるよ!」

 

 そう奏が指示を出したその時だった。

 

 

 

 ズゥゥゥゥゥン……!!!

 

 

 

 地鳴りのような音とともにかすかに地面が揺れる。

 

「まさか……!?」

 

「奏!?」

 

 そのことにハッと気づいた奏が指揮所を飛び出し、翼も慌ててそれに付いていく。

 そして2人が見たものは……。

 

「アレは……まさか……」

 

「ヤツらめ……やりやがったね!!」

 

 夜だというのに明るくなった彼方の空、そこに立ち上るキノコの形をした雲……それは禁断の兵器『核爆弾』が使用されたことを意味していた。

 

「至急、増産した戦闘機隊をまわして制空権を握って!」

 

「全軍に後退命令! もうここでの戦いは決した!

 再起のために生き残ることだけ考えろ!!」

 

 一気に指示を出す奏と翼。

 

「あいつらはアタシ達を怒らせた……!!」

 

「必ず、必ずいつかこのロシアン防人の刃が貴様らを討つ!」

 

 やがてひと段落をついたところで怒りに燃えた瞳で2人は決意を新たにしたのだった……。

 

 

 

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『制空権を制するものが戦争を制する』

『これ本当』

 

 

 

 ロシアのアクチュビンスクに核爆弾が投下された……その凶報に全員が押し黙る。

 

「そ、そんなものまで相手は持ってるの!?」

 

「ああ、戦闘機から戦略爆撃機、何ならタクラマカン砂漠から沸いたくせに何故か大艦隊まで持ってるぞ」

 

『無茶苦茶じゃねぇか!?』

 

 クリスの言葉に全力で同意したいところだが、そう言ったところでどうしようもない。

 

「とにかくみんな、制空権だけは絶対に相手に取られるな!

 ありったけの戦闘機を突っ込んででも空の戦いを制せ、いいな!」

 

 信人の言葉に全員がコクコクと頷いた……。

 

 

 

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『美味い飯と美少女の応援』

『これがあるとイタリア軍はマジ強い』

 

 

 

 1939年3月……怒涛の勢いで進むクライシス勢力『崩壊文明』はインド北部を制圧、インド南部に防衛線を張る大日本帝国陸軍と交戦に入っていた。

 同じく東進した集団が東南アジアから中国山岳部に防衛線を張った大日本帝国陸軍と交戦を開始。防衛側の有利と量産体制で数が揃い始めたⅡ型戦闘機『隼 改』による制空権の確保、そして航空爆撃による援護のおかげで戦線を押し留めていた。

 そして西進する一団が遂にイラン高原へと迫っていた……。

 

「来たよ、切ちゃん……」

 

「見えてるデスよ、調……」

 

 2人の視線の先には、昆虫のような異形の軍勢『クライシス』の姿がある。巨大な芋虫のような『戦車級』も多数混じっており、その脅威度は圧巻だ。

 

「こうして見ると、やっぱり怖いね……」

 

「大丈夫デスよ、調は私が守るデス!」

 

 異形への根源的な恐怖に少し身を震わせた調の手をそっと握る切歌。

 

「このために出来るだけの準備はしたデスよ。

 全部で80個師団、本土防衛用の20個師団以外は全部連れてきたです。

 正面戦力40個師団に予備の20個師団。野砲に対戦車砲、それにⅠ型重自走対空砲を組み込んだ部隊*2をこれだけ揃えたデスよ。

 それに陸ドクも大規模作戦を選んだデス。これなら大丈夫デスよ*3

 

 そう言って切歌と調は後ろを振り返る。

 そこにはイタリア軍60個師団が完全な防御陣地を敷いて待機し、ドゥーチェたる2人の言葉を待っていた。

 そして調と切歌が言った。

 

「みんな、今夜の夕食は美味しいパスタだよ!」

 

「だからみんな頑張るデスよ! あんな奴ら追い返して、美味しいご飯を食べるデス!!」

 

 

 オオオオォォォォォォ……!!

 

 ドゥーチェ! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!!!

 

 

 イタリア軍から湧き上がる歓声とドゥーチェコール。その士気は天を突くほどに高まった。

 

「やろう、切ちゃん!!」

 

「それじゃ悪い虫退治デス!!」

 

 そしてイタリア軍と迫り来るクライシスとの戦いが始まった。

 

 

 

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『インフラ整備は大切』

『敵より環境が怖い』

 

 

 

 1939年4月27日。

 

「インド南部と東南アジア・中国方面の戦いは膠着、何とか持ち堪えてるって。

 イラン高原でも切歌ちゃんと調ちゃんのイタリア軍が敵を押し留めてくれてるよ。

 ソ連でも奏さんと翼さんが河や山を利用して遅滞戦術で何とか敵の進行速度を遅らせてくれてるって」

 

「初動は何とか防いだな……」

 

 フゥ……と一息を突く信人。

 しかし油断は出来ない。まだ『崩壊文明』以外のクライシス勢力が出てきていないからだ。

 その時、連絡員が飛び込んでくる。

 

「陛下、皇后様! 緊急連絡です!

 アフリカ大陸西、ラゴスにて『荒廃文明』を名乗る敵勢力が出現! 『崩壊文明』と同種のものと思われます!!」

 

「来たか、第2のクライシス勢力!

 アフリカに移動させておいた1個軍に至急の攻撃命令を出せ! 全力で叩き潰せ!!」

 

 用意していた1個軍に至急の攻撃命令を出す信人。しかし……。

 

「それが……現地の部隊が補給不足にあえいでおり、十分な戦闘能力がないとのこと」

 

「……は? 確か補給物資用にアフリカの港を事前に拡張しておいたはずだが?」

 

「それがインフラがまったく整っておらず、物資が港から部隊まで行き届かない状態でして……」

 

 その報告に信人は自分のミスを悟り頭を抱える。

 

「ヤバい、インフラのことは完全に忘れていた……」

 

「どうするのノブくん。 物資が無かったらいくら練度の高い兵隊さんでも戦えないよ」

 

「仕方ない……少しずつつくってた輸送機を投入! 効率は悪いがないよりマシだ、空輸で補給を!」

 

「了解しました!」

 

 連絡員はその指示を伝えに下がった。

 こうして準備万端で臨んだはずのアフリカ戦線は、環境とインフラに悩まされ当初の予定を外れてズルズルと長引いてしまうことになるのだった……。

 

 

 

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『ヨーロッパの火薬庫』

『人類全部吹き飛びそうなんですけど(真顔)』

 

 

 

 1939年5月7日。

 

「ノブくん、バルカン半島で奇妙な黒い雨が降ってるって!」

 

「クライシスの予兆イベントだな……」

 

 響からの話に信人は頷く。

 

「バルカン半島なら自分たちが行くって未来とクリスちゃんから連絡が来てるけど……」

 

「いや、あの辺りはアルバニアとかブルガリアとか山岳地帯が多い地形だし歩兵の方がいい。

 ヨーロッパに残してる大日本帝国陸軍(うちの)1個軍を向かわせる。

 旗色がまずそうなら援軍をくれって言っておいてくれ」

 

 

 そして1939年6月6日……。

 

「旧ギリシャの首都アテネを中心に黒化現象! 同時に『融解文明』を名乗る『崩壊文明』と同種の敵が現れました!!」

 

「ヤバいところに来たな……」

 

 その報告に信人は顔をしかめる。

 

「いま友軍のトルコ軍はイラン高原方面にほぼ全軍出兵中だ。

 このままだとボスポラス海峡とダーダネルス海峡を渡ってトルコを抜かれて東進されたら、イラン高原が東西から挟み撃ちになってクライシス勢力の2勢力が合流することになる。

 それをやられたらどうしようもないぞ」

 

「大変だよ、ノブくん! すぐに切歌ちゃんと調ちゃんを助けないと!!」

 

「分かってる!

 準備していたヨーロッパ方面軍をすぐに向かわせろ! 東進されるまえに叩き潰す!!」

 

 

 

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『私たちって呪われてるデスよ……』

『それ私の台詞なんでマネはやめてね(威圧)』

 

 

 

 1939年6月12日、イラン高原イタリア軍防衛陣地。

 

「それで兄チャマたちの軍がアテネに新しく現れた敵軍と戦ってくれてるデスか……」

 

 旧ギリシャ……この歴史では国家統廃合によってイタリアの一部となっている場所だ。

 突然の本国の危機に、しかし信人たちが即動いてくれたことに切歌と調はホッと胸をなで下ろす。

 

「一時はどうかるかと思っちゃたよ、切ちゃん」

 

「そうですね、兄チャマに任せればもう安心デスよ」

 

 そう言って2人は気持ちを落ち着かせようとお茶を口に含む。

 その時だ!

 

「た、大変ですドゥーチェ!

 たった今ローマから入電、パルレモを中心とした南イタリア地域が黒化、『消失文明』を名乗る敵が現れました!!」

 

「「ぶふぅぅぅぅぅぅ!!?」」

 

 2人揃って口に含んだお茶を吹き出した。

 

「どどどどうするデスか!? 首都ローマの目と鼻の先デスよ!?」

 

「本土防衛に残した20個師団はどうしたの!?」

 

「敵総数は約100個師団以上、今のところギリギリで防衛はしていますがかなり劣勢です。

 このままでは首都ローマは……」

 

 

 果たして迫り来るクライシスの猛攻の前に、切歌と調のイタリアは亡国となってしまうのだろうか……?

 

 

*1
同じく、事前に意味深な警告のようなイベントが起こるのでその内容からある程度現れる場所は推測できる。もっともだから対応出来るかと言われても難しいのだが……

*2
歩兵部隊にⅠ型重自走対空砲を組み込んだ編成……通称『FLAK』と呼ばれる編成である。

最大の特徴は『低コストでⅠ型重自走対空砲の装甲ボーナスを得る』という防御力が高めなこと。対空砲なので万一相手に制空権を取られても制空権ペナルティを軽減できるとゲーム序盤では強力な編成である。

*3
陸ドクとは『陸軍ドクトリン』の略。その国の陸軍の基本的な戦術思想のこと。4つの系統が存在し選んだものによって各種のバフを手に入れることができ、それが各国の陸軍の特徴となる。

切歌たちイタリア軍が選んだのは史実のイギリス・フランス・イタリア・日本をイメージした『大規模作戦ドクトリン』。この特徴は歩兵を強くするものであり防御力に秀でるのが特徴。

つまり切歌と調のイタリア軍は『FLAK編成』と『大規模作戦ドクトリン』で、『低コストで防御力優先で引き上げる』ことを選んだのだ。

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