体調もよろしくないし、異動期はキツいです。
今回はついにG編の最大の問題児の登場です。
その日……『ツヴァイウイング』と、アメリカから来た『シャイニーシスターズRX』とのコラボレーションライブの日、俺と響、そしてクリスは列車の中にいた。当然ながら遊びのためではなく、二課の任務のためだ。
クリスが起動し、フィーネがノイズを操るために使っていた完全聖遺物『ソロモンの杖』……『アークセプター』とも呼ばれるそれは事件後に回収され、厳重に保管されていた。ノイズを呼び出し操るその聖遺物の危険性を考えれば当たり前の話だ。しかし、その効果を考えれば保管だけしておくというのはあまりに愚かな話である。もしその仕組みを解析することができたら、ノイズそのものを根絶できる可能性があるからだ。
そこで『ソロモンの杖』を解析するために山口県の岩国基地へと移送するのが今回の任務だ。
「うぅ……せっかくの奏さんと翼さんのライブの日に任務が……。
私って呪われてるかも……」
「おいおい、それだとあたしたちも呪われてるってことになるだろうが」
列車内の待機所で待機している俺たち。机に突っ伏す響に、チューっとストローで野菜ジュースを飲むクリスが肩を竦めて言う。
「おい
「ん、ああ……」
俺はクリスの言葉に生返事をしながら、手元の端末を眺めていた。
そこには端末に移したライドロンの図面が映されており、俺はそれを眺めながらライドロンの起動の方策を考えていたのだ。
それを見てクリスは言っても無駄だと悟ったようで、大きなため息をつく。
「それで、あたしらを待たせてるアメリカのお偉い博士とやらはいつ来るんだかな?」
俺たちの今回の任務は『ソロモンの杖の移送』と同時に『アメリカからソロモンの杖の解析のためにやってきた博士の護衛』というものだ。その護衛対象との顔合わせのために俺たちはここで待っているのである。
ちなみに、今回の任務にはアメリカの影が随所に見え隠れしている……というかあの『ルナドロップ事件』以後、アメリカは始終政治的な攻勢を日本にかけていた。
『ルナドロップ事件』後、アメリカは日本の持つフォニックゲインに関する技術を独占することを非難、その圧力によりフォニックゲインに関する基礎理論……通称『櫻井理論』が世界に開示されることになった。
さらに『ソロモンの杖のような危険なものを日本だけが管理するのは許されない』ということで、アメリカとの共同研究という形で『ソロモンの杖』が移送されることになったのが今回の任務の発端だ。
……そもそも『ソロモンの杖』自体がアメリカからフィーネの手に渡っていた聖遺物であったり、親二課の姿勢だった広木防衛相を暗殺してみたりとアメリカは無茶苦茶なムーブをあれだけしていながらこの言い様である。
俺としては「
と、そんな風に思い思いに過ごしているとオペレーターの友里あおいさんが人を伴って待機所に戻ってきた。
どうやらやっと『アメリカのお偉い博士さん』の登場らしい。
「やれやれ、やっとお出ましか……」
俺は端末をポケットにしまい立ち上がろうとしたその時だった。
ゾクッ……
「ッ!?」
背筋を冷たい予感が伝う。この感覚はキングストーンの『直感』だ。それが大きな警戒を示していた。
「初めまして、ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスです」
現れたのは一人の男だ。
「お、おう……」
「は、初めまして……」
ウィーーーン……
キチキチキチキチッ……
クリスと響は戸惑い気味な様子だ。すると男……ウェル博士は『赤い左目のセンサー』をまるで瞳孔のように大小させ、『かすかに機械音のする金属の左手』を開いたり握ったりする。
そう、ウェル博士の姿は普通ではなかった。
左目を覆う機械の義眼、そして左手は金属製の義手になっていたのだ。
「ははは、戸惑うのも無理はありません。 自分の見た目がいかついのは自覚していますからね。
ですがこのデザインは僕の趣味です。いいでしょう?」
クリスと響の反応は慣れっこだったのかウェル博士は苦笑した。
そしてそんなウェル博士の視線が俺をとらえると大仰に手を広げた。
「ああ、月影信人くん。白銀の戦士『仮面ライダーSHADOW』! ルナドロップから世界を救った『英雄』!
君には是非とも会いたかったよ!」
「……そうですか」
ウェル博士は「感激だ!」、と言った感じで俺に話すが……俺の中では相変わらずキングストーンの警鐘が鳴りっぱなしだ。
「ルナドロップの件は、仲間やそれを支えてくれたスタッフ、その誰か1人でも欠けていても成立しなかった。
だからあれは皆で成した成果だ。俺個人が『英雄』なんて呼ばれるシロモノじゃないよ」
そう事実として思っているし、何より本物の『英雄』である仮面ライダーたちを知る身である。
俺はもう仮面ライダーを名乗ることに何のためらいもないが、それで自分を『英雄』だと思うこともなかった。
「なるほど、英雄らしい実に謙虚な姿勢ですね。 好感が持てますよ。
とにかく、今回の護衛の件はよろしくお願いします」
「ああ、そこは俺たちに任せてほしい」
ニコニコと手を差し出してきたウェル博士に、俺も手を出して握手を交わす。非常に友好的な感じのするウェル博士だが、俺はその握手に何の温かみも感じなかった。
別に右手も血の通っていない機械であるとか、そういう物理的な温かみの話ではない。ニコニコと友好的な様子の裏側にある精神……他人に向けるそれがどこか機械的な温かみのないものを感じてしまったのだ。
(こいつ、明らかに胡散臭い気がするが……)
とはいえ、人を見た目やキングストーンの警鐘だけで本人の行動を見ずに判断するのはさすがに問題なので俺もこの場では何も言う気はない。俺に続けて響やクリスに挨拶するウェル博士を、俺は少し離れたところから見ているに留める。
その時だった。
「!? この気配は……!!」
ドゥン!!
俺がその気配を感じ取るのとほぼ同時に爆発音と衝撃によって列車が揺れた。
「な、何今の!?」
「何って敵襲に決まってんだろ、
即座にあおいさんが二課に連絡を取ると、予想通りの回答が
『ノイズの襲撃だ!!』
「やっぱりか……このタイミングでの襲撃ってことはやっぱり……」
『ああ、了子くんの時と同じく、何者かに制御されたノイズだろう』
思えば、了子さんーーーフィーネはノイズを召喚し操る『ソロモンの杖』を手に入れる前から、ノイズを従える何らかの術を持っていた。
ノイズを召喚し操る『ソロモンの杖』はクリスが半年をかけて起動させたものだが、ノイズによって奏が家族を失った皆神山での一件はそれより前に起こっている。そしてこの件はフィーネによるものだということがわかっていた。ならばフィーネは『ソロモンの杖以外にもノイズを召喚し操る術を持っていた』と考えなければ時系列的におかしいのだ。
もっともノイズというのは超古代文明で造られた人間同士の殺戮の道具、『兵器』であったことが分かっている。『兵器』は当然だが制御できなければ『兵器』足り得ないから制御法は確実にあるのだろう。
その制御法をどこかの誰かが解析して襲撃してきた……そう考えるのが妥当である。
(問題は『どこの誰が』ってことなんだが……今はそんなこと言ってる場合じゃないな!)
「
俺にはバトルホッパーもあるしこの中では機動力は一番だ。バトルホッパーなら列車に並走しながらの戦いもできるだろう。
俺の意図を組んでくれたのだろう、すぐに
『分かった、信人くんはノイズの殲滅を頼む。
響くんとクリスくんはそのまま列車に残って信人くんが打ち漏らしたノイズの迎撃だ』
「了解だ、
言って、俺は後部車両に向かう。そんな俺の背中に響の声が投げかけられた。
「気を付けてね、ノブくん」
「任せてくれ。 響もクリスも油断はするなよ」
それだけ言って、俺は後部車両へと走った。そして後部車両へと飛び込むとそこには……。
「なるほど、お早い御着きだ」
すでにその後部車両にはノイズたちがひしめいていた。
ノイズはすぐに俺に気付き、向かってくる。
「変身ッ!!」
即座にSHADOWへと俺は変身し、そのまま間髪入れずにキングストーンエネルギーを解放した。
「シャドーフラッシュ!!」
キングストーンエネルギーを意図的に破壊エネルギーに転化させたシャドーフラッシュによって爆発が巻き起こる。
その爆発でノイズはすべて吹き飛び、同時に連結部が壊れた後部車両は響たちが乗る車両とは切り離され遠ざかっていく。
「これで一旦の侵入は防げたな……」
呟いて、吹き飛んだ屋根から空を眺めると、空には飛行型のノイズたちがひしめいている。
それを指さして俺は言った。
「お前らを叩き潰すがいいよな?
答えは聞いてない」
そう宣言すると同時に俺はバトルホッパーを呼び出す。
「バトルホッパー!!」
俺の呼び声に答え、電子音とともに空間からバトルホッパーが飛び出した。
……何だか響の胸元から出てこないバトルホッパーを見たのは久しぶりな気がするが、気にしてはいけないのだろう。
そして飛び出したバトルホッパーはそのまま、『切り離した後部車両』へと取り着いた。
「トゥッ!!」
俺が飛び上がると同時に後部車両が光を放ちバトルホッパーへと変形、それに飛び乗ると同時にアクセルを全開にして走り出す。
「シャドービーム!!」
俺はバトルホッパーを操りながらシャドービームを発射、稲妻状に枝分かれしたシャドービームがノイズたちを貫いた。
しかし未だノイズの数は多く、俺を無視して飛行型ノイズたちが列車へと追い縋る。
さらに……
『信人くん、大型のやつがいる! そいつの排除を頼む!』
「だったら……
俺は再びシャドービームを撃つ。しかし今度は相手を破壊する光線ではなく、相手を捕まえて動かす念動光線だ。
念動光線に捕まったノイズたちを一か所に集めると、俺はそのまま念動光線を振り回す。
グルグルと振り回すたびに周辺のノイズがまるで磁石に吸い寄せられた砂鉄のように集まって行く。
そして完成したのは巨大なハンマー投げ用のハンマーだ。念動光線で繋がった先に吸い寄せられた大量のノイズが塊になっている。
「ふんっ!!」
そして、俺はそれを躊躇なく輸送機型大型ノイズへ投げつけた。
輸送機型大型ノイズは慌てて身を守ろうと周囲の護衛の飛行型ノイズを集結させるも、巨大ハンマーの大質量には為す術がない。護衛の飛行型ノイズを巻き込みながら突き進んだ巨大ハンマーが輸送機型大型ノイズに直撃、その身体がくの字に折れ曲がる。
そこにトドメの一撃を入れる。
「バイタルチャージ! トゥ!!」
俺はバトルホッパーで大ジャンプ、さらにそこからバイタルチャージをしながら大ジャンプをして上空の輸送機型大型ノイズへと肉薄する。
「シャドーキックッ!!」
シャドーキックが直撃し輸送機型大型ノイズが爆散する。同時に拡散したキングストーンエネルギーによって周囲のノイズが連鎖的に爆発して消えていった。
俺はそのまま空中でバトルホッパーに戻ると、そのまま着地する。
かなりの上空からの着地だったが、バトルホッパーの謎の性能によってそれほどの衝撃はなく着地することができた。
「さて、響たちの方は……」
周囲の敵を掃討し意識を輸送列車へと戻すと、その時ひと際大きな爆発音が響く。
「
『大丈夫、響くんの一撃だ。その一撃でノイズの掃討は確認された。
輸送列車と合流してくれ、信人くん』
「了解だよ、
俺は答えて、輸送列車に合流すべくバトルホッパーのアクセルを全開にしたのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~
「これで搬送任務は完了となります。ご苦労様でした」
「ありがとうございます」
到着した山口県岩国米軍基地であおいさんが書類に電子印鑑を押し『ソロモンの杖』が引き渡されると、ウェル博士が口を開く。
「この目で確かめさせていただきましたよ、シンフォギア装者の皆さんと仮面ライダーSHADOWのその凄まじい力を!」
「はぁ、それはどうも」
テンション高めのウェル博士の言葉に、俺はそんな気のない生返事を返す。
結局、キングストーンからの警鐘はそのままだ。そのせいでどうにも俺はこのウェル博士に対して不信感をいだいていてそれが拭えない。
そう考えを巡らせる俺の前で、俺の様子は目に入ってないようでそのままテンション高めで続ける。
「しかし素晴らしい! 世界がこんな状況だからこそ、僕等は『英雄』を求めているッ!誰からも信奉される偉大なる『英雄』の姿をッ!!」
「『英雄』ねぇ……」
「おや、『英雄』という言葉に何か思うところがおありで?」
「……さっきも言ったけどあの成果は全員の成果、古今東西たった1人で何かを為しえた英雄はいないよ。
それを支援して支える誰かがいてこそ『英雄』になれる……だから誰か1人を指して『英雄』ってのはな。
それに……俺は『絶対に英雄になれない条件』ってのを知ってるし、英雄云々を抜きにしてもそれだけはやらないように心掛けてるからな」
「ほぅ……」
どうやら俺の言葉に興味を示したらしい、赤い左目の義眼センサーを大小させる。
「なるほど、あなたにはあなたなりの『英雄論』がおありのようだ。
できればそれを聞かせてほしいところです」
「機会があったらにして欲しい。 俺たちも今日は忙しいからな」
「それは残念。 ではまたの機会に」
そして無事任務を終わらせた俺たちは岩国基地を後にする。
「皆頑張ってくれたから司令が東京までのヘリを出してくれるそうよ」
「やったぁ!」
「これで
「……」
響とクリスが任務終了の開放感から伸びをする中、俺の思うことはやはりあのウェル博士のことだ。
「ノブくん、まだあの博士のこと考えてるの?」
「まぁな……」
「確かに『英雄英雄』言ってる変な博士だったな。 ありゃ完全にメサイアコンプレックスだよ」
クリスが処置なしといった感じで肩を竦める。
「まぁ変な人ってだけならいいんだがな……それ以上に何かがある気がするんだよ。
ただの勘なんだがな」
「おいおい、嫌なフラグたてるなよ。
おまえの勘はかなりの確率で当たるから、嫌な予感がビンビンだな」
うへぇといった感じでクリスが言ったその時、背後から轟音と共に熱波を感じる。
その場の全員が振り返った先には、大量のノイズが米軍基地を襲う光景が広がっていた。
「いきなりフラグ回収かよ!?」
クリスが思わずそう叫び、俺たちは走り出す。
これが新たな戦いの始まりだとは、この時は俺を含め誰もそのことに気付かなかったのだった……。
今回のあらすじ
ビッキー「奏さんと翼さんのライブの日に任務とか……私って呪われてるかも」
キネクリ「まぁ一応主人公なんだし、厄介ごとがいくらでも舞い込んでくるあたり呪われてるのかもな」
SHADOW「そして遂にG編で登場するアメリカのお偉い博士の登場だぞ」
ウィーン、キチキチキチ……
メカウェル「メカチガウ、メカチガウ」
SAKIMORI「メカだこれぇぇぇぇ!!」
奏「というわけでG編の最大級の変更点であるメカウェル博士の登場だ」
キネクリ「いや、魔改造にしたってやり過ぎだろコレ!!」
ビッキー「ちなみに外見は東映版スパイダーマンの『モンスター教授』とかサイバーフォーミュラシリーズの『エデリー・ブーツホルツ』さんを参考にしてるよ!」
SHADOW「機械化された左目と左腕ってことだな。ちなみに目の挙動に関する辺りは映画『ターミネーター』を意識しているそうだ」
メカウェル博士「私の趣味だ。いいだろう?」ニコッ♪
SAKIMORI「……ああ、もう完全にこの辺りの描写で海に沈んでる仮称『フロンティア』の正体が分かってしまったな」
奏「というか作者としては今回の描写で仮称『フロンティア』の正体が読者に分かるつもりで前回はわざとぼかした表現を使ってたのに、前回の段階で結構な人が仮称『フロンティア』の正体に気付いてて驚いたらしい」
キネクリ「とんでもない厄ネタが海に沈んでるんだが……この世界マジで大丈夫かよ?」
フィーネさん「私もカストディアンが後生大事に保管してるただの宇宙船だとばかり思ってました!
……今さらだけど、当初の計画通り月を破壊しても『アレ』の封印を解いたら地球滅亡状態で、私の計画って1から10まで最初から詰んでいたって後から分かると泣けてくるんだけど」
たダマ「さすが私のご先祖様!」
SHADOW「で、予想通りのノイズの襲来だ」
ビッキー「……ところで今回も時系列的にまとめて書いたけど、『フィーネさんってソロモンの杖以外にもノイズの召喚と制御の術を持ってた』ってことでいいよね?」
フィーネさん「その辺り原作でも見覚えないけど、そうじゃないと説明つかないから、『少なくとも本作ではそういう設定』にするらしいわよ」
キネクリ「まぁ、後々の錬金術師の件を考えるとノイズのレシピ自体は存在するからノイズの生産ってそこまで難しくはなさそうだし、そういうことでいいんじゃね?」
SHADOW「倒すけどいいよね? 答えは聞いてない!」
奏「今回列車護衛だからって電車ライダーのキメ台詞を入れてきたね」
SHADOW「敵で殴る!」
SAKIMORI「この辺りは映画『パシフィックリム アップライジング』の主人公機『ジプシー・アベンジャー』の武器『グラビティースリング』をイメージしてるそうだ。『グラビティースリング』は重力制御で物体を引き寄せて相手に叩きつけるが、それをこっちはシャドービームで集めて叩きつける感じ」
SHADOW「質量攻撃は正義! ガンダムハンマーは正義だった!」
キネクリ「まぁいいんだけどさ」
メカウェル「エイユウ、エイユウ」
SHADOW「なぁお前さ、絶対に英雄になれない条件が1つあるんだけど教えてやろうか?」
ビッキー「ここは北岡弁護士ことゾルダの名セリフを今後言うための伏線だね」
奏「というわけで次回はコラボレーションライブが始まるぞ」
遂に登場した大問題キャラ『メカウェル博士』。その正体は謎に包まれている(棒)
異動期はツラい、本当にツラい。
それでも何とか第2・第4日曜日更新は死守したいところ。
次回もよろしくお願いします。