来年は子年、そんな安直な発想からお堂に安置されてしまうナズーリン。
柄じゃないと必死で抵抗するが……。

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冬コミの待機列で暇だったから書きました。
来年はナズ年という、あまりにもありふれたお題ですがご一読いただければ幸いです。

ピクシブにも投稿しています。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12158228



第1話

「これはどういうことだい?」

ここは命蓮寺のお堂、普段は毘沙門天として寅丸星が祀られている。けれど今日は、なぜかナズーリンが台座に座っていた。

「ナズ、ちょっと動かないで」

雲居一輪は楽しそうにナズーリンに飾りつけを施している。仰々しく固められたナズーリンは、動くこともままならない。

 

事の発端は三日前、来年がナズーリン子年だと思い出した聖が、ナズーリンを祀ろうと言い出したのだ。

「しかし、これは安直だと思わなかったのかい?」

「そうかな、そんなことないよ」

一輪は無頓着に答えた。この鈍感なのがちょっと羨ましい、ナズーリンは心の隅で呟く。

「本当にやらなきゃダメか?」

「そりゃ、聖の言うことだもの」

疑う様子もない。説得するのは無理そうだ。

 

「ナズ、実に様になってますよ」

飾り付けが終わったところで、星がやってきた。星の役割を、どうして自分がしなくてはいけないんだ。視線が少し鋭くなる。

「私はそんな柄じゃないよ」

「そんなことないです。実に堂々として、かっこいいですよ」

かっこいい、普段なら少しは嬉しかったかもしれない。けれど今のナズーリンは、あまりに自分の理想と違いすぎた。

「三が日が終わったら、本当にお役御免なんだろう?」

同じことを何度も確認する。恥ずかしいと思いながらも、覚悟が決まらない。

「もうここまでやったんだし、後には引けないよ」

一輪の言葉は最短で理性に刺さってくる。止めるという選択肢など、最初からないのに。

 

「いよいよ、お披露目ですね」

ご開帳の直前、聖がやってきた。いつものように柔らかい笑顔、見る人を安心させるという。ただ、ナズーリンにはイマイチ実感がなかった。もちろんナズーリンも聖を慕っているけれど、尊敬というよりも、仕事仲間としての信頼感に近い。

「ナズーリン、肩の力を抜いて」

肩にふわりと添えられた手は、ほとんど重さがない。ナズーリンは少しだけ、その羽のように軽い手に、背中を押されたような気がした。

「ああ、わかったよ。三が日だけのことなら、私も寺のことに協力しよう」

 

 

鐘の音が合図となって、お堂の扉が開かれた。新年におめでたいものを一目見ようと、里の人々が詰めかけている。

人々の拝む声、祈る息遣い、賽銭を投げ入れる音、喧騒ともいえる様々な音の中、自分は一体どんな風に映っているのだろうか。そう思うと、少しだけ背筋が伸びる思いがする。星や聖は、こんな思いを抱きながら仕事をしているのだろうか。

 

ナズーリンは毘沙門天の伝令役、実際の信仰は聖や星が集める。考えてみれば、自分で信仰を集めるのはこれが初めてかもしれない。

ここに集まる人々の願いを一身に受ける、責任のある仕事だ。

 

 

 

元旦の参拝時間は終わり、ナズーリンは解放された。

 

「ナズ、お疲れ様でした。檀家の方々も喜んでいましたよ」

「そうかい、なら良かった」

 

「ご主人」

「なに?」

「いつもありがとう」

「どうしたんですか急に?」

星はニコリと微笑む。どんなに大変なときでも、必ず見せてくれるあの笑顔だ。

「別に、なんでもないよ」

「なんでもない訳ないじゃないですか、教えて下さいよ」

「後二日、頑張ればいいんだろう? たまには表に立つのも悪くないね」

「あ、話をそらしましたね?」

 

怒っていても朗らか。たった三日間じゃなく、ずっと命蓮寺の顔だからこそ、出来る表情だ。

 

 


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