貴方に手紙を送ろう。
私はあの日の事を忘れない。
戦争の体験なんてなく、イメージですが、あの日死んだ方々への追悼と、
今も苦しんでいる人々への応援というのは軽々しいかもしれませんが、
そういう思いを込めて書きました。
8月9日。
午前11時2分。
気温が高く、天気は晴れ。
私は今、公園の木に寄り掛かり、君に手紙を書いている。
午後からは雨が降る予定だが、今は雲の一つも出ていない。
降雨予定時刻にはまだ間があるというのに、無数の小鳥が空に向かって鳴いている。
雨を呼んでいる。
上を見上げてみても、なぜか一羽たりとも姿は見かけない。
君はどうしていますか、お変わりないですか。
最後に一面の焦土を目に焼き付けたであろう君は、今、目の前に無限に広がる空さえも覆い隠そうとしているビル群を見たら驚くことだろう。
あの日は何時もと変わらず、けれども今日とはとても違う日々を過ごしていたね。
何時、誰が死ぬのかも分からない毎日の中、私は君に淡い恋心を抱いていた。
今も、あなたと再び会う瞬間を何度も空想している。
でもそれは、もう習慣みたいなもので、何の感慨も沸きはしない。
実は、もう君がどんな表情で、どんな声で話す人だったのかもろくに思い出せない。
思い返せば、あの日を含め、君と過ごした日々は紛れもない悪夢てあると同時に、私の人生の中で一番輝いていた時であった。
サイレンが鳴れば身を隠し、まともに外に出ることさえできない。
私はいつ、他の友の様に戦地に赴かないといけなくなるのか不安だった。
そんな中で君だけが、変わらぬお天道様と一緒で、キラキラと輝いていた。
あの日の数日前、ついにあの血の色の紙が私のもとに届いた。
涙を流す母に見送られ、朝早くに私は東京へと向かった。
君に別れを告げる時間はなかった。
東京に着いた私は、運が良かったなとだけ伝えられ、早々に故郷へと向かわされた。
離れていたのはたったの数日。
それでも、全てを変えてしまうには充分だった。
今も、私の体の中には暑い熱い火の川が流れている。
あの日見た光景をそのまま焼き付けたかの様なその火は、もう二度と消えることはない。
あれから何十年たったのか。
数えるのは簡単だが、少しばかり億劫だ。
私はその間に妻をめとり、子を授かり、孫にも恵まれた。
手紙を書くのに思ったより時間がかかってしまったからか、空はもう雲に覆われており、足を照らしていたはちみつ色の光は既に消えていた。
雨が降る前に帰らなくては、大切なあの人等に心配をかけてしまうだろう。
湿度が高くなったせいか、鳥が沢山鳴いている。
ザアザアと鳴いている。
もう帰らなくてはいけない。
今、雨粒が落ちた。
本当は、雨に濡れるのは嫌いではないけれど。
願わくば、黒い雨の降らんことを。
なんか暗くてすみません。
誤字脱字があったら連絡お願いします。
そろそろ2次作品書こうかな。