「冥王星方面から、遊星爆弾三十基飛来して来ます! 各約十分間隔」
「航空隊にスクランブル発令、続いて核弾頭装備の迎撃ミサイル発射用意急げ!」
月面の国連宇宙軍基地司令部は、慌ただしくその対応に追われていた。火星圏で宇宙軍がガミラス軍に勝利してから、ガミラス軍の宇宙艦隊が太陽系奥深く侵入することは無くなった。代わりに、地球に隕石が次々に落下し、地球上の至るところで被害を与えていた。
国連が、これらの隕石の異常な落下が、ガミラス軍による人為的な攻撃だと結論付けたのは、既に相当数の被害を被ってからである。国連宇宙軍が分析したところ、これらの隕石は、冥王星付近から飛来していることが判明した。
しかし、先のガミラス軍との交戦で勝利した宇宙艦隊は、既に壊滅的な被害を受けていた。米国、欧州、中国やロシアを始めとした国連の連合宇宙艦隊は、それまでの戦闘で既に全滅しており、後衛で最終防衛ラインに控えていた極東管区所属の日本艦隊が僅かに残っているだけとなっていた。
このような状況下で、冥王星にガミラス軍の基地があり、隕石爆弾がそこから発射されていることが分かっていても、容易に手を出せる状況では無かった。
そこで、国連宇宙軍は、日本宇宙艦隊と、月面基地による隕石爆弾の迎撃戦を展開し、これに対抗していた。
隕石爆弾は、いつしかその名を「遊星爆弾」と名付けられていた。毎日のように数十基飛来する遊星爆弾の対抗として、国連は残存宇宙艦隊を保有する日本への全面的な武器弾薬、兵糧の支援を行っていた。しかし、遊星爆弾の被害が地球全土に及ぶ中、その支援も徐々に難しくなっていた。
「全艦、マルチ隊形! 目標、敵、遊星爆弾」
「艦首ショックカノンへエネルギー伝達。エネルギー充填、八十パーセント」
火星圏で防衛線を張っていた日本艦隊旗艦キリシマに座乗する沖田提督は、全艦隊に攻撃準備を指示していた。艦長山南が、キリシマの主砲の発射準備を行っていた。他に帯同する二十隻の艦隊が、隊列を並列にとり、同じ様にショックカノンの発射準備を行っていた。
山南は、攻撃準備が整った報告を艦の戦術長から受け、沖田に報告した。
「提督、攻撃準備が完了しました。いつでも撃てます」
沖田は山南に重々しく頷いた。
「よろしい。全艦に通達! まずはキリシマが初弾を発射する。各艦、順次次の目標に照準合わせ、順番にショックカノンを発射しろ。発射後は、次弾発射に備え、直ちにエネルギー充填に入れ!」
キリシマの戦術長が報告する。
「本艦は、先頭の遊星爆弾を射程内に捉え、自動追尾中。目標が艦隊到達まで、およそ五分」
沖田は眼光も鋭く山南に言った。
「山南、十分に引き付けてから、主砲発射だ」
「了解、提督。戦術、目標到達一分前まで引き付けろ」
キリシマの艦首主砲ショックカノンの砲口は、充填されたエネルギーの青白い光が輝いていた。
「目標到達まで一分、照準よし!」
山南は、大きな声で命令を発した。
「撃て!」
「てー!」
戦術長は、主砲発射のトリガーを引いた。
キリシマの主砲が、青白い光を放ち、宇宙空間に光の束が走った。それは、真っ直ぐに目前まで迫っていた遊星爆弾に伸びて行く。そして、中央部を貫くように命中した。遊星爆弾は、粉々になり、破片が飛び散った。
「主砲着弾確認! 遊星爆弾の迎撃に成功しました!」
「よろしい。全艦に通達、順次、十分に引き付けて主砲発射」
山南は、ほっと胸を撫でおろしていた。
「次弾充填開始しました。提督、ショックカノンが完成して、本当に助かりましたね」
沖田は、気を緩めることなく、艦隊と遊星爆弾の動きを表示するスクリーンを睨んでいた。
「火星圏でガミラス軍に勝利出来たのも、この兵器のお陰だ。だが、エネルギーが十分に合っても、たったの二発しか撃てん。根本的には、もっと強力で効率の良いエンジンが無ければ解決にはならない。冥王星まで行って、奴らの基地を叩きたくても、冥王星を往復する際の燃料を考慮すると、ショックカノンは使えんと聞いている」
「地球の技術開発部は頑張っています。そのうち、解決してくれますって」
「分かっている。だが、間に合うかどうか……」
提督沖田の艦隊は、遊星爆弾を全て撃ち落とし、ダイモスの燃料補給基地に向かっていた。
そこへ、新たな遊星爆弾が三十基飛来していると報告があった。
「提督……」
「山南、そんな顔をするな。我々は、もう迎撃に間に合わない。後は、地球防衛線にいる土方に任せよう」
山南は、ガミラス軍との科学力の差を痛感していた。
「新たな遊星爆弾、火星圏を通過して行きます」
沖田と山南が見つめる艦橋の窓の外を、遊星爆弾が通過して行った。
果たして、弾薬や燃料がいつまでもつだろうか。我々は、もう、あれを止められないかも知れない……。
月面基地から飛び立った航空隊が、火星圏を突破した遊星爆弾群を捉えていた。
「山本、篠原! これから、アクティブレーダーを起動して、敵が潜んでいないか確認する!」
「加藤、突っ込み過ぎだぞ。俺たちにペースを合わせろよ」
「明生ちゃんの言うとおりだよ。おーい、隊長、戻ってきな」
篠原と山本明生は、勇み足の隊長加藤に対して軽口を叩いている。
「お前らが遅いんだよ!」
加藤は、そう言いつつも、コスモファルコンの速度を落とし、後方の山本機と篠原機の近くに寄って編隊を組み直した。
「レーダーに敵艦の反応は無しだ」
「本当だ。良かった。じゃあ、目的は果たしたし、帰投する?」
篠原は、皆に声をかけた。しかし、二人はしばらく黙っている。
「あれ? 隊長? 明生ちゃん、どうかした?」
明生は、一つの提案をしてきた。
「俺たちで、一個でもあいつの軌道を変えてみないか? この位置で軌道をほんの僅かでも変えれば、地球衝突コースから外れるはずだ」
「またまた、無茶なこと言う。俺たちが抱えてるミサイルじゃあ、あれを撃破するほどの炸薬はセットされてないってのに」
その話に、加藤が反応した。
「山本、俺も賛成だ。せっかくここまで来たんだからな」
「でも、どうすんの?」
少し沈黙があって、明生が説明した。
「あれは、小型の小惑星だが、実際には氷の塊みたいなものだ。内部にガスが含まれている可能性が高い。穴を開ければ、内部のガスが吹き出して、軌道が変わるかも知れない」
篠原は、操縦桿を握ったまま、面食らった。
「穴開けるって簡単に言うけどさ、それには同じ場所をピンポイントで狙う必要があるんじゃない?」
加藤が、にやりと笑って言った。
「俺たちなら、出来るだろう?」
「そうそう。俺たちなら、やれるよ」
明生も楽しげな声を出している。
「まじかよ……。まったく、あんたらときたら!」
篠原は、機体を先行させて言った。
「俺が照準となるレーザーを照射する。二人とも、その位置に向かってミサイルを撃ってくれ」
「了解!」
「任せてくれ!」
篠原は、遊星爆弾を照準に捉えて、真っ直ぐに向かって行った。遊星爆弾は、ゆっくりと不規則な回転をしている。ミサイルを誘導するレーザーを一点にあてるには、回転に合わせて機体を動かし続けなければならない。
「ったく!」
篠原は、機体を巧みに操りながら、少しづつ遊星爆弾の回転に同調させようとした。
「こんなの……! 簡単に出来ると……!」
篠原は、どうにかして、遊星爆弾の回転方向に並行するように機体を同期させた。そして、そのまま遊星爆弾を追いつつ、レーザーを照射した。
「二人とも! レーザーを一箇所に照射出来る時間は、0.5秒ぐらいだ。回転が思ったより早い。やれるか?」
「当然だ! やるぞ、山本!」
「もちろん!」
篠原の機体に二機のコスモファルコンが同調し、編隊を組んだ。
「よし、カウントダウンする。三、二、一、今だ!」
加藤と明生のコスモファルコンから、合わせて八基の対空ミサイルが放たれた。ミサイルは、弧を描いて、飛行し次々に遊星爆弾に着弾した。その途端に爆発が次々に起こったが、遊星爆弾のコースは変わることなく、そのまま飛行を続けていた。
「……だめか?」
「まぁ、待て」
突然、遊星爆弾が、彗星のように後方に何かを噴出し始めた。そして、僅かに軌道が変わっていく。
「やったぞ!」
「ああ、やった!」
「念の為、軌道計算してみよう。……うん。このコースなら、数百キロは地球を逸れるかな」
通信回線を通して三人の笑い声が響いた。
「これ以上は無理だな。帰投しよう。帰ったら、一杯やろうぜ」
「お、隊長、お付き合いさせてもらいますよ」
加藤と篠原が話す中、山本が黙っている。
「山本はどうする?」
「すまない。今日は、家に帰る予定なんだ。また今度付き合うよ」
「連れないなぁ。行こうぜ、山本」
「今日は、妹に家に帰るって約束してるんだ。すまないが、早く帰らないと、心配かけるからさ」
「じゃあさ、明生ちゃん家で飲もうか」
篠原が、楽しそうに提案する。
「それはだめだ」
「何で?」
「お前みたいな女たらしを、妹に会わせたくない」
篠原は、苦笑している。
「酷い言い草だなぁ。まるで、俺に会っただけで妊娠するみたいじゃん。俺、傷ついちゃったかも」
普段おどけた会話をしない加藤も、これには噴き出していた。
「篠原、ここは山本の言うとおりにしてやろうぜ。俺たち二人で飲もうや」
「了解、隊長。でもさ、明生ちゃんさ、今度会わせてよ?」
「考えておく!」
その後、地球圏で待ち構えていた土方率いる日本艦隊が、遊星爆弾を次々に撃破して行った。それでも、その日は追加の遊星爆弾が飛んできたという情報が入っていた。
月面や地球から撃ち出した核弾頭装備のミサイルが迎撃して、その日はこと無きを得たが、弾薬がいつまでも続く訳もなく、次第に数を増した遊星爆弾に対処するのが困難になっていった。
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)ヤマト2199の設定資料にて、2193年にカニ号作戦が行われ、山本明生はその際の偵察任務中に戦死したとなっているようです。しかし、本編に登場する山本玲と加藤が明生戦死の報を会話するシーンの二人の年齢は、それほど本編が何年も経過しているように見えず、戦死したタイミングはもっと後であると設定しました。
注)加藤は下戸と言う設定を忘れていました。とりあえずそのままにしておきます。