「凍結」過去の遺物   作:オオソカ

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投下します。


決別の一撃

「決別の一撃」

 

「おお~!随分派手に暴れていやがるな…」

 

 射法魔法によって映し出される。かつての同盟者アベル、その行動に最早己の意思や知性などを感じる事は出来ず。唯本能のままに未だに生き残りの竜達を殺し続けている。

 

「こうなっちゃもう、てめえとの戦争なんてやれねぇな」

 

 これから、トロスが行う事は、王と王との決戦でもなければ生存をかけた戦争でも無く、おそらく相手の弱点を見つけて此方かの一方的な害獣の駆除となるであろう。

 それに、どこか少しだけトロスも心にしこりを感じていた…まぁこうなった原因の7割ほどは、自身にあるのだが…

 

「しっかりと保存しておけよ!あいつの行動は、今完全にパターン化されているからな!」

 

 理性を失い、怒りのままに行動する魔王その行動を見極め、ここぞという一点に戦力を集中し完全に無力化させる。その為の計測は着々と進んでいた。

 

「さしずめ…さよならを教えてか…」

 

 その言葉を背に

 再度生産された工房にて、魔人達が量産され続ける。

役目を果たすその日まで

 

「おお!!カミーラ、カミーラ!!」

 

その場を破壊尽くしながら魔王は、動き続ける。

自身がした事を忘れるため、彼の時間は、自身の妻を殺したその瞬間から全て止まっていた。

 

「全て!全てが憎い!全部滅ぼしてくれる!!」

 

 その声に反応する物は、いない…

 ただ、生き残ったドラゴン達が奇跡を信じて特攻し屍をさらすばかりであった。

 狂った魔王を止められる存在は、また欲にまみれた俗物しかおらず。ハニーの王は、前大戦と同じ様に静観を貫き、配下のハニー達との戦争ごっ

こに興じていた。

 

「テラ様…」

 

「落ち着いて、気付かれぬ様に脱出の準備を終えるのです。」

 

 ホルスの母艦の内部でも命を賭けた大脱出への準備が開始されていた。あの後一時的に戻ってきたメガラスが同僚にドラゴンの王の死とトロスとアベルの戦端が開かれた事、アベルは、完全に狂ってしまい、最早正気では無い事を伝え、早急に目立つことの無い場所に逃げる事を伝えると、母艦を離れた。

 

「…メガラス」

 

 テラとて、本当ならば戻ってきて欲しかった。また、昔と同じ様に働いて欲しかった。自分の側に居て欲しかった。しかし、メガラスは魔人、唯のホルスとは違う。そして魔人は原則として魔王に絶対服従である。我が手で、同朋と主人を手にかける可能性を感じたメガラスが、長居を出来ないのも道理であった。

 

「どうか無事で…」

 

 だから、唯祈る。愛しい事すら心に閉まった。…貴方の帰る場所は私が何としても守ると決意を胸に

 

「ハニホー王様!魔王が互いに争っているね!」

 

「ドラゴンの王様強かったのに死んじゃったね!まぁ一番強いのはキングだけどさ」

 

「えぇ!じゃあドラゴンのみんな殺されるね!トロスに」

 

 わいわいと陶器の様な不思議な生物?ハニーが戦争の状況を楽しそうに語っている。このハニーは、種としてかなり凄まじいポテンシャルを秘めた種族であり、魔法が絶対に効かない特殊な体質や防御不能なハニーフラッシュ、スーパーハニー等の強者達も存在した。しかし当人達?が言うに自身らは、メインプレイヤーの亜種の異人であると言う主張をするのだが、他の魔物からは、同族の魔物の一種と見られていた。

 それだけ、強力な種が何故この戦争に動員されて居ないのかと言うと一重に…

 

「ハ・ニ・ホー!皆元気そうだね」

 

「ああ、王様オハヨ-!」

 

「最近、他の場所が五月蠅いね!戦争ごっこも静かにしてやって欲しいね」

 

「キング万歳!!」

 

 その出鱈目種族の中でもさらに出鱈目を極めていた存在とも言えるハニーキングがいるからであろう…他の魔物にも種の長として強力な個体が代表を務める事も多いが(例後のメインプレイヤーに身長以外は、酷似した巨人族などに多く見られた)このハニーキングは唯のハニー…いや、魔王すらも超えているのでは無いのかと噂されている存在であった。

 現に当初、トロスと同盟を組まずにハニーを支配下に置こうとしたアベルが、ハニーの里を襲撃に訪れたが、ハニーキングが撃退している。その後、アベルが襲撃を繰り返したと言う話は、伝わっておらず。元来知恵に優れるアベルが、二度目の襲撃を目論む事すらない時点でその強さは、保証されていた。

 

「もう、アベル君もトロス君も少しは、静かに遊んでくれないかな」

 

「ああ、でも面白そうだから僕たちも戦争ごっこしない」

 

「賛成!最近暇だしねー!」

 

「じゃあ、僕が将軍ね!」

 

 ハニーキングの出鱈目な強さ、種としての優れている点もあるが、一番恐ろしいのは、遊び感覚で命を捨てる。それがおぞましい…後誰彼メガネを付けようとするな特に俺の魔姫達に、相性を考えろ相性を…これがトロスのハニー達への評価であった。

 

そして、そのハニーの中身は、ハニーしか分らないのかもしれない

 

「アベルぅうううううう!!」

 

「貴様が、貴様さえ存在しなければ!!」

 

 ドラゴン達が、死をも恐れぬ特攻を魔王にしかける。もはやドラゴンには、強大な戦力は魔姫の爆殺と共に消え去り、竜王も死んだ事により魔王を止める戦力は無く、種を存続させる為の王冠すらも目の前の狂人によって死においやられた。

 この攻撃は、最早意味のある攻撃で無く如何しても感情を処理しきれないドラゴン達が唯死ぬよりは…と言う。何処にも出せないやるせない気持ちをぶつけていくしかなかった。

 そして、それを見逃さぬ生き残った悪意もまた存在した。

 

「当たりだな、やはりここで暫く止まっていやがったな」

 

 アベルの暴れる場所、そこはかつて互いに同盟を組、そして決別した場所であり、彼の妻を彼が殺した場所であった。

 彼の中では、カミーラは死んでいなかったそれを確認するため何度も同じ場所を同じ時間に訪れ、そして再度発狂する。

 

「南無三」

 

 その言葉を合図に、合体魔人と分身体が魔砲を再度装填した状態で照準を合わせる。

 あり合わせで製造した急増品であり、基地に備わった物と違い恐らく一度の発射で使い物とならなくなるであろう。

 

(一歩でも、間違えれば俺が此奴になっていたんだ。だからもうお前を苦しめるつもりはねぇ、だから眠れよ)

 

 偽善とすら言えないき気持ちで元同盟者に照準を合わせる。しばらくの時間をおいてアベルがカミーラの名を叫びながら、飛び立とうしたその瞬間にその一撃は、放たれた。

 轟音と共に砲身がはじけ飛び、押さえていた魔人達が吹き飛び数体地面と激突したまま動かなくなった。トロスと魔姫達のみが体を地面に固定して山のように動かない、そしてその絶大な爆発力を伴った汚色光線がアベルに迫る。

 しかし、アベルは気付く様子も見せずにいつもと同じ行動を繰り返そうとする。しかし、その行動も遂に最後を迎える事となった。

 

「カミーラ…」

 

 それが、最後の言葉であった。

 その体は、まばゆいばかりの光に包まれ、怒りと憎しみだけで動く体に終わりを与えた。

 数十秒後に、トロス達が見たのはアベルの体が無くなり通常の魔血球以上の遙かに巨大な球であった。

 

「なんじゃ、こりゃ?」

 アベル(魔王)が魔人と同じ球になった。これだけでもトロスにとって初めての経験であったが、驚くべき事は暫くした後に起こった。

 

ズ、ズズズウズズ…

 

「な、体が元に戻っていやがる」

 

 球から、手と足が生えだし再度ドラゴンの体を作ろうとする。竜王すら沈めた魔姫の自爆をアベルは、防いだのでは無かった。完全に死んでいたアベルを魔王の血という存在がけして休める事が無く上位の存在を楽しませるべく思念から再生していたのであった。

哀れな生ける屍の魔王それが、アベルの正体であった。

 

「に、二度もやらせるか!」

 

 トロスの一撃が足と手をもぎ取る。そのまま球に何度も攻撃を仕掛けるも逆に球がトロスに同化しようと触手を伸ばす。

 

「ぺ、げげっげだ、誰が俺の触手の場面なんて喜ぶ!」

 

 体に絡みつく触手をはたき落とす。トロス自身は、無自覚であったが魔王LV3がトロスの自我を保証し、新しい魔王の血すら防いだのであった。しかし同時に、トロスはシラフで大量の虐殺や非道を行っているという逃げ道を防いでいた。

 

 フルキマオウ…ワタシトドウカセヨ

 

 カンゼンナマオウトナレ、スベテヲクルシメヨ…

 

 頭の中に謎の言葉が送りこまれる。

 

「だーー!!俺は、俺だ!何が哀しくて仕事みたいな事せなあかんのだ!!そんな事したいときに好きなようにするわ!!」

 

 トロスからすれば、こんな気色悪い存在と同化などご免であった。同時にこんな面倒くさい事をさっさと終わらして、早く聖女達を帰還させてまた、元通りの日常を取り戻す。それしか頭に無かった。

 

「ええい、プランBだ!!さっさとしろ!!」

 

 部下に怒鳴りちらし、自身は未だに不気味な雰囲気を生み出す球を汚物でもさわる様に持ち上げながら、帰所する。

 その後、件の球は厳重な警備の元で魔姫二体が定期的に損傷を与える事により封印される事となった。最早その球を主とあがめる部下も居なければ、慕う物もいない、有効活用されること無く厄介者として存在するだけである。かつて大陸最強の一角の魔王の最後は、いっそ死ねた竜王と比べても哀れな物であった。

 

そして…

 

「ベックシ!!ああ誰か噂してんのか?」

 

真の愚者は、その本来の素質によって生かされた。

 

 あの激戦から、十年が経過した。

 ドラゴンは、完全に死滅し僅かな生き残りも発見しだいにトロスが殺していった。竜王も竜の魔王も居ない状態で、上級ドラゴン達も戦争によりほぼ死滅した。ドラゴンに復権の道は無く、今は、最後の時を一匹、一匹がかみしめながら生きるのみであった。

 しかし、逆にドラゴンポピンズやドラゴンカラーといった亜種は、生き残りトロスも手を下していなかった。ポピンズには、以前ついた約束をいまさら反故するつもりも無くほうっておかれ、カラーもハンティの一件からかなりの負い目を感じてしまっており、手をください無い一因となっていた。無論ハンティに負い目を感じていただけであり、同族のカラー達哀れを感じたわけでは無く、ポピンズも相手が再び攻撃しないのならばどうでも良いという感情に過ぎなかった。

 

「ああ、中々進まねぇな」

 

 壊滅した基地に変わる新たな住処を作成する為、生き残った配下を総動員し自身も建設に加わっていたが、流石に千年以上の時間をかけて作成した基地を十年で作る事は、いかに経験があるトロスとて不可能であった。

 そして、未だに呼ばれぬ聖女達であったがトロス自身も「ごめんなさい、お前達の家、戦争で跡形も無く消え去っちゃった。ああ、壊したのは俺」と言うつもりも無く何とかして無事に彼女らの住処だけは、提供出来る様にひたすら体と配下に鞭を打っていた。

 トロスに、苦労を分かち合っての愛情等信じるに値しないものであり、幾ら彼女らを呪縛にて縛っているといっても離反しないのは、兎に角、生活に不便を感じる事が無いように命の危険が無いように生活が送れるように環境を整備していたからに過ぎないとそれが、真実であったと思い込んでいる。

 

「毎日つまんねぇな…」

 

 この変わらぬ日常は、さらに三十年続き聖女達が帰還した際には、最初から謝りつづけ地面に頭をこすりつける。トロスの姿が確認されたのであった。

 帰還した際に、ベゼルアイはいつも通りの表情でトロスに向かい合い、ハウセナースは、ゲンナリした表情で直ぐに自室に戻り、ウェンリーナは、異世界での生活をトロスに楽しそうに話し、セラクロスは、何かをさっした表情でトロスを見つめていた。

 

 こうして、トロスに現在、天敵は存在しなくなった。すべて討ち滅ぼし殺し尽くしたのであった。しかし、同時に自身を遙かに上回る存在の急激な出現にトロス自身の強化がよりつよく意識され、今後の数百年、己の進化の為に費やされるのであった。

 体は、聖女達と同じ様な容姿になり、体を形づくる以上の過剰な肉は大陸を離れた空間に浮き、年と共に数が増えて遂には強化が終わった後には、大陸を囲む輪の様な島ができあがっていた。魔人達にも聖女達の話し、遊び相手に限定されたが一定の知能が付与され、穏やかな心と愛情がにこれも聖女達と同じ容姿が付け加えられた。

 本拠地も拡大を続け、ハニーや生き残ったドラゴンの亜種のみは、例外として縄張りを荒らすことは無かったが、それ以外の種族に対する情など無く、数多くの魔物が虐殺の憂き目に遭った。

 トロスからすれば、既にアベルとの同盟も破棄されており、数だけ多くともまったく役に立たない魔物に何の未練も無く、己の邪魔になるならばと少しづつ数を減らし、絶滅においやっていった。これは、第二世代の魔物達は、繁殖に同じ種族の異性が必要である場合が多く、また、住処も何処でも良い訳で無いので一度崩れた生態系には、極端に弱かった点もあげられる。

 多数の死体と血に染まった。大陸にトロスの拠点が築かれた。以前と違いより豪華に、芸術性を高めて建築された。これは、聖女達の為であったが、彼女らかの好意的な意見を聞く事は無かった。

 

 そして、そのさらに数百年後についに新たなメインプレイヤーが誕生し、新たな魔王も姿を現すのであった。そして、トロスが破滅をたどる原因もこの魔王であったと後の歴史を知るものは、口を揃えて答えた。

 

その名は…

 

 




投下終了
誤字、感想ありましたら直ぐに対応します。

以下本作のみの設定

「今作のメガラス」
魔人になる前から、トロスのポカで実質トロス製の魔人となっておりそのせいで、魔王の血同士が、混ざり合い突然変異で魔王クラスの性能に最高で光速を超える速さを手に入れた。正し、魔王の命令に絶対なのは同じである。因みに、他のホルスも休眠していなかった個体はほぼトロス製の魔人となっている。しかし、トロスの血に命令権などないので実質的に単純なパワーアップ程度に留まっている。

「体は、聖女達と同じになり」
 現在の容姿は、魔女の騎士ヘクセンリッターのコーディ・ブロットの容姿をこの世界に会わせた容姿となっている。人間の容姿を取る際にも元の容姿を復元しないのは、醜男のコンプレックスであり、男の娘の形をとったのは、趣味と夢の実現、聖女達との溝を少しでも埋める為であった。しかし、反応は良くなかった。

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