「凍結」過去の遺物   作:オオソカ

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この話は、悪魔でIFで本筋には関わりません。



番外編
IFハンティが生まれていたら


「何!!西のナチョラスがカラーの殺害に関与していただと!!」

 

 主の言葉以外に一切の反応を示さないDR達が、肯定の意思を示す…

 

「彼奴ら許せん!!皆殺しにしてやれ!!」

 

 狂気を目に宿したトロスから、国家の虐殺指令が下される。普段は、人間に対して異様な寛容さを見せるトロスであったが、カラーが関わるのならば話は、別である…なぜなら

 

「トロス!!馬鹿な事は止めてくれ」

「ハ、ハンティいつの間に…」

 

 ハンティカラーのその者を考えればであった。

 

「また、昔の事を蒸し返して罪も無い人間を殺しにいくのかい!」

「い、嫌一度やった事がある奴等なら何時か必ず繰り返す…ハンティお前やカラー達の為だ。分ってくれないか?」

「確かに、ここの人間達はカラーに危害を加えたかも知れない…だけどそれはあの保護宣言以前の事だ!三百年以上前の事を掘り返して虐殺なんてやめてくれよ…本当にカラー達の事を思っているのなら…」

 

 ハンティの言葉に押し黙る。しかし、トロスからすれば、実の所カラーに執着しているといっても、目に狂気を宿して虐殺を行う程に心酔している訳では、無かった。彼が、一番に心配しているのは、目の前の勝ち気だが、とても優しい彼女ハンティとこの場にいない聖女女の子モンスター達の事であった。

 

「いや、だけど…」

「如何してもやりたいなら、まず私を殺してからにしてくれよ…あんたが人を殺し続ける姿を見てまで生き続けていたくない…」

 

 その言葉に、トロスの態度が急変する。

 ハンティの前に跪き、頭を何度も床に打ち付けて必死に叫ぶ

 

「悪かった!!ごめんなさい、二度と言いません」

「トロス!!」

「ご、ごめんなさい、ハンティを不機嫌にさせて悪かったです」

「話を聞いておくれ!!」

 

 「ごめんなさい…」そうつぶやきながらトロスは部屋からハンティを残し居なくなった。

 哀しい表情をするハンティを見つめるのは、自動で保護意思が働いたDRと魔人達だけであった。

 

「お母様…」

「ッ!ケッセルリンク…」

 

 ケッセルリンクつい最近保護したカラーの子供であった。最初は、トロスが欲目で愛妾にでも使用と考えていたのであろうが、そこに割り込んだハンティが娘が居ない自身に子供代わりとして養子にしたのであった。

 

「お父様と何かありましたか…?」

「な、何でもないよ。子供はもう寝る時間だよ!ほら一緒に寝てあげるから寝室にいきなさい」

「はい…」

 

 彼女は、聡明なカラーであった。トロスが自身を保護した時もカラーの番いとなった人間の雄が見せる表情に似ており、自身が愛妾となる運命である事を悟っていた。

 トロスの気に入った雌に対する意欲は、この大陸に知れ渡っており「トロス来たなら、娘を隠せ!嫁も隠せ!」とJPANのことわざにもあるほどであった。拒めば、どの様な災厄を周囲に振り散らかすか分りきった事であった…

 周囲のカラー達も、ぎこちない表情で彼女の表情を伺っていた。カラーにとって庇護者とも言えるトロスを相手に、たかが親も居ないカラーの子供を引き渡す事を拒否できる者などこの世にいなかった…唯一人を覗いて

 

…そうかい、親が居ないのか…私も親の顔を知らなくてね…どうだい私の子にならないか

 

ハンティカラーのその一言により、全ては解決した。

 

 あのトロスもハンティの機嫌を損なう事を嫌ってか、養子を許し、ケッセルリンクの愛妾となる話は、露と消え去ったのであった。

 そして、彼女がハンティを母と慕うようになるにつれ、トロスは距離を取り始め一度父と呼んだ時には、凄まじい表情をみせて、発狂し周囲を破壊し自身を傷つけ始めた。

 それでも、彼女が母の前で父と呼ぶのは、母が夫とどの様な経緯をたどったとは、言え夫婦という関係をもっていた事が大きかった。

 

「…で、御姫様は勇者と結ばれましたとさ」

 

ケッセルリンクの居室にて、ハンティの本を朗読する声が聞こえる。

話が終わると同時に、ケッセルリンクが顔を上げて、ハンティを見上げる。

 

「お母様…私もこのお話の様になった方が良かったでしょうか?」

「如何したんだい急に?」

「私が娘になったせいで、お母様とお父様も…」

 

「そんな事ない!!」

 

ハンティが声を荒げる。普段優しい母の言葉にケッセルリンクも驚いた表情となった。

 

「ご、ごめん急に大声だして」

「いえ…」

「アイツと仲がギクシャクしているのは、出あった頃から何度もあったよ。それが、たまたま今あった。それだけの事だよ」

 

そう、話す母の目は、遠い過去を見ている様で…

 

…がっ!!何だヒューマンタイプになった瞬間に卵が!!…

 

…おい、おれ子育てなんてしたこともないよ、どうしよう、と、取りあえず。ウェンリナーちゃんに…

 

…お前と同族だから、こいつらは、殺すんだよ!!…

 

…人間を傷つけないようにして欲しい?まぁそりゃ良いけど…

 

…スラルちゃんから勧誘された!!駄目だぞお前は既に俺の…

 

…分った!その娘はお前の養子でいいから…

 

 トロス…何で話を何時も聞いてくれないんだよ!!そう思いながらハンティは、ベッドでケッセルリンクと共に眠りについた。

 人間もカラーもこの子もあいつも私が何とかしないと…その考えだけは、夢の中ですら忘れる事は、出来なかった。

 

 




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独自用語解説

「カラー保護宣言」
この世界線で、ハンティが生まれた事により彼女と近い容姿をもっているカラー達を保護するためにトロスがSL200年頃に人類、スラル共に宣言した。この宣言によりカラー達は、クリスタルの事を人間にしられる事なく魔物に襲われる事無く平和を享受し暮らしている。その為、亜人では無くトロスの情婦達と他の種族から見られている。正し言った存在は、トロスが殺して回っている。

「この世界線のハンティ」
 ひょんな、事から誕生したドラゴンカラー…この作品では共に最初からヒューマンタイプのカラーとして誕生しており、仮に人類が滅びても姿が変わる事が無いように設定されている。
 トロスの行動に常に胃を痛めているが、自身の言うことを聞いてくれ、本気で自身を心配して行動するトロスを見捨てられない板挟みになっている。
 他の関係者との関係は、良好でスラルからぜひ四天王になって欲しいと請われる程であった。

「トロス来たなら、娘を隠せ!嫁も隠せ!」
 あまりにも、すごいトロスの欲求から作られた。JPANのことわざ正し人類文明が誕生してからSL550年現在、トロスが純粋な人間に求婚した話は伝わっていない。
 後の藤原石丸もこのことわざから、トロスとの決戦時に子や妻を伴わ無かった事は有名である。


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