本編もなるべく早く作成します。
「ハンティ貴方は、結婚したこと無いの?」
パエリナの言葉に、時間をおいてハンティが答える。
「いいや、一人?だけいたよ」
「どんな人だったの?」
「とても怖くてでもこっちを見る目は何時も怯えたわんわんの様に機嫌を伺う様な視線だったなぁ~」
過去の記憶、トロスが生きていたその時間は、私は、あいつと番いでだった。その事を思い出してハンティは、ヘルマンの空を見上げる。
「?好きで結婚したんじゃないの?」
「私は…分んないやアイツの事は…アイツも本当はどうだったんだろうね」
「子供も居なかったの?」
「いや、血は繋がっていないけど養子でカラーに一人だけいるよ」
「そっかー」
パエリナは、深くハンティの話に首をいれなかった。ハンティが、話をする際にとても苦しそうに話をしている姿を見て、今はこの話題に触れていけないと感じたのだ。
そして、そのハンティの真意を聞く前にパエリナは策謀により命を落とす。一粒種のパットンを残して…
「なぁ、ハンティお前昔結婚していたって本当か?」
「なんだいトーマ、藪から棒に」
パエリナも消えた城内で、ヘルマン最強の将軍トーマ・リプトンがハンティに疑問を投げかける。
「いや、前にパエリナ様との会話の際に少しおれの耳に入ってしまってな…」
「あんたの耳、特別でかいからね…まぁ隠す程の事でもないか…してたよ」
「その割に、姿も何も見ないが…別居か?」
トーマの言葉にハンティ、何でも無いように返す。
「死んだよ。とっくの昔に」
「お前は、相当長生きだって聞いて居るからな…百年くらい前か?」
「いいや、二千年前さ」
「二千…お前魔王よりも長生きだったのか?」
「悪かったね、長生きで」
「辛く無かったか」
「分んないよ…アイツなにも話してくれなかったから」
その二人の会話を尻目にパットンとヒューバードの二人が、訓練にいそしんでいる。
「今は、昔の事よりもアイツを無事に皇帝にしてやんなきゃね」
「ああ、その気持ちは俺とて同じだ」
「なぁ、ハンティ」
「何だいパットン?」
何時もの何でも無い日々、幼いパットンとハンティが夕食を取りながら会話をしていた。
「お前、昔結婚していたのか?」
「まったく…誰から聞いたんだい?」
「ヒューの奴が、親父から聞いたって言っていたぞ」
「はぁ、私も口止めしていた訳じゃないから仕方ないか…」
「どんな?男だった」
「どうでもいいだろ…そんな事」
「良いだろ俺は、将来皇帝になる男なのだし!母親のことぐらい教えろ!」
よく言えば、純粋、悪く言えば、空気を読まない子供らしさでパットンは、迫る。
「そうだね、まぁ男らしいというよりも女のような姿で服装にメイドが着るような服をいつも着ていたね」
「うげぇー!なんだ?そいつ変態じゃんか…ハンティまさかそんな男がすきなのか?」
「あんたの母親にも言われたよ。同じ事、まぁアイツはもっと柔らかい表現だったけどね」
「好きかって言われると…わかんないだ。今でも」
「でもヒューもみんなも結婚は、愛があるからするんだっていっていたぞ!愛がないのにするなんて変じゃないのか?」
その言葉にハンティは、珍しく言葉を濁した。後年パットンは、彼女らしからぬ反応にこのことをよく覚えていることとなった。
そして、時は流れる。
それは、一人の子供大人になりそして、社会の荒波にもまれ捻くれるには十分な時間であった。周りの友が大人から老人になり、子供が大人になる中彼女ハンティ・カラーは、いつまでも同じ容姿を保ち続けた。
ヘルマンにも、変革が起こり当初次期皇帝確実であった。パットンもパメラが孕んだシーラが生まれることによって激変することとなった。武術の師としては、文句のつけようがない傑物のトーマとハンティであったが、二人とも政治を教えるに向いておらず。何も知らぬままハパットンは、成人と共に権謀渦巻く宮殿にはいることとなった。当初は、必死に皇帝らしくあろうと学びの姿勢を崩さなかった。全ては、偉大な皇帝となる為、父の期待に応える為であった。
しかし、非常にもヘルマン皇帝は、妾の庶子の子供のパットンよりも愛らしくしっかりとした血筋のシーラを溺愛するようになっていた。この時、パットンも影ながらであるが妹であるシーラと良好な関係を築いており、シーラ本人を恨めず。父を恨む事も出来ず。徐々に減っていく自分への父の言葉と宮殿での自身の支援者達に疲れ果て、ついに健全な精神も捻くれて、父である皇帝に認められる手柄を立てるために、ある行動を起こす事となる。
魔人と手を組み、宿敵のリーザスを併合する!彼の頭には、その事しかなかった。なぜ、人を見下す魔人が、人に手を貸すのか?簡単な事ですら考えられぬ程に既に追い詰められていた。
リーザス城…
「ハンティお前だけでも逃げろ…私を置いていけ」
「馬鹿言うじゃないよ、私はあんたを皇帝にするって決めたんだ」
目の前に魔人しかも戦闘能力は、最上位の一人であるノスが目の前におり状況は、絶望的であった。頼みの綱は、自身の瞬間移動で逃げ出す隙を何とか作るだけであった。
「ふん、噂ではもう少し楽しめると思ったのだがな…トロスの情婦よ?」
「くっ!」
「おい、ハンティ?トロスってまさか?」
「何だ?王子知らなかったのかそこのカラーは、あの過去のゴミの情婦だったのだ」
「魔姫!ハンティが?」
悪名高きトロスの情婦魔姫、彼女らは邪悪では無かったと伝えられるが、その彼女らをトロスが会得する為、数多くの虐殺と民族浄化などの悲劇が行われたと有名な悲劇の美しきトロスの血を飲まされた。姫たち…
「アイツの事を言うな!!」
逆上したハンティが術式を攻撃に転じようとするも、ノスがその隙を逃すはずなく追撃が入る。その太い腕はハンティの腹をえぐりだした。
「ガハァッ!」
「ほう、なるほどトロスの血とはさぞかし体が丈夫になるようだな」
その時、ありえないものをその場の者たちは、見た…最初に感じたのは、鼻が曲がる様な腐敗臭であった。次にまるで全てを憎むかのような暗い感情がハンティを除くリーザス城のすべて存在に降りかかった。
その気配をハンティは、決して忘れる事は無かった。忘れたくても、忘れられなかった。
「トロス!!」
おお…ハンティ
体が崩壊しつづけ、元の外見だけの柔らかな表情も崩れおち、体からは異臭を放ち続ける怪物トロスが確かにそこに居た。
「ジル様に敗北した負け犬が!」
その言葉を放った後に、魔人ノスは血の塊となり替わった。トロスの一撃は、恐ろしく早くこの場の誰も認知すら出来無かった。
「此奴が…魔王トロス…」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
トロスの叫びは、人類圏に響き渡った。
「な、なんだこの煩い叫び声は!」
「ら、ランス様リーザス城から聞こえます。」
「ええい!ささっと此処を片付けてからいくぞ!」
「ハッ!全軍進め目標は、我らのリーザス城!敵ヘルマン兵も最早殆ど居ないぞ!」
「馬鹿な…何故この怪物が…」
アイゼルの放った言葉は、それで終わりであった。言葉が終わった際に使途と一緒にその首を跳ねられ、その身を魔血球に戻した。
ハンティ~ハンティ~…
「トロス…」
かつての夫は、もはやまともな精神状態では無かった。その場の魔人すべてを殺しつくしてもハンティの方を振り向かず。ただ名前のみを念仏の様に言い続ける。
そこにいたのは、かつての夫で無く、己の女以外すべて憎む怪物「魔王」が確かに目と鼻の距離にいた。そして、それを見ながらパットンもハンティも息すら辛くこれから繰り広げられるであろう残劇にただ身を固めて見ていた。
…無茶だよ!そんな体で勇者と戦えるわけないだろ!
…生きて帰ってきたのかい…そうかい
…分からないんだ。ベゼルアイ…ジルに殺されたトロスが私たちをかばってくれたのは、分かるし、あいつのお陰で今の生活も不自由しないのもわかっているんだ…だけど
何故、私は安堵しているんだろう…?
ハンティの頭には、過去の記憶が流れ出しつつあった。そしてそれと同時にトロスも行動を再開した。ハンティの害となる隣の大男を殺すために…
異物は、取り除かなければならない
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