魔法少女ぶらぼ☆マギカ   作:Ciels

61 / 61
お久しぶりです。ちょこちょこ後日談を続けていきますが、ぶっちゃけ百合百合したものではないです。


呪い

 

 

 

 

 

 悪魔殺し(Slayer of the demons)は、ただ一人校舎の屋上に腰掛けて街を眺める。

 空を見れば夜の暗い帳は地平線からやって来るであろう太陽の光に押され、徐々にその神秘を眠りにつかせていく。オレンジ色と暗い夜空のグラデーションは見る者よっては心を打たれる光景だ。特に長く獣狩りの夜に身を費やし、血と狩に染り切ってしまった者からすれば……それは夜明けだ。

 

 いつもの学生服に身を包み、しかし身体からは溢れる神秘を隠そうともしない。父と母の遺伝子を混ぜた茶髪が現れた太陽を反射する。

 タツヤ、そして悪魔殺し(Slayer of the demons)とも呼ばれるその魔物は夜明けに相応しく無い笑みを浮かべ、ただ呟いた。

 

「人とは、学ばぬものだな」

 

 それは、人類全体に述べたものか。それともある特定の者達に向けた言葉か。真意は分からぬが、しかし彼は一人言葉を紡ぐ。

 

「いつの世も、人は安寧を求めるあまり無防備となる。それは悪魔となっても同じ事」

 

 脳の瞳に浮かぶは悪魔の貌。暁美ほむら。人の身でありながら神を蹴下ろし、自らを闇で昇華した……ある種上位者。

 

「だがそれもまた、良い事だ。束の間の安息を愉しめず、ひたすら悪魔に徹するなど……あまりにもつまらん」

 

 言うと彼は立ち上がり、その身をかつて異界で得た鎧と武器で固める。その姿に中学生である鹿目タツヤの面影は無い。その姿は正しく悪魔殺し(Slayer of the demons)。かつてボーレタリアで須くデーモンを狩り、最後には自らもデーモンと化した異端。

 彼は兜のバイザーの奥、その赤く染まった瞳で太陽を一瞥する。

 

「だが、それだけでもつまらん。人とは闘争の中に大切なものを見出すのだ。例え既に大切な者が居たとしても」

 

 上位者、悪魔、女神。この見滝原には神秘が集まり過ぎている。人は神秘を前に抗えぬものだ。それは上位者達も同じ事。今やこの見滝原は、かつてのヤーナムに劣らない程に上位者達が注目している場。

 そして上位者とは、碌でもない。愛を知らず、ただ啓智のみに酔いしれる故に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勉強がヤバい」

 

 昼休み、皆で囲んで食事を摂っていればほむらが唐突にそんな事を言い出した。何を言うのかとその真意を問いてみれば、どうやら今まで成績が良かったのはループしている中でテストや授業の内容を暗記していたからだそうだ。

 悪魔となり、澱んだ時が流れた今ほむらの偏差値は平均よりも低いらしい。そういえば今日小テストがあったような。

 

「今日の小テスト、何点だったの?」

 

 こてんとまどかが可愛らしく首を傾げれば、ほむらは目の下の隈をより一層酷くさせてぎこちなく答えた。

 

「さ、三十点」

 

「それはヤバいわ」

 

 嘲笑う事なくさやかが言う。かくいう彼女も小テストの出来が良くなくて喚いていたのを思い出した。少女達よ、百合に酔いしれるのも良いが、学生の本分を忘れぬようにな。

 私は早々に母が作ってくれたサンドイッチを食べ終わり、ペットボトルの紅茶を飲む。

 

「ふぅ……ツケが回ってきたね、ほむら」

 

 呆れたように私は言ってみせた。ぐぬぬ、とほむらは私を可愛らしく睨むが、事実その通りなので何も言い返せない。

 繰り返す事で得るものなど、狩りの記憶と血の遺志、そして獣狩りの武器と道具だけで十分だ。あぁ、あと血晶石もだが。逆にそれ以上を求めれば疲れるだけだろうに。

 

「ちなみにどの科目が苦手なの?」

 

 何も知らないマミが尋ねる。ちなみにマミは努力家であり成績は優秀だ。テスト前なんて私が甘えても勉強するから邪魔しないでとあしらわれる。

 ほむらはバツが悪そうにもじもじしながら何か呟く。あまりにも小さ過ぎる声だったので、私がもう一度言うように催促すればようやく彼女は大きな声で言ってみせた。

 

「ぜ、全部よ!国語数学理科社会、全部!」

 

「ええ……」

 

 これには思わず国語が苦手なまどかもドン引きする。そんなに勉強ができないのか、彼女は。いかに上位者の仲間入りしたと言えども擁護できない。

 

「しょうがないじゃない……入院生活が長かったせいで勉強どころじゃなかったんだし」

 

「あはは……そういえば、昔はほむらちゃんにもそんな時があったね」

 

 彼女の全てを知る最愛の友が納得したように笑った。その事情を知らないマミからすればいつ入院したのだ、という疑問を抱くだろうが。

 ともあれ、私の友達が赤点を取ってバカの烙印を押されるのは困る。これでも上位者、それも勝手にビルゲンワースで色々学んでいた学者の端くれだ(上位者になってからドロドロに溶けた学徒達に色々教えてもらった)、ここは一肌脱いであげようか。

 

「なら、するかい?勉強会」

 

 私が提案すれば、それは名案と言った様子でマミが笑顔を咲かせた。

 

「なら、放課後に私の家でどうかしら?一回やってみたかったのよね、お友達と勉強会!」

 

 君はつくづくボッチだね、マミ。だがそんな君が可愛いよ。

 

「げっ、マジかよ。放課後まで勉強なんてしたくねぇだろ」

 

 不意に不真面目代表佐倉杏子が異を唱える。

 

「ちなみに杏子何点だったのよ」

 

「あ?あんなもん満点に決まってんだろ」

 

「え?」

 

 思わぬところに敵がいたものだ。杏子はこう見えて勉強ができる。ただやらないだけだ。勝手に彼女を同志だと思っていたほむらが呆けたように声を出してしまっているじゃないか。

 それから私達は食事を終え、また授業に赴く。それにしても、彼女も上位者であるならば高次元の暗黒と繋がっている故、勉学に対する知識なんかは吸収していてもおかしくないのだが……きっと彼女は人間としての、一人の少女としての人生を大切にしているのだろう。そう考えれば彼女の馬鹿さ加減も微笑ましいものだ。

 ちなみに午後の授業で彼女は先生に当てられ、悪魔らしからぬしどろもどろを見せて黒板でフリーズしてみせた。彼女を慕う少女達が応援している様は、公開処刑と言うに他ならない。

 

 

 

 放課後、私達はマミの家に集まりほむらのための勉強会を開く。勉強会といっても、主にほむらとさやかに勉強を教えるためだけの集まりだが。ちなみに恭介と仁美は習い事があるせいで来れない。

 ほむらは特に英語が苦手らしく、彼女の愛しのまどかに手取り足取り教えてもらっていたのだが……二人とも百合の花が咲き乱れている故に勉強そっちのけでルミナスしだして進まないので、私とエーブリエタースが教えることとなった。その際にまどかから引き離されたほむらはまるで捨てられた子犬のようだった。

 

「ほら、じゃあこの問題を解いてみ給え」

 

 教科書を指差す。なんて事はない、関係代名詞の問題だ。日本人は特に苦手らしいが……まぁ我々としてもこんな文章みたいな英語はなかなか話さないし、仕方ないだろう。

 

「えっと……Whoの後は……」

 

「さっき教えたじゃない。貴女本当に上位者?」

 

 苦戦するほむらをナチュラルに煽る星の娘。上位者とは人に物を教える方法が分からない。だからメンシス学派共にあんな腐った脳を与えてしまう。

 

「エブちゃん、落ち着いて。ほら、ほむら。Whoの前は人だろう?その後に来るのはその人が何をしているのかを表す言葉だよ」

 

 そっとほむらの華奢な肩を抱きながら親身に教える。スンスンと匂いを嗅ぎながら……あぁ、ほむらよ。君のそのか細い身体と少女特有の匂いは実に啓蒙を高めるよ。

 バチンとエブちゃんに腕を叩かれ、堪らずほむらから離れる。まったく、君は嫉妬深いなぁ。

 

 

「あいつら相変わらずだね……」

 

「ほら、美樹さんも集中して。じゃあこの連立方程式を……」

 

「あん?こんな簡単な問題じゃ意味ないだろ。こっちやれよこっち」

 

 ケーキを貪りながら杏子が方程式の発展問題を指差す。

 

「ちょっと佐倉さん?美樹さんに合わせて勉強を……」

 

「マミは甘っちょろいな〜。ま、だからさやかもバカのまんまなんだろうなぁ」

 

「なんですって杏子〜!?」

 

 ギャーギャーと喧嘩し出す杏子とさやか、そして仲裁に入ると思いきや二人を力付くで制圧するマミ。そんな皆を見て蚊帳の外のまどかとアンリは苦笑いを浮かべている。

 

「うぇはは……皆元気だね」

 

「元気すぎて本来の目的を忘れてもらっては困るけどな……」

 

 

 

 

 

 

 

 夕焼けはいつの間にか過ぎ去り、勉強会が終わる。成果はあまり無いようだが、少なくともほむらに関係代名詞は伝わったようだったから良しとしよう。マミ達と別れ、私は一人帰路についていたのだが。

 ふと、何かが匂った。血の匂いでもない、獣の匂いでも無い。ましてや上位者らしい匂いとも異なる奇妙な香り。

 その匂いは後ろからやってきた。つまり、ほむらとまどかが去っていった方角から。だがこの匂いは彼女達の匂いではない。あの二人の匂いはもっと清潔だ。

 

 ならば。この匂いはなんだ。脳に溢れる啓蒙にも分からぬこの胸騒ぎ。兎にも角にも何やら異状な事が起きているという事は分かる。

 取り込み、今や私の物となっている三本目の三本目が疼く。思い立ったが吉日、私はスマートフォンを取り出し連絡を入れる事にした。相手はもちろん、ほむらだ。

 

『あら、どうしたのかしら』

 

 いつものように冷静に、だが隣ではいちゃついているのかまどかの甘える声がマイクに入ってしまっている。

 

「うん、何か予兆を感じてね。そっちでおかしな事は何も無いかな?」

 

『予兆?特に何も……ちょっとまどか、今電話中。何もないわ。おかしな薬品でも飲んだんじゃないの?ヤーナムの』

 

 否定はできないのが痛い所だ。ヤーナム産というだけでやたらと胡散臭くなるし。

 

「無いなら良いのだ。あんまりイチャつき過ぎて勉強を怠るなよ、ほむら」

 

 言われなくても、とちょっとだけムキになって電話を切るほむらは可愛かった。だが、何も無いならば私の杞憂だろうか。そうなら良いのだが。

 電話のしまい、少し考える。ふむ、こういう時こそ親愛なる上位者の知恵を借りる時かも知れぬ。事企みに関しては碌なことをしない彼らだが、長い時の中で得た彼らの慧眼は目を見張るものがある。

 

 脳裏に刻まれた、完璧な狩人の徴を思い浮かべると私狩人の夢へと赴く事にした。きっと彼も今は暇しているだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから奴らに呪いの声を。赤子の赤子、ずっと先の赤子まで。

 

 

 

 

 暗闇の中で、ただ一人その白い者は呪った。

 

 同族を蹴落とし、偉大なる使命を無碍にした愚か者。そいつを呪うために。

 

 秘密が甘いものであるならば、復讐とは甘美である。解けぬ秘密を探すより、自ら手を下す甘さがある。

 

 だから、それで良い。秘密など、彼らにはありはしない。秘密など彼らには必要ないのだから。

 

 全ての星に、祈り、呪いを。果たすべきは我らが昇華。再び帰り咲くために。

 

 擦り切れた愚か者は、一人暗闇を彷徨う。呪いが報われるその時まで。自らがまた、今まで下等に見ていた者達と同様の想いを抱く事に気が付かず。

 

 

 一度堕ちれば、戻る事はないと知らぬわけでも無し。しかし堕ちずにはいられぬのだ。

 

 

 だからそれまでは、偽りの中で安寧を享受するが良い。来るべきその時、きっと君は計り知れぬ絶望を抱くのだろうから。

 

 




今更ですがダークソウル/Blood borneの小説を書き始めました。良ければそちらもご覧下さい。

どこまで書いたら良いかアンケート取ります。反映するかしないかは気分です(横暴)

  • アニメ本編のみ。あともうちょい
  • 叛逆。展開は変えるかもしれません
  • 叛逆後も。クオリティ低し(断言)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:15文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。