お待たせしました。
星の巫女のzero第二話です。良かったら評価、感想お願いします。では行こう!!
リィエル達はあの後森の中で仕方なく野宿をし、朝になった後に質屋に持っていた宝石を何個か売り出して資金にした。身分はとりあえず、暗示で騙し戸籍を軽く作って工房に必要な家を買った。因みにここまでで3日で揃えた。ギルガメッシュやエルキドゥもそうだが、リィエルも規格外だ。要領が良すぎる。
「現代って神秘の代わりに科学が発展したようね」
「リィ……キャスターさんははじめて?」
「ええ、そうね。この街を見たのは初めて」
家を構えた後、服を買って現代の街を歩いていた。
それは単純に興味があったのと、必要最低限のものを買う為、服に食材に寝具などは当然ながら必要だ。特にコトネはまだ子供で、両親を失ってしまい心を閉ざしてしまっている。
リィエルがそれを癒せるかと言えばまだ分からない。ただ暗示で記憶を改竄するのは酷な話だ。リィエルはいつか消えなければいけないのだから。
「人も多いし売ってるものも最新型、ウルクじゃ『てれび』とか『くーらー』とか無かったしね。現代って科学文明は凄いのね」
「ウルクってどんなところなんですか?」
「遠い昔の国よ。まだ電気が発展してなかったくらい古い時代」
まああの時代は神秘が存在し、誰もが生きる為に働き、神様や王の恩恵、カリスマによって動いていた時代だから現代とは似つかない。『王』も居なければ神秘も薄い。そんな世界は惰弱と言わざるを得ないが、知恵を磨いた叡智の結晶なのだろう。
「マスター、食べたいものはあるかしら?」
「ん、んーと、あれ」
「たい焼き屋?じゃあ行きましょう」
コトネとリィエルは手を繋いでたい焼きを買う為に店に並び始めた。
★★★
「ここが日本なのね!」
「アイリスフィール、あまりはしゃぎ過ぎないでください」
「ごめんねセイバー、でも私嬉しくってね」
アイリスフィールは柄にもなく日本の街を歩いて興奮していた。彼女は聖杯の器としてアインツベルンの城から出た事が無い。箱入り娘と言われたら肯定される。
それは
「ねぇセイバー、アレは何かしら?」
「アレですか?たい焼き……と言うものらしいですが」
「良かったら買って食べない?セイバーも一緒に……」
「…分かりました。では行きましょう」
若干の呆れは有るが、暗い表情をされるのはエスコートする騎士として失格だ。アイリスフィールは城の中で少しだけ暗い表情をしていたからこそ、仕方ないと思いつつもたい焼き屋に並び始め……
「あっ」
「ん?……っっ!?」
★★★
日本の冬木に到着し、事前に予約したホテルの階層で魔術工房を作るケイネスの後をつけて興味深そうに見るエルキドゥがいた。エルキドゥは魔術自体は殆ど使えない。兵器としての爆発力が高い為、魔術に変換するのは効率が悪い。とは言えリィエルから教わった魔術、基礎程度は使えるくらいだ。リィエルのありとあらゆる魔術を見てきた故にある程度の魔術は理解出来るようで、見ていて飽きないのだ。
「成る程……現代の魔術はこうなってるのか……中々興味深い」
「神代の基盤の当て付けのつもりかランサー。貴様が生きていた時代からすれば矮小に見えるかもしれぬが、私はそこらの魔術師の上位に位置する者だ」
「それは間違いないとボクでも思うよ。この神秘が薄れた時代でこれだけの事をやれる魔術師はそうそう居ない」
この時代では魔術より技術でどうにか出来てしまう為、多大な神秘はこの場所では見る影もない。神代の時代と一緒にしたら比較するまでもないのは事実だ。
「貴様の時代に居たのだろう。魔術師の中でも原点であり頂点に君臨した魔術師、星の巫女が」
「うん。そして恐らくは召喚されている」
「英雄……いや、兵器としての直感であるならば考慮せざるを得ないが、星の巫女リィエル、そして英雄王ギルガメッシュとはな……」
流石にケイネスも頭を痛めた。
英雄や騎士と言った名を残した人物は神秘が蔓延し、この時代ではあり得ない力を奮っていた。アーサー王伝説やギリシャ神話、神を連なるオリュンポスの時代では神の力すら記される。
オリュンポスと比べたらと言う訳ではないが、バビロニア神話に出てくる神や魔獣も大概だ。豊穣と戦の女神イシュタル、天の牡牛グガランナ、森の守護獣フンババなど、神が存在し力を奮っていた時代を経った一人の魔術師が終わりを告げ、神の天罰として星を降らせたと言う。そして人の世を築き上げた始まりの英雄、原初の王だ。
「しかしその神話は本当なのか?」
「本当さ。––––じゃなきゃウルクはギルが帰る前に滅んでいた」
リィエルは星に止まらない小惑星を落とした神話。女神イシュタルを諫める為にリィエルが命をかけてイシュタルを天界に封印したと言う。
ギルガメッシュが帰ってきた後、王の帰還を果たしギルガメッシュが過労死した後にウルクは後を追うように滅んだ。聞いた話、リィエルは精霊に近い存在であり、第二魔法に近い原理で世界に名を残した原初の魔法使い。
「マスター、お願いがあるんだけど」
「……言ってみろ」
ケイネスはその言葉を聞いて苛立ちを感じながらも、ランサーが言った弁明を聞くとため息をついてそのお願いを聞き入れた。
★★★
近くの喫茶店に入り込みココアとカフェオレを頼むリィエル。コトネ達の前には令嬢を思わせる白いコートに身を包んだ女性、アイリスフィールと黒いスーツのSPが漂う格好だが、さながら姫を守る騎士のようなセイバーが座っていた。
「……?キャスター、このキレーなおねーさんとしりあい?」
「あー、知り合いと言うか、倒すべき敵と言うべきか……」
聖杯戦争は基本的に殺し合い。
血生臭い事実を子供のコトネに伝えるべきか否か、少し悩みながらはぐらかした。
「キャスター、貴女は何故私達とこんな場所に入った?」
「……暇だったから?」
「そんな理由で誘ったと言うのか?随分と危機感のない、私達は敵同士なのは重々承知な筈だ」
その言葉にリィエルはため息をつく。
確かに殺し合う相手に変わりはない。だが、今はまだ昼間、太陽が出ている時だ。にも関わらず目の前のサーヴァントは血気盛んだった。
「まさかと思うけど夜に戦う聖杯戦争で真っ昼間から始める気だったの?今はまだ時じゃない、それともそこの
「貴様…私を愚弄する気か!」
「ここ店内、叫ばない」
ぐっ、とセイバーが大声で叫んだのを他の客が注目している。その視線からゆっくりと渋々ながら座る。どうやら冷静さや風格はリィエルの方が上のようだ。まあ当然と言えば当然だ。唯我独尊天上天下の始まりの英雄王ギルガメッシュの宮廷魔導師であり旅路をしていたギルガメッシュに代わって国を支えた最優の持ち主。騎士王と言えど送ってきた人生の濃さが違う。
と言うか唯我独尊の英雄王に出会い頭から反抗していたリィエルはある意味物事を客観的に見るギルガメッシュの俯瞰に近いのだ。
「別に何かしようなんて思ってないわ。偶然会って単純にお茶しましょうと誘っただけだし。どの道、聖杯戦争の勝利者は
「何……?」
「まあ、そこら辺は置いといてマスター、美味しい?」
「うん」
それは良かったと頭を撫でる。
コトネは聖杯戦争の危険性を知らないから目の前の二人の前でも平然としながらパフェを食べている。セイバーからしたら「こんな幼子が……」と思うことはあるが、キャスターが洗脳しているわけでも無い。それだけは分かる事だ。恐らくはこのキャスターは善性寄り、騎士に近しい精神を持っているようにも感じる。
逆にセイバーは顔を顰める。
騎士王が認める騎士のような精神と見た目からの高潔さは英霊の上位に位置する存在。それでいてセイバーの出す風格より上に感じる。言ってしまえば同族嫌悪に近いのかもしれない。
もしこの英霊が自分のいた時代に居たら……悲劇を覆す事が出来た。出来た筈と言う確信があった。
「(私が召喚された原因はあの人だし……それに多分私の親友も召喚されてる。後は……マスターの事かな)」
「えっと、キャスターさん?」
考えこんでいると白いご婦人、アイリスフィールがキャスターに話しかけた。
「ん?何でしょうマダム」
「一応参考までに聞きたいのだけど、貴女が聖杯に懸ける願いについて聞いてもいいかしら?」
「聖杯に懸ける願い……特には無いですよ?」
その言葉にセイバーは目を細める。
直感からして嘘はついていない。それは分かる。だが、聖杯戦争に呼び出されるサーヴァントと言うのは未練や後悔、聖杯によって叶えたい理由がある願望を持って召喚される。
それを持っていないこのキャスターはいったい何なのだろうか。
「なら何故貴女は召喚されたの?」
「私は……余興かな?いや、違うな?娯楽……?いやそれもなんか違うし……まあマスターが襲われてたからこの子によって召喚されて助ける事が出来たなら後は余興を楽しもうかなと思ったから?」
約束だからと言ってしまえば真名の足掛かりになる可能性がある為言わない。まあ実際、彼と会い、友と会い、その後についてはまだ何も考えていない。
「全部建前ではないか」
「寧ろ願いを言ってしまったら真名がバレちゃうからね。そう言う貴女は願いと言うか……いや、
「っっ……!?」
リィエルの指摘は的を射ていた。
リィエルは僅かながら感じ取っていた。本質的に言えばギルガメッシュに似ているのかもしれないが、そこは比べようがギルガメッシュに劣るのは必然。ハッキリ言って
「まあ、そう言った英霊はある程度該当するけど、私からしたら貴女より隣にいるマダムさんの方が興味あるわ。一種の世界、いや
「!?」
「?」
アイリスフィールは軽く驚愕する。
キャスターの瞳は魔眼ではないが、
「まっ、深く追求はしないわ。後世に生まれたソレは私も初めて見たから」
「キャスター、たべおわった」
「クリームついてるわよ。拭いてあげるから動かない」
持っていた紙ナプキンでコトネの口元を拭くキャスター。
カフェオレを飲み、会計伝票を持って席を立つ。これ以上は夜に行うものだ。殺しあう相手の事を一々理解しても情が湧くだけで意味はない。
「お互いに悔いのないように。私達はもう行くわ」
「いいの?はなしがあるんじゃ」
「無いから、それにマスター暇そうだったし、いいわよ」
マスターと手を繋ぎ、店を出る二人。
その後ろ姿にアイリスフィールとセイバーは親子みたいだと思いながらも、あれ程の英霊が相手だと言う事に気を引き締めていた。
★★★
「……やはりな」
英雄王ギルガメッシュは宝物庫に眠る2つの財を見つめていた。ギルガメッシュの宝具は無限にも及ぶ原典の宝具、だがその中で一際輝きを放ち、ギルガメッシュが真の英雄、来たるべき厄災に抜くと決めた宝具は3つ。
その内の
故に友に通用することはあり得ない。若かりし頃に肩を並べたあの頃を思い出すこの状況、英雄王としての友とぶつかり合ったあの日々、目を瞑れば目蓋の裏にしかと焼き付いている。
「此度の聖杯戦争とやら、運命に導かれたように思えてならんのが気に食わんが、これもまた王の務め」
ギルガメッシュは世界を背負う王。
誰かに指図されたような上からの意図的な導きがあるように思えるのが多少気に食わないが、約束の三人は揃った。
「精々、我を楽しませてもらうとしよう」
恐らくは次と無い圧倒的な遊興であり、二度とない遊興だ。楽しまなくては愉悦する機会がない。神々に生み出されし兵器、星に生み出されし精霊、唯一無二とも呼べる宝に会うこの高揚感にギルガメッシュは酒を煽りながら笑っていた。